マーケティングオペレーションとは?背景、求められるスキルセット、導入ステップ


Writer:
山崎雄司
  • facebook
  • Twitter
  • LINE

マーケティングオペレーションとは、企業のマーケティング活動において必要な人材やシステム、テクノロジー等すべての領域を管轄し、マーケティングの戦略および施策の設計全体を監督する役割のこと。

マーケティングオペレーションとは


マーケティングオペレーション(Marketing Operation)とは、マーケティング戦略や施策について、立案から実行までのプロセス全体を管理・運営する役割をいう。具体的には、必要な人材やシステムの運用、データ分析を基にした活動計画の立案などが含まれる。「Marketing Ops」と表記されることもある。
大手調査会社のGartner社によると、組織におけるマーケティングプログラムやキャンペーンの計画、年間のマーケティング戦略の計画と活動を監督する役割と定義されている。なお、ビジネスにおける「Operation」は、業務目標を達成するために行う手順や体制を整える、といった意味で用いられることが多い。


マーケティングオペレーションが注目される背景


デジタル化とインターネットの普及

デジタル技術の発展とインターネットの普及により、企業と顧客の接点はオフラインからオンラインへと変化している。マーケティング活動も、オンライン広告やSNS、メールといったデジタルツールを利用したものが主流になるとともに、顧客の反応や施策の効果が数値として測定できるようになった。これらのツールを導入し効果的に運用していくために、マーケティングオペレーションは必要不可欠なものとして注目されている。


データの重要性

デジタルマーケティングの台頭により、企業は市場のトレンドや顧客の行動履歴、競合他社の状況などのさまざまな情報を収集できるようになった。その分、取り扱うデータは膨大になり、うまく活用するためのデータ管理能力や分析能力が求められるようになった。マーケティングオペレーションは、このようなビッグデータやテクノロジーを効果的に活用し、データの価値を最大限に発揮するために必要なものであり、会社の意思決定を支える重要な役割を担う。


競争の激化

市場が成熟しコモディティ化する現在、さまざまな業界で企業間競争が激しくなっている。競合他社との差別化を図るため、企業はテクノロジーを活用し、あらゆる顧客接点において多様な顧客体験を提供するようになっている。激化する競争を勝ち抜くには、複雑化したマーケティングプロセスを最適化するマーケティングオペレーションが欠かせない要素といえる。


顧客中心のアプローチ

インターネットやスマートフォンの普及により、顧客は自分の求める商品を自由に調べ比較し、購入できるようになった。そのため、近年のマーケティングは企業目線ではなく、顧客を中心としたアプローチが求められている。マーケティングオペレーションは、顧客データの収集・分析をもとに顧客との関係強化をはかり、満足度を向上させることを目的として構築するため、顧客中心のマーケティング施策において高い効果が期待できる。

マーケティングROIの追求

ROI(Return on Investment)は「投資利益率」などと訳され、導入予定のツールを比較する際に客観的な数値として参考にしたり、施策の効果測定に用いたりする。
デジタルマーケティングの進化に伴い、顧客の購買履歴やサイトへの流入経路、メール開封率などさまざまな情報が可視化され、企業はマーケティングへの投資に明確な収益性と費用対効果を求めるようになった。ROIを高めるためには、ツール導入による業務の自動化やプロセスの最適化、新しいテクノロジーに対応できる人材の育成・登用などを包括して担うマーケティングオペレーションの構築が強く求められている。


マーケティングオペレーションに求められるスキルセットとは


デジタルマーケティング知識

戦略の設計や運用を担うマーケティングオペレーションにおいては、デジタルマーケティングに関する幅広い知見が求められる。たとえば、CRMMAのようなデジタルツールを使いこなす能力のほか、メールやオンライン広告、SNSといったマーケティングプラットフォームに関する深い知識が必要である。


データ分析能力

マーケティングオペレーションにおいて、データの収集と分析はビジネスの意思決定をサポートする重要な役割を担う。収集したデータから、組み立てたマーケティングプロセスやパフォーマンスの状態を分析し、改善点を導き出す能力が求められる。定量データの分析はもちろんだが、数字に表れない定性的な要素や関係性などに目を向ける能力も重要である。

プロジェクトマネジメント能力

マーケティングオペレーションは、部門間の連携を取りながら全体を統括していくマネジメント能力が必要である。施策の具体的な運用においては、他部門との連携やデータの共有を行いながら、全体の進捗状況の把握や予算管理、スケジュール調整、リソースの管理といった役割を担う。

コミュニケーション能力

マーケティングオペレーションでは、マーケティングチームのメンバーだけでなく、他部署のメンバーとも柔軟かつ円滑なコミュニケーションを取ることが非常に重要である。組織が大きくなるにつれて施策を担う部門が細分化され、情報共有が難しくなりがちであるため、高いコミュニケーション能力が求められる。

ブランディング戦略

競合他社との差別化をはかる重要な要素の一つが、ブランディング戦略だ。自社のブランド力を正確に把握するためには、STP分析などを通して市場における自社のポジションを把握し、自社の商品・サービスならではの強みを理解する必要がある。そしてブランドを強化し、一貫性のあるメッセージを伝える能力を有することが求められる。


広告およびクリエイティブスキル

オンライン広告には、テキストのみのものから動画を用いるものまで幅広い種類があり、制作する広告の仕様や掲載方法、期間などによって費用も大きく変わる。そのため、広告コピーの作成やデザインに関する基本的な知識や技術を有することで、目的や予算に応じて適切な媒体を選択し、キャンペーンのクリエイティブ部分をより効果的に管理することができる。

市場分析能力

変化の激しい市場において顧客ニーズを捉えるためには、競合他社の分析や市場のトレンドを把握することが重要だ。マーケティングオペレーションにおいては、常に揺れ動く市場を分析し、将来を予測し見極める能力と、自社の競争力を向上・維持させる戦略を策定するスキルが必要である。

顧客関係管理(CRM)

顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management)は、顧客との関係強化とロイヤリティ構築のために欠かせない重要な要素である。マーケティングオペレーションは、営業部門やカスタマーサービス部門などと連携し、潜在顧客から優良顧客へと育成する施策を実行する。そのためには、CRMツールに関する知識が必要不可欠であり、システムとの連携やデータ統合、ダッシュボードなどの機能を使いこなす技術が求められる。


マーケティングオペレーション導入のステップ


1.目標設定

マーケティングオペレーション導入において最初にすべきことは、目的やビジョンを明確化し、何を目指しているのか(ミッション)をはっきりと描くことである。さらに、それを実現するための課題を掘り下げ、各部門の役割を決めていく必要がある。
目標設定が難しい場合は、他社の導入事例を集めて研究してみるとよいだろう。マーケティングオペレーションの導入による企業全体への影響や改善点などを精査し、自社と比較して共通点や異なる点を探すことで、改めて自社の課題が見えてくるはずだ。

2.オペレーションにおける障壁と対処法を検討

マーケティングオペレーションの策定において想定される障壁と、その対処法を検討しよう。マーケティングオペレーションは、マーケティング活動におけるさまざまな要素を俯瞰し、各部門を横断して計画・運用されるものだ。そのため多くの場合、社内予算やプロセス、人材の配属や導入済みのツールなどの存在が導入の障壁になりやすい。それら一つひとつの課題に対して説得できる材料をそろえ、承認を得るための対処法を準備しておきたい。
また、マーケティングオペレーションは比較的新しいもののため、変化に対して抵抗を覚えるスタッフもいるかもしれない。浸透するには時間と労力を要するものであることを予め想定し、粘り強く対話していくことも必要である。

3.ロードマップの設計

マーケティングオペレーションについて、目標へ到達するまでに必要な要素を分析し、ロードマップを設計する。まずは自社の現状のリソースやテクノロジー、人員の配置状況、求められる能力といった情報を収集し、現在地を把握する。次に目標達成のために備えるべきテクノロジーや能力、リソースなどを具体的に検証し、現状との差異を分析。その差を埋めるために必要な役割や行動、システムなどを明確にして、到達までのロードマップを設計する。このとき、測定可能な成果指標も設定しておくとよい。また、ロードマップの進行状況を可視化できるよう、期限と担当者を明確にすることにも留意しておきたい。
ロードマップ設計は長期的な計画になるため、運用途中で新しいツールや機能が出てくる場合もあるだろう。ただし、新しいテクノロジーが自社にとって必要とは限らないため、情報に左右されないためにもロードマップの見直し期間は予め設定しておくのがよい。プロセスの進捗を部門間で共有しながら、常に最適化していくことが大切である。

メルマガ登録
  • facebook
  • Twitter
  • LINE