プライベートDMP(CDP)を活用してCRMを加速せよ


Writer:
山崎雄司
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企業のマーケティング予算がオンラインに次々にシフトしている中、デジタルマーケティングに関するテクノロジーも日々進化しており、さまざまな活用方法が存在している。今回は、オンラインマーケティングの申し子ともいうべき「プライベートDMP(CDP)」に焦点を当て、ITツールとの効果的な組み合わせ方や、その活用方法について考えていき、企業のCRMをどのように加速していくことが出来るのか考えていく。


 

目次


1. DMP、CDP、CRMの違い
2. DMPの種類
3. DMPのメリット
4. プライベートDMP(CDP)でできることとは?
5. DMPを導入する際のポイント
6. DMPとの連携で加速するCRM
7. DMPの活用事例
8. DMPの未来像と課題
9. プライベートDMP(CDP)は効果的なマーケティング戦略の基盤となる
 
 

DMP、CDP、CRMの違い


DMPとはData Management Platformの略で、さまざまな顧客データを一元管理できるプラットフォーム(基盤)のこと。DMPには2つの種類があり、外部サイトのデータを扱うものを「パブリックDMP」、自社内のデータを扱うものを「プライベートDMP」と呼ぶ。最近では「CDP(Customer Data Platform)」と呼ばれる言葉も出現しているが、「プライベートDMP」とほぼ同様の概念と捉えて差し支えないため、本記事では「プライベートDMP(CDP)」と表記する。
CRMとはCustomer Relationship Managementの略で、顧客との良好な関係構築を支援し、長期的な利益を生み出していくための手法やツールのこと。「顧客管理」「顧客関係管理」とも呼ばれ、顧客情報の一元管理や顧客分析などの機能を持つ。DMPのデータをCRMと連携させることでより顧客理解が深まり、効果的なマーケティングが行えるようになるなどの利点がある。
 
 

DMPの種類


ここで一度、パブリックDMPとプライベートDMP(CDP)について整理しよう。
 

パブリックDMP


パブリックDMPは「オープンDMP」とも呼ばれ、自社以外の第三者が所有する“3rdパーティーデータ”を一元管理するツールである。主にweb広告のターゲティングに活用され、広告を利用した新規顧客へのアプローチに適しているといわれている。見込み顧客の性別や年代、嗜好性、外部サイトの行動データなど、自社にないものや分野の違うデータを扱うため、自社の顧客に近い見込み顧客を探すことが可能なツール。Yahoo! DMPなどが代表的なサービスだ。
 

プライベートDMP(CDP)


それに対し、「プライベートDMP(CDP)」は自社サイトにある顧客情報や購買履歴(オンラインデータ)のほか、サイト訪問者のアクセスログやオフラインのデータ(実店舗で集めた情報)といった“1stパーティーデータ”を一元管理するツールである。顧客の属性データにさまざまなトランザクションデータを結び付けることで、データの山から顧客の顔を見極めることができる仕組みといえるだろう。例えば、最近サイトへのアクセスがない顧客や、問い合わせフォームの途中で離脱してしまった見込み顧客を選別し、Eメール等を使ってキャンペーン情報を送ったり、興味を引きやすい言葉を使った広告を配信したりするなどの活用方法が考えられる。Rtoasterなどが代表的なサービスだ。
 

DMPのメリット


1. さまざまなデータを一元管理できる
2. データの分析や活用がしやすくなる
3. 顧客理解を深めることができる
4. ロイヤルカスタマーの把握に役立つ
5. マーケティング施策を効率化できる
 
DMPは、膨大なデータを一元管理し、マーケティングに応用するツールである。顧客データや購買・閲覧履歴、販促、POSレジなどの自社で保有しているデータはもちろんのこと、WebサイトやSNSの行動履歴、広告データなどの外部データに至るまで、あらゆるデータを統合できるのがメリット。例えば社内や社外にデータが散在している場合、同一の顧客であっても別の顧客扱いになってしまうケースがあるが、DMPを活用すれば1人の顧客として扱うことが可能だ。顧客の属性情報のほか、その行動履歴から興味関心度合いをグラフなどで可視化できるので、自社の顧客理解を深め、ロイヤルカスタマーを把握・育成するための有力な手助けともなる。これらの分析結果をアップセルやクロスセル、パーソナライゼーションなどの施策に活かせば、データに基づいた効率的かつ効果的な施策を実施できる。Webマーケティングの最適化を望む企業にとって、DMPはメリットも多く、検討の価値があるものといえるだろう。
 
 

プライベートDMP(CDP)でできることとは?


DMPの主な機能はデータの収集、データの管理・分析、データの活用の3つに大別されるが、どの領域に特化しているかはツールによって異なる。
 
上図のように、プライベートDMP(CDP)には用途を問わず多くの情報を溜めるタイプのもの(データレイク型)や、広告配信などのアクションに使うデータを重視したもの(アクション型)がある。なかでも後者は、短いサイクルでアクションを回すため、PDCAサイクルの高速化が可能だ。また、最近は顧客接点が多様化しているが、各チャネルで得たデータを一元化することによって、より顧客一人一人のニーズへの対応がスムーズになることが期待できるだろう。
 
 

DMPを導入する際のポイント


1. 導入の目的を明確にする
2. 社内体制を整備し、意識を統一する
3. MAツールやCRMツールとの連携を考慮する
4. 施策に合わせてDMPツールを選定する
 
DMPはただ導入しただけで効果が出るものではないため、何を目的としてデータを分析・活用し、どのような施策を実施したいかをあらかじめ明確にしておく必要がある。あらゆるデータを統合管理する以上、部門を越えた連携も重要なポイントとなるので、データを共有・活用しやすい社内体制を整備し、部門ごとではなく社内全体で意識を統一しておくことも大切だ。実施したい施策に合わせてDMPツールの選定を行うほか、One to Oneマーケティングを実現する際にもMAツールやCRMなどとの連携が鍵になるので、あわせて確認するようにしたい。DMPは活用の幅が非常に広く将来性のあるシステムだが、それゆえに導入の目的を明確にし、どのようなアクションへと繋げていくかが重要になってくる。特にプライベートDMP(CDP)はパブリックDMPよりも高額になりやすいので、投資に対する効果を得るためにも意識しておきたい。最近は、分析した結果を踏まえ顧客や見込み顧客に対するアクションまでを実行するサービスも提供されているので、必要に応じて検討するとよいだろう。
 
 

DMPとの連携で加速するCRM


従来の紙媒体によるビジネスモデルが確立している新聞業界にも、DX化の波は確実に押し寄せてきている。そして、新聞各社はさまざまな形でデジタルシフトを進めているが、未だ手探りの状態だといえそうだ。紙媒体の発行部数が激減しているとはいえ、数多の情報があふれる現代において、新聞社が発信する情報の需要はまだまだ高い。その需要を生かし、デジタルメディアでも顧客ニーズに合ったコンテンツを最適なチャネルで配信する必要があり、そのためにはCRMツールやMAツールなどの施策が鍵になってくるだろう。今後の新聞業界のDX化の推移を見守っていきたい。


DMPの活用事例


プラスアルファ・コンサルティングが提供するCRMシステム『カスタマーリングス 』は、パブリックDMPツール『Yahoo! DMP』と連携している。それにより、自社内のデータとヤフージャパンのビッグデータを掛け合わせた効果的な広告配信が可能だ。プライベートDMP(CDP)については『Rtoaster』との連携実績もある。自社の顧客ID(1stパーティーデータ)でセグメントすることで、対象顧客への広告配信の強化や、対象以外の顧客に対しても広告の配信を強化した。具体的には、複数回のメールを配信後、いずれも開封されていない顧客を“メールアドレスが無効”と判断し、それをもとにDSP広告を使い追客する方法が一つ。ほかにも、初回購入のみで2回目購入に至っていない顧客にのみDSP広告やキャンペーンバナーの出し分けで追客するといった活用も行っている。
 

株式会社ニッピコラーゲン化粧品


Yahoo!DMPを導入したニッピコラーゲン化粧品は、サンプル配布から購入に至った顧客の属性を分析し、サンプル配布の対象を選定。それにより、サンプル配布後の購買率が2倍以上に引き上がったそうだ。また、ANAカードを提供している全日本空輸株式会社は、カード発行を促す広告をどの顧客に対しても表示していたが、データを活用し、顧客に合わせてカードのランクアップ広告を配信するように。顧客に最適化した広告表示を実施した結果、コンバージョン数を大幅アップさせたという。
 

株式会社JTBパブリッシング


JTBパブリッシングはRtoastorを導入し、チケット予約サイトとWebメディアの2点から得た顧客情報を一元化。それによって顧客のニーズにマッチしたリコメンドを実施したという。さらに、新たなコンテンツの制作や商品開発にも活かしているそうだ。
 

日本航空株式会社


同様に、日本航空もRtoastorを導入。導入当初はIPアドレスに応じたリコメンドを行っていたが、閲覧履歴や属性情報といったデータをプラス。2012年頃からは、さらに自社のもつビッグデータを用いた予測分析を組み合わせ、顧客一人一人に合わせたバナーの出し分けを実現させることで、クリック数が2~3倍に増加したという。


DMPの未来像と課題


DMPを活用するにあたって、GDPR(EU一般データ保護規則)や個人情報保護法の改正などについて知っておく必要がある。GDPRは2018年5月にEU加盟国で施行された法律で、個人情報保護に関するガイドラインを定めたものだが、パブリックDMPで扱うデータのうち3rdパーティーCookieがこの影響を強く受けるからだ。AppleはSafariにおける3rdパーティーCookieを2020年3月にブロック済みであり、GoogleもChromeでの3rdパーティーCookieのサポートを2023年中に廃止すると発表した。2022年4月に施行される改正個人情報保護法でも、Cookieに関するガイドラインが強化されている。これにより今後はリターゲティング広告が制限されていくため、企業には3rdパーティーCookieに頼らないマーケティングへの切り替えが求められているのだ。Cookieレス時代に備えるためにも、これらの影響を受けにくいプライベートDMP(CDP)をマーケティングの主軸とすることは有効といえる。
 
 

プライベートDMP(CDP)は効果的なマーケティング戦略の基盤となる


プライベートDMP(CDP)は、データ統合、顧客の可視化、PDCAの効率化、施策の最適化のほか、Cookieレス時代の到来にも欠かせないツールであることがご理解いただけただろうか。プライベートDMP(CDP)で様々なデータを統合することで、マーケティングに活用できる情報量が飛躍的に増える。情報量が増えれば増えるほどより正確なレコメンドを行えるほか、新しい施策や顧客一人一人に応じた接客へと繋げることも可能だ。しかし、無目的に導入しても意味がない。大切なのは、データをまとめる目的を明確にし、どこで、誰が、どれぐらい購入したか、自分たちの顧客像を把握することだ。そうすることで、顧客がどこから訪れても、またどこにいても最適なカスタマーエクスペリエンスを提供できるようになるのではなかろうか。プライベートDMP(CDP)の持つポテンシャルを最大限に発揮するとともに、相乗効果による「おもてなし」の最大化を実現するためにも、ぜひ活用したいものである。

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