CRM成功事例9選!事例から学ぶCRMの効果的な活用法


Writer:
山崎雄司
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企業と顧客双方に利益のある関係性を創ることができることから、多くの企業がマーケティング戦略に導入している企業と顧客双方に利益のある関係性を創ることができることから、多くの企業がマーケティング戦略に導入しているCRM。しかし、上手な活用ができず、期待していた結果を得ることができないケースもみられる。そこで今回は、CRMの成功・失敗事例からCRMの導入における注意点や効果的な進め方について考えていく。

目次


  1. CRM(Customer Relationship Management)を活用したマーケティングとは
  2. なぜCRMを導入する企業が増えているのか
  3. CRMツールを活用するメリット・デメリット
  4. CRMマーケティングの具体的な施策
  5. CRMの成功事例
  6. CRMのよくある失敗例
  7. 事例から学ぶCRMの進め方
  8. 目的の明確化がCRM成功の鍵


CRM(Customer Relationship Management)を活用したマーケティングとは


CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客情報を収集・分析し、効果的な顧客対応を行うことで自社の商品やサービスの競争力を高めるとともに、長期的に高い利益を生み出す企業体質を作るための経営手法を指す。日本語では「顧客管理」「顧客関係管理」などと訳される。このCRMを活用したマーケティングは「CRMマーケティング」と呼ばれ、常に顧客の動向・満足度を分析することにより、顧客一人一人のニーズに応じた商品を効率的に提供し、顧客との継続的な取引を図る(=リピーターやファンを獲得する)ことが最終的な狙いである。


CRM、SFA、MAの違い


CRMを活用しビジネスを成功に導くため、関連するSFAやMAについてもおさらいしておこう。

MA:マーケティング活動の自動化
SFA:営業活動の見える化・効率化
CRM:顧客情報の管理・分析

これらはいずれも顧客情報を管理するためのツールで、マーケティングの段階によって区別されている。また、MAやCRMなど複数領域の機能を併せ持ったツールも存在する。


なぜCRMを導入する企業が増えているのか



CRMが注目されるようになった理由として、「顧客の価値観やニーズの変化」「業務効率化とコストの削減」LTV(顧客生涯価値)の向上」などが挙げられる。それ以外では、新型コロナウイルスの影響で対面販売や営業が減少したことも大きい。一般的に新規顧客の獲得には既存顧客の5倍のコストがかかるといわれるため、収集した顧客情報の分析結果をもとに適切なアプローチを行い、優良顧客へと育成することが必要不可欠となっているのだ。

CRMツールのメリット・デメリット


CRMを実施する際は、CRMツールなどのマーケティング支援ツールを導入するのが一般的である。ここではCRMのメリットと、知っておくべきデメリットを見ていこう。

メリット


1.顧客の動きをリアルタイムで管理できる


変化の激しい市場で売り上げの向上を図るには、見込み客および既存顧客の動向をリアルタイムで把握することが必要不可欠である。CRMツールはリアルタイムで顧客の情報管理ができるため、常に最新の顧客情報を入手することが可能だ。このデータをマーケティングに活用することで、新たな見込み客の獲得にもつながる。

2.最適な販売チャネルを選択できる


顧客が商品を購入するチャネルは一つとは限らないCRMツールで顧客情報を分析し、どのような顧客が、どのチャネルで、どういった商品を購入するのか細かく見ていくことで、顧客一人ひとりに合わせた最適な販売チャネルを選択できる。

3.顧客への最適なアプローチができる


顧客満足度向上を図るには、あらゆる顧客接点において、顧客一人ひとりに合わせたアプローチを実施することが求められる。多様化する顧客行動を把握するには、まず部門ごとの隔たりを越えて連携し、顧客行動をリアルタイムでトラッキングする必要がある。CRMツールは、データをリアルタイムで全社員に共有できるため、部門間の連携が迅速化される。そして、商品・サービスのプロモーションからアフターサービスに至るまでのあらゆる顧客接点において、最適なタイミングで、最適な形でのアプローチを可能にする。

デメリット


1.データ蓄積・移行に時間がかかる


多くのシステムと同様に、CRMツールも導入すればすぐに成果が出るわけではない。まずは顧客のデータベースをしっかりと構築する必要がある。データは日々のマーケティング施策を通して蓄積されていくものであり、まずデータを収集・蓄積することに時間を要する。さらに、紙媒体や他システムに蓄積していたデータがある場合は、それらを手作業で移行する工程が生じるため、多大な労力を要する可能性がある。

2.効果を感じるまでに時間がかかる


CRMツールは、顧客のデータベースをしっかりと構築してからマーケティング戦略に反映させ、顧客との継続的な関係を築いていくものである。そのため、システムの運用を定着させるまでには数か月単位の時間がかかることも。PDCAサイクルを回しながら、中長期的な視点に立って運用することで、効果を継続的に出していくことにつながる。

CRMの具体的な施策


それでは、CRMを活用した施策にはどのようなものがあるか、代表的なものを見ていこう。

メール配信


メールマガジンやステップメール、購入後のフォローメールなど、顧客に様々なメールを配信するもの。自動配信で業務を効率化できるだけでなく、特定のセグメントに対し特定のタイミングで配信するなど、顧客の属性や状態に合わせた適切なアプローチが可能になる。

アプリ活用


自社アプリを運用している場合は、アプリを活用した施策も有効だ。CRMツールとアプリを連携させたプッシュ通知やメッセージのセグメント配信など、顧客データを活用したマーケティングが可能になる。

Web接客


ECサイトを訪れた顧客に、ポップアップでセールのお知らせやポイントアップバナーなどを表示するもの。顧客データをもとに表示する内容を変えることで、売上や顧客満足度の向上につなげることができる。


CRMの成功事例


それでは、CRMを活用して成果を上げた具体的な事例を見ていこう。

1.株式会社J-オイルミルズ/食品油脂



食用油脂を中心にさまざまな商品を展開するJ-オイルミルズは、注文履歴などから得られる「定量データ」と、アンケートによる「定性データ」の双方を活用したCRMへの取り組みを行っている。指標のダッシュボード化や顧客フォローメールの自動化によって、リソース不足を解消。また、お客様アンケートによる定性データの取得で自社の送料に課題があることを把握し、お試し商品による検証でCPOが33%改善した。さらに、CRMツールによる分析から購買頻度に関する課題も明らかになり、顧客フォローの重要性を確認するとともに改善につなげている。


2.株式会社TAT/ネイル用品



ネイル用品の卸や開発を手掛けるTATは、主にBtoBビジネスを展開している。以前は、アンケートや定量データを自分たちで抽出・加工していたため、時間がかかるうえに効果測定も不十分であった。しかし、CRMの導入によって、顧客ごとの平均購入周期やメーカーごとの継続率が把握できるように。また、LINEとメールを併用した、きめ細やかなシナリオ設計によって、顧客体験価値(CX)向上へとつなげることができた。さらに、顧客一人一人の購入周期を把握し、離脱タイミングに対して迅速にメール等でアプローチすることで、離脱率が10%改善されている。


3.フローバル株式会社/配管部品



「配管部品.com」を運営するフローバル株式会社は、一人親方や街の電気店、工事業者、ガス屋などが主な顧客であり、円滑な部品調達ができるサイトを目指していた。CRMの導入によって、玄人レベルでのセグメントの作成や、自分たちのアイディアをメルマガに落とし込めるようになった結果、メルマガからの売上が倍増。また、分析を通して、アプローチが不足していた客層や不必要なメルマガ配信が浮き彫りになり、施策の見直しも可能に。さらに、顧客の動向や現状把握などのデータが可視化されるダッシュボード機能によって、データ分析の属人化が解消された。


4.東京海上日動火災保険/保険


東京海上日動は、業務プロセスの変化や代理店の要望に対応すべく、金融機関向けのCRMに刷新。これにより、営業スケジュールの可視化やカスタマーセンターでの対応内容の共有が可能になり、ある代理店では新CRM導入後の新規契約件数が前年比で140%増加したという。


5.北日本銀行/金融


北日本銀行は、買い手市場化や顧客ニーズの多様化に対応するためクラウド型のCRMを導入。その結果、交渉履歴の蓄積による顧客対応のポイントなど価値ある情報を可視化できるようになったほか、担当引継ぎにおける作業工程の効率化も実現した。


6.中国新聞社/新聞


中国新聞社は、自社Webサイトの有料会員を増やすべく「カスタマーリングス」を導入。その結果、ステップメールを活用した有料会員への誘導、会員の属性を把握できるアンケートなどを実現。属性に基づく広告のターゲティングにより、広告主に対し安価かつ密なアプローチが可能になった。


7.株式会社東洋経済新報社/出版


東洋経済新報社は、多種多様な顧客データを統合すべくCRMを導入。Salesforceをリードとして、DMPとも連携させる形でデジタルプラットフォームを構築した。それにより、サブスクリプションサイトからの離脱の原因把握や対策など、具体的な施策への落とし込みが可能になった。


8.ソウルドアウト株式会社/Webマーケティング支援


全国の中小・ベンチャー企業のWebマーケティング支援事業を手掛ける「ソウルドアウト株式会社」は、アウトバウンド型の営業方法からインバウンドマーケティングへと方針転換をする際に、CRMツール「HubSpot」を導入した。ダウンロードコンテンツを提供するためにブログを開設し、リード(見込み顧客)を獲得する仕組みを構築。SEOによる集客を強化したところ、自社サービスに興味を持っているリードへのサービス提供が可能となり、営業の効率化を実現。新規の取引開始時の顧客単価が約2倍に増加し、ニーズに合ったサービス提供に対して顧客から感謝の声が増えたという。


9.日本ピザハット株式会社/ファーストフードチェーン


ピザハットチェーンを運営する日本ピザハット株式会社では、メールマーケティングでの課題を抱えていた。ピザハットには、オンライン注文をすることで「ピザハットオンライン会員」になるシステムがあるが、350万人の会員の中でメルマガを承認した会員は全体の半数、開封率は全体のわずか10%であった。さらに、メールの作成には3時間、ABテストの実施には6時間かかるため、コストパフォーマンスはかなり低い状態であった。そこで、CRMツール「Salesforce Marketing Cloud」を導入して、業務効率の改善を図った。その結果、メールの作成は1時間未満に縮小。ABテストは、件名のみのテストであれば3分で済むなど、大幅な業務効率の改善を実現した。また、アプリの活用状況も一元管理したことで、メールや電話よりもアプリ経由の注文が多いことが判明。アプリのプッシュ通知を開始した。その結果、CV数は1.4倍になり、売り上げの増加につながった。


CRMのよくある失敗例


CRMを導入する際に陥りがちな失敗例を確認しておこう。

1.CRMツールを導入する目的が明確にできていない


どのような目的で導入するのかがあいまいであったり、導入そのものが目的となっていたりすると、ツールを活用しきれずに失敗してしまうことが多い。CRMを導入する際には、まず現状の課題(顧客視点、マーケティング視点、社内視点)を把握し、どのようなゴールを目指すのかを明確にすることが重要である。

2.導入後のフォローや研修が適切に行えていない


CRMをとりあえず導入できても、運用していくうちにさまざまな問題が生まれるもの。しかし、社内でのフォロー体制が整っていないと、問題が解決できずに運用失敗となってしまうことも。CRMツールの導入に当たっては、簡単なマニュアルの作成や、研修の機会を設けるなど、導入後のフォロー体制を整えておく必要がある。また、ベンダー側のサポート体制も確認しておくと安心だ。

3.正しくCRMツールを運用できていない


データを入力する担当者の負担が大きいことや、担当者の技術不足等が原因で、正確なデータベースの構築ができずに失敗してしまうケースもある。導入の際には、人的リソースの確保にも留意し、運用状況の確認やデータチェックを定期的に行うなど、正しく運用できるような対策が必要となる。また、実際にデータを扱う従業員を交えて導入を進めれば、担当者のスキルに左右されない、扱いやすいツールを選定でき、スムーズな運用にもつながる。

4.CRMの評価指標が適切に設定されていない


CRMツール導入後の施策や運用の評価を行わないと、効果を実感できず活用が進まなくなってしまうことも。ツール導入後の効果を可視化できるよう、評価指標を適切に設定することが大切だ。

事例から学ぶCRMの進め方


以上の事例を踏まえ、失敗しないCRMの進め方のポイントを考えていこう。

1.導入の目的を明確にし、共有する


CRMツールを導入する際は、事前準備が大切だ。どのような目的に対してCRMツールを活用したいのかを明確にし、その目的に見合ったツールを選定する必要がある。必要な機能や費用対効果、導入スケジュール等を検討し、慎重にツールの選定を行うようにしたい。また、導入後のスムーズな運用につなげるためには、その目的を部署間で共有し、会社全体で同じ方向を向くことが大切になってくる。CRMツールを利用することのメリットを周知徹底し、社員一人ひとりに目的を理解してもらうことで、より効果的な活用が可能となるだろう。

2.評価指標を適切に設定する


CRMは、目に見えない「顧客満足度」を上げるツールであるため、オンラインマーケティングに活用する際には別の評価指標が必要である。たとえば、解約率や顧客維持率、CVR(コンバージョン率)などの具体的な指標をKPI(重要業績指標)として設定し、施策の効果を可視化する。また、評価指標の設定が適切かどうか、PDCAサイクルを回して検証を繰り返すことも大切である。

3.「顧客実感」を伴ったデータ活用を行う


CRMツールは、マーケティング活動を通して顧客を知るためのツールである。データや数値を意識しすぎるあまり、顧客の顔が見えにくくなってしまっては本末転倒だ。データを適切に活用しつつ「顧客実感」を伴った運用をすることで、シナリオ通りの顧客(ペルソナ)だけではなく、より多くの顧客一人ひとりに合ったアプローチを実現したい。


目的の明確化がCRM成功の鍵


CRMは、膨大な顧客データを一元化し、収集・分析をすることで、顧客を中心とした商品開発や、顧客一人一人に合わせたアプローチを可能にするものである。今やマーケティング戦略には欠かせないツールとなっているが、せっかく導入しても活用しきれず、ただのデータベースとなってしまってはもったいない。ツールの導入そのものを目的にするのではなく、マーケティングにどのように活用するかという目的を明確にすることが大切なのである。そして、目的や業種にマッチしたツールの選定や、全社員にCRMツール導入の目的を周知徹底するなどの事前準備をしっかり行い、施策の効果が表れるまで中長期的な目線で取り組める環境を整えたい。

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