
「CRM」という言葉が提唱され始めてから20年以上。今日では顧客とのコミュニケーションの多くが“対面”から“オンライン”にシフトしているが、そうした変化のなかでもCRMの重要性は変わらないものとなっている。 ここでは、改めてCRMマーケティングについて理解するとともに、そのキーとなる「顧客」について考えてみよう。
目次
- CRMマーケティングとは
- CRMマーケティングで実現できること
- CRMマーケティングが重要性を増した理由
- CRMマーケティングの第一歩は「顧客」を知ること
- CRMマーケティングの施策例
- CRMマーケティングを成功させるには
- CRMマーケティングの成功事例
- CRMマーケティングと顧客との関係性を理解すること
CRMマーケティングとは
CRMとは、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)の略称で、顧客との関係を構築・管理する経営手法、およびマネジメント手法を指す。顧客との関係を管理するためのシステムやツールも「CRM」や「CRMシステム」と呼ばれ、顧客との良好な関係構築のためにこれらを活用する「CRMマーケティング」に取り組む企業が増えている。
CRM提唱の背景
ひと昔前は高品質かつリーズナブルであれば売れた時代で、顧客との対面コミュニケーションでお得意様やニーズを把握していた。しかし現在は消費者による情報収集が容易になり、オンラインショップなど顔の見えない顧客接点が増加。従来の手法が通用しなくなった今、顧客の情報やニーズを細かく把握し、適切なマーケティングで顧客をつなぎとめるための手法として、改めてCRMが注目されている。
CRMマーケティングで実現できること
CRMの代表的な機能には、既存顧客の購買履歴や個人情報など顧客に関する情報を集め一元管理するものや、顧客の動向や満足度を分析するものがある。これらをマーケティングで活用することで、企業に次のようなメリットをもたらす。
1.顧客を把握・理解できる
2.顧客満足度を向上できる
3.リピーターやファンを獲得できる
膨大な情報をもとに顧客分析を行い、顧客一人一人のニーズに応じた商品を効率的に提供していく。企業と顧客双方に利益のある関係性を構築し、顧客との継続的な取引を図るのがCRMマーケティングの最終的な狙いである。
CRMマーケティングが重要性を増した理由
CRMは1990年代頃に米国から紹介された経営手法であり、コンピューターで専用のシステムが作られるようになったのも同時期である。そして最も流行したのは、1990年代の後半から2000年代にかけてという、いわゆる「ITバブル期」だ。しかし、昨今再びCRMの重要性が増し、注目を集めている。
その理由は大きく分けて2つあり、一つが、マーケティング活動に関わるデータ量の飛躍的な増加、そしてもう一つは顧客接点の多様化に伴うコミュニケーション手段の増加だ。
データ活用の重要性は誰もが理解しているものの、顧客のニーズが多様化しデータが急増するなかで、取得可能なデータが膨大になり、データの取捨選択や、分析の作業が追いつかない、そしてPDCAが継続できないといった課題も生じている。また、ツール自体が使いこなせないなど、企業側がテクノロジーの進化についていけていないというケースも少なくないようだ。そしてその結果、データに基づく施策の実行や意思決定を行うことが出来ないというジレンマに陥っている企業が非常に多くなってきている。
CRMマーケティングの第一歩は「顧客」を知ること
このような背景からさまざまなCRMが誕生したが、導入すれば全てうまくいくというわけではない。各社によって内容や価格が異なるのも理由の一つだが、施策の前にまず考えなければならないこと。それは、自社の商品やサービスを販売する対象となる「顧客」である。
その商品が顧客に「選ばれる理由」は何か。それを把握するには、顧客がどのような人物なのかを知る「顧客分析」が必要であり、CRMを活用したマーケティング施策の前提となる。「顧客分析」は、顧客の居住エリアや年齢層、どのチャネルからたどり着いたのか、購入履歴の確認、購入金額の変化など、入手可能なあらゆる情報を集めることが肝心。まずは「顧客」を知ることが、リピーターやファンを獲得するための第一歩と言えよう。
次に、販売データを基に顧客理解における基本的なデータ(年齢、性別、住所、職業、年収など)からざっくりと分類し、これに販売履歴(単価、回数、利用頻度、キャンペーンへの反応など)を当てはめて顧客セグメントを細分化する。この組み合わせによって、顧客像や行動パターンが浮かび上がり、顧客の傾向を掴むきっかけになりうる。大分類→中分類→小分類の3ステップを踏んで分析することで、「顧客」をより深く理解できるのだ。
CRMマーケティングの施策例
それでは、これらのデータを活用したCRMマーケティングの具体的な施策例を見ていこう。
メール配信
メールマガジンやステップメール、購入後のフォローメールなど、顧客に様々なメールを配信するもの。特定のセグメントに対し特定のタイミングで配信するなど、顧客の属性や状態に合わせて適切にアプローチすることがポイントだ。顧客の属性や購買・行動履歴に合わせたおすすめ商品を通知するレコメンドメールは、比較的好意的に受け取られやすい傾向がある。また、多くのCRMツールにはメールの自動配信機能が備わっているため、業務効率化や手動配信によるミスを防止できるメリットもある。
アプリ活用
自社アプリを運用している場合は、アプリを活用した施策も有効だ。CRMツールとアプリを連携させたプッシュ通知やメッセージのセグメント配信など、顧客データを活用したマーケティングが可能になる。こちらもメール配信と同様、顧客セグメントに合わせたパーソナライズなメッセージ配信がポイントとなる。CRMによってはLINEとの連携も可能なため、LINE公式アカウントを運用している場合は検討するといいだろう。
Web接客
ECサイトを訪れた顧客に、ポップアップでセールのお知らせやポイントアップバナーなどを表示するもの。顧客データをもとに表示する内容を変えることで、売上や顧客満足度の向上につなげることができる。一般的なWeb接客はWeb上のリアルタイムな行動をもとにしているものが多いが、顧客データや購買情報をかけ合わせて活用できるCRMを選定すれば、より効果的なWeb接客の実現につながる。
また、リアルな顧客の声を集めたい場合は、Webアンケートの実施もおすすめだ。回答結果をセグメント作成や顧客へのアプローチに活かすことで、施策の精度をより高めることができる。
CRMマーケティングを成功させるには
CRMツールを導入し、価値ある顧客データを収集・蓄積できたとしても、大量のデータに振り回されて真の顧客理解につなげられないのでは意味がない。企業には、CRM活用のための環境を構築すること(データの使える化)、時代に合わせた顧客分析を行うこと(データの見える化)が求められているのだ。
SFA、MAなど他ツールと連携させる
CRMマーケティングにおいて、見込み顧客獲得の営業段階からMA(Marketing Automation/マーケティングオートメーション)やSFA(Sales Force Automation/セールスフォースオートメーション)を用い、作業の自動化・効率化を行うのも効果的である。これらのツールは顧客情報管理という点で共通しており、マーケティングの段階ごとに分けられている。これらを連携させ、一元化した顧客のあらゆるデータを部門の壁を越えて「共有」することは、会社全体で傾向を把握することにつながるからだ。CRMとMAなど複数の機能を併せ持ったツールも存在するので、必要に応じて検討するといいだろう。
CRMマーケティングの成功事例
それでは、CRMの導入で膨大な顧客データの活用に成功した事例を見ていこう。
さくらフォレスト株式会社
さくらフォレスト株式会社は、自社開発の健康食品や化粧品などを扱うECサイト「さくらの森」を運営する企業。同社では「ともに豊かに」というコンセプトを掲げ顧客との関係構築を重視しているが、以前はデータを手動で加工していたために対応が遅く、顧客全体の平均値しかみられない状況であった。しかし、CRM/MAツール「カスタマーリングス」の導入により顧客一人一人を把握できるようになったほか、分析結果から媒体の選別も可能になり、データの裏付けをもとに効果的な施策を立てられるようになったという。
株式会社テレビ東京ダイレクト
株式会社テレビ東京ダイレクトは、テレビ番組内で紹介したお取り寄せグルメを扱うECサイト「虎ノ門市場」を運営している。以前は配信ツールを用いてメールマガジンを配信していたが、リスト作成を手動で行っていたためにミスも多く、全顧客共通のメールマガジンとバースデーメールしか配信できていなかった。しかし、CRM/MAツール「カスタマーリングス」の導入でリスト作成を自動化、メールマガジンをセグメントごとに配信できるようになり、名前入りなど特別感のあるメール施策も合わせることで開封率が30%を超え、売上も向上したという。
また、CRMの事例は以下の記事で業界別に紹介しているので、こちらも参考にしてほしい。
CRMマーケティングと顧客との関係性を理解すること
自社の顧客は一体誰なのか。その属性や傾向を特定できれば、自ずと今後の戦略も明確になってくるものである。CRMとは、データ収集・分析を基に、顧客を中心とした商品開発や、顧客に合わせたアプローチを可能にするもの。しかしながら、大量のデータに振り回されているだけでは無意味である。顧客一人一人と向き合い、その上で、自社に合った適切なCRMの導入方針を考え、CRMマーケティングに活かしたいものだ。
