MA、SFA、CRMの違いとは?役割と機能の違いを徹底解説


Writer:
山崎雄司
  • facebook
  • Twitter
  • LINE

MA、SFA、CRMは、いずれもマーケティングを効率化するための仕組みであり、業務を支援するツールである。マーケティング活動においてカバーする領域はそれぞれ異なるが、役割や機能は重複する部分も多く、混同されやすい。この記事では、MA、SFA、CRMそれぞれのシステムにおける機能の違いや役割、活用のポイントについて解説していく。

目次


1.マーケティングにおけるMA、SFA、CRMの違い
2.MA、SFA、CRMそれぞれの役割と機能
3.MA、SFA、CRM各ツールのどれを導入すべきか
4.MA、SFA、CRM各ツールを連携させるメリット
5.MA、SFA、CRM各ツール連携時の注意点
6.まとめ

マーケティングにおけるMA、SFA、CRMの違い


MA、SFA、CRMの違いは、その目的や対象にあり、マーケティングのフェーズに分けて考えると理解しやすいだろう。
顧客が商品やサービスを購入するまでのプロセスを3つの段階に分けて考えた場合、第一段階は見込み客の発掘と購買意欲の醸成、第二段階は実際の営業活動である商談から受注まで、第三段階は成約後の顧客との関係構築となる。MA、SFA、CRMは、こうしたそれぞれの段階で活躍するシステムであるといえる。


1.MA(Marketing Automation/マーケティングオートメーション)見込み客の発掘と購買意欲の醸成


MAは、マーケティングプロセスの一部を自動化・可視化することで業務効率化をはかるとともに、見込み顧客の育成を受け持つ手法およびツールである。


2.SFA(Sales Force Automation/セールスフォースオートメーション)-営業活動と受注


SFAは、商談の進捗などの営業活動を一元管理することで、個々の業務を可視化し、営業部門の作業を効率化する手法およびツールである。日本語では「営業支援システム」などと訳される。

3.CRM(Customer Relationship Management/カスタマーリレーションシップマネジメント)―成約後の顧客との関係構築


CRMは顧客情報を適切に管理し活用することで、顧客との良好な関係を構築・維持し、長期的に高い利益を生み出す企業体質を作る経営手法のこと。日本語では「顧客管理」「顧客関係管理」などと訳される。

MA、SFA、CRMはそれぞれ目的と対象は異なるが、顧客情報の管理という視点で見れば共通点も多い。これらのツールを連携させて活用することで、部門を越えた情報共有が可能になり、業務の効率化にも役立てることができる。また、CRMMAの機能を併せ持つ統合的なマーケティングツールも存在する。


MA、SFA、CRMそれぞれの役割と機能


MA(マーケティングオートメーション)-顧客育成とデータの抽出・統合


MAの主な役割は、マーケティング施策の実施過程で発生するメール配信やウェブサイト訪問者の分析といったさまざまな単純作業を自動化し、効率化を図ることである。顧客データの統合から始まり、マーケティングの自動化や販促強化に活用できる。たとえばECサイトの閲覧やサンプルの購入など、顧客の行動ごとにシナリオを分岐。こうして数値化された「興味の度合い」をもとに適切なアプローチを行いながら顧客を育成していく。MAによりマーケティング業務を自動化することで、マーケティング担当者はデータの収集や分析、効果測定に注力することができ、新しい施策や改善点の洗い出しなど、より効率的なマーケティング戦略を練るリソースを捻出することができるだろう。


SFA(セールスフォースオートメーション)-営業活動の可視化と情報共有


SFAの主な役割は、属人的になりがちな営業活動を可視化し、担当者以外にも情報を共有することだ。それによって、部門を越えた連携や後続の育成、売り上げ予測や課題の分析など、幅広い分野での活用が期待できるシステムである。
SFAの主な機能は、顧客管理、案件管理、活動管理、予実管理などがあり、商談の開始から受注までを担う。過去の営業活動におけるさまざまな情報をデータ化し、SFA上で一元管理することが可能だ。


CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)-アフターフォローと顧客情報管理


CRMの主な役割は、MAやSFAを通じて獲得した顧客と、長期的によりよい関係を築いていくことだ。CRMツールは顧客の基本情報だけでなく、商談後の成約の可否、その後の購買状況、問い合わせ内容の記録など、顧客の行動履歴を一元管理できる。こうして蓄積された顧客データを多角的に分析することで、顧客一人ひとりに最適なタイミングかつ最適なチャネルでアプローチすることが可能になる。また、顧客自身も気づいていないような潜在ニーズをくみ取ることで、新商品の開発などにも活用できるだろう。さらに、顧客ニーズに合ったアフターフォローを行うことで顧客満足度が上がり、囲い込みやLTVの向上につながる可能性も期待できる。
CRMツールの具体的な機能として、既存顧客のデータ統合をはじめ、優良顧客の属性や行動から逆算する特徴分析が挙げられる。さらに、類似の特徴から優良顧客候補を抽出し、リピートの促進を行うことも可能だ。


MA、SFA、CRM 各ツールのどれを導入すべきか


MA、SFA、CRMはどれも効率的なマーケティング戦略を練るためのシステムだが、前述した通り、それぞれの得意とする分野や管理する情報が異なる。ここでは、それぞれのツールができることを確認していこう。

MA

・見込み客を増やしたい
・商談の数を増やしたい
・マーケティング施策の効果測定に注力したい

上記のような場合はMAの導入が適している。マーケターが施策を設計することができれば、基本的な作業はシステムが自動で行ってくれるため、業務負担が軽減できるだろう。リソースに余裕が生まれる分、効果測定や効率的なマーケティング戦略の立案に集中することができるうえ、人為的なミスの防止にもつながる。

SFA

・営業活動の状況をチームで共有したい
・社内全体で営業業務を改善したい
・商談の成約率を上げたい

上記の場合は、SFAの導入が適している。商談の状況や受注見込み、商談内容の共有といった営業活動を可視化することで、他部署との連携がスムーズになる。たとえば、商談の状況に応じて再度マーケティング部門で戦略を練ったり、関連商品を扱う営業担当者との情報共有によって新たな商談につながったりするなど、個々の営業活動を越えた新しい戦略を見出せる可能性も。また、商談の成功要因と失注原因を分析することで、自社の商品の改善点の発見や人材育成にもつながる。

CRM

・アフターフォローを充実させたい
・継続受注につなげたい

上記のように、獲得後の顧客との良好な関係性の継続を目的とする場合はCRMが適している。顧客の基本情報はもとより、取引内容やコミュニケーション内容の記録、顧客の購買履歴や閲覧履歴などといった行動情報を管理・蓄積することで、セグメントごとに適切なマーケティング活動を行うことが可能になる。また、購入履歴から商品利用の状況も把握できるため、適切なタイミングでのアフターフォローが可能になり、顧客にとっての信頼度向上にもつながるだろう。既存顧客との信頼関係の構築は、継続的で安定的な利益確保のためにも重要である。

このように、それぞれのシステムに得意分野があるため、基本的には自社の目的に合ったシステムを選択することが望ましいが、特にCRMによる顧客情報の管理はMAやSFA運用の基礎となる大切な要素だ。MAやSFAの運用を突き詰めるほど、きめ細やかな顧客情報の把握が欠かせないため、CRMの重要度は高いといえるだろう。

MA、SFA、CRM各ツールを連携させるメリット


各ツールを連携させるメリットとして、以下が考えられる。

・営業活動の効率化
・部門を越えた情報共有
・顧客に応じた最適なアプローチ
・生産性が向上する
・より精度の高い検証ができる
・社内のコミュニケーションが活発化する

それぞれについて詳しくみていこう。

営業活動の効率化

MAとSFAを連携させることにより、見込み顧客の購買意欲を高めた状態で営業部門に引き継ぐことが可能になる。それにより、成約への確度を上げることができる。

部門を越えた情報共有

CRMMAを連携することによって、社内のどの部門からも情報にアクセス可能に。社内での円滑な情報共有が可能になる。

顧客に応じた最適なアプローチ

アフターフォローを得意とするCRMと、営業活動の可視化を可能にするSFAを連携することで、顧客一人ひとりに応じた適切なアプローチにつながる。

生産性が向上する

MA、SFA、CRMを連携することで、顧客一人ひとりの行動履歴が共有されるため、どの部門やどの担当者からアプローチするのが最適かを判断しやすくなる。それにより、スピーディーに成約へ導くことができるようになるため、生産性が向上する。

より精度の高い検証ができる

MAとSFAを連携させることにより、見込み顧客が顧客になるまでのプロセスや、どのくらいの確率で成約につなげられたかを、データで管理できるようになる。これにより、データに基づいたリアルタイムの効果検証が可能になる。

社内のコミュニケーションが活発化する

MA、SFA、CRMの連携により、各部門や各担当者の活動が可視化される。成約に向けて、部門同士のコミュニケーションが活発化することで、顧客一人ひとりに対しても、パーソナライズされたスムーズなアプローチが行えるようになる。

なお、CRMMACRMとSFAといったように複数の領域をカバーできるツールや、オールインワンの機能を備えた製品もあるため、必要に応じて導入の検討をしていきたい。


MA、SFA、CRM各ツール連携時の注意点


前述の通り、MA、SFA、CRMそれぞれの目的と得意分野を活かした連携は、部門の垣根を越えた効果的なマーケティング戦略を可能にしてくれる。ただし、連携する際には注意すべきポイントも。ここでは、各ツール連携前に確認しておきたいポイントを見ていこう。

連携するデータを絞る

各システムは多大な情報を持つため、あれもこれもとすべてを連携してしまうとかえって運用が複雑になってしまったり、システムへの負荷が大きくなったりすることもある。そのため、自社の目的に対して有効活用できるデータを絞り込むことがポイントだ。

データスコアリングを行う

見込み顧客のスコアリングを行っておく。その際、メールの開封率やWebページへの訪問回数、商品の購入回数など、定量的なデータを用いでスコアリングするのが効率的だ。スコアリングを行うことで、どの担当者が見ても、見込み顧客が現在どのようなステータスなのか把握できるため、共通認識を持つことができる。

データクレンジングを行う

連携した際に各ツールの持つデータが重複しないよう、事前にデータクレンジングを行っておく。たとえば顧客の氏名やメールアドレス、所属会社名や部署名を統一したり、不足情報を追加したり、古い情報を更新しておくなど。「株式会社」を「(株)」と表記するか、電話番号にハイフンを付けるか、英語の全角・半角などといった細かな表記ゆれも対象となる。社内で統一した表記ルールを作成しておくとスムーズである。

まとめ


MA、SFA、CRMは、それぞれマーケティングの各フェーズを担う重要なシステムであり、得意とする分野が異なる。そのため、各システムを連携することで、対応できる範囲も広がり、マーケティングの精度や営業活動、業務効率をさらに高めることができるだろう。ツールによっては、他の機能を補完的に搭載しているものや、オールインワンタイプのものもあるため、個別の導入に併せてこうしたシステムも検討したい。
企業活動のDX化が進む昨今、業務の効率化や最適化が重要な課題であることは言うまでもない。それぞれのシステムの特徴を理解し、自社にとって必要なもの、足りないもの、また強化すべき点について課題を明確にし、最適なツールを選びたいものである。

メルマガ登録
  • facebook
  • Twitter
  • LINE