【2024年版】MAツール比較13選 -おすすめのツールや選び方を徹底解説


Writer:
山崎雄司
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デジタルマーケティングの進化と共に、国内外で市場が拡大し、多くのサービスが登場しているMAツール。種類や機能もさまざまであるこのツールを自社で導入する際には、どのような視点で、どのサービスを選べばよいか迷うこともあるだろう。今回は、MAツールの概要から、企業の導入実績の多い主力サービスを紹介し、それぞれの機能および費用面から比較を行っていく。

目次


1.MAツールとは
2.MAツールが注目される背景
3.MAツールのメリット・デメリット
4.MAツールの主な3つの機能
5.最適なMAツールを選ぶ4つのポイント
6.BtoC向けMAツール
 カスタマーリングス
 Marketo Engage
 b→dash
 Synergy!
 Probance
 Aimstar
 Salesforce Marketing Cloud
7.BtoB向けMAツール
 SATORI
 SHANON MARKETING PLATFORM
 Kairos3
 List Finder
 FORCAS
 Hubspot Marketing Hub
8.よくある課題・目的別のおすすめサービス
9.MAツールと連携すると便利なツール
10.MAツール導入までの手順
11.MAツールの導入・運用に関する注意点
12.MAツールの導入事例
13.自社のニーズに合ったMAツールでマーケティング効率を高める

MAツールとは

MA(Marketing Automation、マーケティングオートメーション)とは、マーケティング施策に関する業務を自動化・効率化するための仕組みのことである。それを行うソフトウェアシステムをMAツールと呼ぶ。
見込み顧客を育成するためには、的確なタイミングで一人ひとりに適したアプローチを行うことがポイントとなる。MAツールを導入することで、見込み顧客の情報収集や分析のスピードアップを図れるためそれぞれが求める情報を最適なタイミングで提供でき、効果的なアプローチが可能となる。


MA、SFA、CRMの違い

MAの類似ツールとしてCRM(Customer Relationship Management)やSFA(Sales Force Automation)がある。それぞれの機能や役割は以下の通りである。
SFAは「営業支援システム」などと訳され、営業活動を視覚化し、効率化するためのツールである。顧客情報に基づく営業活動全体をデータベース化することで、営業部門の生産性向上や業務改善を実現する役割を担う。具体的な機能には、「スケジュール管理」「案件管理」「予算管理」などがある。
CRMは「顧客管理」や「顧客関係管理」などと訳され、顧客満足度や信頼度の向上を通し、売上の拡大と収益性の向上を目指すために導入するツールのことである。具体的な機能には、「顧客情報の一元管理」「顧客情報分析」「プロモーション管理」などがある。

つまり、リードの獲得とナーチャリングをMAツールが、既存顧客との関係維持をCRMツールが、商談プロセスの管理をSFAツールが主に担当する。


MAツールが注目される背景

近年のインターネットやスマートフォン、SNSの普及により、消費者の環境や行動が劇的に変化した。以前は、消費者はチラシやテレビCMなどを通して情報を認知し、店舗で商品を購入、その後は電話でのアフターフォローを受けるなど、オフラインでの購買活動が主流だったが、昨今ではWebサイトをはじめ、各種SNS、動画コンテンツ、口コミサイトなど、オンラインを含めたさまざまなチャネルを通して情報収集・比較検討ができるようになった。
このような時代において、企業は一方的に情報を押し付けるのではなく、顧客一人ひとりのニーズに合った質の高い情報を、適切なタイミングで、適切なコンテンツとして届ける“One to Oneマーケティング”を行う必要があり、その実現を期待されるのがMAなのである。

MAの市場規模

株式会社矢野経済研究所によって2023年に行われた国内デジタルマーケティング市場規模調査では、2022年の市場規模が2,828億円と推計された。このデジタルマーケティングの実施に欠かせない、MAを含むCRM、SFAといった各種ツールの市場も拡大が予測され、2026年にはその規模が4,157億円までに上昇するという予測も。
また、以前は予算が潤沢な大企業がMAをはじめとするデジタルマーケティングツールを導入していたが、昨今の業務効率化や、コロナ禍によるリモートワークの普及などにより、中小企業も積極的に導入を開始している。株式会社Nexalの2023年の調査では、コロナ前と比較してMAツールを導入する企業が2倍に増えたというデータもあり、今後ますますMAの市場は拡大していくと思われる。


MAツールのメリット・デメリット

ここでは、MAツールを導入するメリットとデメリットを見ていこう。

メリット

1.データ取得時間の短縮化

MAツールを導入するメリットとしてまず挙げられるのが、さまざまなデータを一元管理することで、必要なデータを迅速に抽出できるようになることである。これにより、スピーディに施策を検討できるほか、単純作業の効率化により生まれた時間で、より生産的で効率的なマーケティング活動に取り組める。

2.属人化からの解放

従来、売上は営業担当の手腕に頼るところが大きく、人材の育成にも時間と労力を要していた。しかしMAツールを導入することで、営業担当に頼らなくてもある程度見込み顧客を育てることが可能となる。関心度が高まっている見込み顧客を見分け、営業部門に引き継ぐことで、営業担当のスキルに左右されることなく商談を成立させることが可能になるため、営業成績の安定化が図れる。

3.One to Oneマーケティングを実現できる

顧客との接点が多様化する現代、顧客一人ひとりの行動を人の手で把握し、整理、分析することは不可能に等しい。MAツールを導入することで、今まで担当者が手作業で行っていた「データ抽出」「レポート作成」「メール配信」といった単純作業を自動化できるため、作業負担が減るだけでなく、顧客一人ひとりに応じた最適なマーケティングアプローチを実施できる。

4.他部門との連携強化

マーケティング部門にとどまらず、営業部門や他部門との連携が容易になることも、MAツール導入の大きなメリットだ。他部門との連携を強化することで、顧客への継続的なアプローチが可能になり、顧客のロイヤリティを高めながらアップセル、クロスセルなどの施策を打てる。

5.見込み顧客 の取りこぼしを防ぐ

MAツールを導入することで、過去に商談まで至らずに放置状態になっていた見込み顧客の管理も容易になる。それにより、中長期的なリードナーチャリングが可能となるため、見込み顧客の取りこぼしを防ぐだけでなく、見込み顧客が他社へ流れるのを防ぐ効果も期待できる。

デメリット

1.効果が出るまで時間がかかる

MAツールは、導入してすぐに効果が出るものではない。導入するまでの準備から運用開始までは半年ほど見積もっておいたほうがよいだろう。また、ツールを使いこなせるようになるには、ベンダーによるサポートも必要だ。導入の際は、フォローアップ体制や勉強会などのアフターケアも考慮してベンダーを選ぶのもよいだろう。

2.社内体制を整える必要がある

導入しても、デジタルマーケティングツールに慣れた担当でないとすぐに使いこなせない場合も想定する必要がある。導入準備の段階から人材の確保をしっかりと行い、運用開始まで人材育成期間も考慮した余裕のあるスケジューリングを心がけたい。ツールを活用していくのはあくまでも人なので、誰がどのような役割を担うのか、運用体制を明確にしておくことがスムーズな活用のポイントとなる。


MAツールの主な3つの機能


1.データ統合機能

顧客情報や購買履歴、アクセスログやアンケート結果、名刺交換やセミナー参加、メルマガ登録などで入手したリードの情報といった、あらゆるデータを統合する機能。MAの基礎となるもので、CSVによる自動取り込みやシステム連携などを用いて統合を行う。これにより、膨大なデータであっても取得・分析しやすい形で一元管理できるようになる。
 

2.データ分析自動化機能

統合されたデータのうち必要なものに素早くアクセスし、各種データを横断した分析を自動化し容易に行う機能である。売上集計や広告効果分析、継続分析のほか、データの種別にとらわれない柔軟な分析が手軽かつスピーディに行えるようになる。

3.シナリオ作成機能

MAで抽出できる顧客の属性や行動に応じて、あらかじめ設定したシナリオに沿ったメールを自動で配信する機能。顧客の属性やランクなどの情報からさまざまなセグメントを作成し、メールを自動配信する。人の手では手間のかかるステップメールなども自動化が可能。

上記以外にも、施策結果のレポート作成機能や、サービス向上に活用できるアンケート機能など、業務効率化と合わせて顧客の育成を行える機能を多数有している。


最適なMAツールを選ぶ4つのポイント

それでは、市場に存在する多くのMAツールの中で、自社に適したツールをどのように選んでいけばいいのだろうか。ここでは、MAツールを選ぶ基準として、4つの重要なポイントを紹介していく。

1.BtoB向けか、BtoC向けか

BtoBとBtoCではマーケティングプロセスがそれぞれ異なるため、自社のビジネスに合わせたツールを選ぶ必要がある。なお、基本的にBtoB(企業向け)のほうがリードは少なく、購入までのプロセスが長いため、継続的なアプローチが求められる。一方、BtoC(個人向け)は一般的にリードが多く、購入までのプロセスが短いといった特長がある。

2.既存システムとの連携

すでに導入済みの関連するシステムとの相性や連携方法、さらに今後併用を検討しているツールがある場合は、それらとの連携が可能か確認しておく必要がある。

3.ツール導入後の運営会社のサポート体制

新たなツールを導入する際には、トラブルが発生することが多い。スタッフがツールの使い方に慣れるまでに時間がかかり、従来のワークフローにも変化をきたすため、現場では混乱が起こりやすいことも背景にある。
また、MAツールには、多機能なものやシンプルなものなど、それぞれに特長や強みがある。そのため、ツールを使いやすいと感じるか、その機能を使いこなすことができるか等について、人によって感じ方は様々だ。
そのため、サポートが充実しているか、ベンダーからの迅速な対応を得られるかどうかを事前に確認することはとても重要だ。新しいしっかりとしたシステムを提供しているベンダーは、しっかりとしたサポート体制も併せて敷いているケースが多い。

4.費用対効果

基本的にツールの導入および運営には費用がかかるが、それに対して得られる効果(リード数やCV、コスト面など)も検証する必要がある。ただ、導入してすぐに結果が出るわけではないため、短期の無料トライアルで安易に判断せず、1年がかりなどで、じっくりと着実に取り組む姿勢を持って検討する必要がある。

BtoC向けMAツール

それでは具体的にMAツールを見ていこう。国内には多くのMAツールが展開しているが、そのなかでおすすめのBtoC向けサービスをピックアップした。

※以下の料金プラン等については、2024年5月時点の情報で記載しているため、実際に検討および利用する際には各社の公式ホームページを要確認。

1.カスタマーリングス

料金プラン

問い合わせ

特長・強み

カスタマーリングスは、CRMおよびMAツールから進化した統合プラットフォームである。ノーコード(プログラミング技術がなくてもWebサイトやアプリを開発できるツール)であるため、手軽にCDP(Customer Data Platform)環境の構築ができ、自由な条件でのセグメントも可能。あらゆる顧客データを統合し、多彩な分析機能によって一人一人の顧客を可視化する。「深い顧客理解=顧客実感」の発想で、着実に推進できる伴走型支援体制が特長である。

2.Marketo Engage

料金プラン

問い合わせ

特長・強み

Marketo Engageは、全世界で5000社以上が導入しているツールだ。顧客行動をクロスチャネル(メール、モバイル、ソーシャルメディア、アクセスログ、営業など)で分析し、コンテンツをパーソナライズして顧客にエンゲージするクロスチャネルエンゲージメントが特長である。また、「ABM(Account-based marketing)」機能を通して最も有望なリード(アカウント)を割り出し、そのアカウントに特化した効果的なアプローチを展開することが可能である。さらに、柔軟にカスタマイズできるアトリビューションモデルを備えており、カスタマージャーニーにおけるさまざまな広告やメディア、展示会などの間接的な効果を測定し可視化することができる。

3.b→dash

料金プラン

問い合わせ

特長・強み

b→dashは、業界初のデータ統合テクノロジー「Data Palette」によって、ノープログラミングで、誰でも簡単に、GUI(画面操作)でCDPを構築できるのが特長である。また、データ統合基盤「b→dash CDP」で、マーケティングプロセスにおける全てのデータをひとつに集約・連携できる。さらに、BIやLINE連携など18の機能が搭載されているので、使いたい機能を自由にカスタマイズできるのもポイントだ。

4.Synergy!

料金プラン

月額費用:15,000円〜
初期費用:118,000円

特長・強み

Synergy!は、必要な機能を厳選することで、操作性が良く使いやすい画面デザインを実現。セキュリティも堅牢で、外部からの防護はもちろん、データ持ち出しを防ぐ機能も有しており、安心して個人情報を扱うことができる。また、顧客満足度90%の充実したサポート体制であり、電話のつながりやすさは95%以上。メールも24時間受け付けており、サポートサイトも充実している。トラブルの対応のみでなく無償の操作セミナーも開催している。

5.Probance

料金プラン

月額費用:180,000円~
初期費用:500,000円
初期導入コンサルティング費用:問い合わせ

特長・強み

Probanceは、フランスに本社を置くプロバンス社により開発されたMAツール。AI(機械学習)を搭載しているのが特長だ。膨大なデータの中から、その顧客にとって有益な情報のみをピックアップし、最適なタイミングで提供することができる。さらに、購買履歴やクーポン利用履歴、ポイント履歴などの膨大な顧客データを取得・統合でき、Tableauなどの外部システムとの連携も可能だ。

6.Aimstar

料金プラン

問い合わせ

特長・強み

Aimstar(エイムスター)は、業務ノウハウを含む100種類以上のデータ分析、ターゲティングテンプレートを搭載していることが特長だ。フローチャート形式で、キャンペーン条件を視覚化し自動で実行することが可能。さらに、機械学習ターゲティングによって、プログラミング知識不要でターゲットの抽出もできる。ひとつのツールでデータの取得・統合からシナリオ実行、効果検証まで実行可能であり、高速にPDCAサイクルを回すことが可能。CSチームによる伴走運用支援を受けることができる。

7.Salesforce Marketing Cloud

料金プラン

問い合わせ

特長・強み

顧客管理ソリューションで知られるセールスフォース・ドットコムが提供する、BtoC向けのMAツールSalesforce Marketing Cloud。日本語と英語による表示が可能で、海外に支社を持つ企業に向いている。機能が充実している分、使いこなすためには一定の知識が必要なため、中級者向けのツールといえるだろう。価格は要問合せとなっている。

BtoB向けMAツール

続いて、BtoB向けの代表的なMAツールを見ていこう。

※以下の料金プラン等については、2024年5月時点の情報で記載しているため、実際に検討および利用する際には各社の公式ホームページを要確認。

1.SATORI

料金プラン

月額費用:148,000円(税別)
初期費用:300,000円(税別)~

特長・強み

SATORIはリードジェネレーションに強く、実名リードだけでなく匿名リードのデータも一元管理できるのが特長だ。また、スコアリングやHotリード抽出といったリードクオリフィケーション機能も搭載。純国産MAツールであり、オンラインサポートや利活用セミナーの開催など、サポート体制も充実している。

2.SHANON MARKETING PLATFORM

料金プラン

月額費用:120,000円(税別)~

特長・強み

SHANON MARKETING PLATFORMは、顧客管理からリードナーチャリングまで、メールマーケティングを中心に実行するツールだ。もともとイベントやセミナー管理に特化したシステム「スマートセミナー」を開発しており、それを改良および拡張したプラットフォームである。導入企業の99%がこのツールの利用を継続しており、Salesforceとの資本提携も行っている。

3.Kairos3

料金プラン

月額費用:16,000円(税別)〜
初期費用:10,000円(税別)

特長・強み

Kairos3は、商談につながりやすい顧客を抽出し営業活動を支援するMA/SFAツールである。MAとSFAの連携によってマーケティングと営業をシームレスにつなぎ、フォロー漏れを防ぐことが可能だ。初期費用はたったの1万円と、マーケティングオートメーションの基本的な機能は網羅しつつ、低価格で導入可能。専任スタッフによる充実したサポートも受けられる。

4.List Finder

料金プラン

月額費用:
フリープラン 0円
ライト 39,800円
スタンダード 59,800円
プレミアム 79,800円

初期費用:
フリープラン 0円
ライト/スタンダード/プレミアム 100,000円

特長・強み

List Finderとは、上場企業シェアNo.1の国産MAであり、国内で1,800アカウント以上の導入実績がある。BtoBに必要な機能に特化したシンプルさが特長だ。月額費用が0円のフリープランがあり、有料プランも3万円台から使えるため、スモールスタートにも最適。導入後半年間は、担当のコンサルタントによる無料の伴走支援があり、その後は不具合対応などのカスタマーサポートが受けられる。

5.FORCAS

料金プラン

問い合わせ

特長・強み

FORCASは、豊富な企業データベースによる高精度なターゲティングが特長である。約150万社の企業データから、成約確度の高いターゲットリストを作成することが可能。また、企業リストをアップロードするだけで自動的に名寄せが実行され、顧客データを統合する。約300種類のオリジナルのシナリオや560以上の独自の業界区分、1,500種類以上の利用サービスタグなどの豊富な企業属性データを付与し、自動的に解析する。

6.Hubspot Marketing Hub

料金プラン

月額費用:
無料ツール 0円
Starter Customer Platform 1,800円~
Marketing Hub Starter 1,800円~
Marketing Hub Professional 96,000円~
Marketing Hub Enterprise 432,000円~

特長・強み

HubSpot, Inc.が提供し、120ヶ国以上で導入されているHubspot Marketing Hubは、BtoCとBtoBの両方に対応したMAツールである。BtoB企業で比較的多く導入されており、インバウンドマーケティング向けの機能が豊富だが、高度な知識が求められる点には注意。無料版を含め、ニーズに合わせて5種類のプランから選ぶことができる。

よくある課題・目的別のおすすめサービス

主要なMAツールを紹介してきたが、どのサービスも似たような部分も多く、違いが分かりにくい場合もあるだろう。そこで、ここでは、よくある利用シーン別に、どのサービスがおすすめかを考えていく。

BtoC向け

・「誰でも」「すぐに」必要なデータを準備でき、やりたい施策をワンストップで実現したい。
→『カスタマーリングス

・AIを活用した施策検討を行いたい。
→『Probance

・運用支援やサポート体制が整っているサービスを導入したい。
→『Synergy!

BtoB向け

・イベントやセミナーを通じた顧客コミュニケーションを活発に行っている。
→『SHANON MARKETING PLATFORM

・企業情報を活用した精度の高いターゲティングを行いたい。
→『FORCAS

MAツールと連携すると便利なツール

MAツールはそれ単体でも十分効果を発揮するものだが、関連する他のツールを連携することで、より効率的なマーケティングの実現が可能になる。また、MAツール側にそれぞれ機能を包含しているものもあるので、システムに期待する要件から、全ての機能をMAツールに保持せず、外部ツールと連携させることでトータルで効果を創出していくという考え方もある。
それぞれ具体的な連携方法とメリットを見ていこう。

データベース系ツールと連携

MAツールと連携することが多いデータベース系ツールは、CRMやSFA、CDP(Customer Data Platform)、DMP(Data Management Platform)など、顧客情報管理に利用されるものがほとんどだ。MAツールと連携し分析することで、アプローチの優先順位をより明確にできるなど、施策の効率性アップが期待できる。また、オンラインデータとオフラインデータを紐付けて効果の測定をすることも可能となる。

チャネル系ツールと連携

MAツールと連携するチャネル系ツールは、デジタル広告プラットフォームやLINE、チャットボット、ダイレクトメールなど、顧客とのコミュニケーションに利用されるものだ。MAツールとの連携によって、メールとそれ以外のチャネルとを組み合わせたマルチチャネルでのシナリオ設計が可能になることが最大の利点だ。また、チャネル上での行動履歴を把握し、ブラウザを問わず横断的にユーザーの閲覧状況を追跡・分析できる。

業務効率化系ツールと連携

業務効率化系ツールは、データの抽出や加工を行うBIツールや、Slackのようなコミュニケーションツールがある。MAツールとの連携によって作業効率アップを図ることが出来、PDCAサイクルの加速化を促すことにつながる。また、顧客情報の共有もよりスムーズになり、マーケティングの精度向上につながる。

MAツール導入までの手順


1.課題の確認

ツールを導入する前に、自社の現状を把握し、課題を明確化する。データの統合ができていない、データの抽出に時間がかかるといった具体的な課題を認識する。

2.目的の設定

洗い出した課題に対し、優先度を整理し、導入の目的を明確にする。最終目標となる売上金額などを定めるKGI(重要目標達成指標)と、商談数や成約数といった中間目標となるKPI(主要業績評価指標)を設定する。

3.必要な機能の確認

優先度の高い課題を解決するために必要な機能を精査する。運用体制構築のための社内調整や見込み顧客リストの整理、想定するシナリオの設計などを行う。

4.ベンダーの選定

精査した機能の有無を柱とし、予算やベンダーによるフォローアップ体制などを確認。競合他社や近い業種の導入実績を確認するのも選定のヒントになるだろう。

5.社内準備

MAツールの運用体制を整える。特にマーケティング部門と営業部門との連携を綿密に行い、役割分担を明確にしておく。同時に、メール配信やHPへのCTAの設置、コンテンツ作成などの施策を準備。コンテンツの作成などは完成までに時間を有する場合もあるため、運用開始から逆算してスケジュールを組んでおく。

6.運用開始

運用開始時には、データ連携やツールの実装、操作の練習や動作確認などを実施。運用が始まってからは定期的にPDCAを回しながら、問題があれば、業務フローの修正や設定の最適化などを行い、運用の改善を図っていく。

MAツールの導入・運用に関する注意点

MAツールは導入するだけで効果が出るものではない。しっかりと、目的をもって運用していくことが重要になる。ここでは、企業がMAツールを運用する際にどのような点を考慮するべきかを整理していく。

1.セキュリティ

MAツールにおけるセキュリティ対策は、特に注意すべき事項だろう。ツールのセキュリティ機能が万全であっても、人為的ミスによって個人情報が漏洩する危険性がある。これを防ぐために、まずログインIDとパスワードを厳重に管理しなければならない。簡単なパスワードを避け、定期的にパスワードを変更するなどの対策が必要である。
また、個人情報を取り扱う企業にはプライバシーポリシーの制定が義務付けられており、関連法律(個人情報保護法や特定電子メール法)は必ず確認しておきたい。
このほか、なりすましメール対策として、あらかじめSPF(Sender Policy Framework)と、DKIM(DomainKeys Identified Mail)の設定をしておくとよいだろう。

2.導入目的の明確化

MAツールは種類が多く、機能や特長も異なる。まずは、自社のニーズにマッチした機能をもつツールを見極めることが大切だ。そのため、MAツールを導入する際には、目的を整理し明確化する必要がある。導入自体が目的となってしまうと、運用の目標が定まらず、効果を検証し改善していくPDCAサイクルが機能しない可能性も。自社でなぜMAツールの導入が必要なのか、そして達成したい目標を具体的な数値として明確にするなど、事前にしっかり整理しておくとよい。

3.MAの運用体制を整備・構築する

MAツールの機能をより効果的に活用するためには、運用体制の構築が鍵となる。MAツールの運用に伴い、さまざまな業務が発生するため、人的リソースの確保は必要不可欠だ。また、運用前にMAツールの細かい設定・設計(スコアリングの設定など)を行うことも重要である。

MAツールの導入事例


株式会社J-オイルミルズ


油脂を中心にさまざまな商品を展開するJ-オイルミルズは、お客様の声の収集およびリソース不足解消のため、MAツールを導入した。
導入後は、Google Analyticsや受注管理システムからデータをダウンロードして再計算していた作業をダッシュボードで対応。また、週に3本、手動で運用していた顧客へのステップメールの業務が自動化されたことで、週に2時間程度はリソースが削減でき、他の作業に時間をあてられるようになった。さらに、リピート率やLTVなど、データを定常的に見られるようになり、新たな施策を考える余裕も生まれた。
具体的には、アンケートによる定性データ取得で送料への課題を把握し、お試し商品による検証でCPOが33%改善。そのほか、分析結果から購買頻度が想定と異なることが分かり、顧客フォローの重要性を認識するとともに施策強化を進めている。

2.株式会社テレビ東京ダイレクト


株式会社テレビ東京ダイレクトは、テレビ番組で紹介した商品を購入できるECサイト「虎ノ門市場」などを運営する企業。メールマガジンのセグメント配信がしづらい、手作業が必要でミスが多発するなどの課題からツールを導入した。それによって手作業を自動化できるようになったほか、リストの自動化でさまざまなセグメントを作成可能に。先行販売とそれに絡めた施策を実施した結果、売上が昨年同月比で最大170%増加したという。

3.株式会社ブイキューブ


株式会社ブイキューブは、ビジュアルコミュニケーションサービスを通じて「働き方改革」を支援する企業だ。商談化や受注に関してどの施策がどの程度貢献しているかを可視化できておらず、リードの確度や投資効果が不明なことが課題であった。MAツール導入後は、施策やマーケティングの効果を可視化できるようになったほか、営業部門とマーケティング部門が共通の認識を持てるようになり、結果として獲得リード数は2倍、新規顧客は単価1.65倍になったという。

自社のニーズに合ったMAツールでマーケティング効率を高める

ここまで紹介してきたように、MAツールは、機能や特長の異なるサービスが市場に多く存在している。BtoB向けのツールなのか、BtoC向けなのか、既存システムとの相性はどうか、分析機能やサポート体制は充実しているかなど、それぞれのツールの特徴をしっかり見極めることが重要になるだろう。ツールを導入する際は、自社の営業およびマーケティングにおける課題を洗い出し、その課題を解決するにはどのような機能が必要か、という点を考えながら自社に最適なMAツールを検討したいものである。

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