MA(マーケティングオートメーション)とは?基礎や機能、導入方法を解説


Writer:
山崎雄司
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MA(マーケティングオートメーション)とは、マーケティング施策に関する業務を自動化・効率化するための仕組みやツールのこと。あらゆるデータを統合し、顧客一人ひとりに対する効果的なアプローチを実現できるため、顧客育成の面でも活用されている。本記事では、デジタル時代を生き抜くために必要なMAの基礎知識についておさらいしていく。

目次


1.MA(マーケティングオートメーション)とは
2.MA(マーケティングオートメーション)が必要となった背景
3.MA(マーケティングオートメーション)の主な機能
4.MA(マーケティングオートメーション)導入のメリット
5.MA(マーケティングオートメーション)導入時の注意点
6.BtoC・BtoBにおけるMA(マーケティングオートメーション)導入目的の違い
7.MA(マーケティングオートメーション)で設定すべきKPI・KGI
8.MA(マーケティングオートメーション)とCRM、SFAの違い
9.MA(マーケティングオートメーション)の選び方
10.主なMA(マーケティングオートメーション)ツールの紹介
11.MA(マーケティングオートメーション)のシナリオの設計手順
12.MA(マーケティングオートメーション)の導入スケジュール
13.MA(マーケティングオートメーション)運用時の課題と解決策
14.MA(マーケティングオートメーション)の導入事例
15.デジタル時代を生き抜きMA(マーケティングオートメーション)を活用するために

MA(マーケティングオートメーション)とは


オートメーションとは日本語で“自動化”のこと。企業のマーケティングを“自動化”するのがMAの役割である。つまり、マーケティング施策の実施過程で発生するメール配信やウェブサイト訪問者の分析といったさまざまな単純作業を自動化し、効率化を図るためのシステムだ。

MA導入の目的は、業界によってさまざまである。例えば、ECサイトであれば購入顧客に対するフォローアップによる顧客育成、アパレルであれば実店舗とECを併用したキャンペーンによる購買頻度の向上などだ。いずれの業界においても、MAを活用することで顧客と個別にコミュニケーションを取ることが可能になるため、顧客ロイヤリティの向上が見込める。

MA(マーケティングオートメーション)が必要となった背景


では、なぜMAが必要になったのか。その理由をBtoC・BtoB別に見ていこう。

1. BtoC MAの背景


1つ目は、顧客が接するチャネルの多様化に対応するためだ。インターネットやSNSの普及により、顧客が商品やサービスを購入する前に自ら情報を集めることが可能になった。それに伴い、企業が対応すべきコンタクトチャネルも増加している。たとえばDM・はがき・イベントのようなリアルなものから、メール・ウェブ・SNS・アプリといったオンラインのものまで顧客との接点は多岐に渡る。しかもそれがさまざまなデバイスにて行われているのだ。2つ目は、多様で膨大なデータを用いたマーケティングを簡素化するためである。以前はすべての消費者に対して同じ手法で行われるマスマーケティングが主流だったが、現在では顧客一人一人に役に立つ情報を、適切なタイミングで、最適なコンテンツとして届ける“One to Oneマーケティング”を行う必要がある。顧客一人一人のニーズを把握し、個々人に合わせたアプローチが不可欠となった今、その実現を期待されるのがMAなのである。


2. BtoB MAの背景


1つ目は、見込み顧客が少なく購買に至るまでの期間が長いためだ。BtoBでは企業を相手にするのでリードの総数が少ない上、社内の意思決定が絡むので購買検討時間も長い。そのため、BtoBでは少ないリードに対して適切なマーケティングを継続的かつ効率的に行う必要があるのだ。BtoCと比べてリピート率も高いので、顧客一人一人を大切にすることも重要になってくる。2つ目は、アプローチの手法が時代と共に変化しつつあるためだ。BtoBではこれまで営業による情報提供が主流だったが、現在はどの企業でも事前にWeb上で情報収集を行うことが普通になった。現在でも営業によるアプローチは行われているが、顧客が営業と接する前に商品やサービスのリサーチを終えていることも多い。自社製品を認知し検討してもらうためにも、MAを用いた効果的なマーケティングが必要とされているのだ。


MA(マーケティングオートメーション)の主な機能


MAツールには、業務効率化や顧客育成を行うための機能が多数備わっている。その主な機能をBtoC・BtoB別に見ていこう。

BtoC MAの機能


1. データ統合機能
顧客情報や購買履歴、アクセスログやアンケート結果などのあらゆるデータを統合する。MAの基礎となるもので、csvによる自動取り込みやシステム連携などを用いて統合を行う。これにより、膨大なデータであっても取得・分析しやすい形で一元管理できるようになる。
の基礎ともなりうるだろう。

2. データ分析自動化機能
統合されたデータのうち必要なものに素早くアクセスし、各種データを横断した分析を自動化し容易に行う機能である。売上集計や広告効果分析、継続分析のほか、データの種別にとらわれない柔軟な分析が手軽かつスピーディに行えるようになる。

3. マーケティング自動化機能
顧客の属性やランクなどの情報から様々なセグメントを作成し、メールを自動配信する機能。人の手では手間のかかるステップメールなども自動化できる。上記以外にも、施策結果のレポート作成機能やサービス向上に活用できるアンケート機能など、業務効率化と合わせて顧客の育成が行える機能を多数有している。

BtoB MAの機能


1. フォーム作成機能
商品・サービスに関する問合せや資料のダウンロード、セミナーの申し込みなどを行えるフォームをWebサイト上に作成する機能。これにより申込者(リード)の名前や企業名、メールアドレスなどのプロフィールがMAのデータベースに記録される。また、Webページやホワイトペーパーなどのコンテンツ作成機能が付属しているサービスも存在する。

2. リード管理機能
フォームなどを通じて獲得したリードの情報を管理する機能。行動履歴を参照できるほか、レポーティング機能が付属しているものも多く、マーケティングに役立てることができる。ひとつの企業に対して複数のリードがある場合でも、企業単位で管理できるとより便利である。

3. スコアリング機能
リードの行動や属性をスコアリングし、見込み顧客の選別を行う機能。資料のダウンロードであれば5点、セミナー参加者であれば10点といったようにスコアを設定することで、リードの興味関心度合いを可視化できる。上記以外にも、メールを自動化するメール配信機能や見込み顧客ごとに異なるアプローチを可能にするシナリオ機能など、マーケティングを効率的かつ効果的にするための機能を多数有している。

MA(マーケティングオートメーション)導入のメリット


それでは、MA(マーケティングオートメーション)のメリットを具体的に見ていこう。

1.データ取得時間の短縮化
MAツールを導入するメリットとしてまず挙げられるのが、ビッグデータを一元管理することで、見たいデータを迅速に抽出できるようになることである。これにより、スピーディに施策を検討できるほか、単純作業の効率化により生まれた時間でより生産的で効率的なマーケティング活動に取り組める。

2.属人化からの解放
従来、売上は営業担当の手腕に頼るところが大きく、人材の育成にも時間と労力を要していた。しかしMAツールを導入することで、営業担当に頼らなくてもある程度見込み顧客を育てることが可能となる。関心度が高まっている見込み顧客を見分け、営業部門に引き継ぐことで、営業担当の手腕に大きく左右されることなく商談を成立させることが可能になる。たとえ新人の営業担当でも、成約につなげやすくなれば、全体の営業成績の安定化が図れる。

3. 作業負担の軽減
チャネルが多様化する現代、顧客一人ひとりの行動を人の手で把握し、整理、分析することは不可能に等しい。MAツールを導入することで、今まで手作業で行っていた「データ抽出」「レポート作成」「メール配信」といった単純作業を自動化できるため、マーケティング担当者の作業負担が減り、よりクリエイティブなマーケティング活動へ時間を充てられるようになる。

4.他部門との連携強化
マーケティング部門にとどまらず、営業部門や他部門との連携が容易になることも、MAツール導入の大きなメリット。他部門との連携を強化することで、顧客への継続的なアプローチが可能になり、顧客のロイヤリティを高めながらアップセル、クロスセルなどの施策を打てる。

5.見込み顧客 の取りこぼしを防ぐ
MAツールを導入することで、過去に商談まで至らずに放置状態になっていた見込み顧客の管理も容易になる。それにより、中長期的なリードナーチャリングが可能となるため、見込み顧客の取りこぼしを防ぐだけでなく、見込み顧客が他社へ流れるのを防ぐ効果も期待できる。

6.優先度の高い見込み顧客を判別できる
MAツールにより、見込み顧客の細かな動きも把握ができるようになるため、彼らの興味や関心度に応じた細やかなアプローチが可能になる。そして、ホットリードになったタイミングで営業部門と連携すると、成約の確度が高まるため、効率的な営業活動にもつながる。

MA(マーケティングオートメーション)導入時の注意点


それでは、MA(マーケティングオートメーション)導入時の注意点を具体的に見ていこう。

1. 効果が出るまで時間がかかる
オートメーション(自動化)の言葉から受ける印象もあり誤解されやすいが、注意点として押さえておきたいのが、MAツールを導入したからといってすぐに効果が出るものではないという点だ。導入までの準備もあるため、運用開始までは半年ほど見積もっておいたほうがよいだろう。

2. 人材を確保する必要がある
ツールによっては、マーケティング未経験者ではうまく扱えない場合もあるため、経験者を確保するほか、人材育成期間も考慮した余裕のあるスケジューリングを心がけたい。ツールを使いこなすのはあくまでも人なので、誰がどのような役割を担うのか、運用体制を明確にしておくことが上手な活用のポイントとなる。

3. 導入後のアップデートが必須
ただMAツールを導入して終わりではなく、その後も定期的なアップデートが必要となる。ツールの機能を使いこなせず無駄にしてしまわないためにも、導入後の担当者によるサポート体制なども確認しておくことが大切だ。


BtoC・BtoBにおけるMA(マーケティングオートメーション)導入目的の違い


MAはBtoCとBtoBのいずれも内包した用語であるが、その目的や内容には違いがある。

BtoCにおいては、上図のように主に販促強化や作業の効率化を目的に活用される。例えば、商品サンプルの購入者に対して経過日数ごとにメールを自動送信し、その後購入したかどうかなどでシナリオを分岐させ、それを元に施策を組み立てていく。BtoCはBtoBと比較して顧客数が非常に多く、メールやSNSなどのコンタクトチャネルも多様化しているので、人力では効率的な運用が難しい。そのため、顧客ごとに最適なシナリオを設計しながら効率化が行えるMAが注目されているのだ。一方BtoBにおいては、主にリードナーチャリングを目的に活用される。過去の取引や契約内容などを顧客データに紐付けてセグメント分けを行ったうえで、行動履歴に応じたスコアリングを設定し、適切なコンテンツを提供し続けることで見込み顧客を育成する。BtoBはBtoCと比較して検討期間が長く継続的な情報提供が必要なため、顧客の興味度合いをスコアリングで「見える化」することが重要になるのだ。

MA(マーケティングオートメーション)で設定すべきKPI・KGI


MAツールは導入して終わりではなく、目標設定と効果検証を繰り返して運用を改善していくことで徐々にその効果を発揮する。そこで必要となるのが、目標の達成度合いを計るためのKPIとKGIだ。それぞれについて解説する。

1.KPI
KPIはKey Performance Indicatorの略で、日本語に訳すと「主要業績評価指標」となる。目標達成までの中間地点であり、複数設定されることが多い。BtoCの場合はアクセス数や申込数、メールマーケティングであれば到達数や開封数などが設定される。たとえば、メールの開封率が思うように伸びない場合は、配信スケジュールを調整したり、配信対象を絞ったり、件名を工夫したりといった調整をしながら、改善していくことができるだろう。BtoBの場合は資料ダウンロード数や獲得したメールアドレス数、セミナーであればその申込数や参加者数などが設定される。

2.KGI
KGIはKey Goal Indicatorの略で、日本語に訳すと「重要目標達成指標」となる。こちらは最終目標であり、売上や販売数などが設定される。このKGIを達成するための中間地点として、KPIが用いられる。BtoCの場合は購入数やフォロワー数、BtoBの場合はリード獲得数や商談化率などが設定される。最終ゴールとなるKGIだけを設定したのでは、なぜその結果になったのかという過程が不明瞭で、正しい評価を行うことができない。どの部分がボトルネックになっているのか、また、成果が出た場合にはどの部分が効果的であったかなどの知見を蓄積することで、その後の施策の精度は大きく変わってくる。社内やチームの方向性を統一しやすいというメリットもあるため、KPIとKGIは必ず設定するようにしたい。

MA(マーケティングオートメーション)とCRM、SFAの違い


MAを正しく活用するために、CRMやSFAについても理解しておこう。MAの類似ツールとして挙げられることも多いCRMやSFAは、MAとは異なる特徴を持っている。これらは、顧客データを統合し活用しやすくするMA、効率的な営業を支援するSFA、獲得した顧客情報を管理するCRMというように、マーケティングの段階に応じて使い分けられる。

1. MAによるデータ統合と顧客育成


MAは顧客データの統合から始まり、マーケティングの自動化や販促強化にも活用される。ECサイトの閲覧やサンプルの購入など顧客の行動ごとにシナリオを分岐させ、数値化された興味の度合いをもとに適切なアプローチを行い、顧客を育成していく。

2. SFAによる営業活動の効率化


SFAは、営業に関する情報を可視化することで、効率的な営業活動を支援するツール。顧客管理、案件管理、活動管理、予実管理などの機能があり、商談の開始から受注までを担う。

3. CRMによる顧客関係の向上


CRMは、顧客との関係を構築・管理するためのツールである。顧客満足度やロイヤリティの向上を通してリピーターを獲得し、顧客と企業の双方にメリットをもたらす。MAやSFAを通じて獲得した顧客と、長期的かつよりよい関係を築くために活用される。どのツールも情報をデータベース化して業務の最適化を図る点は似ているが、得意とする領域はそれぞれ異なる。マーケティングの初期からデータを統合し活用しやすい形で管理するMAは、その後のステップであるSFAやCRMをより効果的に行うため


MA(マーケティングオートメーション)の選び方


MAツールは多数存在し、ベンダーごとに異なる特徴を持っている。自社に適したツールを選定するためには、まず自社が抱える課題を整理し、MAツールによってどのような問題点を解決したいかを明らかにしたい。そのうえで、次に挙げるポイントを押さえながら検討していこう。

1. BtoC向けかBtoB向けか


MAツールは、BtoC向けかBtoB向けかによって搭載する機能に違いがある。この点は最も重要なポイントとして最初に確認しておきたい。たとえばBtoC企業では、「顧客の膨大なデータを管理できるか」「多数のチャネルに対応・連携できるか」「顧客行動の分析機能があるか」などがポイントになるだろう。一方、BtoB企業は「リードナーチャリング機能が充実しているか」「SFA(営業支援ツール)との連携ができるか」「問い合わせフォームなどのコンテンツ作成ができるか」といった点が求められる。

2. システム連携の可否


自社で使用している既存のシステムと連携できるか、またはCSVでのデータ取り込みに対応しているかなどを確認する。データの連携や移行には工数がかかることも多く、うまく移行できないと余計な手間がかかる可能性も。MAツールを自社のシステムと完全に連携するのか、一部を連携するのか、連携せずに併用するのかなど、MAツール導入後の既存システムの使い方も確認しておこう。

3. サポートの有無


MAツールを使いこなすにはマーケティングの高度な知識が必要となるため、当然サポートやコンサルティングサービスの有無も重要になってくる。運用が軌道に乗るまでは、細かな疑問点が生じる可能性が高いため、チャットサービスやメールなどのサポート体制を整えているか確認しておくと安心だ。なお最近では、MAツールの運用サポートやコンサルティングを専門とする外部企業も増えている。

4. 自社のリソースと合っているか


高機能なMAツールを導入しても、使いこなすための知識やスキルと、運用し続けるリソースがなければ、MAの効果を引き出すことは難しい。高価格帯のサービスほど高度な知識が必要な傾向があるので、自社のリソースが十分に確保できない場合は、使い勝手のよい初心者向けのシンプルなMAツールから始めるのも一つの方法だろう。


主なMA(マーケティングオートメーション)ツールの紹介


ここでは、いくつかの代表的なツールを紹介する。それぞれの特徴や適性を把握し、自社に合ったツールを選定するための参考にしてほしい。

1.カスタマーリングス



株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供するカスタマーリングスは、ECやBtoCに特化した顧客実感型マーケティングプラットフォームである。あらゆるデータを連携でき、顧客管理から分析・施策に至るまでツール一つで完結させることが可能だ。導入・運用支援のほか、オンライン勉強会の開催、専任担当者によるきめ細やかな支援など、サポート面が充実しているのも特徴。価格は要問合せとなっている。

2.アクティブコアマーケティングクラウド



株式会社アクティブコアが提供するアクティブコアマーケティングクラウドは、BtoC向けの統合型マーケティングプラットフォームである。データ統合から効果検証までワンプラットフォームで統合管理できるほか、さまざまな業種に合わせた顧客専用のプライベートDMPを構築可能。価格は要問合せとなっている。。

3.Aimstar



株式会社 GROWTH VERSEが提供するaimstarは、One on Oneマーケティングのキャンペーン管理に強みを持つBtoC向けのMAツールである。大規模データ、マルチチャネル連携に対応し、すぐに活用できる分析テンプレート群や業種ごとのシナリオプリセットが用意されている。価格は要問合せとなっている。

4.Oracle Eloqua Marketing Automation



日本オラクル株式会社が提供するOracle Eloqua Marketing Automationは、BtoCとBtoBの両方に対応したMAツールである。BtoC向けのソリューションも提供しているが、BtoB向けのサービスが多数で、高度なリードスコアリングやセグメント分けが可能。上級者向けのため、社内にエンジニアを持つ企業に適している。価格は要問合せとなっている。

5.Kairos3 Marketing



カイロスマーケティング株式会社が提供するKairos3 Marketingは、BtoB向けの国産MAツールである。分析機能はやや少ないものの、マーケティングと営業に必要な機能が一通り備わっており、初心者でも使いやすいことが特徴。価格は基本月額費用が16,000円からとなっている。

6.SATORI



SATORI株式会社が提供するSATORIは、BtoCとBtoBの両方に対応した国産MAツールである。BtoB企業で比較的多く導入されており、リード獲得に役立つ機能やリードナーチャリング機能を多数備える。専門スタッフによるオンライン・オフラインサポートに加え、セミナー動画やユーザー会の開催といった運用支援サポートが充実。価格は初期費用が300,000円、月額費用が148,000円からとなっている。

7.SHANON MARKETING PLATFORM



株式会社シャノンが提供するSHANON MARKETING PLATFORMは、BtoB向けのMAツールである。リアル・オンライン問わずイベントマーケティングに適しているのが特徴で、セミナー管理機能も備わっているが、分析機能がない点には注意。価格は月額120,000円からとなっている。

8.Salesforce Marketing Cloud



顧客管理ソリューションで知られるセールスフォース・ドットコムが提供するSalesforce Marketing Cloudは、BtoC向けのMAツールである。日本語と英語による表示が可能で、海外に支社を持つ企業に向いている。機能が充実している分、使いこなすためには一定の知識が必要なため、中級者向けのツールといえるだろう。価格は要問合せとなっている。

9.Salesforce Marketing Cloud Account Engagement



Salesforce Marketing Cloudのうち、BtoB向けのMAツールをセットにしたサービスがMarketing Cloud Account Engagementである。もともとPardotという製品名で提供されていたが、2022年4月に名称が変更された。Salesforceを導入済みの企業と相性がよく連携しやすいのが特徴だが、基本的に英語で構成されている。価格は月額150,000円からとなっている。

10.Hubspot Marketing Hub



HubSpot, Inc.が提供し、120ヶ国以上で導入されているHubspot Marketing Hubは、BtoCとBtoBの両方に対応したMAツールである。BtoB企業で比較的多く導入されており、インバウンドマーケティング向けの機能が豊富だが、高度な知識が求められる点には注意。無料版を含め、ニーズに合わせて4種類のプランから選ぶことができる。

11.b→dash



株式会社データXが提供するb→dashは、誰でも操作できるプロダクト」がコンセプトの、BtoCとBtoBの両方に対応した国産MAツールである。イラストを用いたわかりやすいUIが特徴で、SQLを使わずノーコードで簡単に操作できるのが特徴。初心者向けでありながら必要に応じて各種機能を追加可能だが、結果的に費用が高額になりやすい傾向がある。価格は要問合せとなっている。

12.Marketo Engage



Adobe株式会社の提供するMarketo Engageは、BtoCとBtoBの両方に対応したMAツールである。専用のスマートフォン向けアプリでメールキャンペーンの効果をいつでも確認できるほか、導入・活用に関するサポートも充実しており、コンサルティングサービスや有償トレーニングなども用意されている。ジェネレーティブAIの利用で、より効率的な活用が可能。価格は要問合せとなっている。

13.List Finder



株式会社Innovation X Solutionsが提供するList Finderは、BtoB向けの国産MAツールである。初めてMAを導入する場合でもわかりやすく誰でも簡単に操作でき、サポートが充実しているのが特徴だ。価格は、無料で利用できるフリープランのほか、有料プランが初期費用100,000円、月額費用39,800円からとなっている。


MA(マーケティングオートメーション)のシナリオの設計手順


それでは、MAツールを用いてどのような順序でシナリオを設計していくかについて、具体例とともに見ていこう。まず、マーケティング施策を策定する際は、従来のような“経験と勘に頼ったマーケティング”にならないよう、データの統合が不可欠だ。科学的なマーケティングを行うためには、手元に統合されたデータが揃っていること、かつ見たいデータを手軽に参照・抽出できる環境が重要である。下図のように、統合したデータを元にさまざまな条件でセグメントを作成し、このセグメントに対して自動でメールを配信することがMAの第一歩。たとえば生年月日のデータがあれば「誕生日の○日前」というセグメントを作成し、メールの自動配信を組み合わせて“シナリオ”に進化させていくことでMAを加速させることができるかもしれない。



さらに成果を上げるには、顧客の「行動」「タイミング」「購入履歴」「嗜好」に合わせることが重要だ。健康食品企業が、サンプルを購入した顧客に段階的にアプローチする例を見てみよう。サンプル購入時に入手した顧客データを元に、発送翌日には届いたかを確認するメールを送信。3日後には成分についての説明メールを送信し、その後段階的に販促キャンペーンを行う(行動)。また、ポイントの利用を促したり、顧客の誕生日前に割引のメールを送ったりする(タイミング)。さらにVIP向けのシークレットセールを開催し、しばらく購入していない顧客は購入を促す(購入履歴)。そして購入動機や利用目的、生活スタイルに合わせてさらに別の商品を勧める(嗜好)。このようなメールを送るには、対象者の条件を作って抽出し、配信ソフトに登録し、コンテンツを入れ込んでテスト配信し、送信する、という膨大な作業が必要だ。また、メール送信によって得られるメルマガごとの開封率、クリック率、コンバージョン率などさまざまなデータ分析にも専門知識と人手が必要になるだろう。これまでも述べた通り、MAは、“ルーティンワークの自動化”を可能にするツールだ。メール送信に至っては完全な自動化も可能である。データ分析に関しても、それ自体に時間や人手を取られることがなくなり、PDCAサイクルの高速化が期待できるだろう。このようにMAの導入は、データ取得時間の短縮化や、属人化からの解放、さらには作業負担の軽減が期待されるのである。


MA(マーケティングオートメーション)の導入スケジュール


MAを導入する際は、検討から運用開始まで6ヶ月ほどの期間をみておきたい。具体的には、次のような流れを想定しておくとよいだろう。

1ヶ月目:課題を認識する


自社の現状を確認し、どのような課題を抱えているかを洗い出す。例えば、データの抽出に時間がかかっている、業務が属人化している、顧客が増えて対応に追われているなど、現状と課題をしっかり認識することが重要。

2ヶ月目:目的を明確にする


課題が複数ある場合は優先度を設定し、MAツールで何を行うか、どんな施策を実施するかを具体的に決めていく。また、MAによる工数削減は第一目的ではなく副次的効果である点に留意し、適切なKPIとKGIを設定する。例えばBtoCであればKPIはメールの到達率や申込数、KGIは売上や販売数など、BtoBであればKPIは資料ダウンロード数や獲得メールアドレス数、KGIはリード獲得数や商談化数などだ。

3ヶ月目:要件を定義する


データ設計のための見込み顧客リスト精査、想定するシナリオの設計、MAツールで課題を解決するために必要な機能の精査、運用体制構築のための社内調整などを行う。特にBtoBの場合は営業部門との協力が重要になるため、担当者や役割分担についてもしっかり決めるようにしたい。

4ヶ月目:業者を選定する


予算と必要な機能を基準に、最適なツールを選定する。自社の事業と近い業種の実績があればなおよい。効果的な運用のために、コンサルタントを検討するのもひとつの手である。

5ヶ月目:運用体制の確立


MA導入後の運用体制の準備を行い、基本的な顧客分析やメール配信、申込みフォームの設置やコンテンツ配信などの施策を開始する。ダウンロード資料などのコンテンツを新規で制作する場合は、その制作期間もしっかり考慮する必要があるだろう。また、MAの運用には人的コストがかかるため、必要に応じてアウトソースも検討したい。

6ヶ月目:MAツールの導入


データの連携やツールの実装、テスト環境を用いた運用・操作トレーニング、MAツールのアクション確認などを行う。運用開始後はPDCAを回し、運用の改善を図る。

MA(マーケティングオートメーション)運用時の課題と解決策


MAは導入しただけで効果が出るものではないため、どのように運用していくかが重要なポイントとなる。ここでは、MAの運用で陥りやすい課題をピックアップし、解説していく。

1.どのようなコンテンツを配信すればよいかわからない


コンテンツ配信は継続的に行うことに意味があるため、回数を重ねるごとにその内容に悩んでしまうという声は少なくない。このような場合、商品・サービスに関心を持つユーザーや購入者から寄せられる意見・問い合わせをもとにしたQ&A集を作成するほか、自社製品に関するこだわりや開発の裏話などを掲載するのもひとつの手だ。顧客視点で物事を考え、どのような情報が求められているかを考えるようにするとよいだろう。

2.コンテンツ数が不足している


Webサイトの情報を充実させ、定期的にアップデートすることでSEO対策を図る。それにより、Webサイトへの見込み顧客の流入が増え、フォームへの回答やメルマガの登録といったアクションにつながり、リードの獲得に至る可能性が高まる。しかし、そもそもコンテンツが不足していると、こうしたリードを取り逃してしまうだろう。なお、コンテンツの充実とともに、訪問者がアクションしやすいサイト作りも心がけたい。

3.MAを扱うための知識やスキルが不足している


MAツールは誰でも扱える簡単なものからエンジニアのような上級者向けのものまで多数存在するため、導入検討の時点で自社の人材やスキルについて精査しておくことが非常に重要だ。自社の人材やスキルにやや不安がある場合は、サポートが充実しているサービスを選定するのがよいだろう。また、定期的に講習会を開催して担当者のスキルアップを目指すほか、社内でナレッジを共有することも効果的である。

4.機能が使いこなせない


あれもこれもと多種多様な機能をつけると、リソースや担当者のスキルが追い付かず、結局一部の機能しか使っていないという事態に陥ることも。比較的機能が多いといわれる外資系のツールは、もともと専任の担当者が複数人で管理することを想定して開発されているため、小規模な企業の場合、逆に負荷になる可能性がある。導入前の段階で、自社のリソースや保有するリード数にマッチしたツールかどうかを見極めることが大切だ。

5.保有リードが不足している


MAを導入する場合は、目安として10,000前後のリード数が必要だといわれている。母数が足りない場合は、まず営業担当者が保有する名刺や、過去のイベント出席者などの個人情報を集める。それでも足りない場合は、積極的にカンファレンスに参加したりイベントを開催したりするなどして、リードの母数を増やしていこう。

MA(マーケティングオートメーション)の導入事例


最後に、MAの導入に成功した国内事業者の事例を紹介する。

1.株式会社J-オイルミルズ(BtoC)



製油業界の大手3社が合併して誕生したJ-オイルミルズは、慢性的なリソース不足が課題であった。自社ECを顧客の貴重な意見が聞けるプラットフォームとして活用していたが、従来のスタイルでは顧客のリアルな声を拾うことが難しく、そのためのリソースも不足していたことから、MAツール「カスタマーリングス」を導入。それにより、手動で行われていたステップメールを自動化し、リソース不足の改善に成功した。顧客の声を収集するための購入者アンケートも設置し、アンケートを軸に複数のデータを横断して分析することで、自社ECのサービス向上を実現。アンケートで浮き彫りになった課題を解決することで、CPOが約33%改善されたという。MAの主な利点に、ルーティンワークの自動化とビッグデータの最適化がある。ステップメールもほぼ自動化できるため、顧客数の多いBtoCでは特に効率化しやすいポイントだ。多くのデータを収集してもデータの加工や再計算には手間がかり、従来の方法では根本的な解決に繋がらないことも多いが、MAツールを用いて複数のデータをダッシュボード化すれば、必要なデータを迅速に参照できるようになる。MAはその性質上即座に効果が出るものではないが、業務の効率化やデータの最適化は長く続けるほどその効果が雪だるま式に蓄積されていくため、得られるメリットは大きいといえる。


2.株式会社ブイキューブ(BtoB)


株式会社ブイキューブは、ビジュアルコミュニケーションサービスを通じて「働き方改革」を支援する企業だ。商談化や受注に関してどの施策がどの程度貢献しているかを可視化できておらず、リードの確度や投資効果が不明なことが課題であったことから、「Hubspot Marketing Hub」を導入。それにより施策やマーケティングの効果を可視化できるようになったほか、営業部門とマーケティング部門が共通の認識を持てるようになり、結果として獲得リード数は2倍、新規顧客は単価1.65倍になったという。BtoBにおけるMAの主な利点に、リードの管理とスコアリングによる興味関心度合いの可視化がある。従来のマーケティングでは施策の効果がわかりづらく、見込み顧客を獲得できたとしても次のアクションに移るまでに長い時間がかかり、費用対効果も下がってしまう。MAを用いてリードをしっかりと管理し、スコアをもとに顧客視点で適切な施策を実施することは、効率的に新規顧客を獲得するためにも必要不可欠といえるだろう。


デジタル時代を生き抜きMA(マーケティングオートメーション)を活用するために


MAの基礎知識について、改めておさらいしてきたが、全体像をご理解いただけただろうか。BtoCであれば、膨大な情報量の中で顧客にしっかりと見つけてもらい、ファンになってもらう。BtoBであれば、Webマーケティングと併せて獲得したリードとその興味関心度合いを把握し、適切なアプローチを行う。どちらにも共通しているのは、MAの基本である「経験と勘に頼らず、しっかりとしたファクトをもとにマーケティング活用を行っていく」ということではないだろうか。

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