MAの最新事例からみるトレンドと、各社の取り組みの方向性


Writer:
山崎雄司
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消費行動のオンラインシフトに伴い、顧客がオンライン上で行うアクションに伴う膨大な顧客データが、企業側に蓄積されつつある。そして多くの企業は、顧客体験を高めるために、顧客一人一人に合わせたマーケティング手法である「One to One マーケティング」を進めており、MA(マーケティングオートメーション)を活用する企業が増えてきている。今回は、MAの最新のトレンドと活用事例を取り上げ、企業・ブランドとしてどのようなポイントを考慮して活用していくべきかを考えていく。

MA(マーケティングオートメーション)を取り巻く状況


「MA元年」といわれた2014年ごろから、日本でMAの認知度が上がり、導入事例が増えていった。そして、企業を取り巻く社会環境の変化やデジタル環境、テクノロジーの進歩から、MAによるマーケティング活動の重要性はさらに高まり、現在は事業成長になくてはならないツールとなっている。
さらに、コロナ禍を経て顧客の購買行動がオンラインにシフトしつつあるため、オンラインデータも充実してきている。このような背景から、デジタルツールを利用したマーケティングへの取り組みはますます加速している。
株式会社矢野経済研究所の調査によると、2021年のMAの国内市場規模は前年比約110%の600億円となる見込みであり、今後も拡大傾向が続くとみられている。

MA活用事例


ここからは、国内におけるMA活用の最新事例を紹介しよう。

1.株式会社キャリアカレッジジャパン


通信教育サービス「資格のキャリカレ」を運営するキャリアカレッジジャパンでは、基幹システムから月次でデータを抽出し、定量データの分析を行っていた。その分析方法では、まず資料請求者と受講者を紐付ける作業が必要だったため、やむなく月に1回のデータ抽出となり、分析に時間がかかっていた。システムスタッフの手も介する必要があり、課題に気づくタイミングも遅れて柔軟な分析を行うことができていなかった。
また、資料請求者に対するメール配信は行っていたが、リスト作成や顧客の学習状況や受講講座をもとにした配信内容の作成に手間がかかり、改善作業が進んでいなかった。
ツール導入後は、講座軸だけでなく人を軸にした分析(新規申込者数やリピート顧客人数、申込周期)がすぐにできるようになり、データの抽出作業が削減された。また、ステップメールの配信を自動化し、セグメント配信も可能になったため、添削課題の提出期限の案内や、修了者に絞った特別価格での案内などを自動的に配信している。さらにLINE配信も開始し、より最適なタイミングでメッセージを届けることを目指している。
その結果、受講生の講座修了率が導入前と比べて120%に向上。コロナ禍による資格業界全体の活性化も影響し、2021年3月決算期は前期比176%の売上高を達成した。

参考:カスタマーリングスの導入で、講座の修了率が120%にUP!

2.サンスター株式会社


オーラルケア用品や健康食品、化粧品などを幅広く展開するサンスターでは、費用対効果の観点から、新規顧客獲得の入り口を新聞広告等の紙媒体メインからオンライン比率アップへの切り替えを進めてきた。
ツール導入前は、ECカートなどのシステムから、担当者が都度データを出力してExcelなどで分析していたが、不定期にデータを確認していたため、顧客の状況をリアルタイムに理解できていなかった。さらに、キャンペーン施策中心のマーケティングであったことやプッシュ型のマーケティング施策のみであったこと、メルマガ等の施策を外部委託で行っていたことなど、いくつかの課題を抱えていた。
ツール導入後は、施策の自動化が図れたことで、工数をかけずタイムリーに顧客との接点強化を実現。また、従来のセグメントメールやLINE活用のハードルが解消され、顧客のチャネル間の動きを可視化したことで、顧客の行動に合わせた接点を構築できた。

参考:データ活用基盤の構築と、高速PDCAを回転させる内製化運用を実現した、サンスターの顧客視点マーケティング

3.株式会社TAT


ネイル用品の専門商社であるTATでは、アンケートや定量データを自分たちで抽出・加工していたため、かなりの手間がかかるうえに柔軟な分析ができていなかった。メール配信も、キャンペーン案内を中心とした一斉配信が中心で、定期配信やセグメント配信も行っていなかった。
ツール導入後は、分析時間が減少し、顧客ごとの平均購入周期を効率的に把握できるように。顧客一人ひとりに最適なタイミングでメール等のアクションを起こすことが可能になった。また、ポイント失効や会員ランク切れ、平均周期切れ、クーポン未利用者に対してシナリオを組み、メルマガとLINEを併用したタイムリーなアプローチを行い、離脱率が10%改善された。

参考:LINEとメールを併用した、きめ細かなシナリオ設計による顧客体験価値向上と、メーカーとの共創マーケティングの実践

4.さくらフォレスト株式会社


オリジナルの健康食品などの通信販売を手掛けるさくらフォレストでは、ECサイトを中心にオンライン、オフライン双方での販売を展開している。
ツール導入前は、基幹システムからCSVデータを抽出し、Excel等で集計して手動でデータ加工を行っていたため、分析、レポートに最大1.5ヶ月かかっていた。また、会報誌にお客様アンケートハガキを同封していたものの、回答者がどの商品をどのぐらい購入しているかは把握できず、回答者の顧客属性調査に時間を割いていた。
ツール導入後は、誰でもタイムリーにデータの把握が可能に。顧客属性も把握できるようになったため、属性に応じた商品別の施策考案や再販率の強化、クロスメディア施策、休眠施策のゴールデンルートの確立などを実施している。

参考:分析の工数削減と顧客の見える化を実現。全社横断で取り組む“ともに豊かに”を目指したデータ活用

5.株式会社J-オイルミルズ


油脂を中心にさまざまな商品を展開するJ-オイルミルズは、お客様の声の収集およびリソース不足解消のため、MAツールを導入した。
導入後は、Google Analyticsや受注管理システムからデータをダウンロードして再計算していた作業をダッシュボードで対応。また、週に3本、手動で運用していた顧客へのステップメールの業務が自動化されたことで、週に2時間程度はリソースが削減でき、他の作業に時間を当てられるようになった。さらに、リピート率やLTVなど、データを定常的に見られるようになり、新たな施策を考える余裕も生まれた。
具体的には、アンケートによる定性データ取得で送料への課題を把握し、お試し商品による検証でCPOが33%改善。そのほか、分析結果から購買頻度が想定と異なることが分かり、顧客フォローの重要性を認識するとともに施策強化を進めている。

参考:定量+定性データを活用したCRMへの取り組みとカスタマーリングス導入の成果

最新事例から見る取り組みの特徴


これらの国内の最新事例から、MAを活用することでどのようなメリットがあるのだろうか。4つのポイントで整理していく。

担当者の負担を軽減

文字通り、業務をオートメーション化することが可能なMAは、担当者の負担を大きく軽減することが可能だ。分析やかゆいところに手の届くことが求められるきめ細やかな施策の実施など、これまで手動で行ってきたマーケティング業務の一部を自動化したことで、作業工数の削減につながり、担当者の負担が軽減された。

顧客ごとの施策の検討に時間をかけられるように

これまで、メールの一斉配信のようなプッシュ型のアプローチしかできていないケースが多かった。MAの導入により、多角的な視点での分析が可能になり、セグメント配信や顧客との接点強化など、顧客一人一人に合わせた効果的なアプローチの実施を検討することが可能になっている。

よりきめ細やかなアプローチ方法に改善

担当者の負担が軽減され、施策の検討に時間をかけられるようになり、一斉配信のような一括の施策だけでなく、かゆいところに手の届くようなタイミングやセグメントに対するメール配信も可能になった。また、メールだけでなく、LINEも併用するなど、より顧客のライフスタイルに合ったタイムリーなアプローチも可能となっている。

顧客の動きや属性をタイムリーに把握できるように

MAによって、顧客の消費行動をリアルタイムに集約し分析することが可能になる。そのため、まさに今この瞬間の顧客のアクションを起点にマーケティング施策を行うことも不可能ではなくなっている。そのため顧客の高度に合わせた柔軟かつリアルタイム性の高い施策の実施が可能となっている。

MAを使いこなし、より良い顧客体験の提供を


消費者とのタッチポイントが多様化し、より良い顧客体験の実現のためにはOne to Oneマーケティングが不可欠となっている。しかし、顧客とコミュニケーションを取るとなると、どうしてもプッシュ型・一括型のマーケティング施策になりがちで、これを煩わしいと思う顧客が多いのも事実だ。
そこで、これまで手つかずであった見込み顧客の行動を可視化し、顧客ごとの興味や関心に合った最適なマーケティング施策を展開する必要がある。それを実現するツールの一つが、今回紹介したMAだ。
しかしMAは、導入すればすぐに効果が出るものではない。MAを効果的に活用するためには、その仕組みを理解し、部署の隔たりを超え、組織全体で目的や課題を共有、PDCAサイクルを回し続けることが重要である。


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