データ活用基盤の構築と、高速PDCAを回転させる内製化運用を実現した、サンスターの顧客視点マーケティング


Writer:
山崎雄司
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スイスにグローバル本社を構え、世界18カ国に拠点を持ちながら、90カ国以上に製品やサービスの提供を行うサンスターグループ。歯ブラシをはじめとしたオーラルケアのイメージが強い同社だが、実は健康食品や化粧品も取り扱っており、中でも野菜の力でコレステロールを下げる健康飲料「緑でサラナ」は、発売以来40~60代を中心に支持され続けている。

オーラルケアのみならず
ECでは健康食品や化粧品の展開も

同社では、「お口の健康から全身の健康」、「健康寿命の延伸への貢献」といった企業ミッションを掲げており、店頭でのオーラルケアに重きを置いたラインナップに加え、ECにおいては直接配送のメリットを活かした、家庭で取り入れていただきたい美と健康に関するラインナップが特徴になっているという。

サンスターが、自社ECサイト「サンスター公式オンラインショップ」でお客様にダイレクトに販売するDtoCを始めたのは2003年頃。もともと健康のメソッドをお客様に還元できればという想いがあり、ダイレクトにお客様に情報を届けることを目的に、当時まだ珍しかったDtoCでの事業を開始した。当初は緑黄色野菜や青汁などの商品を新聞広告で展開、2010年頃に現在の主力商品である「緑でサラナ」を発売し、その後徐々に通販事業が注目されるようになった。

WEB広告やECサイトなどのデジタル施策の運用・拡大を行うダイレクト営業部の野原氏は、現状と課題についてこう話す。

「弊社のECは既存のお客様に支えられているビジネスモデルなので、その方たちのロイヤリティ改善(LTV向上)が非常に重要になってきます。新規のお客様を獲得する場面においては緑でサラナが好調に推移していますが、こちらもロイヤリティ改善がやはり重要な課題です」

同社では現在、費用対効果の観点から、新規顧客獲得の入口を新聞広告等の紙媒体メインから、オンライン比率アップへの切り替えを進めている。野原氏は「WEB顧客獲得のコストをいかに下げるか、またWEB 入口のお客様のLTVをいかに上げるかがポイントで、収益性を高めるという意味でもWEBは最も重要な位置付けとして捉えている」と話す。

ECではオーラルケアに加え、美と健康に関するラインナップを展開している

お客様のリアルな動きが
理解できていなかった導入以前

「緑でサラナ」を発売して以降、広告に対するお客様の反応は好調だったことで、新規のお客様が増え、事業そのものは伸びていたという。「緑でサラナ」は特定保健用食品だが、「当時の世の中の流れとしても、コレステロールに関する機能を持ったトクホの商品がユニークだったのでは」と森氏は話す。しかし最近では似たような商品も多く、しかも飲料ではなくサプリメントで補うという消費者側の生活スタイルの変化もあり、今までのやり方を変えなければいけないと感じ始めるようになっていたという。

同社は2017年にカスタマーリングスを導入したが、導入前まではECカートなどのシステムからデータを出力してExcelなどで分析していた。不定期にデータを確認していたため、顧客の状況をリアルタイムに理解できていなかった。また、分析手法においても、顧客属性と購買情報の集計が中心であり、顧客理解の解像度が上がらず、ナレッジの蓄積が課題としてあったという。「ECにおいてはRFM分析などがよく用いられますが、データ分析に関しては担当がその都度分析を実施していました。リアルタイムのお客様の動向を把握できていなかったことで、お客様に対して適切なアクションを起こせていなかったのが最大の課題」と森氏は話す。

導入前はキャンペーン施策を中心に実施しており、購買データを基にした施策を柔軟に実行できる環境になかった。一方通行のプッシュ型のマーケティングのみを実施しており、そこも大きな課題として感じていたという。メルマガ等の施策も少なからずやっていたが、外部委託だったため社内にナレッジが溜まりくい。内製化しなくてはという強い課題感は感じていたが、費用面や運用面、どれだけそこにリソースを割けるかということを考えた時に、それらのハードルを簡単に超えるツールや環境に巡り会えていなかった。

そんな中で出会ったのが、カスタマーリングスだったという。

「カスタマーリングスは、費用もリーズナブルで機能的にも簡単に触りやすく、数々のハードルを越えてきてくれました。新聞広告からWEBにシフトし注力していく中で、頑張らなくてはという話になってきた時にちょうど巡り会えたツールです。時期的には、WEBへのシフト以外に、プッシュ型のマーケティングからお客様の声を傾聴するプル型のマーケティングに移行していった頃でした。情勢的にも駆り立てられていた時期だったと思います」

現在の主力商品「緑でサラナ」をはじめとする健康食品

最大の成果はCRMのシナリオ設計を
自由にできるようになったこと

カスタマーリングス導入後の最大の成果は、新規顧客とのコミュニケーション、CRMのシナリオ設計を自分たちがやりたいようにできたことだという。たとえば、同じような飲料タイプの健康食品でも、人によってモチベーションが違えば生活への取り込み方も変わってくる。そうなると、CRMのシナリオを変えていく必要があるが、そこが今ではうまく反映できるようになり、商品や顧客のセグメントごとに購入後のアクションに様々なパターンがあるということをしっかり理解し、CRMのマーケティングを行うことが出来ている。

「当時は仮説としてこう使われるだろうというのがありましたが、実際に中身を見ていくといい意味で裏切られたというか。商品/セグメント別での購買パターンが理解できるようになって、お客様によって違うということを発見できました。考えているだけではダメで、今はまずはお客様に聞いてみるということが出来る環境がありがたいですね。それまで柔軟にPDCAを回せるシステム環境ではなかったので、セグメントメールやLINE活用のハードルも高かったのですが、導入後はLINEでしか情報を届けられないお客様がいることも再認識できました(森氏)」

「カスタマーリングスというツール1つで、LINEやメールといった顧客接点間のお客様の行き来がある程度可視化できるようになったわけです。どれだけ重複があるかというのも可視化できているので、メールもLINEも見てくれている方がいることを知れるなど、発見があったことは良かったですね(野原氏)」

ちなみに、LINEではテキストと画像のどちらを先に送るかを商品ごとに分け、同時並行で走らせることでABテストを行っているという。トライ&エラーでブラッシュアップしていっているわけだが、森氏は「そういったたくさんの施策を柔軟に組み合わせられるのも、カスタマーリングスの恩恵を受けているところ」と話す。

分析結果からは「一度決めたCRM施策でも、時代に合わせて継続的に変えていくことが必要だということが見えてきている」と野原氏は話す。新規顧客に向けたCRM施策の中では、入口でどの程度のお客様にお買い上げいただけるかを指標として見ている。さらにそこから、モニターアンケートの回答率や本品を購入するまでのコンバージョン率を追う。たとえ数字が落ちても、どこに課題があるかがある程度分かるため、そこをCRM施策に反映させているという。

同社ではアンケートメールでの顧客調査も行っているが、レビューから対象者を絞り込むと工数がかかってしまうため、現在はカスタマーリングスを使って絞り込みを行っている。野原氏は「そのような流れでアンケートができるようになったのはかなり楽になった」と話す。もちろん定量的なデータだけを見るPDCAの回し方は効率的で売上にも直結するが、今はお客様の理解を深めることが施策を考えるうえで重要という気づきからアンケートの回答率を高めるという点にフォーカスしてPDCAを回しているという。

既存のお客様に対しては、2019年から2020年にかけて、かご落ちメール配信、口コミ依頼のメール配信、バースデーメール配信など、様々な施策を実施していったという同社。LINEは2020年から配信を始めたが、これまでは新規のお客様での活用を最優先にしていたため、既存のお客様に対するコミュニケーションではボリュームを抑えてきた。LINEはメールに比べてメッセージも端的になるので、カスタマーリングスを使ったセグメント配信を行い的確な情報をお伝えすることで、メールの一斉配信よりもレスポンスが高くなることを期待して取り組んでいる最中だそうだ。

「LINE配信によりお買い上げをいただけるといった成果は出ているが、よりお客様に選んでいただけるような改善はまだまだできると思っています。また、お買い上げいただけたことに加えて施策の自動化が図れたことで、工数をかけずタイムリーにお客様との接点強化ができたことも成果と考えています(野原氏)」

同社の取り組みとしてユニークなのは、既存のお客様に対するこれらの施策の効果をロイヤリティ(定性指標)で計っているということだ。通常、クリック率とコンバージョン率で計るEC事業者が多い中、これは珍しいのではないだろうか。

「現場の施策を行う上ではコンバージョン率の測定も行いますが、ロイヤリティを計る上で細分化すると「一人あたりの訪問回数×口コミ数×回遊性」が重要になります。弊社のお客様は定期購入の方が大半ですが、長く定期購入を続けてくれている方のロイヤリティが高いとは限りません。継続的に弊社とコミュニケーションが取れているか?を把握しなければロイヤリティが計れず、解約された時に初めてお客様の課題に気づくことになります。そのため、先行指標としてその方がどれだけサイトを訪問されているか、口コミを書いていただけたか、どんなメールを見ていただけたかということまで確認ができると、その方のロイヤリティが可視化できる。あらゆるタッチポイントでのお客様の行動を横断的に把握していくのがベストだと思っています(野原氏)」

なお、ロイヤリティはNPSと併せて分析中だという。NPSに関しては「2020年夏に基準値となるNPSスコアを取得したので、いかに今後の取り組みで改善できるかをチャレンジしている過程です」と野原氏。

数字以外で導入によって得られた変化については「これまで外部に委託していたメール施策が内製化できたことは非常に大きい」と森氏は話す。内製化したことで簡単にデータを見られるようになり、そこから効果検証、設計と、迅速に次のアクションに繋げることができるようになった。また、カスタマーリングスの管理画面を見ればあらゆる数値を把握できるため、デジタルマーケティングに携わるスタッフ全員のデータに対する意識が上がったという。これまで社内ではコンバージョン率を中心に話をする機会が多かったが、細かな数値で議論することが増えたそうだ。ハードルが高いと思って言わずにきたことも、今はメンバーから自然と声が上がる。顧客への想いが、次々と具現化される環境が整った。

「今後は、お客様の嗜好の多様化が進む中で、新しい商品の開発だけでなく、これまでのお客様とのコミュニケーションをより細分化し、One to Oneマーケティングという領域により昇華していかないといけない」と考えている。その前段階として、「CDP的なインフラを整えることでデータ活用を容易にすることで、お客様の理解を深めていきたい。また、お客様の行動をデータで把握できるデジタルマーケティングのメリットを活かしお客様に向き合い、お客様視点で利便性向上につながるような取り組みを強化していくことで、より喜んでいただける、より受け入れていただける事業へと進化を続けていきたいと考えている」と森氏、野原氏の両氏は話す。

通常は、CDPを導入することなど手段の方を目的化しがちだが、サンスターではお客様と末永くお付き合いするというぶれない軸がある点がユニークなポイントではないだろうか。

最後に弊社のカスタマーサクセスについて「レスポンスが早く課題解決が迅速で、さらにやりたいことに対してどうすれば実現できるかをご提案いただけるのは本当に助かります(森氏)」「一般的なベンダーさんであれば、コンサル料金がかかりそうなことまでしっかり具体的な話をしてくださる。我々もすぐにご相談できる環境があるので、やりたい施策についても頻繁に話が出るようになりましたし、PDCAが早くなっている理由の1つではないかと思います(野原氏)」というお褒めのコメントもいただいた。

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