デジタル時代の「優良顧客」の定義と、その分析方法 ー データから顧客を“実感”する大切さ


Writer:
山崎雄司
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「優良顧客」というキーワードは、かなり以前から健全な企業経営のために重要なものだとされてきた。しかし、デジタルマーケティング全盛となった今、「優良顧客」の定義はどのように変わってきているのだろうか。あなたの会社にとっての「優良顧客」とは現代において一体誰のことを指すのか。その定義について明確に答えられる人は多くはないのではないだろうか。そこで今回は、デジタル時代の「優良顧客」の定義について考え、それをどのように“実感”し共有していくか、を考えていきたい。

デジタル時代における優良顧客の定義


一般的に「優良顧客」というと、「購入額の大きい顧客」や「来店回数の多い顧客」などとされてきた。しかしデジタル時代においてはその定義は少し広まっている。例えば、口コミを積極的に投稿する顧客や、インフルエンサーと呼ばれるような多くのフォロワーを有する、SNS上で影響力のある顧客を「優良顧客」と呼ぶこともある。またデータ分析の傾向から、購入の可能性が高いとされる「見込み顧客」を含むケースも増えてきた。つまり、短期的に売上を作る顧客だけでなく、広い視点で売上に貢献してくれる可能性の高い、またはリピート率が高い、自社に利益をもたらす顧客のことを「優良顧客」と定義できるようになってきた。この背景にはマーケティングに関わるデータが大量に蓄積出来るようになってきたことが影響している。しかし、このデジタル時代の「優良顧客」は明確に定義することは難しいのも事実だ。提供する商品やサービスによって、また企業の状況などにより、どのような顧客を「優良」と定義するかはケースバイケースとなるからだ。
 

なぜ優良顧客を定義するのか


オンラインマーケティングにおいて効率的に成果を上げるには、顧客のタイプに合わせてアプローチを変えていく必要がある。なかでも、継続的に売上に貢献している「優良顧客」に対しては、適切なタイミング、チャネル、商品、コンテンツ等を用い、大勢ではなくあたかも個人に対して行うようにアプローチすることが必要不可欠だ。見込み顧客や、初めて購入に至った顧客と同じアプローチをリピーターに対し行っても、結果には結びつきにくい。逆もまた然り。このように、顧客に応じて効果的なアプローチを見極めるために、「優良顧客」を定義づけることが重要になってくるのである。

例えば、EC事業者では、購買回数や累計購入金額に応じて顧客をランク分けし、上位ランクの顧客を「優良顧客」と定義し、彼らに特典を提供する「ロイヤリティプログラム」を導入している企業も増えている。
 

優良顧客を見つけるためにどのような顧客分析をするべきか


それでは、どのように優良顧客を見極めるための分析を行えばよいのだろうか。ここでは、いくつかの方法を紹介していこう。

デシル分析


デシルはラテン語で10等分という意味。その名の通り、購買履歴から顧客を購入金額の高い順に10等分し、各グループの購入比率や売上比率を算出するという手法で、顧客分析においては最も基本的な分析である。「売上の80%は上位20%の顧客が生み出している」という言葉があるが、デシル分析ではこの上位顧客を割り出すことが可能だ。ただし、購入金額が基準となっているため、過去に1回だけ高額の物を購入した顧客が上位に来てしまったり、1回あたりの購入金額は少ないが購入頻度の高いリピーターが下位になってしまったりするので注意が必要だ。

RFM分析


「Recency(最新購入日)」、「Frequency(購入頻度)」、「Monetary(購入金額)」の3つの指標で顧客を選別、ランク分けし分析する手法。直近の購買日が条件に入っているので、過去に一度だけ高額商品を購入した休眠顧客や、最近少額商品のリピーターになった顧客を混同することなくランク分けできる。

たとえば下図の場合、横軸にF(購入頻度)、縦軸にR(最新購入日)と設定されており、R30:F5は”直近30日で最も購入回数が多い顧客”、R360:F1は”最も長い間購入がなく頻度も少ない顧客”となる。こうして抽出された区分けデータをもとに、”購入頻度が高かったが最近の利用がない顧客”(R90、R120のF5やF4)に対して再度利用を促すキャンペーンメールを送るなど、それぞれの顧客層に対して適切な対策を練ることができる。


決定木分析


顧客の傾向について、顧客情報やアンケート結果などから段階的にデータを分割し、樹木のように振り分けて分析結果を出力する手法だ。たとえば、「直近でリピートしてくれた顧客はどういう集団(年齢、性別、地域、店舗)なのか」など、相関の高い項目は何かを算出する。属性に関する情報だけでなく、購入見込みが高い層や、商品が持つ要素のどれが顧客の満足度やロイヤリティに影響しているかなど、各種条件や意識についても設定して振り分けることができる。
 
デジタルマーケティング全盛の今、取り扱うことが出来るデータは膨大となっている。そのため、そのデータから「優良顧客」を見極める分析手法も非常に重要になってきているのだ。
 

優良顧客を「実感」する大切さ


こうした手法を用い、データ上で優良顧客を抽出しても、それで満足してしまうケースが多い。しかし実際には、そのような分析結果は机上の空論に過ぎず、なかなかチームとして会社としてその顧客に対してしっかり向き合うことが出来ているのか「実感」できないことが多いのだ。優良顧客に対してしっかりとアプローチできているということを「実感」すれば、チームや会社の一人一人が同じ方向を向くことが出来るようになり、新しい気付きや施策を検討することが出来るため、「実感」することは非常に重要な取り組みとなる。
具体的に「実感」について考えてみよう。施策の「結果」について、売上実績やアクセスログなどの数字をデータとして確認する。それ自体は非常に重要なデータであるが、そこに顧客属性やアンケートと連動させてビジュアル化することで、その結果に至った“理由”や”背景”の気付きを得ることができ、より立体的で価値のあるデータにしていくことがより重要な「実感」の正体だ。データの可視化が当たり前とされる時代でも、施策を考えるのは人間であり、その影響を受けて購入するのも、やはり人間である。だからこそ顧客という存在を「実感」し、手ごたえを得ることが、デジタル時代のマーケティングには非常に重要なのである。


 

デジタル時代だからこそデータから顧客を“実感”していくべき


「優良顧客」の考え方はデジタル全盛の今、広がってきている。そして、その定義は、会社によって、また、ときには部署やチームによって、異なっている。繰り返すが、自身の会社や部署にとっての「優良顧客」について分析する際には、データ上の数字のみでなく、その”背景”に目を向けることが大切なのだ。この記事を、自社の顧客一人一人について今一度考えてみるきっかけにしてくれれば幸いだ。

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