CAC(顧客獲得単価)とは?LTVやユニットエコノミクスとの関係について解説


Writer:
山崎雄司
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新規顧客の獲得と収益性の改善は、事業の健全な運営と継続的な拡大には欠かせない課題である。そのときに重要な指標となるものの一つがCACだ。CACを算出することで、現状や改善点が見いだせるだけでなく、収益性を把握し適切なマーケティング戦略を立てるために重要なユニットエコノミクスを算出することができる。LTVとユニットエコノミクスはCACとの関連が深く、この3つの指標の関係性を読み解くことが健全な事業運営のカギとなる。そこで今回は、CACの基本的な用語説明や種類、計算方法に加え、LTV・ユニットエコノミクスとの関係や改善方法についても幅広く解説していきたい。

CAC(顧客獲得単価)とは


CACとは、「Customer Acquisition Cost」の頭文字をとったもので、日本語では「顧客獲得単価」または「顧客獲得費用」と訳されることが多い。新規顧客を1件獲得するために費やしたすべての費用のことを指す。
CACは主にSaaSやサブスクリプション型のビジネスで用いられることが多く、適切なマーケティング戦略を策定するには欠かせない指標だ。顧客を獲得するための手法は無数にあり、その費用も効果も大きく異なる。そのなかで費用対効果の高いものを漫然と選び出すことは不可能に近い。そこで、チャネルごとにかかるコストと獲得できた新規ユーザー数を明確化するCACを活用することで、それぞれのチャネルの費用対効果が明確化され適切な戦略を導き出すことができるのだ。すべての費用というのは、広告費用だけを指す場合もあれば、人件費や代理店販売手数料、その他の外注費までを含める場合もあり、企業の設定によってその範囲は異なる。あらかじめ自社にとって必要な項目を明確にしておくことで正確なCACを求めることができるだろう。また、SaaSビジネスの場合は契約後の利益回収になるため、マーケティング費用や営業経費が先行してしまいがちだ。そのため1ユーザー当たりの費用を算出するCACを把握することで、投資限度の目安を決めるにも役立つ。自社のビジネスにおけるCACの現状を正しく理解することは、投資すべきチャネルを見極め不要な施策を排除し、最も効果的な方法で自社の事業収益を改善するための戦略を導き出すことにつながるのである。

CPAとの違い


CACとよく似た言葉にCPA(Cost Per ActionまたはCost Per Acquisition)がある。どちらも顧客獲得単価を表す用語だが、その費用とする範囲に違いがある。
CPAは広告出稿費用などといった、施策一つ当たりの費用のこと。特にインターネット領域における広告等の特定の施策を指すことが多い。一方、CACは施策単位ではなくプロジェクト単位などで用いられることが多く、広告費に限らず人件費や運用コストなどの費用を加えて算出するものである。

CAC(顧客獲得単価)の計算方法


CACは1か月/3か月(四半期)/1年など、目的に応じた期間に区切って設定する。そのうえで、「その期間で顧客獲得のために費やした金額の合計」を「獲得した顧客の数で割る」ことによって算出するため、計算式は

CAC = 顧客獲得のために投資した金額の合計 ÷ 新規顧客獲得数

となる。
顧客獲得に関する費用は広告やイベント費などのマーケティング費用が中心になるが、正確には人件費や場所代、管理費などの間接費も含む点に注意が必要だ。CACを設定する場合には、どのくらいの期間で何を費用として計測するかを明確にしてから取り組みたい。そのうえで目標を設定し、チーム内で共有することでモチベーションの維持にもつながる。
また、CACは一度算出したら終わりではなく、設定した計測期間ごとに定期的に算出し、目標との乖離や推移を確認することが重要だ。計測したCACをもとに今の施策の費用対効果を分析することで、市場の変化に迅速に対応した施策(効果的なチャネルへの投資など)を打てるだけでなく、継続的かつ効率的な収益改善が期待できる。

CAC(顧客獲得単価)の種類


CACは、顧客の流入経路によって以下の3種類に分けられる。

1.Organic CAC


自然に獲得できた顧客の獲得費用のこと。既存顧客からの紹介や口コミ、検索エンジンやSNSからの流入などといった非有料チャネルがそれにあたる。意図しない経路から自然に流入する顧客も新規顧客であるが、その獲得にかかっている費用は見落としがちなので、正確なCACを算出する際には注意が必要だ。

2.Paid CAC


顧客獲得を目的として投資したあらゆる施策の費用のこと。CMやインターネット広告、外部イベントへの参加やキャンペーンの開催、自社セミナーや展示会への参加・開催などといった有料チャネルがそれにあたる。複数のマーケティング施策を実施している場合、それぞれの施策ごとにPaid CACを測定することで、どの施策が効果的か見極める指標となる。

3.Blended CAC


「Organic CAC」と「Paid CAC」を合わせた費用のこと。一般的にCACという場合は、このBlended CACを指すことが多い。たとえば、顧客数は増加しているが収益は赤字という場合、引き続き顧客数を増加させる施策を打つべきか黒字化を優先させるべきかの判断が求められることがある。そこで、Blended CACをOrganic CACとPaid CACに分けて検証し、Organic CACの効率が良さそうであれば広告費用を抑えてPaid CACを下げることで、Blended CACを低減させることができる。

CAC(顧客獲得単価)とLTV、ユニットエコノミクスの関係性


CACのように、事業の健全性を測る指標にLTVとユニットエコノミクスがある。なかでもユニットエコノミクスは、マーケティング予算が適切かどうかを考えるのに欠かせないもので、マーケティング担当者が必ず把握するべき指標だ。
ユニットエコノミクス(Unit Economics)は、1ユニット(Unit=単位)あたりの経済性・採算性(Economics)を表すもので、事業の健全性を示す指標の1つである。サブスクリプション型ビジネスモデルを採用している企業などで使用されることが多い。「顧客やアカウントごとに、利益が出ているのか損失が出ているのか」を見るためのものと考えるとわかりやすいだろう。何を1ユニットとするかは企業によって異なり、顧客やアカウントが一般的ではあるが、事業によっては製品や販売ツールなどの場合もある。ユニットエコノミクスを見ることで、事業の収益性やどこまでの赤字なら新規顧客獲得を続けられるかといったことがわかる。
CACとともにユニットエコノミクスを導き出すのに必要な指標がLTVだ。LTVとは「Life Time Value(顧客生涯価値)」の略であり、一人の顧客がその企業との取引を開始してから終了するまでの期間のうち、企業に対してもたらした利益を算出したものである。LTVを求める基本的な式は『LTV=購入単価×購入回数』だが、扱う商品などによって異なる式を用いることもある。LTVは既存顧客も対象にして導きだす指標のため、CACとはまた違う角度から経営の健全化を測ることができる。

ユニットエコノミクスはCACとLTVを用いて以下の式で算出できる。

ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC

ユニットエコノミクスが1以上であれば利益が出せている状態、つまり黒字といえる。ただし、CACで設定した期間が長いと、中長期的に利益が出せたとしてもキャッシュフローが問題になるケースがある。反対に、1以下であれば赤字であるが、立ち上げたばかりの事業などは収益性を度外視しても顧客獲得を目指すべきだという場合もある。一般的には、ユニットエコノミクスが3以上、つまりCACがLTVの3分の1以下が目安と言われており、数値がこれよりも低い場合には、LTVを向上させるかCACを抑える対策が必要だ。
ユニットエコノミクスはCACとLTVをもとにしているため、市場の変化とともに常に変動する。定期的にこの3つの値を把握して、適切なマーケティング予算の管理に役立てることが大切である。

ユニットエコノミクスを改善する方法


1.CRMシステムの導入


LTVを向上させてユニットエコノミクスの改善を図るにはCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)の導入が有効だ。CRMは顧客のあらゆる情報を一元管理し、顧客一人ひとりとの最適なコミュニケーションを実現するツールである。これを活用し、ターゲットに合わせた効果的なアプローチによって既顧客の継続的な利用を促していくことで、LTVの向上につながる。定期的なLTVの観測でその施策の効果を検証することも重要である。

2.広告の最適化


CACを下げてユニットエコノミクスの改善を測るには、経費の削減が重要である。その方法の一つとして、広告の最適化が有効だ。Webマーケティングは比較的広告費を抑えやすいが、有料広告の利用には継続的な支払いが発生する。そこで、既存広告におけるそれぞれのCACを算出することで、より費用対効果の高い媒体を絞り込むことが可能。さらに、場合によっては広告の出稿をストップし、検索エンジンなどによる自然流入数を増やす施策に切り替えたり、オウンドメディアを活用したりするなどの方法も効果的である。

CACを理解し最適なマーケティング活動を導き出そう


CACは、新規顧客一人から得られる利益に対してかかる費用が見合っているかを判断するものであり、ユニットエコノミクスを算出するために欠かせない指標である。ユニットエコノミクスの適正化には、多角的な視点で収益性を見極め、効果的な施策を打つ必要がある。また、CACはSaaSやサブスクリプション型のビジネスに必要な指標である。収益性のあるビジネスを実施するためにはCACとLTVを適切な値にすることが重要だ。このように、CAC・LTV・ユニットエコノミクスといった指標を利用し、多角的にコストを見直し続けていくことで、事業の健全な運営と収益の増加を自社にもたらすのである。

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