CRM分析とは?重要性と10の代表的な分析手法を徹底解説


Writer:
山崎雄司
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多くの企業で、膨大な顧客情報を管理するためにCRMの導入が進んでいる。CRMは、顧客データの収集・分析を通して、顧客を中心とした商品開発や、顧客に合わせたアプローチを可能にするものである。ただ顧客の情報を集約して管理するだけではなく、データを分析し活用して具体的なアクションをとることで、顧客との関係強化や売上向上につなげる。本記事では、CRMを活用するために不可欠なCRM分析と、その重要性について解説する。


CRM分析とは

CRM分析とは、CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)を活用して自社顧客のデータ分析を行い、企業の価値を高めるための施策に活かしていく分析の手法。蓄積された顧客情報を分析し、顧客の属性やニーズ、売上貢献度などを把握して、顧客との良好な関係と企業価値を醸成していく。一般的に「顧客分析」というと、自社が属する市場の現状や成長性など、市場全体を対象とした分析を行う。一方、CRM分析は自社の既存顧客のみを対象とする。
CRM分析にはさまざまなタイプがあるため、目的によって分析方法を使い分け、効果的に活用する必要がある。


CRM分析の目的と重要性

CRM分析の目的とその重要性について、以下の4点にまとめる。

顧客関係の維持・強化

CRM分析によって自社の顧客情報を分析することで、顧客理解を深め、分析結果を根拠とする効果的なアプローチを探ることができる。最適なアプローチで顧客維持に注力することで、顧客関係の維持および強化が期待できる。また、優良顧客やリピーターに至りやすい顧客の属性や傾向を把握することで、ターゲットを絞った効率の良いマーケティングが可能になる。

LTVの最大化

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、全取引期間にわたって顧客が企業にもたらす総利益のこと。LTV向上には、顧客のセグメンテーションを考慮したリピート施策を行うことが基本となる。そのためには、CRM分析によって顧客データを分析し、ターゲットを絞ったうえで適切な施策を打つことが重要である。目的に応じてさまざまなデータを詳細に出せるCRM分析を活用することは、顧客満足度や顧客ロイヤリティの向上にもつながっていく。


マーケティング施策の策定

施策を漫然と実施するだけでは、CRMの効果を最大化することはできない。顧客情報をもとに分析を行い、顧客一人ひとりのニーズに応じた商品を効率的に提供していくための施策を策定する必要がある。CRM分析を用いれば、原因と結果の因果関係がより明確になり、精度の高い施策を実施できる。さらに、CRM分析を繰り返すことで、多様化・複雑化する顧客情報を正確に把握し、PDCAサイクルをスムーズに回すことができる。


売上の向上と拡大

CRMによって顧客との継続的な関係を維持することで、継続的な売上が見込まれる。顧客との関係を構築していくという性質上、導入後すぐに結果に結びつくものではないが、中長期的な売上向上のための施策として重要視されている。CRM分析を基に、顧客一人ひとりに合わせた施策を実施し、顧客満足度を向上させ、さらにリピート購入やアップセル・クロスセルを促すことで、継続的な売上の向上と拡大につなげていく。


代表的なCRM分析の手法

次に、CRM分析の代表的な10の手法を紹介する。まずは、簡単に特徴を解説する。

・RFM分析:「直近購買日」「購入頻度」「購入金額」で顧客を分類し分析する手法
・CPM分析:RFM分析の3つの指標に「在籍期間」を加え分析する手法
・デシル分析:顧客を購入金額順に10等分して分析する手法
・CTB分析:顧客の購入動向を「カテゴリー」「テイスト」「ブランド」から予測する手法
・セグメンテーション分析:顧客を属性や類似性などで分類し傾向を捉える手法
・LTV分析:算出したLTVを分析し長期的な見通しを予測する手法
・行動トレンド分析:特定のシーズンに購買活動をする顧客の特徴を分類し分析する手法
・決定木分析:顧客のデータを分割し樹形図を用いて分析する手法
・クラスター分析:大きな集団を類似性で分類する分析手法
・売上分析:商品やサービスごとの売上傾向を分析し課題を発見する手法

ここからは、各分析方法について詳しく見ていく。

1.RFM分析

RFM分析とは、顧客分析のなかでも特に有名な手法の一つであり、顧客データ分析の基本である。RFMは「Recency 」「Frequency 」「Monetary 」の頭文字であり、それぞれ次のような意味を持つ。

・Recency(直近購買日):顧客が最後に商品を購入した日からどのくらい経過しているかを示す指標
・Frequency(購入頻度):顧客が購入した回数を示す指標
・Monetary(購入金額);顧客が購入した金額の累計を示す指標

これらの3つの指標を掛け合わせて、顧客の分布を把握したり、顧客をランク分けしてセグメントに利用したりする。優良顧客を見極め、特に自社の売り上げに貢献する可能性の高い顧客に対して優先的にアプローチを行うことで、LTVの最大化を図る。なお、RFM分析では、顧客の獲得・維持にかかるコストが考慮されていない点に注意が必要。


2.CPM分析

CPM(Customer Portfolio Management/顧客ポートフォリオマネジメント)分析は、RFM分析の3つの指標に「在籍期間(離脱期間)」を加え、一度離脱した顧客(離反顧客)に対してアプローチを行う手法。主にリピーターを増やす目的で活用され、離反顧客を10グループに分けて分析し、その中から優良顧客を抽出していく。RFM分析と似ているが、RFM分析は優良顧客に注力するのに対し、CPM分析では離反顧客の引き戻しに重点が置かれる。RFM分析とCPM分析を併用すると、長期的な優良顧客の拡大につなげていくことが可能となる。


3.デシル分析

デシルはラテン語で10等分という意味で、デシル分析とは、顧客を購入金額の多い順に10等分して分析する手法。各グループの購入比率や売上比率を算出することで、売上の上位顧客を割り出すことができる。なお、購入金額が基準となっているため、たとえば一回あたりの購入金額は低いが購入頻度の高いリピーターが下位になってしまうケースもあるため注意したい。

4.CTB分析

CTB分析とは、顧客の購入動向を予測する手法である。現状を分析するものではなく、未来を予測する目的で使われる。CTBは「Category」「Taste」「Brand」の頭文字であり、それぞれ次のような意味を持つ。

・Category:商品の種類(大分類~小分類)
・Taste:色、デザイン、サイズなど
・Brand:ファッションブランド、キャラクターなど

これらの3つの指標を用いてグループ分けを行う。自社の商品やサービスを好む顧客の嗜好を明確にすることで、今後の購入動向を予測し、売れ筋商品がどれなのかを分析。その商品の販売に注力することで売上を向上させる。


5.セグメンテーション分析

セグメンテーション分析は、顧客の属性や類似性などのさまざまな切り口を指標としてグループ分け(セグメンテーション)を行う手法。代表的な指標には、居住地域などの地理的なグループ分け(ジオグラフィック変数)や、年齢・性別などのグループ分け(デモグラフィック変数)などがある。どのような顧客が何を購入する確率が高いのかといった傾向を捉えられるため、狙うべきターゲットや新しいニーズを発見できる。

6.LTV分析

LTV分析は、新規に顧客を獲得した月から、その顧客からの売上を継続的に見ていき、一定期間を経過するまでの合計購入金額(LTV)を基に、継続購入の状況と売上貢献度を分析する手法である。継続状況分析とも呼ばれ、長期的な見通しを予測することができる。購入単価や購買頻度が高く、購買期間やサービスの利用期間が長いほど収益性が高くなるため、リピート通販事業で活用されるケースが多い。なお、一般にリピート通販事業では、事業開始から複数年経過したら、年単位での継続率の把握が重要になるため、年間LTVを見ていく。
LTVが高いユーザーは「優良顧客」であるため、それらの顧客を分析することで、顧客のニーズに合う施策を確立できる。


7.行動トレンド分析

行動トレンド分析とは、顧客を属性ごとにセグメントに分け、時系列での購買を分析する手法。商品が購入されたシーズンと顧客層とを紐づけることで、シーズンごとの売れ筋商品を把握し、それらの共通点や特徴を分析する。顧客の特徴は、年齢、性別、居住地、職業など、さまざまなパターンが適用され、たとえば「夏季に購買が活発になる顧客の職種」といった分析ができれば、そのシーズンに合わせて最適なタイミングでの広告配信やキャンペーンなどが実施できる。


8.決定木分析

決定木分析とは、顧客の傾向について、顧客情報やアンケート結果などから段階的にデータを分割し、樹木のように振り分けて分析結果を出力する手法。たとえば、「直近でリピートしてくれた顧客はどういう集団(年齢、性別、地域、店舗)なのか」など、相関の高い項目は何かを算出する。属性に関する情報だけでなく、購入見込みが高い層や、商品が持つ要素のどれが顧客の満足度やロイヤリティに影響しているかなど、各種条件や意識についても設定して振り分けることが可能。)


9.クラスター分析

クラスター分析とは、大きな集団の中から似たもの同士をグループ分けする分析手法。類似性のみを目安とし、明確な分類基準を設けていないのが特徴で、大量のデータから大まかな傾向や特性を把握する場合に役立つ。競合他社と比較したときの自社の強みやブランディング戦略、商圏となる分野の分析などに使われる。


10.売上分析

売上分析とは、自社の現状を把握し、商品やサービスごとの売上の傾向や課題を分析する手法。分析の指標には商材や営業所、顧客、チャネルなどが用いられ、これらの指標を軸に自社の売上を分析する。売上が伸びた理由や伸びない原因を可視化し、競合他社との比較分析で課題を洗い出すことができる。売上分析によって自社の経営状況を正確に把握できるため、売上目標を想定する際に適切な目標数値を導き出せるようになる。


CRM分析を効率的に行うためのポイント

CRM分析を行うにあたってのポイントを、以下4点にまとめる。

課題と目的を明確にする

CRM分析は、目的によってさまざまな分析方法があるため、あらかじめ目的を明確にしておく必要がある。分析の手法の優劣はなく、状況によって相応しい手法を使い分けることが大切だ。どのような目的で何を分析したいのかをしっかり考えたうえで、自社にとって必要な分析のパターンを把握し、適切な手法を使って分析を行っていきたい。また、顧客像や目的を明確にしておくと、最適なCRMシステムを選定も可能になるため、コスト削減も期待できる。


ツール間連携を確認する

CRM分析を行うには自社に適したCRMツールを導入する必要がある。CRMツールはそれ単体でも十分効果を発揮するものだが、関連する他のツールを連携することで、より効率的なマーケティングが可能になる。CRM分析の機能を充実させたい場合は、BIツール(Business Intelligence)との連携や、散在しているデータの収集・加工・統合ができるツールと連携することで分析の精度を高めるなど、ツール間の連携が重要なポイントとなる。
また、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入も同時に検討することが望ましい。ERPとは、「統合基幹業務システム」とも呼ばれ、人材管理、財務管理、販売管理、給与管理といった企業の情報を扱い効率化するシステムのこと。
CRM分析を実施する前に、システム間連携が可能かどうかを確認しよう。


複数の手法を組み合わせる

CRM分析にはさまざまな手法があり、向き不向きや得られる効果はそれぞれ異なる。効率的に成果へとつなげていくためには、先に解説した複数の分析手法を組み合わせるなど、ゴールを見据えた多角的な視点をもって運用する必要がある。それが精度の高いマーケティング施策にもつながる。

自社に合ったツールを選ぶ

CRMは、自社の課題や目的に合うツールを選ぶことが重要である。魅力的で多機能なツールが市場に多く存在しているが、それを自社で使いこなせるか、操作性はどうか、基幹システムとの連携は可能か、コストや人的リソースが足りているかといった観点での判断が必要となる。また、導入後のトラブルに備え、ベンダーのサポート体制も確認しておくと安心だ。


多角的な分析と適切なツール選びでより戦略的なマーケティングを

CRMの活用により利益の最大化が期待できるが、CRMツールの導入後に十分な効果を発揮するには、CRM分析のプロセスが欠かせない。CRMは分析手法、ツールともに多種多様で、あらかじめ使用目的や、何を結果として求めているかを明確にしておく必要がある。CRM分析を通して、自社の現状を把握することで、今まで見えていなかった自社の弱みや強みを客観的に把握することが大切。自社に合ったCRMツールを検討し、施策のPDCAサイクルを回すことで、効果的なマーケティング戦略に役立てたい。


CRM分析を効果的に行えるツール「カスタマーリングス」

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本記事ではCRM分析についてご紹介しましたが、まだまだ豊富な事例がございます。「他社の活用事例が知りたい」「自社に合った活用方法を提案してほしい」という場合は、お気軽にお問い合わせください。

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