顧客を知り成果を上げるための顧客分析入門


Writer:
山崎雄司
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自社の商品を買ってくれた顧客はどのような人が多いのか。それを知ることは、自社の売上を継続、および拡大させていくために必要不可欠だと言えよう。そして、その謎を解き明かすためにあるのが「顧客分析」だ。 しかし、巷には多くの顧客分析手法が乱立し、それぞれはネーミングから難しく、かつ中身もよく分からない、という場合も多いかもしれない。今回は、そうしたオンラインデータを活用する様々な顧客分析の手法を紹介し、どのように活用して成果を出していくべきかを考えていきたい。

顧客分析とは


顧客分析とは、売上を上げるために、自社の商品を購入してくれた既存顧客や、まだ購入してもらっていない潜在顧客を各種データから分析を行うことだ。特にデジタルマーケティングにおいては、顧客の属性データや受発注データだけでなく、行動履歴なども細かく取得することが出来るため、多種多様な手法が存在する。

顧客分析には、大きく分けて2つの考え方がある。一つは新規顧客向けのマーケティングのための顧客分析だ。新商品を売り出す際、そのターゲットとなる市場はどこであるか、また、どのような商品を扱えば良いのかを考えるための分析である。

もう一つは、既存の顧客に対して行うマーケティングのための顧客分析だ。分析の主な目的は、実際に自社の商品やサービスを利用した顧客がどんな人なのか、また、継続して利用しているのかなどについて把握することである。

例えば、CRM(Customer Relationship Management/カスタマーリレーションシップマネージメント)における顧客分析に関しては、一般的に後者を指す。本記事においては、後者の顧客分析について主に考えていくことにする。

顧客分析の考え方


顧客分析には、大きく分けて次の2つの考え方がある。

新規顧客を対象とした分析

一つは、新規顧客向けのマーケティングのための顧客分析だ。新商品を売り出す際、そのターゲットとなる市場はどこであるか、また、どのような商品を扱えば良いのかを考えるための分析である。

既存顧客を対象とした分析

もう一つは、既存顧客に対して行うマーケティングのための顧客分析だ。分析の主な目的は、実際に自社の商品やサービスを利用した顧客がどんな人なのか、また、継続して利用しているのかなどについて把握することである。
また、CRM(Customer Relationship Management/カスタマーリレーションシップマネージメント)における顧客分析は、一般的に後者を指す。本記事では、主に後者の顧客分析について考えていく。

顧客分析の目的


では実際に顧客分析を…と進める前に、顧客分析の3つの目的を知っておこう。手法やツールに翻弄され、顧客分析そのものが目的となってしまうようでは本末転倒だからだ。

顧客を理解する

マーケティングで成果を上げるために、顧客を理解することはとても重要だ。顧客、そして市場を知らずしてマーケティングは出来ないため、顧客を理解することがマーケティングの第一歩となる。

気づきを得る

次に、顧客分析の数値から気づきを得ることも重要である。ただし、デジタル化が進む中ですべてが数値化されてしまい、顧客=数値に置き換えられてしまいがちな点には注意しよう。また、数値を集計しただけで満足してしまうこともあるが、集計がゴールではないことにも注意したい。
つまり分析の目的は、数値というきっかけから気づきを得ることにある。この気づきがあることで、より効果的な施策を考えることが可能になる。

現状を把握する

どのような人が、どこから流入して、どの商品を購入しているのか。顧客が購買行動に至るまでの心理や購入決定プロセスを知ることは、デジタルマーケティングやそのツールについて知ることと同じくらい重要である。

顧客分析のメリット


顧客を知ることで得られるメリットは、主に次の2つがある。

マーケティングを効率化できる

顧客を理解し、顧客の潜在的なニーズを知ることができれば、ターゲットに対する効果的なマーケティングが可能になる。顧客分析から得られた気づきは、新規顧客の獲得や既存顧客の維持のほか、ブランドの認知拡大、商品やサービスの改善などにも広く活用することができる。

売上の向上が期待できる

マーケティングの効率化は、成果を上げることにもつながっていく。顧客分析で得た根拠をもとにした適切な施策の実施は、売上向上のために欠かせないものだ。分析そのものが直接利益をもたらすわけではないが、より効果的な施策に予算を割けるようになるなど、そのメリットは非常に大きい。
例えば、顧客データを細分化しセグメントに分けてそれぞれの傾向を把握すれば、各セグメントの今後の施策が打ちやすくなる。さらには、その施策についての分析を行うことで顧客ニーズを絞り込むというような、自社のPDCA(Plan/計画、Do/実行、Check/評価、Act/改善)サイクルを回すことにもつながるのだ。

 

8つの主要な顧客分析の手法


顧客分析を行う大切さとその理由をふまえた上で、ここからは代表的な8つの手法を紹介していこう。

デシル分析

最もベーシックな顧客分析手法がこの「デシル分析」。購買履歴のデータをもとに、全顧客の購入金額を高い順に10等分し、そこから各グループの購入比率や売上高構成比を算出することで、どのグループが売り上げにどのぐらい貢献しているのかを分析することができるというもの。ネーミングは一見難しいが、内容は非常にシンプルな分析手法だ。顧客分析をほとんどやったことがない場合は、この分析をまずは行ってみて、自社の顧客の概要を把握することをおすすめする。

セグメンテーション分析

顧客情報から属性や類似性を見つけ、それを指標としてグループ分け(セグメンテーション)する手法。一般的には、居住地域などの地理的なグループ分け(ジオグラフィック変数)や、年齢・性別などのグループ分け(デモグラフィック変数)などで分析を行う。分析手法としては顧客属性が分かっている場合には手軽であるが、高度な分析は難しいケースが多い。

RFM分析

「Recency(直近購買日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」の3つの指標で顧客をランク分けして分析する手法。たとえば下図の場合、横軸にF(購入頻度)、縦軸にR(購買日)と設定されており、R30:F5は”直近30日で最も購入回数が多い顧客”、R360:F1は”最も長い間購入がなく頻度も少ない顧客”となる。こうして抽出された区分けデータをもとに、それぞれの顧客層に対して適切な対策を練ることができる。この分析は幅広いサイトで活用することが出来る分析手法だ。


行動トレンド分析

顧客を属性ごとにセグメントに分け、時系列での購買を分析する手法。特にシーズンものを扱うアパレル業界などで採用されている分析手法である。下図は月ごとの売れ筋商品をまとめた分析事例だが、1月には8位だった”プラスマイクロフリース”が徐々に売り上げを伸ばしていることや、”ドットソックス”の売り上げが急落していること、また、”ボーダーワンピース”が不動の1位をキープしていることなどが読み取れる。このような分析結果をもとに、シーズンごとの売れ筋商品を把握することが可能だ。


LTV分析

LTV(Life Time Value)とは、日本語では「顧客生涯価値」と訳される。ある顧客が生涯(その企業との取引期間)を通じてどのくらい利益に貢献するかを測るものである。平均的な購入回数や頻度、購入期間などから、新規顧客の”顧客獲得単価(CPA)”を算出。集計する期間を変更することによって、直近の顧客行動を把握したり、リピート購入まで含めたCPAを算出したりできるため、広告コストにどのくらい費用をかけられるか、といった応用が可能だ。この手法は、主にリピート商材を取り扱う通販事業者で活用されるケースが多い手法だ。

決定木分析

顧客の傾向について、顧客情報やアンケート結果などから段階的にデータを分割し、樹木のように振り分けて分析結果を出力する手法。例えば、「直近でリピートしてくれた顧客はどういう集団(年齢、性別、地域、店舗)なのか」など相関の高い項目について算出する。アンケート等を用いた設問方式で調査を進めることが多い。この手法はかなりロジカルな振り分けを行う必要があり、また顧客データも十分に揃っていない振り分けが発生することも多く、なかなかECサイトの顧客分析の現場では、実際の顧客数などのデータなども絡めた形では活用されることは少ない。ただ、このツリーがしっかり作ることが出来ると、それ以降のマーケティング施策は非常に効果的に実施することが可能になる。

CTB分析

「Category(カテゴリー/分類)」「Taste(テイスト/デザイン、サイズなど)」「Brand(ブランド/ファッションブランド、キャラクターなど)」の3つの指標を使って顧客の購入動向を予測する手法。今まで紹介した分析手法が比較的「現状」を分析するものだったのに対し、こちらは「未来」を予測する目的で使われる。ただ、この手法は商品SKU単位というより、カテゴリ・ブランド・テイストなど、大きな視点での関連性を分析するもののため、どのような形でデータを持っているかに依存することが多く、高難点の手法と言えるが、成功すると高い精度で予測できるようになるものだ。
 

相関ルール分析

相関ルール分析は上述したCTB分析と似ているが、こちらの方がより具体的な商品間の関係性を分析する手法となる。ある商品を買った顧客が次に買うであろう商品を予測できるシステムのことを指す。具体的には、ある商品(x)の購買が他の商品(y)の購買とどの程度相関しているかを”リフト値”という指標で示すものとなる。

例えば下図の場合、”マルチボーダーソックス”と”プリントワンピース”のリフト値が最も高く、”マルチボーダーソックス”の購買が”プリントワンピース”の購買を促進させていると判断することができる。



 

定量分析だけでなく定性分析を使いこなす


顧客分析を行う際に覚えておきたいのが、定量分析と定性分析の概念である。定量分析とは数字やデータを用いたもので、先述した8つの手法はいずれもこれにあたるが、顧客のニーズやリアルな実態がわかりづらいなどのデメリットがある。そのデメリットを補完するものが数字で表せない情報を用いた定性分析であり、これらを総合的に活用することで、マーケティングの質をさらに高めることができるのだ。

主要な定性的な顧客分析手法は、2つある。

ユーザーテスト

ユーザーテストは、実際の顧客や潜在顧客に、サイトやサービスを利用してもらって、その際の意見や反応、さらに場合によってはマウスの動きや、視点の動きなどを収集・分析するものだ。競合サイトとの比較などを絡めて行うケースも多い。専門家によるヒューリスティック調査よりも、生々しい意見や、見落とされがちな基本的なコメントが多く収集することが出来るため、課題や改善点の明確化に役立つ。しかし、多人数に対してのユーザーテストは費用的に実施出来ないケースも多く、少人数に対して行うため、被験者の属性選びを気を付けないと意見が偏る可能性もある。

アンケート

アンケートは、多数の顧客や潜在顧客から意見を収集することに向いている手法だ。ユーザーテストとはその点が大きく異なる。また、明確に課題等の仮説の構築が完了した段階で、その妥当性を確認する目的で使われるケースが多い。そしてその結果を、設問の選択肢に仕込み、顧客や潜在顧客全体の意見の傾向を確認していく。

このような定性分析はどのように定量分析と補完していけばいいのだろうか。例えば、顧客の属性を定量分析して仮説を立てたとする。数字という事実をもとにしているためビジネスとしての説得力はあるが、これだけでは顧客を理解しているとは言えない。定量分析とあわせ、ユーザーテストやアンケート結果などを用いた定性分析を行うことで、顧客のリアルな人物像を想像できるようになる。定性分析が顧客理解を高め、より適切で精度の高い施策を可能にするのだ。

顧客分析を行う際のポイント


顧客分析を取り入れても、ただ漠然と分析するのでは意味がない。成果を上げていくためにも、次に挙げる3つのポイントを意識したい。

顧客像を明確にする

分析の精度を上げるためにも、自社がどのような顧客をターゲットにしているかを明確にしよう。それによって企業目線でなく顧客目線で考えられるようになり、顧客の心を掴む訴求もしやすくなる。実際の顧客情報や利用履歴をふまえ、典型的な顧客像となるペルソナを設定するのも有効だ。

顧客ニーズを把握する

顧客は何をきっかけにして、どのようにして自社の商品を知り、なぜ購入へと至ったのか。そして、顧客は自社の何に価値を感じているのか、継続してつながりを持ちたいと思ってくれているか、これらのニーズを深く掘り下げることで、ターゲットに対する適切なアプローチが可能になる。ニーズを把握する方法は、アンケートやSNS、口コミなどが挙げられる。

市場規模や将来性を予測する

顧客分析では、その市場において、どのくらいの期間どれだけの成長が見込めるかを分析することも重要だ。例えばターゲットを特定の年齢・性別に限定した商品の場合、変化する人口比率の影響を受けやすく、将来的には異なる属性の顧客を開拓する必要も出てくるだろう。過去の顧客データから市場の将来性を分析し事前に対策を立てることは、事業を継続・安定させるために欠かせないポイントである。

 

分析することは目的ではなく、成果を出すことが目的


今回紹介した分析手法以外にも、様々な分析手法が今も考案され続けている。もうお分かりだとは思うが、分析の手法の優劣はなく、状況によって相応しい手法を使い分けることが大切だ。どのような目的で何を分析したいのかをしっかり考えたうえで適切な手法を使って分析を行っていきたい。分析はあくまでも”手段”に過ぎず、顧客分析の本来の目的である、顧客、そして市場を知ることをしっかり考えながら分析を進めていきたい。

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