NPS®とは?NPS®の本質を理解しデジタルマーケティングの成果を最大化しよう


Writer:
山崎雄司
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「Net Promoter Score®(以下NPS®)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。近年、顧客満足度に並ぶ新しい指標として、このNPS®がデジタルマーケティングの界隈では活用され始めている。今回はNPS®について理解を深めていくとともに、実際に有効活用して効果を出していくためにはどうしたらいいのかを考えていく。

NPS®とは


「Net Promoter Score®(略称NPS®)」とは、顧客が企業やブランドに対し、愛着や信頼をどの程度抱いているかという「顧客ロイヤリティ」を数値化したものである。事業の“成長率”との相関性があることから注目され、多くの調査によって“業績”との関係も証明されている新しい指標だ。NPS®は、「他人に薦めたいか」というシンプルな質問で、顧客満足度を測る従来のCS調査ではわからなかったロイヤルカスタマーの判別を可能にする。欧米の上位企業のうち3割以上が活用しているといわれ、顧客の購入利用や他人への推奨傾向などをよりリアルに理解できることから、国内でも注目を集めている。

NPS®の計算方法


NPS®は、顧客に対するシンプルなアンケートによって算出する。その方法は、「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対し、顧客に0~10点の点数を付けてもらうというものだ。0~6点を“批判者”、7~8点を“中立者”、9~10点を“推奨者”に分類し、次の計算式を用いて算出する。

推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=NPS®

例えば批判者が30パーセント、中立者が20パーセント、推奨者が50パーセントだった場合は「推奨者(50%)-批判者(30%)」となり、NPS®は20パーセントということになる。推奨者の割合が高く批判者の割合が低いほど、NPS®のスコアは高くなる。

NPS®と顧客満足度の違い


NPS®と顧客満足度はいずれも顧客体験(CX、カスタマー・エクスペリエンス)に着目した指標だが、「収益との相関性」という点で大きく異なる。マーケティングの進化により、顧客満足度が高い顧客であってもリピート購入や顧客単価の向上がみられず、その顧客がロイヤルカスタマーになるわけでもないといったケースが往々にして起こることがわかってきたからだ。



顧客満足度を調べるCS調査では、顧客が製品やサービスに興味を持った時点から、購入、そしてその後の収益貢献までを含む全プロセスにおいての顧客体験に注目する。この調査では、顧客と企業のあらゆる接点が評価の対象となり、顧客体験における「価格」や「機能」といった各要素に対する評価が判明する。しかし、要素ごとの改善点が判明しても、その後の収益改善や業績の向上の解決までには至らないことも起きていた。こうした事態に対して、顧客満足度とは異なる新たな指標として注目され始めたのが、NPS®なのである。

顧客理解に欠かせない「頭の満足」と「心の満足」


NPS®をより深く理解するためには、頭の満足と心の満足について知る必要がある。

頭の満足とは価格や機能といった合理的な基準で判断される満足度を、心の満足とは愛着や信頼といった情緒的な基準で判断される満足度を指す。顧客満足度の調査では頭の満足に関する設問が多く、他社から価格や機能面で優れる商品が発売された場合などに顧客が離れてしまうケースが発生する。しかし、心の満足を調べるNPS®では商品に対する愛着や信頼、言い換えると「ファン」の度合いを計ることができるため、リピート購入やポジティブな口コミによる他者への紹介も期待できる。

もちろん、顧客体験を重視するマーケティングを展開していく際には、価格や品質などの要素ごとに満足度および不満度をきめ細かく測定し、改善することは必要不可欠だろう。加えて、それぞれの顧客体験が一人ひとりに対してどうであったかを測れるのがNPS®であり、顧客満足度調査だけでは測り得なかった顧客の本音が具体化される。こうした理由からも、NPS®は今やビジネスの世界において欠かせないものとなっている。

NPS®調査のメリット


NPS®調査の主なメリットには、次のようなものがある。

売上向上のための有益な判断材料になる

NPS®では、推奨者・中立者・批判者というそれぞれ異なる立場の顧客から、商品の将来性を含んだ意見を知ることができる。この属性ごとの意見をより詳しく分析することで、具体的で有益な情報を得られるのだ。例えば、同じ店舗内であっても地域によって状況が異なるといった状況であれば、それぞれの店舗ごとに調査を行うと良いだろう。その調査結果によって、地域の特徴などを踏まえた、店舗ごとのそれぞれの対策を提案できるようになる。

顧客に適した改善やアプローチができる

推奨者・中立者・批判者の割合を把握できるので、改善やアプローチの方向性を定めやすい。推奨者が支持する要因、批判者が支持しない要因をさらに深堀りすることで、商品やサービスの改善に役立てることが可能だ。

業界内における自社の評価を把握できる

NPS®は、「他人に薦めたいか」という共通の質問を用いて計測する。そのため、業界平均NPS®や競合と比較することで自社の立ち位置を把握しやすい。ただし、NPSは業界ごとに平均値が異なるので、同じ業界内で比較する必要がある点には注意だ。

業界ごとのNPS®平均値


それでは、2016年よりNTTコム オンラインが公開している「NPS®業界別ランキング&アワード」から、2021年における業界ごとのNPS®の平均値を抜粋して見ていく。自社のNPS®と比較することで、業界内での自社の立ち位置や評価を知る手助けになるだろう。

・ネットスーパー:業界平均 -10.7pt
・セキュリティソフト:業界平均 -23.0pt
・ネット証券:業界平均 -31.1pt
・MVNO・サブブランド:業界平均 -23.4pt
・大手携帯キャリア:業界平均 -51.9pt
・人材派遣(BtoB):業界平均 -44.4pt
・動画配信サービス:業界平均 -26.4pt
・銀行:業界平均 -49.1pt
・クレジットカード:業界平均 -40.6pt
・電力:業界平均 -46.4pt

NPS®活用のポイントと注意点


NPS®は昨今のデジタルマーケティングにおいて重要な指標だが、その数値だけでは具体的な示唆に欠けるのも事実。NPS®を最大限活用して成果につなげていくため、次に挙げる3つのポイントを押さえておきたい。

オプションの質問を設定する

NPS®の計測だけでは改善点を洗い出せないので、課題を明確にするための質問をオプションとして設けておくことが重要だ。この質問内容は、何を調査したいかで変わってくる。例えば、どのような点が顧客へ感動を与えているのか、顧客から何を求められているのかを知りたい場合は「当社の商品について、次の項目ごとの満足度をお答えください」という質問を設け、項目別に0~10で回答してもらうなどが考えられる。また、「あなたはこの商品を、ご家族やご友人にどの程度おすすめしますか?」という質問を受けて「その理由を教えてください」という自由解答欄を設けるのも、本音を探る上で有効だろう。施策を立て、改善のために必要な質問を設けることが、企業にとってスコアを把握するだけではない顧客の深層心理を把握するために役立つ。

回答しない顧客もヒントになる

NPS®では回答数を確保することも重要になるが、全ての顧客がアンケート調査に回答してくれるとは限らない。回答数が少ないと顧客像を正しく把握することが難しくなるので、回答数を増やすための工夫も必要になってくる。簡潔な質問で顧客の負担を減らして回答しやすくするほか、SNSなどを活用するのも有効である。

日本は海外と比べてNPSが低い

日本人は「回答中心化傾向」が強く、0~10の11段階では5をつける顧客が非常に多い。好意的であっても6~8の範囲での回答が圧倒的なため、欧米基準で作成されたNPS®では推奨者に該当しないという現象が起きやすい。NPS®を活用する際はこのことを忘れず、日本人の国民性を考慮した分析を行うようにしよう。

NPS®を実際にデジマやCRMにつなげるには


それでは、NPS®の調査結果は、実際どのようなネクストアクションにつなげていけば良いのだろうか。例えば、CRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)ツールを用いれば、NPS®で浮き彫りとなった課題の改善策を、適切な顧客へ提供することが可能になる。

また、NPS®について把握すると同時に、NPS®に相関の高い顧客接点および顧客体験を具体的に把握することも重要だ。改善が必要な項目を洗い出しその対策を試みる際には、NPS®だけにとらわれず、こうした顧客体験との相関を見ながら改善を進める視点が必要である。アクションを実行した後は、再びNPS®を調査し戦略の再構築を実施することで、PDCAサイクルを回していくことができる。

このように、NPS®は課題を見つけるだけでなく、顧客の相関について捉える観点でも優れた指標であることがわかる。さらにNPS®とCRMを組み合わせることによって、顧客のエンゲージメントをより向上させる効果が期待できるだろう。

NPS®の本質を理解しデジタルマーケティングの成果を最大化しよう


さまざまなデジタルマーケティング施策が行われているが、NPS®は、顧客の体験の良し悪しがよりリアルに評価されるため、多くの企業で導入がはじまっている。また、業績との相関についても把握しやすく、社内でも数値の向上を共有しやすいという利点もある。顧客と企業の関係性の構築はもちろん、社員のモチベーション向上のためにも、NPS®を活用してみてはいかがだろうか。

注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標又はサービスマークです。

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