Digital Marketing Forum 講演記事
株式会社中国新聞社

顧客実感による分析と施策の見える化
中国新聞が進めるデジタルシフトへの挑戦

株式会社中国新聞社 営業本部 メディア開発室
長倉氏 / 野坂氏

  • ステップメールによる無料会員から有料会員への誘導
  • アンケートによる顧客情報の獲得と、セグメントによる密なアプローチの実現
  • 顧客分析の結果から、ターゲットを絞った広告配信が可能に
  • メルマガの反応関連部署にフィードバックし、さらなる施策を実現

広島を拠点に総合メディア事業を行う中国新聞社は、中国新聞朝刊・SELECTをはじめ、ちゅーピー子ども新聞、CARPTIMESなど、複数の紙媒体やデジタル媒体を発行する新聞社だ。メーン媒体である中国新聞は県内全世帯の4割ほどのシェアを持ち、2019年には自社WEBサイトを「中国新聞デジタル」とリニューアルした。新聞の定期購読者であれば、契約している紙面の電子版をパソコン、スマートフォンなどのデバイスで追加費用なしで購読可能。新聞未購読でもID登録すれば月10本まで限定記事を読むことができる。昨今の流れに乗り、デジタル展開を強化する動きが加速していったという同社。そこでデジタルの有料購読会員数を増やすべく、2019年10月にカスタマーリングスを導入した。MA導入の目的や現状について、営業本部メディア開発室の長倉氏と野坂氏のお二人に話を伺った。

顧客を理解し紐解くためにMAツールを導入

「我々メディア開発室のミッションは、デジタルの商品をいかに進化させるかということです。昨年デジタルの成長戦略の骨子をまとめましたが、そこで大きく3つのゴールを設定しました。1つはデジタルコンテンツの有料購読会員を増やすこと。次にデジタル広告による収益増。3つ目がグループ・関連サービスへの送客です。これまで新聞という紙媒体を中心にビジネスを展開してきましたが、記者が取材したコンテンツをアウトプットして届けるという、一方通行のメディアコンテンツサプライチェーンの状態が長きにわたって続いていました。ですが今は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代。そこで顧客をしっかり理解し、何に興味があるのか、どんな記事が読みたいのか、実際の反応はどうだったのかという点をしっかり紐解いていこうということになったのです。顧客データを統合して見える化し、One to Oneでマーケティングできるようにということで、MAの導入に至りました」(長倉氏)

MAツールの導入を検討する中で、候補は4〜5社ほど挙がったという。そこで各社に話を聞きに行ったところ、カスタマーリングスのスタッフの熱意に惹かれて導入を決めた。

「MA導入の目的

「我々はアナログが長く、デジタルには疎いメディアですが、カスタマーリングスさんが最初から色々なご提案をしてくださったおかげで、早い段階からMAについて詳しく知ることができました。何度かお会いしてご提案を受けることで、MAの活用方法が具体的に見えてきたのです。そこで1年前にカスタマーリングスを導入しました」(長倉氏)

デジタルの成長戦略の骨子にある1つ目のゴール「デジタルコンテンツの有料購読会員を増やすこと」に対しては、MAのデータを見て掘り下げ、サイトを改善してより良い方向に導くことにした。

骨子2番目の「デジタル広告による収益増」については、セグメントを切ることにしたという。広告配置の継続的な見直しのほか、MAの導入によって顧客ID・属性を用いた広告の出し分けを考えた。

3つ目の「グループ・関連サービスへの送客」に関しては、中国新聞社には、旅行会社やゴルフ場、プール、ボルタリング、ケーブルテレビ、カルチャーセンターなどの関連会社があるが、それらグループ全体に送客連携の対象を拡大し、キャンペーンを実施することで、それぞれのBtoCビジネスの発展とグループ全体のLTV向上を目指したいという。

導入後は認知からコンバージョンにつながるシナリオを作成

導入当時からMAツールに対する社内の期待値は高く、導入すれば何でもできると思われていたという。しかし現実はそう甘くない。導入後は1つ1つじっくりシナリオを構築し、基本シナリオを作って構造化していった。野坂氏はその過程をこう話す。

「我々はまず、認知からコンバージョンにつながるシナリオを作りました。たとえば、ID登録してくださった方に送るサンクスメールやアクセスランキングの紹介メールなど、1つ1つそのタイミングに合った内容を詰めていったのです。このステップを踏むことで、最終的にコンバージョンにつなげるというシナリオを明確にしていきました。そしてそのシナリオを実践し、強化ポイントを再考して認識共有をする。担当は2人ですが、随時報告して擦り合わせていきました」

では導入から1年が経ち、状況はどのように変わったのだろうか。まずは「デジタルコンテンツの有料購読会員を増やす」というミッションに対する施策を見ていこう。

mission_01「デジタルコンテンツの有料購読会員を増やす」

  • ステップメールの作成

    ステップメールの送信(ID取得者に何日かおきにメールを配信して離脱を防ぐ)

    こまめなメール配信によって、無料ID会員から有料会員へのステップアップを誘導。無料ID取得の翌日にPRを組み込んだ挨拶メールを送っているが、開封率は40%前後をキープしている。また、IDを取得してもうまく活用していない方もいるので、さらに5日後にはID取得のメリットを伝え、さらにそこからデジタルコースのメリットを記載してメールする。開封率は40%から30%に下がるが、これが意外と反応が良く、URLをクリックした人の20%がコース登録をするという結果に。さらに10日後には、他のデジタル利用者の活用法をインタビュー記事としてメール。ここでもあまり開封率は下がらず、30%前後をキープしている状況だ。

  • アンケート

    アンケートの活用(ID取得者や有料会員がどういった目的で活用したかを分析する)

    IDを取得するときに属性などの記載欄があると登録が億劫になるという話もあるので、出来るだけシンプルにするということでサービスを構築している。ただそうなると、ID登録から属性を知ることができず、アプローチできなかった。しかし今回MAを導入したことで、アンケートという形で性別や年齢、居住エリアについて情報を取得することができた。さらに有料会員の場合はサービスに関する質問もできた。アンケートは、顧客情報をさらにセグメント活用して密なアプローチにつなげられるということで重宝している。

  • ジャーニーマップを使って顧客を分析

    ジャーニーマップを使って顧客を分析・実感

    有料コースを使う方は、プロ野球の広島カープや地方経済に興味がある方が多い。ただし1〜2カ月で辞めてしまう人も多い。目的のニュースやページだけ見て去ってしまうということが今回ジャーニーマップで分かり、ここからどう共通項を探すかということを次のミッションとして考えているところ。解約した方は、こちらの想像と違う動きをされている方が多いため、そのあたりの動きを把握した上で施策を考える。

  • MA以外の外部機能も活用して社内で情報共有

    Googleが提供しているカスタムレポートやダッシュボードを手軽に作成するための無料ツール「Google Data Studio」を使い、会員のステータス状況による好みの記事ジャンルを把握する。男女比・年代・デバイス・地域に特徴があるので、こういった情報を社内共有することで営業展開につなげる狙い。

MAの導入で属性を把握できたことは最大の収穫

では、デジタル広告による収益増とグループ・関連サービスへの送客に関してはどうなっているのだろうか。ここでも、カスタマーリングスの強みである「顧客実感」の仕組みを活かし、より顧客を理解した上で今までにないアプローチを進めることができつつある。

mission_02「デジタル広告による収益増」

  • ニュースサイトという特性を生かしたセグメントメールやWEBポップアップ商品

    これまで広告はサイトの広告スペースにしか掲載できなかったが、MAを導入したことで属性が把握できたので、たとえば広島カープの記事を読んでいる人だけにアプローチにするなど、広告のターゲットを絞ることが可能になった。広告主に対しても、安価でかつ密なアプローチを提案できる。また、これまで一定の層に対するアプローチは難しかったが、MAを導入することでセグメントメールやWebポップアップ商品でアプローチできるようになった。

mission_03「グループ・関連サービスへの送客」

  • MAで取得した情報を使ってメルマガを配信し、結果を関連部署にフィードバック

    社内の別部署でこんなアプローチをしたいという要請があった時は、MAで取得した顧客属性をもとにメルマガを配信することで、これまでアプローチできなかった層、もしくはアプローチしていたがその後がつながらなかった層にもPRできる。さらにこれらをもとに、関連部署に顧客属性などをフィードバックすることで、イベントやキャンペーンでうまく活用できないかを図る。たとえば新聞を販売する部署では、MAで取得した情報を使って受験に興味がある30〜40代の人にアプローチした。アプローチ後は、開封率および開封率の属性まで分析してフィードバックすることで、実は他の世代の方が刺さったなど、推論も立てられた。今後はさらに良い結果につながることを目指している。

社内全体でMAをうまく活用してサイクルを早めていきたい

最後に長倉氏と野坂氏のお二人に、1年やってみた上での所感を尋ねると、野坂氏は「顧客属性などを分析する中で見えてきたことは色々あります。たとえば、有料顧客で辞める方は千差万別で、中には1カ月で辞めてしまう方もいらっしゃいます。そういった方たちは、あるトピック(事件)に興味があって会員登録したものの、その話が収束したら辞めていくという流れが見えました。ただし、それに対しての施策はまだ決め手がありません。また、データを完全に見ることが出来ているわけではないので、さらに顧客分析を急ぎたいですね」とコメント。

長倉氏は「今後さらに進化させたいと考えているのは、データをもっと取り込んで分析し、感覚ではないデータに基づいたペルソナの作成です。そして、ペルソナにあわせたシナリオを作成し、CVの精度を上げたいと思います。記事ログから興味関心がわかるので、大手ビッグデータの会社にはない貴重なデータが手元にあると考えています。それを生かさない手はない」と話し、今後については「我々メディア開発室以外のスタッフもMAをうまく活用し、自分たちを通さず直接フィードバックを得るなどしてサイクルを早めていければ」と語った。