J-オイルミルズ社による、ECサイトの顧客データ活用によるCRMへの取り組みの狙い


Writer:
山崎雄司
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日本の製油業界を長年支えてきた味の素製油、ホーネンコーポレーション、吉原製油の製油大手3社が、2004年に合併して誕生した株式会社J-オイルミルズ。同社は家庭用油脂や業務用油脂、マーガリンなど、これまでさまざまな商品を展開してきた。今回は、同社のEC運営を行っている、根岸氏、片山氏からECサイトにおけるCRMの取り組みについてお話を伺った。

株式会社J-オイルミルズは、「AJINOMOTO オリーブオイル」や「AJINOMOTO 健康サララ」などCMでお馴染みの商品も多く、近年は健康に対する意識の高まりとともに、「AJINOMOTO アマニ油」や「AJINOMOTO えごま油」といった商品も注目を集めている。これまで同社は、お得意先の支援に支えられ、家庭用製品は店頭での販売が主流であったが、2020年3月に自社のオンラインショップを開設。販売だけでなく、オイルの持つ魅力やお客様の声などを掲載し、充実した内容となっている。

J-オイルミルズ公式オンラインショップ 

MAツール導入のきっかけは
お客様の声の収集とリソース不足の解消

 
油脂事業部の家庭用部販売グループでECの運営を担う根岸氏は、EC開始以前の課題について「従来型の販売スタイルではお客様と直接つながる機会が少なく、リアルな声を拾いづらかった」と話す。

「当社は食品メーカーですので、基本的に小売業者様を通じて商品を販売することがメインではありますが、その上で消費者様と直接接点を持てる自社ECの存在は、お客様の思いやご意見をダイレクトにいただける貴重なプラットフォームです。また、EC限定商品の販売などから得られるデータ収集も、重要な役割だと考えています」(根岸氏)

根岸氏の言葉にあるように、同社では早い段階からお客様アンケートによる定性データの活用に着目してきた。

「定量的なデータは注文履歴やメルマガ配信などで把握できますが、定量的なデータを裏付ける、根拠になるようなお客様の声を求めていました。どの商品が売れているのかということはデータを見れば分かりますが、それがなぜ売れているのかという本当の理由はお客様にお聞きしないと分かりません。ですから、直接お伺いして、そのお声を商品開発やサービス改善に活かしていきたいと考えていました」(根岸氏)

しかし少人数体制でEC業務を回していたため、やることが山積みでなかなかお客様アンケートまで手が回らなかったという。また、CRM施策や購入後のフォローをほとんどできていない状態だったこともあり、EC立ち上げ直後からなるべく少ないリソースで作業を自動化・簡略化できるという点でもMAツールの導入を検討していた。

根岸氏とともにECの運営を担当する片山氏は、導入前の状況について「Google Analyticsをメインに使っていたため、そちらでは細かい分析をすることが難しく、ストレスを感じていた」と話す。

 

アンケート機能やメールの自動化、
指標のダッシュボード化等、
課題を一手に解決できる点が魅力だった

 
そんな時に出会ったのがカスタマーリングスだった。他社が扱う類似ツールも併せて検討したが、導入の大きな決め手になったのは機能の豊富さと料金のバランスが良く、コストパフォーマンスが高かったことだと根岸氏は話す。

「他社のツールは、機能が充実していても機能ごとにカスタマイズ料金がかかったり、一方機能は制限されるけれど安価なものであったりする中、カスタマーリングスは我々のサービスの規模感や将来的にやりたいことを考慮した時にバランスが良いと感じました」(根岸氏)

それまで使用していたGoogle Analyticsでは、データの加工に非常に手間がかかるというデメリットがあった。Google Analytics上で完結できることであれば問題ないが、データとデータを掛け合わせて1つのデータを作成するといったことはGoogle Analytics単体ではできない。そのため、それができるツールというのは大きなメリットだったという。

「Google Analyticsや受注管理システムではひと手間加えないと見られないデータが、カスタマーリングスではダッシュボード化することでいつでも見られます。新規顧客のリピート率や購買頻度、それから商品別(カテゴリ別)のリピート率や購買頻度も見える化することで、定量的にお客様の購買傾向をチェックできますし、アンケート機能を用いて顧客情報と紐付けながらお客様の生の声を定性的なデータとして取れる点も非常に良いと感じました。Google Analyticsでは定量的な数字は見えますが、お客様1人1人の行動履歴までは追いづらく、お客様の顔が見えてこないという点が課題の1つでした。その点カスタマーリングスでは、お客様がどのような行動をされているのかが見えやすく、非常に助かっています」(片山氏)
 

購入者アンケートや分析によって分かった
送料と購入頻度の課題

 
カスタマーリングスの導入を機に、ECが抱える課題を明らかにするために購入者アンケートを始めたことで、新規獲得・リピート購入共に送料に課題があることが見えてきたという。

「我々が取り組むべき課題を把握するために、アンケートにはEC全般の質問を記載しました。すると送料に関する回答が非常に多く、それを深掘りしていくと、商品単価に対する送料の高さが浮き彫りになったのです。送料の課題はこれまでも仮説としてはあったものの、明確な根拠がなかったため検証を後回しにしてしまっていました。それがお客様の声としてリアリティのある言葉で見えたことで、アクションを起こしやすくなったのです。また、アンケートでは、ありがたいことに送料無料になる金額を段階的に設定してみてはどうかといったご提案も頂戴しました。お客様のご意思というのはアンケートを取らないと分からないことでしたので、貴重なご意見として参考にさせていただいています」(根岸氏)

送料の課題については、送料がお得になるような商品を販売することで、新規獲得(初回購入)にどの程度効果が見込めるかを検証したところ、滑り出しとしては上々で、CPOが約33%改善されたという。「アンケートによる定性的なデータが検証を推進するための追い風となった」と根岸氏は話す。

 

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定量データと定性データでは見えることが違い、同じ定量データでも単一データを見る場合と複数のデータを横断的に見る場合とでは得られる情報は変わってくる。当然、横断的に見ることでより顧客に対する理解が深まるわけだが、J-オイルミルズは「アンケートを軸にデータを横断的に見て、顧客の実態を知る」という顧客実感を実践している好例と言えるだろう。同社では、アンケートにはインセンティブを付与していないが、非常に多くの顧客から回答を得ており、回答率は約10%、メールの開封率は最低でも30%という数字を上げている。アンケートはインセンティブがついていても10%の回答率があれば良いと言われているため、インセンティブなしでこの数字というのは非常に高く、このようなところからも日頃の取り組みが総合的に顧客に評価されていることが分かる。
 
さらにカスタマーリングスの分析によって、購買頻度に関する課題も明らかになった。

「油は一度の使用量が多くはないため、一般的な食品に比べて購買頻度は低いだろうとは思っていました。ところが分析によって商材ごとに購買頻度がまったく違うことと、思った以上に購買頻度が高くないという結果がデータとして出てきてしまったので、そこは真摯に向き合うべきことだと感じています。現在は、最低限の顧客フォローすら不足していたことを改めて痛感し、限られたリソースの中で出来る限りの顧客フォローを実現していっています。
 
1つ1つのWeb上の接客、梱包をはじめとしたフルフィルメント、カスタマーサポートのお客様対応などには特に気を使い、顧客からの指摘には必要であれば即座に改善するということを徹底しているというECチーム。実際アンケートには、梱包やカスタマーサポートに対するお礼の言葉も寄せられているそうで、「我々がやっていることは間違いではなかったと感じます」と根岸氏は話す。購入者アンケート以外にも、ECサイト内の商品レビューを依頼するレビュー促進やバースデーメールなどを定期的に配信し、開封率、CTR、CVRで施策の効果を計っている。
 

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カスタマーリングスの活用で改善されたリソース不足

 
カスタマーリングスの活用によって、導入前の課題の1つだったリソース不足は少しずつ改善されてきた。週に3本、手動で運用していたステップメールの業務が自動化されたことで、週に2時間程度はリソースが削減でき、他の作業に時間を当てられるようになったという。また、Google Analyticsや受注管理システムからデータをダウンロードして再計算していた作業も、カスタマーリングスのダッシュボードにすることで作業が軽減された。自動化される作業は、雪だるま式に効果が蓄積されていくため、利用を続ければ続けるほど削減効果は大きくなっていくのは非常に助かる上、送信ミスをはじめとしたリスクも軽減されたと根岸氏は話す。

「リピート率やLTVなどは、データの粒度が細かくなればなるほどデータを見るまでの作業工程が多いため、確認したい時にすぐに見ることができませんでしたが、カスタマーリングスを使うことで定常的に確認できる指標として活用できています。以前は時間があればここまで見たいのに……と思いながらやっていましたが、今は効率化したことで断念することがなくなり、新たな施策を考える余裕も生まれました。管理画面を開いてデータをダウンロードして……という作業に対する、億劫な気持ちがなくなったことも非常に大きな要素ですね。また、カスタマーリングスはカスタマーサクセスによるオンボーディング支援も万全で、こちらの意図を汲み取って細かい部分まで設定を確認してくださったり、複数の設定方法のうち目的に合った方法を丁寧に解説いただけたりするなど、ありがたいサポートを受けています。他社の設定状況や分析事例なども非常に参考になりますし、我々に並走しながら、時に発破もかけつつ前のめりで設定を進めてくださったのは助かりました」(根岸氏)

最後に今後の展望について伺うと、「当面は顧客行動に沿ったCRMを充実させることでお客様の態度変容を促し、皆さんに納得した上で商品を購入していただけるよう、カスタマーリングス上のコンテンツを作成していきたい」と根岸氏。また、目的に合わせて定期的にアンケートを取っていくことで、ECのサービス改善やEC専用品の開発につなげることはもちろん、社内にも顧客の声やECで取得したデータを発信し、会社全体のマーケティング活動にも役立てていきたいと結んだ。


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