今さら聞けない「CX(Customer Experience)」 - デジタル時代を生き抜く基礎知識


Writer:
山崎雄司
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マーケティング業界において、ますます重要視されているCX(顧客体験・Customer Experience)。昨今では、デジタル化の進展に伴い顧客接点が多様化している上、SNSの浸透によってCXが多くの消費者間で共有されている。そのため、CXの評価がそのまま企業評価にもつながる可能性があり、企業およびブランドにとってCXの重要度は日に日に増しているといえるだろう。今回は、CXの基本を改めて整理し、CXの改善・向上のために必要なアクションと、考慮したいポイントを解説する。

CX(顧客体験・Customer Experience)とは


CXとは「Customer Experience」の略称であり、「顧客体験」と訳される。顧客と、特定のブランドや商品との接点における顧客の“すべての体験”、つまり、商品の認知段階から実際に購入し、使用するという一連の体験のことを指す。なお、対象は、「既存顧客」と「見込み客」の双方で、オフラインおよびオンラインでの“すべての体験”を包括的に捉える必要がある。

参考:オンライン化が進む企業・ブランドのマーケティングにおいて、CX(顧客体験)を高める4つの手法

CX(Customer Experience)が今、注目されている理由


CXが注目されている背景には、以下の3つの理由があると考えられる。

1.SNS等によるCXの共有

インターネットの生活への急激な浸透により、誰でもどこでも、口コミを広く発信することが可能になってきている。これまでも、口コミサイトや掲示板のような「CGM(Consumer Generated Media/消費者生成メディア)」を活用したマーケティングは行われていたものの、昨今のSNSの急速な普及により「UGC(User Generated Content/ユーザー作成コンテンツ)」の影響が一気に拡大してきている。その結果、商品の購入前にSNSをチェックするのは一般化してきており、CGMに投稿されているUGCの内容から読み取れるCXが、購買前の意思決定を大きく左右するケースが非常に多くなってきている。こうした背景から、UGCの活用がマーケティングの大きなトレンドの一つとなっている。
※なお、CGMとは、ユーザー参加型の“メディア”であり、SNSやナレッジコミュニティ、口コミサイトなどの「場」が該当する。またUGCは、消費者が主にオンライン上で発信する“コンテンツ”の総称で、具体的にはSNSの投稿や写真、動画、ブログなどのデータを指している。

2.商品のコモディティ化

これもよく言われていることではあるが、商品のコモディティ化(一般化)によって商品自体の価値の差別化が難しくなったことも、CXが注目されている理由の一つだ。なんでも手に入れることができる時代になり、商品そのものの機能や性能、価格といった「モノ」の価値のみで顧客へ満足感を与えたり、差別化したりすることが難しくなっている。その結果、CXのような感覚的・非物質的価値を含めた総合的な評価が企業・ブランドには求められるようになってきているのだ。

3.顧客接点の多様化

インターネットやスマートフォンの普及によって顧客接点はここ十数年で一気に増加し、多様化している。情報へのアクセスも容易になり、顧客が自分自身で商品やサービスを比較することが当たり前になっている。そのため、商品やサービスの質を向上させるだけではリピーターやファンを増やすことが難しくなっており、競合他社との差別化をはかるためにも、企業はあらゆる顧客接点において印象的なCXを提供する必要が出てきている。

CX(Customer Experience)改善のためにするべきこと


では、CXを向上させるためには、具体的にどのようなアクションをとればよいのだろうか。4つのステップに沿って見ていこう。


1.カスタマージャーニーマップの作成

カスタマージャーニーはマーケティング手法の一つで、顧客が商品やサービスを認知し、情報収集を行って、購入、その後に評価するという、顧客の行動や思考を時系列で表す一連の行動のこと。これを、図表などを用いて可視化し、それぞれの段階で効果的な対応策を組んだ行動マップが、カスタマージャーニーマップである。
カスタマージャーニーマップの作成によって、一連の顧客行動における総合的なCXを見える化し、顧客視点でニーズや購買心理を把握できるだろう。

2.課題を抽出する

次に、現状の課題を抽出する。課題を明確にするためには、顧客との理想的な関係性(目標)と現状を比較し、その隔たりを埋めるために必要なことは何か、データを用いて分析する。
まずは、企業が提供しているCXの現状を、客観的かつ正確に把握しておきたい。たとえば、カスタマージャーニーマップを用いて顧客行動を段階ごと(時系列や顧客接点)で区切り、それぞれの現状にどのような課題があるのかを分析。その際、定量データだけでなく、アンケートやソーシャルリスニング(SNSや口コミサイトのデータを収集・分析するマーケティング手法)なども活用したい。これらの定性データを分析し、顧客心理を把握することで、顧客との理想的な関係性を築くヒントを得ることができるだろう。

3.仮説を立てる

これまでの課題を抽出したら、改善のための仮説を立てる。しっかりとした仮説を立てるためには、幅広いデータのインプットが必要だ。課題と向き合い、さまざまなデータから顧客心理を捉え、より具体的な仮説を立てることで、改善策一つひとつの効果を予測できるようになる。

4.施策を実行する

仮説を立てたら、施策を実行する。その際、顧客視点を見失わないよう、実際の顧客を巻き込む形で実施したい。そのためには、プロトタイプを活用して検証を行い、常に仮説を立てながらPDCAを回すことが大切だ。このように何度も仮説と検証を繰り返し、PDCAを回しながらより効果的なマーケティングを追求することで、CXの向上につながる。


CX(Customer Experience)改善時に考慮すべきこと


CXの向上・改善のための施策を実行するにあたって意識しておきたいのは、「顧客満足度(Customer Satisfaction、略してCS)」である。提供したCXに対する顧客心理を測ることで、より効果的な改善につながるため、CSの可視化はCX改善時には避けて通れないものとなる。

顧客満足度を測る上で注意しておきたいポイントを5つ見ていこう。

1.顧客満足度(CS)調査の定期的な実施

顧客満足度を測る方法の一つが「顧客満足度(CS)調査」である。認知から購入までの全プロセスにおけるCXに着目した調査で、顧客体験の要素ごとに評価する。
こうした調査は、一度実施しただけで結論が出るものではない。定期的に検証を行い、PCDAサイクルを回し続けることが大切である。

2.顧客満足度(CS)の可視化

顧客満足度(CS)調査は、主にアンケートやインタビューの形式が用いられる。これらを数値化し、可視化することで、客観的な評価ができる。

3.推奨度(NPS®)の計測

NPS®とはNet Promoter Scoreの略で、企業やブランドに対する顧客の愛着度や信頼度(顧客ロイヤリティ)を数値化したものである。こちらも顧客満足度を測る指標であるが、事業の“成長率”との相関性があることから注目され、多くの調査によって“業績”との関係も証明されている。
具体的には、「他人にどの程度薦めたいか」というシンプルな質問をし、その可能性を顧客に0~10点の点数で評価してもらうというもの。0~6点を“批判者”、7~8点を“中立者”、9~10点を“推奨者”に分類し、次の計算式を用いて算出する。

推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=NPS®

推奨者の割合が高く批判者の割合が低いほど、NPS®のスコアは高くなる。

注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標又はサービスマークです。

参考:NPS®とは?NPS®の本質を理解しデジタルマーケティングの成果を最大化しよう

4.カスタマージャーニーマップの定期的な見直し

顧客満足度(CS)調査やNPS®は、カスタマージャーニーマップと組み合わせることでより効果を発揮する。カスタマージャーニーマップは、なるべく簡潔に、視覚的にわかりやすく作成し、課題を定期的に見直すことが大切である。

5.顧客実感をベースにしたKPIの設定

顧客満足度(CS)調査やNPS®のデータを取り扱うことで、バリエーションに富んだKGIやKPIの設定が可能となる。ただし、数値ばかりにとらわれず、顧客の状態を正確に把握することが重要だ。KPIツリーを作成し、KPIに設定した理由や具体例を顧客視点で盛り込み、補足していくことで、顧客の現状が見えてくるだろう。
また、こうした複数の顧客情報を取り扱うには、CRM(顧客管理ツール)やCDP(顧客データプラットフォーム)の利用も検討したい。CRMやCDPの活用によって顧客の多面的なデータを統一し、顧客毎にかゆい所に手が届く施策を進めることで、顧客実感の伴ったKGI・KPIの運用が可能になるだろう。

参考:デジタルマーケティングでの行き過ぎた「数値」のみのKPI管理への警鐘~実感をベースにしたKPIこそ重要~

CX(Customer Experience)改善に有効なツールとは


CXの改善を測る上では、提供するCXと顧客満足度とのギャップを埋めることが重要である。企業側が考える価値が、顧客の求めるCXとマッチしていないケースが多々起きており、また、それを十分に把握していない企業が多いのも現状だ。こうしたギャップを把握し、改善するために有効なツールをいくつか紹介する。

CDP

CDPとはCustomer Data Platformの略で、顧客データを収集・分析・統合するプラットフォームのことを指す。顧客の属性や嗜好、行動履歴などの詳細なデータを収集し、顧客ごとのIDを作成。そして複数のデータを顧客IDに集約し分析することで、顧客一人ひとりに合わせた適切なアプローチを可能にする。

参考:CDPツール比較 - One to Oneマーケティングのデータ基盤となる主要サービスを徹底比較

テキストマイニング

テキストマイニングは、アンケートやSNSなどから定性データを分析し、見える化するツールである。ギャップをより明確にするためには、顧客満足度(CS)調査やNPS®のデータからフィードバックを得る必要があり、そこではテキストマイニングが有用である。

このほか、MAやCRM、チャットサポートといったツールも、顧客理解を深め、顧客とのより良い関係の構築に役立つだろう。しかし、これらのツールを用いただけで満足してはならない。ギャップを明確にしたあとは、それを埋めるための施策を立て、実行することが大切だ。同時に、顧客ニーズに合った商品やサービス開発・改善にも活用できるだろう。

顧客目線で優れたカスタマーエクスペリエンスを


顧客接点が多様化する中で、顧客にとって印象的なCXを提供するには、企業側がCXの意味や重要性を理解することが大切だ。「顧客視点」でCXを捉え、常に仮説を立ててPDCAサイクルを回し続けながら、カスタマージャーニーマップの見直しや顧客満足度(CS)、NPS®の測定も定期的に行おう。顧客を巻き込む形での施策実行を繰り返しながら、その都度改善を図ることで、より優れたCXの提供が可能となる。多様なデータから顧客を理解し、時代やニーズに合った感動的なCXの提供へつなげていきたいものである。

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