CDPツール比較 - One to Oneマーケティングのデータ基盤となる主要サービスを徹底比較


Writer:
山崎雄司
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デジタルマーケティングの進化と共に、個々のニーズに合わせたOne to Oneマーケティングが定着しつつある。そのデータ基盤となるのがCDPだが、提供されているCDPツールの種類は近年非常に増えてきている。 今回は、CDPールの概要から、企業の導入実績の多い主力サービスを紹介し、それぞれの機能および費用面から比較を行っていく。

CDPツールとは


CDPとはCustomer Data Platformの略で、顧客データを収集・分析・統合するプラットフォームのことを指す。顧客の属性や嗜好、行動履歴などの詳細なデータを収集し、顧客ごとのIDを作成。そして複数のデータを顧客IDに集約し分析することで、顧客一人ひとりに合わせた適切なアプローチを可能にするものが、CDPツールとなる。
CDPツールと混同されがちなツールにDMP(Data Management Platform)がある。実際に似たような機能をもつツールも多いが、収集できるデータの内容や目的が異なる。
DMPにはパブリックDMPとプライベートDMPの2種類がある。パブリックDMPは自社以外の第三者が所有する“サードパーティーデータ”を一元管理するツールだ。外部サイトの“匿名データ”を扱うため、CDPツールで収集した顧客データを補完する役目がある。一方、プライベートDMPは、自社サイトにある個人のオンラインデータや、実店舗で集めたオフラインデータなどの“ファーストパーティーデータ”を一元管理するツールである。プライベートDMPは、“ファーストパーティーデータ”を扱うという点でCDPツールと類似しているが、プライベートDMPのほうがより広義な意味をもつ。
また、DMPの主な目的は、Web広告のターゲティングの精度を改善し、広告を最適化することである。一方、CDPはセグメントではなく「実在する個人」に紐付けて情報収集するものであり、個人を特定できるメールアドレスや氏名・住所など、より個人にフォーカスしたデータが中心となる。
参考:CDPを活用して顧客情報を統合・管理し、マーケティングに活用していくための基本ステップ

CDPツールを選ぶ際の基準


市場には多くのCDPルが存在しているが、どのように選んでいけばいいのだろうか。ここでは、CDPツールを選ぶ基準として、5つの重要なポイントを紹介していく。

1.目的に応じたツールの機能および拡張性

CDPツールの導入に当たっては、まず自社の課題を洗い出すとともに、CDPツール導入の目的を明確にすることが大切になる。そして、その目的を達成するために必要な機能があるかを確認しておこう。また、将来的に必要な機能が追加できるよう、拡張性の高さもチェックしておきたい。

2.既存システムや他システムとの連携がしやすいか

CDPツールは、自社が保有する“ファーストパーティーデータ”を一つのIDのもとに統合するため、多くのシステムとの連携が必須となる。CDPツールに集積するデータは、オンラインでの行動履歴だけでなく、実店舗での購買情報や来店記録などのオフラインデータも含まれる。そのため、自社の既存システムや、他システムとの連携のしやすさが重要となる。

3.導入時だけではなく運用後のサポート体制も充実しているか

新たなツールを導入する際には、トラブルが発生することが多い。スタッフがツールの使い方に慣れるまでに時間がかかり、従来のワークフローにも変化をきたすため、現場では混乱が起こりやすいことも背景にある。
また、CDPールには、多機能なものやシンプルなものなど、それぞれに特長や強みがある。そのため、ツールを使いやすいと感じるか、その機能を使いこなすことができるか等について、人によって感じ方は様々だ。
そのため、サポートが充実しているか、ベンダーからの迅速な対応を得られるかどうかを事前に確認することはとても重要だ。新しいしっかりとしたシステムを提供しているベンダーは、しっかりとしたサポート体制も併せて敷いているケースが多い。

4.費用対効果

一般的に、ツールの導入および運営には費用がかかるものだが、機能重視で高額なツールを選ぶと、使いこなせず効果を引き出せないことも。将来的な拡張性も含め、費用対効果を長期的および総合的に検討する必要がある。また、導入してすぐに結果が出るわけではないため、短期の無料トライアルで安易に判断せず、1年がかりなどで、じっくりと着実に取り組む姿勢を持って検討する必要がある。

CDPツールおすすめ6の主要サービス


それでは、具体的に、CDPールを見ていこう。国内には多くのCDPールが展開しているが、そのなかでおすすめの主要サービスをピックアップした。

※以下の料金プラン等については、2022年1月時点の情報で記載しているため、実際に検討および利用する際には各社の公式ホームページを要確認。

1.Treasure Data CDP


運営元:Treasure Data Inc./トレジャーデータ株式会社
料金プラン(月額):問い合わせ

Treasure Data CDPは、大企業や官公庁などを中心に、国内外で圧倒的な実績数を誇るクラウドシステムである。170を超える連携コネクタを標準装備しており、多くのツールとのデータ連携が可能。さらに、機械学習エンジンを搭載した顧客分析により、正確なターゲティングを実現する。セキュリティも徹底しており、グローバルなプライバシー規制に準拠できる柔軟かつ高度なセキュリティシステムを提供している。
また、サポートも充実しており、所属エンジニアによる技術的な支援やトラブル対応など、導入時から運用後まで包括的にサポートする。

2.Rtoaster insight+


運営元:株式会社ブレインパッド
料金プラン(月額):問い合わせ

Rtoaster insight+は、自社開発のプライベートDMPツール『Rtoaster』のリブランドに伴い開発されたCDPツールである。自社メディア上に分散している顧客データを収集し、ID統合されたデータを後続のアクションに活用できるよう設計されている。GUI(Graphical User Interface)によって優れた操作性を実現。また、ML(機械学習)エンジンを用いた顧客の自動分析機能を搭載。
Rtoasterのプロダクトは、このほかにWeb・アプリのコンテンツ最適化プラットフォ「Rtoaster action+」と、マルチチャネルメッセージツール「Rtoaster reach+」があり、これらを自由に組み合わせて利用できる。外部ツールとの連携実績も豊富で拡張性が高い。さらに、データ活用のスペシャリストによる運用支援サービス・サポートも充実しており、2006年の提供開始からブラッシュアップし続けてきた実績から、セキュリティ対策も万全である。

3.INTEGRAL-CORE


運営元:株式会社EVERRISE
料金プラン(月額):問い合わせ

INTEGRAL-COREは、顧客一人ひとりに対し、4Rコミュニケーション(4R:狙い通りの相手に(Right Target)、適切なタイミングで(Right Timing)、最適なチャネルで(Right Channel)、正しいメッセージを届ける(Right Message))を実現するマーケティングシステムだ。それぞれのツールで収集したあらゆる顧客データを、ノーコードで収集・統合・連携することができる。日本初の米国CDP協会加盟企業である。
開発元であるEVERRISEは、アドテク開発を多数手がけており、データの高速処理性能に優れたシステム構築を得意としている。そのため、リアルタイムデータを活用した課題解決が可能だ。また、高度かつ柔軟なセキュリティ機能をもち、顧客データのアクセス権限管理の設計によって、他事業部やグループ会社などを含む会社全体でデータ活用ができる。サポートも充実しており、導入支援だけでなくコンサルティングや技術面のバックアップなども行う。

4.Adobe Experience Platform


運営元:アドビ株式会社
料金プラン(月額):問い合わせ

Adobe Experience Platformは、あらゆるデータをリアルタイムで顧客プロファイルに変換し、パーソナライズされた顧客体験を提供するツールだ。「Adobi Sensei」による機械学習と人工知能(AI)を利用したデータサイエンスを適用することで、顧客インサイトを発見し活用することが可能である。さらに、Adobe Experience Cloudのソリューションとの連携はもちろん、APIによる他システムとの連携も可能な、オープンかつ拡張性の高い設計となっている。また、データガバナンス機能を搭載しており、プライバシーとIDを厳密に管理できるためセキュリティ面も安心だ。

5.カスタマーリングス


運営元:株式会社プラスアルファ・コンサルティング
料金プラン(月額):問い合わせ

カスタマーリングスは、CRMとMAツールから進化した、顧客実感型マーケティングプログラムである。ノーコード(プログラミング技術がなくてもWebサイトやアプリを開発できるツール)であるため、手軽にCDP環境の構築ができ、自由な条件でのセグメントも可能だ。あらゆる顧客データを統合し、多彩な分析機能によって顧客一人ひとりを可視化。「深い顧客理解=顧客実感」の発想で、着実に推進できる伴走型支援体制が特長である。

6.b→dash


運営元:株式会社データX
料金プラン:問い合わせ

b-dashは、MA、DWH(データ統合)、WEB接客、BI(分析ツール)など、データマーケティングに必要な機能を網羅したツール。業界初のデータ統合テクノロジー「Data Palette」によって、ノープログラミングで、誰でも簡単に、GUI(画面操作)でCDPを構築できる。また、データ統合基盤「b→dash CDP」で、マーケティングプロセスにおける全てのデータをひとつに集約・連携することが可能。

よくある課題ごとのおすすめツール


主要なCDPツールを紹介してきたが、どのサービスも似たような部分も多く、違いが分かりにくい部分も多い。そこで、ここでは、よくある課題パターン別に、どのサービスがおすすめかを考えていく。

[課題]
*社内に分散しているデータを収集・蓄積・統合したい
*自身で設定した条件での顧客分析結果からターゲットセグメントを作成したい
→『Rtoaster insight+
 
[課題]
*BI(Business Intelligence)、MA、LPO(Landing Page Optimization)などの他ツールと連携したい
*リアルタイム性やデータの処理性能を重視したい
→『INTEGRAL-CORE

[課題]
*顧客のニーズを狙ったアプローチをしたい
*ノープログラミングで顧客データプラットフォームを作成したい
→『b-dash

[課題]
*導入だけでなく、運用後も支援して欲しい
*「誰でも」「すぐに」必要なデータを準備でき、やりたい施策も同時に実施したい
→『カスタマーリングス

CDPと連携すると便利なツール


CRDPツールはそれ単体でも十分効果を発揮するものだが、関連する他のツールを連携することで、より効率的なマーケティングの実現が可能になる。それぞれ具体的な連携方法とメリットを見ていこう。

MAツールと連携

MAツールにCDPツールを連携させると、それぞれで保有していたデータが紐付けられ、顧客一人ひとりの人物像がより明確になる。そのため、精度の高いターゲティングが可能となり、顧客のニーズに沿ったメールマガジンの配信など、より深い顧客体験の設計が可能になる。
 

BIツールと連携

BIツールの基本的な機能として、レポート作成やオンライン分析、データマイニング、ダッシュボードなどがある。CDPツールと連携させることで、CDPツールだけでは難しい複雑な分析を可能にし、その結果をダッシュボードで即共有できるようになるなど、より有効に顧客情報を活用できる。

CDPツールの運用の注意点


CDPツールは導入するだけで効果が出るものではない。しっかりと、目的をもって運用していくことが重要になる。ここでは、企業がCDPツールを運用する際にどのような点を考慮するべきかを整理していく。

1.同意管理(コンセント・マネジメント)

日本に限らず、世界各国でプライバシー保護に関する法案改正が進み、個人情報の取り扱いに関する規制が厳重化しつつある。そこで注意したいのが「同意」の管理だ。ユーザーからの同意情報は、オンライン・オフライン問わずあらゆるチャネルから収集される。そのデータを、ユーザーごとに、適切に管理する必要がある。
現時点では、CDP構築時の対応は必須ではないものの、今後対応を迫られる可能性が高いため、自社のプライバシーデータの管理システムを見直しておきたい。
参考:3rd Party Cookieの代替方法(2):コンセント・マネジメント(同意管理)で実現する攻めのデータ利活用 - PLAZMA by Treasure Data

2.個人情報漏えいのリスク

CDPには、個人を特定できる情報が多く蓄積されている。そのため、ツールのセキュリティ機能を過信せず、データの取り扱いには十分に注意したい。個人情報の暗号化や、不正タグを制御・検知・監視するツールの導入などの対策をしておくと安心だ。

3.プライバシーポリシー・規約の確認

2022年4月から改正個人情報保護法が施行されることを踏まえ、自社のプライバシーポリシーや規約について、現状で問題がないか法務担当とも確認しておきたい。

自社に最適なDPツールの導入でより深い顧客理解を


CDPツールを導入すると、顧客のニーズをリアルタイムに把握でき、効率的なマーケティング施策が可能になる。営業成績の向上のみならず、会社全体の業務効率化にもつながるだろう。ただし、CDPツールなら何でも導入すれば結果が出る、というわけではない。さまざまなCDPツールの特長を比較し、自社の課題やコスト、既存システムとの相性、提携したいツールとの相性などを見極め、自社に合っているものを選択することが大切だ。CDPツールを適切に活用し、顧客一人ひとりへの理解を深め、よりパーソナライズされた顧客体験の提供の実現につなげていきたいものである。

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