今さら聞けない「ビッグデータ(Big Data)」 - デジタル時代を生き抜く基礎知識


Writer:
山崎雄司
  • facebook
  • Twitter
  • LINE

世の中のデジタル化と共に、DX(Digital Transformation)やデータ駆動型経営など、デジタルデータを用いた経営戦略が注目を集めている。これらの取り組みを成功させるためには、多種多様で豊富なデータの収集と、それらの効果的な活用が必須となる。そこで今回は「ビッグデータ」に注目し、ビッグデータの基礎知識から、注目されるようになった背景、ビッグデータマーケティングの具体的な事例まで幅広く解説していく。

ビッグデータとは


ビッグデータ(Big Data)とは、従来のデータベース管理システムなどでは記録や保管、解析が難しい巨大なデータ群を指す。この「ビッグ」が指すものは量的側面だけではない。さまざまな種類や形式のデータによって構成された、非構造化データを含んでおり、情報源も多様だ。このようなビッグデータのもつ特性については、2001年にアメリカのIT調査会社であるGartner社によって「3つのV」として提示された。

Variety:テキストや画像、音声などの多様な情報や形式などの“データの多様性”
Volume:膨大な“データ量”
Velocity:リアルタイムデータのような“データの処理速度・頻度”

なお、これら「3つのV」に、Veracity(正確さ)やValue(価値)を加えることもある。

参考:総務省|平成24年版 情報通信白書Gartner | Big Data

ビッグデータの活用が普及した理由


ビッグデータが今日のように普及するまでの流れは、3つの段階に分けることができる。

1.デジタルデータへの移行とコンピュータの高速化

紙媒体のアナログデータからデジタルデータへの移行が、今日のビッグデータ活用に大きく影響している。また、コンピュータの通信速度やデータ処理速度が高速化したことで、デジタルデータの活用がより容易になった。

2.インターネットの普及とコンピュータの高度化

インターネットの普及によって、世界中のデータにアクセスできるようになり、情報量が増加。また、Hadoop(データの分散処理技術)の誕生など、コンピュータ技術の高度化が進み、ビッグデータの効率的な分析、活用が可能になった。

参考:Hadoopとは何か? | SAS

3.SNSの普及とAI技術の発展

スマートフォンやSNSなどの普及によって情報収集の範囲が広がり、個人に関する詳細な情報が爆発的に増加。さらに、AI技術が大きく発展したことで、ビッグデータを迅速かつ正確に分析できるようになった。

ビッグデータの構造化データと非構造化データ


ビッグデータには構造化データと非構造化データがある。構造化データとは、ExcelやCSVのように、表や列の形式で情報がまとめられているデータを指す。一方、非構造化データは、このような形式が定められておらず、規則性による区切りのないデータ(テキスト、PDF、音声、画像、動画など)のことで、ビッグデータの内訳の多くは、この非構造化データが占めている。
マーケティングにおいてはこの両方を活用することが有用である。構造化された数値データを用いて、たとえば天気の変動と売上との関係などは把握できるだろう。しかし、「なぜ売れたのか?」を捉えることは難しい。この「なぜ?」を把握するために、非構造化データを活用する。
具体的には、顧客一人一人の好みをリサーチしたい場合、アンケートのようなテキスト情報(非構造化データ)を用いた「顧客の声」を活用する。その際に、構造化データである「行動ログ」と掛け合わせることで、理由と結果(購入)を把握することができるようになる。

参考:構造化データと非構造化データとは?活用の難しさと解決手法

ビッグデータを活用してマーケティングで何ができるか


ここでは、ビッグデータの活用にあたって具体的に何ができ、どのようなメリットがあるのかを解説していく。

データに基づいた意思決定が可能に

ビッグデータを活用することで、データに基づく迅速な意思決定や施策立案といったデータドリブンが可能となる。感覚的ではなく、データという客観的な根拠に基づいた意思決定は、周囲からの理解が得やすい。

行動データに基づくマーケティングの効率化と新たなアイデアの創出

マーケティングにおいて重要なビッグデータの一つが、ユーザーの閲覧履歴や検索履歴、購買履歴などの「行動データ」である。「行動データ」を活用することで、市場の動向や顧客ニーズを迅速に把握でき、効率的かつ効果的なマーケティングが可能に。また、膨大な「行動データ」から潜在的なニーズを引き出し、新たなアイデアを生み出す可能性も考えられる。

課題の把握と解決案の策定

ビッグデータはリアルタイムで更新される膨大かつ多様な情報であるため、自社の現状を客観的に捉えつつ、課題を的確に把握することができる。さらに、ビッグデータの中から自社の課題解決につながるヒントを得たり、解決のための具体的な施策を立てたりすることも可能だ。

顧客行動を予測

ビッグデータ活用における大きな役割の一つが「予測」である。ビッグデータに含まれる顧客の行動データの分析により、規則性や傾向、流行などが高精度で把握できる。そして、顧客の行動パターンを予測できるようになることで、最適なマーケティング施策が可能となる。

参考:ビッグデータとは? 意味や定義、活用事例、AIとの関係性をわかりやすく説明

ビッグデータを活用した事例


ここでは、ビッグデータを活用した具体的なマーケティング事例を紹介する。

メルカリ


フリマアプリを手掛けるメルカリ株式会社は、ビッグデータから以下の3つのKPI(重要業績指標)を算出し、施策立案に活用している。

3つのKPI(重要業績指標)

  • GMV(総流通額)=購入者数×購入者あたりの購入数×商品単価
  • STR(出品物の売却率)=売却数/出品数
  • 購入または売却LTV(一人当たり利用額)=初回利用率×継続利用率×単価


メルカリのユーザーには出品者と購入者がおり、それぞれ使いやすい機能は異なる。さらに、ヘビーユーザー向けの施策が新規ユーザーにとっては適さないケースも。こうしたビジネスの特性を踏まえ、上記のKPIを見るようにしているという。
また、ユーザー獲得のための施策を、オフラインとオンラインに分けている。オフライン施策として、たとえばTVCMなどにもビッグデータを活用。ユーザーの行動データから見えてくる課題をマーケティングチームで共有し、オフラインの施策の精度向上にもつなげているという。出品者と購入者どちらを中心の施策にすべきか、また、どちらも増加させるにはどのようなキャンペーンを打ち出すべきかといった戦略策定に、データ分析を用いているそうだ。
オンライン施策としては、クーポン配布が特徴的だろう。クーポンには、段階的に割引率が上がる(継続利用を促す)ものや、少ない出品カテゴリへの出品を促すもの、起こる可能性の低い購入・売却を促すものなどがあり、その内容設計やターゲットの選定にビッグデータを活用している。機械学習によって、未来の購入や売却の予測に基づいてクーポンを最適化するなどの施策を行った結果、従来よりも新規ユーザーの初回利用が2倍となり、投資回収率も100%を越えたという。

参考:【b→academy #10】メルカリの“やばい”データマーケティング ─ 爆発的成長を生む、本当は教えたくないメルカリ流グロースハックのすべて | Marketics(マーケティクス)

Amazon.com,Inc


大手ECサイトのAmazonは、ビッグデータを活用した高精度なレコメンデーション機能をもつ。顧客の行動ログや検索履歴、購買データなどを収集したビッグデータを基に、全世界の顧客一人ひとりの行動パターンを予測して、レコメンド商品の表示や広告表示を実施している。なかでも、複数の顧客の購買データを組み合わせる「協調フィルタリング」は特徴的だ。「この商品を買った人はこんな商品も買っています」という表示を見たことがある人も多いだろう。ビッグデータから別の顧客同士のデータの類似性や商品同士の共起性を把握し、それらを関連付けることで、顧客の心理パターンをも予測した精度の高いレコメンデーションを可能にしている。

参考:ビッグデータ活用事例10選!業種・企業別にご紹介

ダイドードリンコ


飲料メーカーのダイドードリンコ株式会社では、視覚の計測データ(アイトラッキング・データ)を活用している。小売業界ではおなじみの「Zの法則」(一般的に、人間は陳列されたものを左上から「Z」の順に見るという習慣)にとらわれず、自動販売機の配置を決める際にデータを活用。主力商品を、定説通りの左上ではなく下段に配置したことで、売上の向上につなげたという。

参考:【小売業】ビッグデータの活用事例25選!メリットやその方法を解説

あきんどスシロー


回転ずしチェーンの株式会社あきんどスシローでは、すべてのすし皿にICタグを装備。そこから得るさまざまなデータを運営に活用している。ICタグにより、ネタごとの売り上げはもちろん、お客様の入店から退店までの注文パターンをも把握。データを基に、適切なネタを最適なタイミングで提供できるよう努めているという。さらに、POSレジではすし皿の種類と枚数しか把握できなかったのが、ICタグにより「何時何分にレーンに流したか」というタイムリーな情報管理が可能に。鮮度の維持によってお客様満足度の向上につなげると同時に、廃棄ロスを大幅に減らし、コストの削減を実現している。

参考:あきんどスシローのビッグデータ活用と全日空のレガシー移行の“共通点”とは?

ビッグデータの今後の可能性


IoTデバイスやWebサービスのさらなる普及、SNSの台頭などにより、デジタルデータはさらに大容量化が進むだろう。2020年には「5G」の商用サービスが始まっており、データ流通はさらに加速化するとみられている。
ビッグデータの活用は、小売業のマーケティング戦略はもちろん、金融業や医療業、製造業、農業、行政などでもすでに多くの活用事例がみられる。最近では、トヨタ自動車がビッグデータを活用し、ペダル踏み間違い時の「急アクセル時加速抑制機能」を開発したことが話題となった。また、商用利用だけでなく、災害対策などの福祉方面でも活用が進んでいる。今後も導入企業の数は増えていくだろう。
ビッグデータの活用方法については、AIと組み合わせてより高精度なデータ抽出を可能にする技術が注目されている。AIの機械学習やディープラーニングは現在も発展しつづけており、データ量の増加とともに今後もさらなる精度の向上が期待できる。
一方で、ビッグデータを扱う際は、データの整理に時間を要することが課題となっている。また、セキュリティ面、プライバシー面などで注意すべき点も多い。
そして、ビッグデータを扱うに当たっては、活用する側もビッグデータについて理解を深める必要があるだろう。AI開発やデータの扱いに長けた「データサイエンティスト」のような人材も、今後ますます需要が高まっていくとみられる。

ビッグデータの活用で、高精度なマーケティングを


インターネットやIT技術の発展に伴い、ビッグデータの活用も多くの企業で実施されている。顧客行動や市場動向を高速かつ高精度に把握できるため、マーケティングの改善につながるのはもちろん、膨大なデータを分析し、その結果を基に自社の現状や課題を可視化することで、ビジネスチャンスの拡大も期待できるだろう。
今後、IT技術がさらに発展していくと、ビッグデータの必要性はさらに高まっていくと考えられる。しかし、ビッグデータの活用にあたってAIに頼りすぎると、施策立案などをいつまでもAIに頼り続けることになりかねない。ビッグデータを正しく用いて効果的な知見を引き出すために、まずはビッグデータについての理解を深め、上手に活用することで効果的なOne to Oneマーケティングにつなげていきたいものである。

メルマガ登録
  • facebook
  • Twitter
  • LINE