OMO型店舗(OMOストア)とは?導入のメリットや成功のポイントを解説


Writer:
山崎雄司
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コロナ禍を経てDX化が進み、ECサイトなどでのオンライン販売が定着した今、OMOの需要が急速に高まっている。オンライン(インターネット上)とオフライン(実店舗)を融合させるOMOは、顧客満足度の向上が期待でき、新たな顧客体験を提供できる戦略である。本記事では、OMOの概要と、OMOの概念を取り入れた「OMO型店舗」の導入メリット、成功に導くためのポイントなどを解説する。
 
 

OMOの概要


OMOはOnline Merges with Offlineの略称で、「オンラインとオフラインの融合」を意味する。これまでのマーケティング戦略では、オンラインとオフラインとを分けて考えることが多く、この2つの間をどう顧客に行き来してもらうかという視点での施策が中心であった。これに対し、OMOはオンラインとオフラインを分断せずに連携させ、それぞれのチャネルを総合的に考えることで、顧客目線に沿ったシームレスな顧客体験を提供することを可能にする。オン、オフの垣根をなくし、適切なタイミングで適切なチャネルを提供するOMOは、顧客満足度の向上だけでなく、業務の効率化も期待でき、企業のDX化においても注目されている。


OMO、O2O、オムニチャネルの違い


OMOに関連するワードとして、O2Oとオムニチャネルがある。
O2OとはOnline to Offlineの略であり、顧客をインターネット上から実店舗へと誘導する戦略のこと。具体的には、オンラインで実店舗の来店クーポンを配布、SNSの活用、公式アプリによるプッシュ通知やクーポン配布、GPSなどの位置情報機能を活用したリアルタイムでの販促施策などが挙げられる。
オムニチャネル(OmniChannel)とは、複数の販売チャネルを統合的に連携させ、販売経路に境界を設けない形態のこと。オムニとは「全て」を表すラテン語であり、オンライン・オフライン全てのチャネルで顧客一人ひとりに最適化したサービスを一貫して提供する施策である。
O2Oとオムニチャネルは、どちらもオンラインと実店舗の両方を活用していくものであるが、オンラインとオフラインを独立したものとして運用する。これに対し、OMOはオンラインとオフラインを分断せず、それぞれの良いところを採用していこうという考え方である。


OMO型店舗(OMOストア)とは


現時点ではOMO型店舗の明確な定義はないが、OMOの概念に沿ってオンラインとオフラインを融合し、新しい購買体験を創出する店舗のことをOMO型店舗、またはOMOストアと呼ぶ。新型コロナウイルス感染拡大の影響でDXが急速に進むと同時に、OMO型店舗の展開も加速。最近では、さまざまな企業がマーケティング戦略の一つとしてOMOを導入しており、今後もこの流れがさらに加速していくと考えられる。

OMO型店舗のメリット


OMO型の店舗を展開するメリットとして、次の4点が挙げられる。
 

1.新しい顧客体験の提供


OMO型店舗の大きなメリットの一つが、新しい購買体験の提供である。たとえば、オンライン展開のみの場合に発生する「試着ができない」といったデメリットを払拭すべく、オンラインで商品を選択すると、予約した日時に実店舗で試着できる仕組みなどが挙げられる。また、実店舗におけるオンラインの活用も効果的だ。たとえば、決済のオンライン化や、QRコードによる商品情報の提供などである。
このように、顧客に寄り添った施策をオン・オフの垣根を超えて実施することで、顧客満足度が向上し、他社との差別化を図ることができる。
 

2.顧客接点の増加


OMO型店舗は、オンライン・オフラインでの施策を通して顧客とのタッチポイントを増やせるのもメリットだ。顧客の流入量増に伴う販売拡大や、SNSの活用による認知度向上にも有効であり、顧客との良好な関係構築につながる。
 

3.顧客情報を収集できる


OMO型店舗は、基本的に購買はオンラインを経由するため、実店舗のみの運営と比較して顧客データを収集しやすい。さらに、店舗内にカメラやセンサーを設置することで、顧客が店舗内でどのような行動をとったかなど、多様な情報を収集するケースも増えている。また、OMO型店舗のシステム設計によっては、顧客の購買傾向を分析するのに役立つさまざまな情報を収集することができる。
 

4.ブランドイメージの向上


現状、OMO型店舗の導入事例はあまり多くないため、先進的な取り組みを実施しているという点がアピールポイントとなる可能性も。コロナ禍を経てDXが加速し、現在は店舗サービスのデジタル化が多くの顧客から求められている。そのため、OMO型店舗を導入することによって、デジタル技術を積極的に活用する企業としてブランドイメージの向上につながる。
 
 

OMO型店舗の事例


OMO型店舗の主な事例として、以下の3社を紹介する。
 

株式会社ワールドスポーツ(釣具店)


大型釣具店「釣具のキャスティング」を全国50店舗以上展開するワールドスポーツでは、店舗受取やコンビニ受取に加え、CRMを強化し、顧客や商品を軸にした分析と施策を実現。オンラインでも店舗でも同様のアプローチができるようになった。さらに、オンラインと実店舗における顧客行動を分析し、よりパーソナライズした内容のメール配信を行うなど、顧客に合わせたアクションを実施することで顧客体験の向上につなげている。


株式会社ベネクシー(アパレルメーカー)


ビルケンシュトックなどのシューズ販売やセレクトショップの運営を行うベネクシーでは、2016年にCRMを導入し、オンラインと店舗のシステムを連携。それによって商品別分析などが可能となり、販売チャネルの垣根を超えたLTVの把握が可能に。店頭ではシューズのフィッティングやアフターケアに重点を置き、そこからオンライン集客につなげる。さらに、オンラインでは実店舗への来店を促す作りにしたほか、リピート買いの場合は、オンラインを推奨するなどの体験提供ができる仕組みを築いた。


盒馬鮮生(フーマーフレッシュ/中国の生鮮食品スーパー)


アリババ傘下の生鮮食品スーパー盒馬鮮生は、注文も支払いもオンライン、オフラインの便利な方をその場の都合で選ぶことができるOMO型店舗を展開している。また、新型コロナウイルス感染拡大前は、店舗の半径3キロ圏内であれば30分で配送するサービスを展開していたが、コロナ禍で顧客先の団地に住民以外が立ち入れず配達できない問題が発生。その解決手段として、団地周辺にサービスステーションを設け、注文商品を受け渡す仕組みを構築した。


OMO型店舗を成功させるポイント


OMO型店舗を成功させるには、次の4つのポイントを押さえておきたい。
 

1.オンラインと実店舗のデータを一元化する


たとえば、実店舗での在庫が不足していても、ECサイトに在庫があれば、それを実店舗に回すことで対応可能である。しかし、店舗とECサイトとで在庫管理システムが異なっていた場合はデータの連携が難しく、顧客対応が不十分となってしまうことも。OMO型店舗の仕組みを構築するうえで、実店舗とオンラインのデータの一元化は重要なポイントとなる。
 

2.決済システムとの連携


OMO型店舗ではオンライン決済が基本となるため、実店舗の決済システムとの連携も重要である。キャッシュレス決済をはじめ、あらゆる決済システムに対応しておくことで、支払い時の顧客のストレスを軽減できる。また、オンライン決済のシステムを導入することによって、企業側も顧客情報が得られるといったメリットがある。
 

3.販売チャネルを広げる


OMO型店舗では、オンライン・オフラインで多くの販売チャネルを持つこともポイントとなる。最近の消費者の購入プロセスとして、SNSの投稿や口コミ、商品比較サイトなど調べ、複数の商品・サービスを検討してから購入する流れも多く見られる。そのため、SNSやチャットなど、さまざまな顧客タッチポイントを用意し、販売チャネルを拡大していく必要がある。
 

4.分析ツールの導入


データを分析するツールの導入も、OMO型店舗を運営するうえで有効である。たとえば、CRMツールの導入によって顧客情報や行動履歴を収集し分析することで、効果的な施策につなげることが可能。さらに、PDCAサイクルを回して改善を繰り返すことで、よりよい顧客体験を提供できる。

 

OMO型店舗でワンランク上の顧客体験を


DX化が進み、購買行動においても利便性を求める消費者の声も多い昨今、小売業にとってOMOは、ぜひ実施したい取り組みの一つといえるだろう。OMO型店舗は、消費者にとっては実店舗とオンラインのどちらを選択しても同様のサービスが受けられるものであり、企業側にとっても顧客データの収集というメリットをもたらすものである。オンラインとオフラインの垣根をなくすためにどのような取り組みが必要かを、顧客目線で考えながら、理想的なOMO型店舗を実現していきたい。

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