OMO導入成功事例8選!最新トレンドと各社の取り組みを紹介


Writer:
山崎雄司
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コロナ禍で大きく実店舗とオンラインの役割が変化し、そのようなトレンドの中で、あらためて実店舗の価値が見直されて、OMOの取り組みが注目されている。今回は、コロナ禍の最新OMO事例とそれらの特徴について取り上げ、今後の方向性について考えていきたい。

目次


1. O2O、オムニチャネルとの違いとOMOへの変遷
2. コロナ禍による影響
3. OMOを導入するメリット
4. 企業によるOMOの取組み事例とその特徴
5. OMOの国内事例
6. OMOの海外事例
7. OMOの今後の動き
8. OMO成功の鍵は適正なデータ管理とサービスへの還元

O2O、オムニチャネルとの違いとOMOへの変遷


まずはOMOに至るまでの、関連するマーケティング用語の整理を簡単にしていこう。
複数のチャネルを活用したマーケティングの概念においては、かつて広く浸透していた「O2O(Online to Offline)」という概念から「オムニチャネル」に移り変わり、今後は「OMO(Online Merges with Offline)」が主軸になってくると考えられている。「O2O」は、オンラインで配布されるクーポンを実店舗で使用するなど、オンラインからオフラインへの誘導を促すマーケティング手法を指す。また、「オムニチャネル」は、複数のチャネルを統合的に連携させるマーケティング手法を指す。
「OMO」は、オンラインとオフラインが作用し合い集客を促すという意味では「O2O」と通じるところがあり、複数チャネルで接点を増やし顧客体験の充実をはかるという意味では「オムニチャネル」に似ている。つまり、「O2O」と「オムニチャネル」の概念をベースに、時代のデジタル化に合わせて発展したものが「OMO」だといえる。


コロナ禍による影響


コロナ禍の中で我々の生活は大きく変化してきた。外出自粛の影響により、実店舗への来店客数は一気に減少し、その反動でモノやサービスをオンラインで購入する人が一気に増えた。その結果、EC市場は好調であるものの、実店舗は行き場を見失い、存在価値を失ったように思われた。しかし、このような逆境の中で実店舗の価値である「体験」を提供する場、という貴重な役割があらためて見直されている。その結果、オンラインとオフラインを融合・駆使した「OMO」への対応・順応が企業にとって重要となってきているのだ。

OMOを導入するメリット


OMOの主なメリットとして、「機会損失の防止」「体験価値の向上」「LTVの最大化」の3点が挙げられる。顧客のタイミングでどのチャネルからでも購入できるのはもちろん、顧客データを統合管理することで顧客ごとの細かなニーズに応えられるようになり、良質な顧客体験の提供がファンやリピーターの獲得につながるなど、オンラインとオフラインの融合がもたらすメリットは大きい。

企業によるOMOの取組み事例とその特徴


次に、コロナ禍におけるOMOの取組みについて、国内外企業の最新事例を紹介しよう。

OMOの国内事例


1.株式会社ワールドスポーツ(釣具店)



ECサイトのリリース当時から店舗受取やコンビニ受取など、オムニチャネルを取り入れてきたワールドスポーツ。CRMを強化し、顧客や商品を軸にした分析と施策が実現できたことで、オンラインでも店舗と同じアプローチが可能に。購買履歴だけでなく、オンラインと店舗における顧客行動を分析し、よりパーソナライズした内容のメール配信を行うなど、顧客に合わせたアクションを実施することで顧客体験の向上につなげている。


2.株式会社ベネクシー(アパレルメーカー)



ビルケンシュトックなどのシューズ販売やセレクトショップの運営を行うベネクシーでは、2016年にCRMを導入。オンラインと店舗のシステムを連携したことで商品別分析等が可能となり、チャネルを分けないLTVの把握も可能に。また、商品の特徴から実店舗でのフィッティング体験が重要であるため、店頭では試着やアフターケアを重視。そこからオンラインへの集客につなげる。オンラインでは実店舗との関係性を意識した作りにし、実店舗への来店を促す。リピート買いであればオンラインを推奨するといった体験提供の仕組みを構築した。


3.株式会社オンワード樫山(アパレルメーカー)



オンワード樫山は、2021年4月に新業態のサービス併設型OMO店舗「ONWARD CROSSET STORE」をオープンした。実際に商品の試着ができる実店舗のメリットと、幅広い品揃えがあるオンラインストアのメリットを融合し、デジタル技術を活用することで、より便利な購買体験が可能に。なかでも、オンラインストア上の商品を、ブランドの垣根を超えて店舗に取り寄せ、試着してから購入できる「クリック&トライ」という新サービスは特徴的だ。ほかにも、最新技術を活用し、自分の身長を投影したアバターで着用イメージを確認できる「カスタマイズ」というサービスなども展開している。


4.株式会社東京ソワール(アパレルメーカー)



レディスフォーマルウエアを手掛ける東京ソワールでは、卸売り先とECサイトの融合を試みており、自社サイトでも百貨店でも商品の取り寄せができるサービスを導入している。また、店頭在庫とのデータ連携を行い、ECサイトから百貨店提携店の店頭在庫の確認や取り置きも可能だ。さらに、巨大プラットフォーム「LINE」を中心としたコミュニティー醸成に取り組んでおり、LINE上で希望のスタッフから接客を受けられるサービスも計画されている。


5.サントリーのコーヒースタンド「TAG COFFEE STAN(D)」



「TAG COFFEE STAN(D)」は、サントリーブランドのボトルコーヒーのラベルをカスタマイズできるサービス。公式サイトやスマホアプリで事前に注文しておき、商品を店頭で受け取るというもの。元は「TOUCH-AND-GO-COFFEE」というサービスで、SNSでの拡散もあり新たな顧客獲得に成功していた。現在ではターゲットに合わせてサービスをリニューアルし、「TAG COFFEE STAN(D)」という名称で提供を続けている。


6.株式会社アドバンスクリエイト(保険代理店)



保険比較サイト「保険市場」を運営するアドバンスクリエイトは、保険商談に特化したオンライン面談システム「Dynamic OMO」を開発。オンラインでもオフラインのようにスムーズな保険相談ができることを目的とし、実際の面談の現場に寄り添った機能(共有機能や複数タブでの画面切り替え機能など)を実装している。このビデオ通話システムは、保険相談以外のBtoC商談にも活用できるため、すでに20社以上(令和3年6月時点)の企業で導入されている。


OMOの海外事例


7.盒馬鮮生(フーマーフレッシュ/中国の生鮮食品スーパー)



アリババ集団傘下の生鮮食品スーパーである盒馬鮮生は、オンラインと実店舗を融合させ、注文も支払いもオンライン、オフラインの便利な方をその場の都合で選ぶことができるOMO店舗である。盒馬鮮生では、店舗の半径3キロ圏内であれば30分で配送するサービスを展開しているが、コロナ禍で顧客の家に配達できないといった問題が発生。その解決策として、団地周辺にサービスステーションを設置し、注文された商品を受け渡す仕組みを早急に構築した。こうした優れた配送サービスが、OMOの取り組みを後押ししている。


8.ウォルマート(世界最大スーパーマーケットチェーン)



アメリカに本部を置くスーパーマーケットチェーン「Walmart」は、複数の領域でOMO戦略を展開している。その中のひとつが、スマホアプリを活用したストアマップ機能である。ストアマップ機能により、欲しい商品の陳列場所が変更されてもすぐに見つけることができるため、広大な店舗での買い物が快適に行えるようになった。


OMOの今後の動き


O2Oのビジネスモデルに代わりOMOが主流となってきている中で、オフラインの実店舗とオンラインのECサイト等の接点の境界がなくなりつつあり、海外においてもOMO化の加速が著しい。また、アフターコロナ、ウィズコロナを考えると、小売業においてOMO化は必須であり、今後もOMOを取り入れたマーケティングは成長し続けるだろう。
ただ、OMOでは顧客データの一元管理が重要となり、スマホやアプリからのデータも取り扱うため、顧客の個人データの価値が高まる。厳重なセキュリティ管理や安全性の配慮が今後の課題となってくる。

OMO成功の鍵は適正なデータ管理とサービスへの還元


OMOを推進する上では、オンラインで取得できるデータをどのようにサービスに転換し、顧客に還元できるかがポイントだ。また、データを取得するためには、顧客が企業にデータを提供することのメリットをしっかりと理解してもらうことが必要である。取得したデータの厳重な管理も必須だ。そして、単にデータを統合するだけでは実現できないということにも留意し、事業戦略としてOMOをどのように取り入れていくかよく検討することが成功の鍵となるだろう。

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