活用事例インタビュー
株式会社ベネクシー 代表取締役社長 海野祥之氏

全社横断のデータ活用によるCX向上と
独自ブランド育成の取り組み

株式会社ベネクシー
代表取締役社長 海野 祥之氏
マーケティング部 デジタルマーケティング課
秋永 有紀氏

  • 店舗とECの分断を解消し、全社横断でデータ活用するためカスタマーリングスを導入。全体のLTVを把握できるように。
  • カスタマーリングスのレポートで会員獲得が店舗送客に繋がる事を体感。会員ベースでも分析を行う意識が根付いた。
  • NPS調査により、市場調査では見えない具体的な顧客インサイトを把握でき、施策の改善に活かせるように。
  • 今後は顧客分析をさらに深め、ECからの会員獲得・店舗送客や、店舗経由のEC利用率の向上に取り組みたい。

ドイツ発の機能性フットウェアブランド「BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)」の輸入代理店として始まり、長きにわたって卸売・小売事業を行ってきた株式会社ベネクシー。1983年に三栄コーポレーションの一部門としてスタートを切ったが、2002年に分社化。2016年より事業を多角化し、現在は全国47店舗を運営するビルケンシュトックのフランチャイズ事業のほか、セレクトショップ「Quorinest(クオリネスト)」、ECサイト「BENEXY ONLINE SHOP」の運営、海外ブランドの卸売事業、修理/アフターケア事業などを展開している。

修理やアフターケア事業にも注力し、
お客様の生活に根差したサービスも提供する
ベネクシーの取り組み

主な取扱ブランドは、BIRKENSTOCK(ビルケンシュトック)、LAULHÈRE(ロレール)、BOHONOMAD(ボホノマド)、bleu de chauffe(ブルードゥシャフ)、O MY BAG(オーマイバッグ)、O.T.A(オーティーエー)で、「カイテキで夢のあるライフスタイルを実現すること」をミッションに事業を行っている同社。代表取締役社長 海野氏は、これまでの流れについてこう話す。

「2015年頃、ビルケンシュトックが大きなブームとなりましたが、ファッショントレンドの一環として持ち上げられた感が強く、いつかこのトレンドは落ち着くだろうと考えていました。そこでそのタイミングでクオリネストという事業を始め、よりお客様の生活に根ざした製品をご提供すると共に、アフターケアをはじめ、モノを通じてお客様の生活の快適さをより高める事業方向に転換したのです」

同社は40年近くビルケンシュトック1本でやってきたが、1990年代後半に専門小売店舗を出すタイミングがターニングポイントになったという。それまで健康シューズは格好悪いイメージがあり、そのような商品を根付かせるには右から左にモノを売っていても仕方がない。そう考えた同社は、専門小売店舗を出したタイミングで販売スタッフの研修トレーニングを強化し、その後シューズ修理工場を立ち上げることにもつながった、という。

もともと機能に特化している商品ゆえ、素材ごとのアフターケアや製品を最適にフィットさせる方法などを研修に組み込んだ。オーセンティックでコアな部分をしっかり伝えていかないと、永続的に事業を続けるのは難しい。そう確信し、以降は中長期的な目線でブランドと一緒に育っていくというイメージに切り替えた。つまり同社は、当時から顧客体験やCXと言われる領域を先行して取り込んでいたと言えるだろう。

売れそうだから売るのではなく、快適なライフスタイルを提供できるようにマーケティングをしていく。そのため、必ずしもKPIは売上には設定していないという。一定量を仕入れて適正に回転させ、オーバーサプライが起きないようにする。そこが事業を展開する上での大きな軸としてあるそうだ。

同社が独自に展開するセレクトショップ「Quorinest(クオリネスト)」

同社が独自に展開するセレクトショップ「Quorinest(クオリネスト)」。「快適」をキーワードに製品群を厳選している。

カスタマーリングス導入前は
店舗とECそれぞれの分析のみだった

ベネクシーがEC事業を始めたのは2011年頃のこと。当時は「オンラインとオフラインが分断されていたり、お客様とのコミュニケーションが一方通行になっていたりという課題があった」と秋永氏は話す。そこで2016年からCRMの取り組みを始めるようになり、カスタマーリングスの導入に至った。

カスタマーリングス導入前の課題について、秋永氏は「ECと店舗の会員システムが分かれていたため、それぞれのチャネルでの分析になっていた」と話す。顧客データは店舗で取っていたが、名前を書いてもらって保管していただけ。それを元に顧客とコミュニケーションを図るわけでもなく、顧客軸やECと店舗を横断した分析もできていなかった。そのため、顧客1人1人の本来の動きが見えてこない。また、売上をはじめとした各チャネルでの定量分析はできていたものの、定性データの分析等は実施していなかったため、事業コンセプトをマーケティング業務に浸透させることが出来ていなかった。

また、導入前はチャネルごとにメール配信をするなどのマーケティング施策を行っていたが、オムニチャネルでの最適化を目指し、メール配信+分析をシームレスに扱えるものとして検討した際、当時導入していた分析機能とメール配信機能を兼ね備えた他社ツールでは機能が十分ではなく、カスタマーリングスの導入に至ったという。

ビルケンシュトック 新宿店の店内

ビルケンシュトック 新宿店の店内。リペアを専門に扱う、国内初の「マイスタールーム」を構える。

導入によってLTVという新たな指標が得られた

カスタマーリングスの導入によって変わったことを秋永氏に尋ねると「店舗・ECの隔たりなく商品別分析等が可能になったこと。特にチャネルを分けないLTVの把握が可能になったことがありがたい」という答えが返ってきた。LTVは入退店別に1ヶ月ごとの推移を見ているが、当然分断されていた頃とは違う分析結果が見えてくる。そんな中、店舗スタッフが独自に接客方法を考え、動いてくれることも増えたという。LTVをしっかり見ることで、値が上下した理由を深掘りし、数字に惑わされずに改善策を考えることができるようになった。

また、ベネクシーでは店舗とECで同じ会員サービスを導入しているが、カスタマーリングスから抽出したレポートを見て、会員を獲得すれば店舗に戻ってきてくれるということを体感したそうだ。さらに社内では、各チャネルの売上以外に、会員ベースで分析を行うという意識が根付いたという。

なお、ベネクシーが扱うブランドやサービスはリピーター色が強いため、顧客の購買動向を捉えてアップグレードさせるための傾向が掴みやすくなったことも導入の成果になったという。同社の商品に対して知見の高い顧客が多いこともあり、その方たちに合わせたコミュニケーションを取れるように目指したと海野氏は話す。

店頭では、オンラインでは弱くなりがちなフィッティングやアフターケアを重視し、そこからECにつなげる。ECは小売店舗との関係性を意識した作りにして、まずは小売店に来ていただく。リピート買いであればECを推奨するといった体験提供の仕組みだ。

「弊社が扱っている商品には特徴的なものが多く、例えばビルケンシュトックは足の底が当たるフットベッドという部分に起伏があるので、間違った履き方をすると逆効果になってしまいます。そのため、一般的なアパレルや服飾雑貨に比べると、実店舗でのフィッティングなどの体験が非常に重要であり、最初の顧客接点としての入り口は実店舗をお勧めしています」

ビルケンシュトック独自のインソール「フットベッド」

ビルケンシュトック独自のインソール「フットベッド」は履き方にコツがあるため、実店舗で体験いただく流れを作っている。

顧客の理解を深め、
顧客体験価値向上に向けた挑戦

ECの売上は徐々に伸びてきてはいるものの、売上の大半は店舗が占め、2020年のEC比率は約13%ほどだったという。利用者は30〜40代が多く、そのほとんどが店舗購入者だ。とは言え、2020年は新型コロナウイルスの影響で店舗での集客が落ち込む一方、ECの集客と売上は伸びを見せた。また、売上・集客ともに各チャネル伸びたが、特にメルマガ経由の集客は伸びを見せたという。

現在は、RFM分析、LTV分析、バスケット分析などの仕組みを頻繁に使っているという。既存顧客に対してはメルマガ配信も行っており、施策の効果は、開封率、クリック率、コンバージョン率で測る。特にメルマガでは、配信ごとに各バナーのクリック率やコンバージョン率を把握。次のメルマガ構成やWeb広告等の参考にしているそうだ。

また、定期的に行っていた市場分析を手軽にできるという理由から、ベネクシーでは2020年よりNPS調査を実施。結果的に、市場調査では分からない興味深いフィードバックが得られたという。例えば、思っていた以上に、製品のファンとそれ以外の方の距離が離れていると感じた。もともと扱っているのはリピーター色の強い商品やサービスという認識はあったが、その分野でもっと突き詰めていいと確信し、よりユニークな方向に行くべきという結論に落ち着いたそうだ。他にも、しっかり提供できていると思っていたコンテンツが実際には評価されておらず、EC内にコンテンツはあるものの、会員に認知されていないなど、改めて改善点を把握することに繋がったという。

「一般的な市場調査をして傾向はつかめていたものの、実際に接点のあるお客様を中心に聞いていかないと具体的なインサイトが取れないと感じていました。そういう意味では、いいタイミングでNPSをご提案いただきましたね。社内でも、手軽に定性分析ができるということで高評価を得ました」

将来的にECのリニューアルも検討しているが、NPSの実施結果を踏まえて導入すべき項目の優先順位が明確になったことは大きいと話す。現在は、NPSの結果を踏まえてメルマガ内容やECサイトのUI/UX改善を検討している最中だ。

今後の課題について尋ねると、「EC経由の会員を増やしつつ店舗への送客数を上げること」と秋永氏。また、店舗経由の会員のEC利用率やF1からF2への転換率向上も課題の1つで、顧客1人1人のデータを確認して顧客体験の向上につながる仮説やアイディアを絞り出すという取り組みを強化していきたいと言う。そのために、訴求していない商品が売れた場合は、なぜECに訪れてもらえたのか、なぜ購買に至ったのか、という理由をどの施策においても探る取り組みを始めている。現段階では、顧客の行動すべてを把握できるようなシステム設計をしていないが、一連の取り組みを通じて見えてきた課題もあり「設計を変更すればより活用できると考えている」と秋永氏は話す。

CRMを始める以前からリピーターとの関係作りが意識としてあり、顧客と共にブランドを成長させていくというCX向上の必要性の理解を深め、それを実現するためにカスタマーリングスを選んだベネクシー。仮説を検証しながらデータを分析し、社内のあらゆる方が興味を持って取り組んでいるという印象を受ける。

最後に、カスタマーリングスのカスタマーサクセス体制について「電話対応のほか、定例会による運用支援や、レポート作成などの取り組みに改善案をいただけることは大変助かる。それによって、配信機能だけでなく分析機能もあるツールだということを改めて社内で周知することができました。また、担当コンサルタントの方に弊社ならではの前提条件をお伝えしつつ、データのインポート方法といった複雑な話も即座に理解して進めていただけるので大変ありがたい」とのコメントをいただいた。

ビルケンシュトック及び、SDGsに取り組むトルコのブランド「BOHONOMAD」のフットウェア

ビルケンシュトック及び、SDGsに取り組むトルコのブランド「BOHONOMAD」のフットウェア。
「カイテキで夢のあるライフスタイルを実現すること」をミッションに、今後も独自の商品展開を進めていく。