マーケティングプロセスとは?意味と6つのステップ、R-STP-MM-I-C


Writer:
山崎雄司
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マーケティングプロセスとは、マーケティングの基本的な流れのことをいう。

マーケティングプロセスとは


マーケティングプロセスとは、マーケティング戦略を立案し実行するまでの一連のプロセスのことを指す。まずは自社を取り巻く市場の分析を行い、その結果を基にターゲットを絞る。そこから自社の立ち位置を確認し、強みや弱みを分析・把握したうえで、価格やプロモーション方法といった実行戦略を検討する。このマーケティングプロセスは、基本的に、次項で解説する6段階のステップで構成される。

マーケティングプロセスの基本的な順番


1.  マーケティング環境分析・市場機会の発見

マーケティングプロセスにおいて、最初に実施するのは市場分析である。外部環境と内部環境の両面から、それぞれ弱みや強みを分析し、他社との優位性などをどのように確保するかを決める。環境分析にはさまざまな指標があるが、「SWOT分析」「PEST分析」「3C分析」を用いることが多い。

SWOT分析
Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4要素を用いて環境分析を行うフレームワーク。自社の事業の状況を内部環境と外部環境に分け、さらに内部環境の強みと弱み、外部環境の機会と脅威の4項目に整理しクロス分析を行う。企業や事業の現状を分析し、マーケティングや戦略の意思決定、経営資源の最適化などに活用する。


PEST分析
自社でコントロールできない外部環境要因を分析するためのフレームワーク。自社を取り巻く外部環境をPolitics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの視点で分類し、自社にとって何が「機会」となり、何が「脅威」となりうるかを分析する。マクロ環境を把握し分析する有効な手法として知られている。


3C分析
Customer(顧客・市場)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの要素から外部環境の把握を行い、「自社」の強みや弱みを把握することで、自社およびブランドの主要成功要因(Key Success Factor/KSF)を導き出すフレームワーク。


2.  セグメンテーション(市場の細分化)

セグメント(Segment)とは、「部分」や「区分」のことであり、何らかの指標に基づいて市場を細分化することをセグメンテーションと呼ぶ。たとえば、地理的条件や購買行動、心理的特徴などを指標とし、それを基にセグメンテーションを行う。


3.  ターゲティング(市場の絞り込み)

市場を「分ける」作業であるセグメンテーションに対し、そこからさらに対象を「絞る」作業がターゲティングである。基本的な流れとして、セグメンテーションのあとにターゲティングを行い、自社が狙う市場(ターゲット)を抽出して戦略を立てていくことが多い。
「誰に対してなのか」の見極めを行うため、「標的市場」や「市場の絞り込み」などと呼ばれることもある。

4.  ポジショニング(立ち位置の決定)

絞り込んだターゲットについて分析し、競合他社との位置関係を把握するプロセス。たとえば、自社と他社の商品やサービスについて、値段や品質、販売チャネルや製品の特長などを比較し、買い手から見た自社の強みや特徴を洗い出す。

5.  マーケティングミックス(4P分析)

セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを経て抽出されたターゲットに対し、どのような施策が有効かを検討する過程のこと。いくつかの構成要素を組み合わせて展開していくため、マーケティングミックスと呼ばれる。使用される代表的なフレームワークには「4P分析」と「4C分析」がある。


4P分析
絞り込んだターゲットに対して「どの商品を(Product)」「どのくらいの価格で(Price)」「どのように(Place)」提供するのか、またその「手法をどうするか(Promotion)」のかを具体的に導き出すフレームワーク。企業視点での分析であり、新商品を開発すれば売れるという、企業が市場をコントロールできた時代に多く用いられていた。
 

4C分析
4P分析が企業視点であるのに対して、顧客視点から商品やサービスを分析していくフレームワーク。4P分析の4つのPに対し、それぞれに対応する4つのCが設定されている。
 
【4P】Product=【4C】Customer Value(顧客にとっての価値)
【4P】Price =【4C】Customer Cost(顧客にとってのコスト)
【4P】Place =【4C】Convenience(顧客にとっての利便性)
【4P】Promotion=【4C】Communication(顧客とのコミュニケーション)
 
4P分析と4C分析と組み合わせて進めることで、両者の弱点を補い合い、企業側と顧客側双方の視点からマーケティング施策を立案することが可能となる。
 
また、このステップでは評価の基準となるKPIツリーを作成する。最終ゴールであるKGIを明確に設定しておき、そのためのプロセスに対して評価指標を設定することで定量的な評価が可能になる。


6.  マーケティング戦略の実行と評価

ここまでのマーケティングプロセスで策定した戦略を実行するステップ。マーケティングミックスで設計したKPIツリーを活用して評価する。KPIからPDCAを回し、より効果的なマーケティングを探りながら、施策の最適化を行う。

R-STP-MM-I-C


マーケティングプロセスには、上記で解説した6段階のステップに分ける方法の他に、米国の経営学者フィリップ・コトラー氏が提唱した「R-STP-MM-I-C」という5つのステップに分ける方法もある。具体的な内容は以下の通りである。
 

1.   [R] Research(調査)

6段階のステップの1(マーケティング環境分析・市場機会の発見)に該当。自社を取り巻く環境についてさまざまな観点から調査・情報取集を行い、顧客のニーズや要求を認識し、市場の機会を把握する。
 

2.   [STP]Segmentation(市場の分割)Targeting(標的市場の選択)Positioning(位置取り)

6段階のステップの2~4(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)に該当。この3つの段階をまとめて「STP分析」と呼ぶ。
 
S: 分割(Segmentation):共通した属性やニーズをもつ顧客を細分化して市場をより小さなセグメントに分割。
T: 対象化(Targeting):Sで細分化した顧客層から最も魅力的な狙うべきターゲット市場を選定。
 P: 提案(Positioning):Tで選択したターゲット市場に対して、商品やサービスのポジショニング(差別化)戦略を立案。これにより競合他社との差別化を図り、独自の価値を提供できる。


3.   [MM]Marketing Mix(マーケティング要素の組み合わせ)

6段階のステップの5(マーケティングミックス)に該当。[STP]で絞られたターゲットに対して、自社の強みを生かせるように、4P分析や4C分析などを組み合わせて、市場に対する最良のアプローチ方法を考える。

4.   [I]Implementation(実施)

6段階のステップの6(マーケティング戦略の実行と評価)のうち、「実行」の部分に該当。上記の調査結果に基づいて、実際にマーケティングを実施する。

5.   [C]Control(管理)

6段階のステップの6(マーケティング戦略の実行と評価)のうち、「評価」の部分に該当。
上記の手順で行われたマーケティングプロセスについて、結果を分析し、必要があれば改善に努める。具体的には、売上や市場シェアなどの年間計画、製品や顧客などの収益性、広告や流通などの効率性、効果の改善などの戦略についてコントロールする。

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