チャネルとは?意味やチャネル戦略、オムニチャネル、チャンネルとの違い


Writer:
山崎雄司
  • facebook
  • Twitter
  • LINE

マーケティングにおけるチャネルとは、集客のための媒体や流通経路、またそれに携わる組織や業者などのことを指す。企業活動において重要視されている概念の一つである。

チャネルとは

 
チャネルとは、英語の「channel(チャンネル)」に由来する言葉。もともとは「水路・運河」「水の通り道」を表す言葉だったが、時代とともに派生していき、さまざまな業界やサービスにおいて使われるようになった。特にマーケティングにおけるチャネルは、集客を行う媒体や流入経路を指す。小売店やECサイト、SNSなどがチャネルとして活用されており、チャネルごとの集客力を分析することで効率的な集客戦略を練ることができる。
 
 

チャネルの種類

 

流通チャネル

商品やサービスを消費者に届けるための手段を指す。生産者から商品を仕入れる卸売業者、商品を配送するための流通業者、商品を消費者に売る小売業者など、中間業者を含めたすべての流通経路が含まれる。
 

販売チャネル

商品やサービスを販売する場所やその方法を指す。実際に消費者が商品やサービスを購入できる場所のことで、ECサイトやSNS、実店舗販売やテレビショッピングなどさまざまである。また、個人向けのBtoC企業と、企業向けのBtoB企業では、用いる種類や傾向が異なる。
 

コミュニケーションチャネル

企業と消費者がコミュニケーションを行う場所や方法を指す。企業から消費者へ商品やサービスに関する情報を伝えるためだけではなく、問い合わせやアンケート調査などといった消費者からのメッセージを受け取る役割も果たしている。直接コミュニケーションをとる電話やメールのほか、インターネット広告やチラシといった間接的なものも含まれる。近年ではスマホのアプリをコミュニケーションチャネルとして用いる企業や個人生産者が増えている。
 
 

チャネルの形態

 

シングルチャネル

顧客との接点が一つの状態を指す。実店舗を持たず、ネット販売だけを行っている場合もシングルチャネルに該当する。
 

マルチチャネル

顧客との接点(チャネル)が複数ある形態のこと。運営はチャネルごとで独立しており、一元化や連携はされていない状態のものを指す。オンライン・オフラインを問わずさまざまな経路で商品やサービスの提供を行うため、認知度の向上や購入機会の増加といったメリットがある。一方で、各システムの連携がないことで、消費者からは別のチャネルに見えてしまうことも多い。
 

クロスチャネル

マルチチャネルと同様に消費者に対してチャネルを複数持つが、顧客情報や在庫管理システムなど必要な情報が一元管理されている形態のこと。ネットで注文し、店頭で受け取ったり返品したりするケースがその例である。複数のチャネルを一元管理できることから、企業にも消費者にもメリットが大きいが、運営の仕方によっては、たとえば実店舗とECサイトで売り上げや顧客の取り合いなどが起こるなど、チャネル同士での競合が発生する場合があるため注意が必要。
 

オムニチャネル

複数の販売チャネルを統合的に連携させ、販売経路に境界を設けない形態のこと。クロスチャネルが発展したもので、どのチャネルからの利用であっても、顧客一人一人に最適化したサービスを一貫して提供することが可能。顧客満足度向上だけでなく、業務効率化を図ることもできるため、労働環境の改善にもつながる。

流通チャネルの構築方法

 

チャネルの長さ

チャネルの長さとは、生産者から消費者の間に存在する仲介業者の数のことで、以下の4つの段階に分けられる。
 

・0段階チャネル

いわゆる直販のビジネスモデルで、D2C(Direct to Consumer)や訪問販売、Web販売などが該当する。中間マージンがないため利益率が大きくなるのがメリット。かつては流通範囲に限りがあるのがデメリットとされていたが、近年ではSNSやフリマアプリの普及などによって解消されつつある。

・1段階チャネル(生産者→小売業者→消費者)

生産者が商品管理や運搬を行い、小売業者が販売を行うというビジネスモデル。ディーラーや大型の量販店などが該当する。生産者にとっては流通範囲が広がるためビジネスチャンスが増え、小売業者にとっては低価格での販売が可能になるというメリットがある。
 

・2段階チャネル(生産者→卸売業者→小売業者→消費者)

生産者と小売業者の間に卸売業者が入るビジネスモデル。スーパーマーケットやデパートなど、さまざまな商品を大量に販売するような業種で多く用いられる。生産者にとっては少量での取引がしやすいといったメリットがある一方、卸売業者と小売業者の2か所にマージンが発生するためコストが高くなる。
 

・3段階チャネル(生産者→卸売業者→二次卸売業者→小売業者→消費者)

生産者と小売業者の間に複数の卸売業者が入るビジネスモデル。物流網の発展やインターネットの普及によって二次卸売業者を省略するケースが増えているが、現在でも特定の業界(文房具や医薬品など)で用いられている。
 

チャネルの幅

チャネルの幅とは、チャネルの各段階で取引する流通業者の種類及び数のこと。その範囲や目的によって以下の3通りに分けられる。
 

・開放的流通政策

販売先を限定せず広範囲にわたって開放的な商品流通を行う方法のこと。最もチャネルの幅が広い政策であり、流通量を一気に拡大できるといったメリットがある。しかし、流通業者の管理が難しく、マネジメント次第では同じ商品を扱う流通業者間での価格競争が発生し、価格の下落やブランド力の低下、在庫の増加といったリスクが懸念される。
 

・選択的流通政策

チャネルを一定の自社基準で選定して流通を行う方法のこと。シェア拡大のスピードはゆるやかだが、その分選定したチャネルの適度なコントロールができるメリットがある。
 

・排他的流通政策

特定の流通業者(代理店や特約店)に独占販売権を与えて流通を行う方法のこと。チャネルの幅が狭い政策であるため、チャネルのコントロールや販売管理は容易になるが、維持コストがかかる点や、販売機会の縮小リスクがデメリットといえる。
 
 

チャネル戦略の意味

 

マーケティングミックスにおけるチャネル戦略の位置づけ

マーケティングミックスとは、マーケティングにおける実行戦略のこと。構成要素は、製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、流通戦略(Place)、プロモーション戦略(Promotion)の4つから成り、これらの頭文字をとって「4P」とも呼ばれる。チャネル戦略はPlaceに該当し、プレイス戦略と呼ばれることも。具体的には、商品やサービスの販売ルートや流通の仕組みなどを構築していく戦略である。
なお、マーケティングミックスでは、複数の構成要素(4P)の最良な組み合わせを考えていくことが重要となる。
 
 

チャネル戦略(流通戦略)の目的

 
チャネル戦略における最大の目的は売上拡大である。ターゲットが購入しやすい新たな販売経路の開拓や、商品の購入手段を取り入れることで、これまでアプローチできなかった潜在顧客の獲得も期待できる。
 
 

チャネル戦略の進め方とポイント

 

1.ターゲットを明確にする

チャネル戦略において、まずはターゲットの明確化が必須である。たとえば若年層がターゲットであればSNSやWeb広告、高齢層であればテレビや新聞などを用いるといったように、ターゲット層によって適切なチャネルは異なるため、あらかじめターゲットを絞り込むことが重要となる。
 

2.チャネルの長さを決める

先述の通り、流通チャネルの段階(仲介業者の数)が増えることで中間マージンが発生し、単価も上がりやすくなる。これを踏まえ、たとえば製品説明の必要性が高いものや、特定の消費者をターゲットとしている場合は0段階チャネル、単価が低く消費者が分散している場合は複数段階チャネルを選ぶなど、扱う商品の特性やターゲット層にマッチしたチャネルの長さを決定する。
 

3.チャネルの幅を決める

扱う商品の特性や価格、ターゲット層を踏まえ、流通チャネルの幅を広く取るか狭く取るかを決定する。たとえば、薄利多売の消耗品を扱う場合は開放的流通政策を、アフターサービスが必要な商品を扱う場合は選択的流通政策を、ブランドイメージを厳重に管理したい場合は排他的流通政策を選択するなどの施策が考えられる。
 

4.販売チャネルを決める

ターゲット層にアプローチしやすい販売チャネルを選択することが成功のカギとなる。販売チャネルは多いほど消費者の目に触れやすいが、運営コストもかかるため、ターゲット層が使いにくいチャネルをやみくもに増やしても利益は出づらい。ターゲット層にとって身近で使いやすいチャネルは何かをしっかりリサーチする必要がある。
 

5.コミュニケーションチャネルを決める

どのチャネルがターゲット層とのコミュニケーションを取りやすいかを検討する。生産者と消費者、双方のスムーズなコミュニケーションがとれるチャネルを選択することで、LTVの向上にも貢献できる。

チャネルとチャンネルの違い

 
もともと「チャネル」と「チャンネル」は、どちらも英語の「channel」のことを指すため意味の違いはなく、「データの通り道」や「周波数帯域」などと訳される。
時代の変化とともにその解釈も多様化しており、現在では「チャネル」は論理的な通信路を、「チャンネル」は物理的なイメージを持たれる傾向がある。たとえばマーケティング分野やビジネスシーンでは「チャネル」が一般的だが、放送業界では「チャンネル」が多く用いられるといったように、それぞれの業界で慣習的に使い分けがされている。

メルマガ登録
  • facebook
  • Twitter
  • LINE