3C分析とは?目的、分析方法、成功のポイント、企業の分析例など


Writer:
山崎雄司
  • facebook
  • Twitter
  • LINE

3C分析とは、顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの要素から調査や分析を行うことで、自社およびブランドの主要成功要因(Key Success Factor/KSF)を見つけ出し、戦略を練るフレームワークである。

3C分析とは?


経営コンサルタントの大前研一氏が、1982年に著書「The Mind of the Strategist」の中で提唱し、広く知られるようになった手法。
3Cとは、Customer(顧客・市場)、Company(自社)、Competitor(競合)の頭文字「C」からとった名称である。この3つの視点から分析することで、自社の内部環境と外部環境の双方からKSFを導き出す。以下、3Cそれぞれの詳細について解説する。
 

Customer(顧客・市場)

顧客データを分析し、さらにそこから導き出される市場データを分析することで、以下の情報を把握する。
・顧客のニーズ
・顧客の消費・購買行動
・市場規模
・市場の成長性 など
 

Competitor(競合)

競合他社を分析し、以下の情報を把握する。
・現時点における市場シェアと推移
・競合相手の業界内でのポジション
・競合相手の特徴(戦略、事業規模、顧客数、資金力、宣伝力など)
・新規参入の可能性や代替品の脅威
・競合相手の今後想定される行動(自社やターゲットに対する動向)など
 

Company(自社)

自社を客観的に分析し、以下の情報を把握する。
・自社の企業理念、ビジョン
・現時点における市場シェアと推移
・既存事業や自社商品・サービスの現状(戦略、商品のラインアップ、売上、シェア)
・既存事業や自社商品・サービスの特徴(長所や弱点)
・現在保有するリソース(人材・商品など)
・資産状況(資本力、投資能力) など
 
 

マーケティングにおける3C分析の役割とメリット


3C分析は、はKSFを導き出し戦略を練るフレームワークであるが、マーケティングプロセスにおける環境分析の役割も担っている。その具体的な内容やメリットについて、以下に解説する。
 

戦略策定のための情報を収集する

3C分析は具体的な対策を講じるというよりも、現状の把握に重点が置かれるため、データ収集が中心となる。戦略策定のための下準備と割り切って考えるとよい。
 

潜在ニーズを捉えてKSFを導き出す

3C分析で最初に行うのが顧客・市場の分析である。顕在ニーズだけでなく潜在ニーズまで深掘りし、さらに3Cそれぞれの視点から分析を行うことで、市場や顧客のニーズにマッチした自社だけの強み(=KSF)を導き出す。
 

自社の強みと弱みが分かる

3つの視点からの客観的な分析により、自社の商品・サービスの優れた部分や課題を明確にすることができる。また、市場ニーズや競合他社の動きを捉えられるため、新規の市場参入・撤退を図る際にも役立つ。
 

ブランディング戦略に活かす

3C分析は、ブランディング戦略においても効果を発揮する。市場ニーズや競合他社の動向、自社の強みなどを把握し、競合他社と比較されにくい独自の強み(=KSF)を導き出すことで、競合他社との差別化につながる。
 
 

3C分析の方法


3C分析は、分析結果を踏まえ、自社が今後どのような戦略を取るかを決めるための手段であることを念頭に置く。
分析は、市場→顧客→競合→自社の順で行う。
 

市場・市場の分析方法

まずは市場の分析を行う。市場分析は「マクロ環境」と「ミクロ環境」の2つの視点から分析すると効果的に行える(以下、「マクロ分析」「ミクロ分析」と呼ぶ)。
 
マクロ分析(PEST分析)
マクロ環境とは、自社ではコントロール不可能な外部環境のことを指す。これを分析する際は、PEST分析が用いられる。
PEST分析は、アメリカの経営学者フィリップ・コトラーが提唱したもので、マクロ環境を「政治的要因(Politics)」、「経済的要因(Economy)」、「社会的要因(Society)」、「技術的要因(Technology)」の4つの要因から分析する手法である。4つの要因の詳細は以下の通り。
 
・政治的要因(Politics):法改正、政権交代など
・経済的要因(Economy):物価、為替相場、株価、金利など
・社会的要因(Society):人口の動態、世論、ライフスタイルなど
・技術的要因(Technology):特許、インフラ、イノベーションなど
 
これらを分析することで、マクロ環境が自社に与える影響について、中長期的な視点で把握できる。
 
ミクロ分析(ファイブフォース分析)
ミクロ環境とは、自社を取り巻く外部環境のなかで、自社である程度コントロールできるものを指す。これを分析する手法の一つがファイブフォース分析である。
ファイブフォース分析は、アメリカの経営学者マイケル・ポーターが提唱したもので、自社の脅威となる「業界内での競合」「新規参入業者」「代替品」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」の5つの要因について分析する手法である。5つの要因は以下の通り。
 
・業界内での競合:既存競合他社のブランド力、知名度、資金力、技術力など
・新規参入業者:業界への新規参入者のブランド力、技術力など
・代替品:業界外における代替品の有無、代替品の品質、乗り換える際のコストなど
・売り手の交渉力:市場規模、売り手の数の確認など(サプライヤーとの力関係)
・買い手の交渉力:価格設定は適切かなど(顧客との力関係)
 
これらの5つの脅威を分析することで、競合他社の状況や業界全体の構造を把握すると同時に、自社の収益性に直接影響を及ぼす要因を明確にすることができる。
 

競合の分析方法

競合他社が顧客・市場のニーズに対し、どのような戦略を立てて施策を打っているか分析する。分析する項目としては、競合他社の売上及び利益率、広告費、製品開発、販売ルート、営業方法などが挙げられる。分析方法としては、先述のミクロ分析が中心となるが、市場における競合他社のシェアを分析する際には、経営学者フィリップ・コトラーが提唱した「競争地位戦略」を参考にするとよい。
「競争地位戦略」とは、業界内の競争地位(質的経営資源と量的経営資源に基づく)によって適した戦略が異なるという経営理論。競争地位は次の4つに分類される。
 
①リーダー(業界一のシェアを誇る企業)
→市場規模の拡大、トップシェアの維持、同質化戦略など
②チャレンジャー(リーダーに次ぐシェアがあり、リーダーと競う企業)
→リーダーとの差別化戦略
③ニッチャー(経営規模が小さいながらも独自の地位を築いている企業)
→特定の市場に向けた集中化戦略
④フォロワー(リーダーやチャレンジャーの戦略を模倣している企業)
→トップ企業の模倣戦略、コストダウンなど
 

自社の分析方法

市場・顧客分析、競合分析のあとは、自社の分析を行う。注視する項目は、自社の既存の事業や商品・サービス、収益性、ビジネスモデルの特徴や経営資源などが挙げられる。
自社分析の際は、VRIO分析やSWOT分析などの手法が使われる。以下に簡単に紹介する。
 
VRIO分析
VRIOとは、「Value(経済的な価値)」「Rareness(希少性)」「Imitability(模倣可能性)」「Organization(組織)」の4つの頭文字を取ったもの。経営資源に焦点を当てた分析手法で、自社の経営資源における強みと弱みを把握できる。
 
SWOT分析
SWOTとは、「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4つの頭文字を取ったもの。自社を取り巻く状況を外部環境と内部環境に分け、それぞれをプラス要素とマイナス要素に整理し、結果をクロスさせて戦略を立てる分析手法である。
 
 

3C分析を成功させるポイント


3C分析成功のポイントを5つ挙げる。
 

情報の正確性を見極める

3C分析は収集しなければならない情報が多いため、情報の正確さに注意する必要がある。現在はインターネットで多くの情報が得られるが、それらの情報は玉石混合だ。必要に応じてデータを購入したり、顧客にアンケートを行ったりして正確な情報を集めることで、分析の精度が上がる。
 

スピーディーな分析を実施する

顧客のニーズや市場、競合の状況などは刻々と変化する。そのような状況で分析に時間をかけていると、情報の鮮度が落ちてしまう。効果的な分析を実施するためにも、スピード感を持って対処したい。
 

社内人脈を活用する

自社の情報は比較的集めやすいが、社内の「誰に」「何を聞くのか」を明確にすることで精度が向上するため、社内人脈の構築が鍵となる。ただし、情報収集の際は、ポジティブな情報だけではなくネガティブな情報も積極的に収集することを意識したい。自社にとって都合の悪い情報は、リスク回避につながる重要な情報でもある。
 

希望的観測を排除する

3C分析は、偏りのない「客観的な視点」が求められる。例えば、そこにマーケティング担当や情報提供者の主観が入ると、分析データの信憑性が損なわれ、効果的な戦略の立案ができなくなってしまう。数値や統計で示される客観的なデータを優先するなど、希望的観測が入らないように注意したい。
 

顧客側の3C分析を行う(BtoBの場合)

BtoB(法人営業)の場合は、顧客のビジネス環境が結果に大きく影響するため、自社分析と同じ要領で顧客企業の3C分析を行う必要がある。顧客企業と共倒れのリスクを避けるためにも有効である。
 
 

企業の3C分析事例


企業別に具体的な3C分析の事例を紹介する。
 

国内大手家具チェーンの場合

市場・顧客分析:インテリア業界トップのシェア。高品質低価格を求める顧客が多い。
競合他社:取り扱う商品が幅広いため、インテリアショップだけでなくホームセンターや家電量販店など競合他社の数が多い。
自社分析:〔強み〕ほとんどの商品がプライベートブランド。製造拠点を海外に設け、商品開発から販売まで自社でできる。
 

国内発大手ゲームメーカーの場合

市場・顧客分析:国内外でゲーム市場が伸びているが、世代によってはゲーム離れが進んでいる。コロナ禍による巣ごもり需要が続いている。
競合他社:スマホ向けゲームやクラウドゲームが伸びている。
自社分析:〔強み〕人気キャラクターの認知度が高い。キャラクターグッズに収益性が高いものが多い。〔弱み〕コアユーザーをターゲットにしたコンテンツがカジュアルユーザー向けに比べてやや物足りない。
 

外資系大手コーヒーチェーンの場合

市場・顧客分析:顧客層は学生からシニアまで幅広く、年齢層によってニーズが異なる。
競合他社:国内の格安コーヒーチェーン店、外資系コーヒーチェーン店
自社分析:〔強み〕コーヒーの品質が高い。洗練された空間。店員のサービスに対する顧客満足度が高い。新製品の開発体制が整っている。全席禁煙。〔弱み〕価格が高め。庶民的でなく、気軽に入りづらい雰囲気。全席禁煙が弱みになる場合も。
 

国内大手ファッション通販サイトの場合

市場・顧客分析:アパレルECの市場規模が拡大傾向。顧客の平均年齢が低く、年齢や性別によってニーズが異なる。
競合分析:ファッションECサイト。特定ジャンルに注力しているアパレルECサイト。
自社分析:〔強み〕独自のバーチャル試着サービス。独自のファッションSNSアプリと連携した購入システム。取り扱うブランド数の多さ。〔弱み〕市場の顧客平均年齢に比べ、ユーザーの年齢層がやや高い。

メルマガ登録
  • facebook
  • Twitter
  • LINE