マーケティングファネルとは?ファネルの種類、メリット、活用法


Writer:
山崎雄司
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マーケティングファネルとは、見込み顧客が商品(サービス)のことを認知してから購入や利用に至るまでの一連の流れを図式として表したものである。

マーケティングファネルとは


ファネル(Funnel)は「漏斗」のことで、消費者の購買プロセスの流れを図式で表したときの形状が似ていることから名付けられた。実際に図に表す際は、逆三角形の形になる。マーケティングファネルを用いると、購買プロセスのどの段階に自社の課題があるかが可視化される。実際の購買データを分析し、どのフェーズで見込み顧客が離れたかなどの原因や改善点が明確になるため、効果的な施策の立案につながる。


パーチェスファネル


 見込み客の一連の購買にまつわる行動を「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」の4つに分類して図式化したものをパーチェスファネル(purchase funnel)と呼ぶ。購買行動を通して徐々に見込み客が絞り込まれていく様子が漏斗に似ていることからパーチェス(購買)ファネル(漏斗)といわれており、マーケティングファネルのもっとも有名な形状である。
なお、パーチェスファネルは、米国のサミュエル・ローランド・ホールによって提唱された、消費者の購買決定プロセスを説明する「AIDMA(アイドマ)」の考え方が基本となっている。「AIDMA」とは、注目(Attention)→興味(Interest)→欲求(Desire)→記憶(Memory)→購買行動(Action)の5段階で示され、購買プロセスの進行に従って人数が減少していくという概念を指す。

パーチェスファネルを用いたマーケティング施策の流れ


第1段階(認知)~第2段階(興味・関心)

まずは、商品に興味を持ってくれそうな潜在顧客に、自社商品を認知してもらう必要がある。Web広告などで見込み客を集客し、オウンドメディアなどで価値のある情報を提供する施策や、展示会への出店などが有効。その際、ターゲティングを明確にしておくと効果的だ。
その後は、集客した見込み客を育成し、購買意欲を高めていく施策が必要となる。メールマガジンの配信、ホワイトペーパーの提供、セミナーの開催などが有効。その際、継続した情報発信を行うために、顧客情報を獲得する必要がある。たとえば、メールマガジンの登録やホワイトペーパーのダウンロードなどをきっかけに、顧客情報を提供してもらい、見込み顧客とコンタクトを取れるようにしておくことがポイントとなる。


第3段階(比較検討)~第4段階(購入)

次に、自社商品に関心を持っている見込み顧客に対し、自社商品に好感を持ってもらい、購入を検討してもらうための施策を打つ。たとえば、メールマーケティングで導入事例や実績、他社との比較といった情報を提供することなどが考えられる。
この段階で特に重要なのは、購入への後押しをする施策である。営業担当からのアプローチや、期間限定のキャンペーン、リマーケティング広告(Webサイトに訪問後、離脱したユーザーに対して表示する広告)などを実施し、購入を決断するタイミングを作ることが大切だ。
また、購入後のアフターフォローや顧客管理もしっかり行い、良好な顧客関係を継続していくことも忘れないようにしたい。

分析と改善

これまでの施策の分析を行う。各段階における施策を整理し、それぞれの見込み客の数と次の段階に移る際の離脱人数を計測。そこから、離脱の多い段階を把握し、改善を図る。たとえば認知・関心段階で総数が少ない場合は、集客を強化する施策を改善し、比較検討・購入段階での離脱の割合が高い場合は、商品のアピールを強化する施策に注力するなど。メールやWebサイトにおける見込み客との接点や、提供する情報の中身、顧客心理など、マーケティング施策をさまざまな角度から見直し、実行の難しさや改善度合いを予測しながら進めていきたい。

パーチェスファネルのメリット


弱みと打つべき施策が明確になる

パーチェスファネルによって多様で複雑な購買行動を図式化することで、見込み顧客がどの段階で離脱したかが把握しやすくなる。これにより、マーケティング施策の弱点が明確になるため、次に行うべき施策も自ずと見え、それぞれのフェーズで効果的な施策を打つことができる。

パーチェスファネルのデメリット


時代遅れという指摘も

「AIDMA」の概念をベースとしたパーチェスファネルは、今の時代の顧客行動にマッチしない部分も多いといわれている。特にBtoCにおいては、インターネットの普及に伴い、顧客行動に「検索」や「共有」が加わるなど、消費者の購買プロセスは大きく変化した。そのため、複雑化する購買プロセスを一般化して図式に落とし込むことは難しくなってきている。ただし、BtoBの場合は購買プロセスの変化が起こりにくいため、相性が良いといえる。顧客ターゲットに合わせて、最適な分析方法を選択したい。

購入後の購買行動が含まれない

パーチェスファネルの場合、ゴールは「購買行動」となる。しかし、実際は「商品を買って終わり」ではなく、購入後も口コミやリピート購入など、顧客との関係は継続していくものである。「購買行動」の先の顧客行動にフォーカスした「インフルエンスファネル」や「ダブルファネル」(後述)などを用いて、購入後の分析を行うことが重要である。

その他のマーケティングファネル

 

インフルエンスファネル

インフルエンスファネル(influence funnel)とは、顧客が商品・サービスを購入(契約)した後の動きにフォーカスした図式である。パーチェスファネルと異なり、末広がりの三角形で、上から「継続」「紹介」「発信」の順で表される。
インフルエンスファネルは、口コミ評価を生むための仕組みを検討するものである。最近はSNSなどで発信される内容が購買に大きな影響をもたらすことから、購入後に顧客が紹介・発信するシステムの構築が必要不可欠となっている。

ダブルファネル(アワーグラスファネル) 

パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたもので、2つの三角形の頂点と頂点がつながった砂時計のような図で表される。商品の認知から購入までのパーチェスファネルと、購入後の動きを軸としたインフルエンスファネルの2つの側面から分析することで、認知度向上や購入前の離脱防止、リピート率向上、紹介・発信システムの構築といった各段階における課題を、大きな一連の流れの中で、統一感を持って検討することが可能。

ルーピングファネル

ルーピングファネルは、「認知」から「購入」、その後の「発信」に至るまでを円形(ループ)に示したもの。ゴールまで直線的に捉えるのではなく、各段階にループが存在しており、消費者が検討し留まっている様子や、特定の段階を飛ばして購入に至るケースなども含まれる。現代の購買行動に即した多様なプロセスを分析できるマーケティングファネルである。

マイクロモーメントファネル

マイクロモーメントファネルは、「認知」や「興味・関心」「比較・検討」などは指標に入れず、消費者が「今すぐ買いたい!」という意思を持つときに、どのような行動をしているのかを図式化したもの。動機から行動までが一直線であることが特徴。Google社が、消費者の「今買いたい」という衝動的な瞬間を「マイクロモーメント(micro-moment)」と提唱しており、その概念を意識したマーケティングファネルである。

マーケティングファネルを活用する際のポイント


ペルソナを設定

ファネル分析を施策の改善に活かすためには、ターゲットが各プロセスにおいてどのようなニーズを持っているのか、どのような情報を欲しているのかという点を理解する必要がある。ターゲットを明確にしてマーケティング施策を検討するためには、ターゲットとなるペルソナをしっかり設定しておくことが重要。

カスタマージャーニーマップも取り入れる 

カスタマージャーニーマップとは、顧客がどのような経緯で商品と接点を持ち、購入意欲を喚起されて購入に至るのか、その道のりを旅に例え、可視化したもの。詳細なペルソナを設定し、購買プロセスの各段階における行動・思考・感情を時系列に整理することで、購入プロセスやタッチポイントにおける課題が発見できる。ファネル分析により離脱ポイントがわかったら、カスタマージャーニーマップを活用し、施策立案の参考にするとよいだろう。


MAツールの活用

MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、マーケティング施策に関する業務を自動化・効率化するためのツールのこと。ファネル分析に必要なデータ統合やメール配信、ウェブサイト訪問者の分析といったルーティンワークを自動化できるため、作業の効率化を図ることができる。また、Webサイトへのアクセス履歴や属性情報などから、各段階にいる見込み客を抽出できる機能も。さらに、見込み客に対して、どのチャネルで、どのタイミングで、どのような情報を提供するのかというシナリオ設計をしておくことで、顧客一人ひとりに最適なアプローチを自動的に行うことも可能だ。

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