カスタマーリレーションシップとは?意味や重要性、背景、CRM


Writer:
山崎雄司
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カスタマーリレーションシップとは、企業と顧客との信頼関係を指す用語。日本語では「顧客関係」などと訳される。

カスタマーリレーションシップとは


カスタマーリレーションシップとは、商品やサービスの提供者である企業や販売者と、買い手である顧客との信頼関係のことを指す。カスタマーリレーションシップは、マーケティング活動において顧客と接点を持つすべての領域において重要な概念であり、良好なカスタマーリレーションシップを保つことは、企業の成長と利益の増大において不可欠な要素である。

カスタマーリレーションシップの重要性


顧客満足度の向上

商品やサービスの販売において、良好なカスタマーリレーションシップは、ダイレクトに顧客満足度の向上につながる。顧客の求める要素に対して適切な対応を行うことで、高い満足度を得た顧客は、自社の商品やサービスに対して愛着や信頼が深くなる。このような顧客はリピート率が高く、気に入った商品やサービスを他者にも共有しようとする傾向がある。そのため、顧客満足度を向上させることは、リピーターを獲得するとともに、口コミなどによる新規顧客の獲得にもつながる。

顧客ロイヤルティの構築

良好なカスタマーリレーションシップの継続は、強い顧客ロイヤルティを構築する。継続的に良好な関係性を築いた顧客は、顧客体験を重ねるごとに企業やブランドに対する忠誠心や愛着を強めていく。新しいものを探すときにも、優先的に顧客ロイヤルティの高い企業の商品やサービスを選ぶ確率が高く、安易に競合他社へと流れてしまう可能性が低くなる。つまり、顧客ロイヤルティの構築によってカスタマーリレーションシップはさらに深まり、顧客維持率が向上することで売上予測の精度が上がるため、経営戦略を立てやすくなる。


LTV(顧客生涯価値)の最大化

カスタマーリレーションシップを重視した戦略を展開するなかで、顧客との深い関係性が構築できれば、顧客は自社の商品やサービスを継続的に長期間利用する可能性が高まる。新規顧客の開拓は既存顧客営業より5倍のコストを必要とするという「1:5の法則」や、5%の顧客離れを改善することで上がる利益率は25%という「5:25の法則」からわかるように、新規顧客獲得よりも既存顧客との良好な関係を築くことの方が低いコストで高いパフォーマンスを発揮することが期待できる。つまり、深く良好なカスタマーリレーションシップを継続して構築することこそ、売上基盤の拡大と顧客のLTV(顧客生涯価値)の最大化につながる有効な戦略といえるだろう。


競争上の優位性の確保

商品やサービスの提供者と顧客との間に、長期的かつ価値ある信頼関係を構築することがカスタマーリレーションシップの目的である。また、顧客ロイヤルティの高い顧客は新規顧客獲得のための最良の広告塔となってくれることが期待できる。そのため、これを達成した企業は、顧客との強固な結びつきを得られ、競争上の優位性を確保することができる。

顧客フィードバックの獲得

良好なカスタマーリレーションシップは、相互の関係性で成り立つ。そのため、顧客からのフィードバックや、愛用者の意見を直接得られることが多い。顧客フィードバックの獲得は、商品・サービスの改善や新商品の開発に役立つだけでなく、顧客フィードバックを重視する企業の姿勢を見せることでさらなる信頼を獲得し、顧客ロイヤルティを高められるだろう。

カスタマーリレーションシップが発展した背景


市場のグローバル化と競争の激化

市場のグローバル化により競合他社は爆発的に増え、商品やサービスの多様化はもちろん、価格競争や類似品の横行など、市場における競争は激しさを増している。そのなかで顧客を獲得し維持するためには、大勢の中に埋もれず顧客から選ばれる企業にならなければならない。そこで企業は、顧客との良好なカスタマーリレーションシップを構築して顧客ロイヤルティを高めることで、他社との差別化や競争上の優位性を確保しようとするようになった。

技術革新とデジタル化

デジタル技術の進歩と革新により、従来よりも企業と顧客との接点が多様化してきた。オンラインとオフライン両方で商品やサービスを比較検討できるため、顧客は積極的に情報を収集・交換する傾向にある。X(Twitter)やInstagramなどを通じて発信される情報が強い影響力と拡散力を持ち、顧客の評判が売上にダイレクトに影響する現在において、カスタマーリレーションシップの構築は企業のマーケティング戦略に欠かせないものとなった。また、SNSやマーケティングプラットフォームの台頭によって顧客とのコミュニケーションが容易になり、リアルタイムでフィードバックを得られるようになったこともカスタマーリレーションシップが発展する要因になっている。


顧客中心主義の台頭

これまでの商品やサービスの提供や宣伝は一方通行のものが多かったが、オンライン広告の発展やSNSの普及によって顧客が情報を得る手段が多様化し、双方向のコミュニケーションが主流となってきた。高い評価がついた商品やサービスは社会現象となることもあり、逆にマイナス評価がついてしまうと買い控えや既存顧客の喪失などにも直結するといったように、消費者感情は社会的にも大きな影響を与えている。そのため、今のマーケティング戦略は、従来の企業中心のアプローチから顧客中心のアプローチへと大きく方向転換され、顧客の要望をくみ取りやすい良好なカスタマーリレーションシップを築くことが重要視されるようになった。


データ解析と人工知能の進化

顧客の属性情報から行動履歴、担当者の問い合わせ内容や業績など、マーケティングに関するありとあらゆる情報をリアルタイムで収集できるデジタルマーケティング。デジタルマーケティングの発展に伴ってビッグデータの解析技術も向上し、人工知能は大きく進化した。企業はさまざまなデジタル技術を用いて顧客の行動や需要をより深く理解できるようになり、パーソナライズされた情報や商品・サービスの提供をすることで顧客との接点を増やし、コミュニケーションを図っている。こうしたマーケティング活動の変化により、従来のような不特定多数を対象としたアプローチではなく、自社のターゲットとなる顧客を細分化し、それぞれの顧客層とより深いカスタマーリレーションシップを構築することが求められている。


CRM(カスタマーリレーションシップマネージメント)

 
CRMとは「Customer Relationship Management」の頭文字をとったもので、日本語では「顧客管理」「顧客関係管理」などと訳される。顧客情報を収集しながら、自社と顧客との良好な関係性を長期的に築くために必要な要素を管理・分析し、LTV(顧客生涯価値)を最大化するとともに売上や利益を増やす経営手法のこと。なかでも、顧客データの収集と管理、データ分析とそれに基づくマーケティング戦略の立案と実行などといった、具体的なビジネス戦略と技術の組み合わせを指す。この経営戦略の実現にはITツールが必要不可欠であるため、ツール自体も「CRM」と呼ばれることが多い。

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