CACとは? 意味や計算方法、ユニットエコノミクスとの関係、CPAとの違い


Writer:
山崎雄司
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CACとは、「Customer Acquisition Cost」の略で、「顧客獲得費用」や「顧客獲得単価」と訳される。新規顧客を1件獲得するために費やしたすべての費用のことを指す。

CACとは


CACは、新規顧客一人から得られる利益に対してかかる費用が見合っているかを判断するものであり、ユニットエコノミクス(後述)を算出するためにも欠かせない指標である。主にSaaSやサブスクリプション型のビジネスで活用されることが多い。
チャネルごとにかかるすべてのコストと獲得できた新規ユーザー数を把握することができるため、それぞれのチャネルの費用対効果が明確化され、適切な戦略を導き出すことが可能。ここで言うすべてのコストとは、広告費用だけを指す場合もあれば、人件費や代理店販売手数料、その他の外注費までを含める場合もあり、企業の設定によってその範囲は異なる。

CACの計算方法

 
CACは1か月/3か月(四半期)/1年など、目的に応じた期間に区切って設定する。そのうえで、「その期間で顧客獲得のために費やした金額の合計」を「獲得した顧客の数で割る」ことによって算出するため、計算式は、

CAC = 顧客獲得のために投資した金額の合計 ÷ 新規顧客獲得数

となる。
先述の通り、「顧客獲得のために費やした金額」に含まれる内容は設定によって異なるため、あらかじめどのくらいの期間で何を費用として計測するかを明確にしておく必要がある。

CACの種類 


Organic CAC

自然に獲得できた顧客の獲得費用のこと。既存顧客の紹介・口コミ情報・SNSの投稿・検索エンジンからの流入などが該当する。なお、意図しない経路から自然に流入する顧客については見落としがちなので、正確なCACを算出する際には注意が必要。計算式は以下の通り。

Organic CAC=自然増の顧客に費やしたコスト÷自然増チャネルからの新規顧客獲得数 

Paid CAC

顧客獲得を目的として投資したあらゆる施策の費用のこと。CMやWeb広告、自社セミナーや展示会への参加、キャンペーンの開催などの有料チャネルが該当する。複数のマーケティング施策を実施している場合、それぞれのPaid CACを測定し比較することで、費用対効果の高い施策を見極める指標となる。計算式は以下の通り。

Paid CAC=有料チャネルに費やしたコスト÷有料チャネルからの新規顧客獲得数

Blended CAC

「Organic CAC」と「Paid CAC」を合わせた費用のことで、一般的にCACという場合は、このBlended CACを指すことが多い。なお、顧客数の増加率を維持した状態で収益を改善するには、Organic CACの配分を上げ、Paid CACを下げることがポイントとなる。計算式は以下の通り。

Blended CAC=顧客獲得にかかるすべてのコスト÷新規獲得顧客数

ユニットエコノミクスとCAC


事業の健全性を測る指標として「ユニットエコノミクス(Unit Economics)」がある。ユニットエコノミクスとは、1ユニット(Unit=単位)あたりの経済性・採算性(Economics)を表すもので、事業の収益性やどこまでの赤字なら新規顧客獲得を続けられるかといったことがわかる。主にサブスクリプション型ビジネスモデルを採用している企業などで使用されており、何を1ユニットとするかは企業によって異なるが、顧客やアカウントとするのが一般的である。
なお、ユニットエコノミクスを導き出すためには、LTV(Life Time Value/顧客生涯価値)を算出する必要がある。LTVを求める基本的な式は『LTV=購入単価×購入回数』だが、扱う商品などによって異なる場合も。このLTVとCACを用いて、ユニットエコノミクスは以下の計算式で算出できる。

ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC

一般的には、ユニットエコノミクスが3以上、つまりCACがLTVの3分の1以下となることが目安と言われている。


CACを把握するメリット

 

費用対効果の高いチャネルを把握できる 

顧客を獲得するための手法は無数にあり、その費用も効果も大きく異なる。そのなかで費用対効果の高いものを漫然と選び出すことは不可能に近い。そこで、チャネルごとにかかるコストと獲得した新規ユーザー数を明確化するCACを活用することで、費用対効果の高いチャネルを把握することが可能となる。

ユニットエコノミクスを測ることができる

ユニットエコノミクスは、「顧客やアカウントごとに、利益が出ているのか損失が出ているのか」を見るための指標である。ユニットエコノミクスを測ることで、事業の収益性やどこまでの赤字なら新規顧客獲得を続けられるかといったことがわかる。
ユニットエコノミクスはCACとLTVをもとに算出するため、市場の変化とともに常に変動する。定期的にこの3つの値を把握し、適切なマーケティング予算の管理に役立てることが大切である。

CAC改善のポイント 


コンバージョン率(CVR)を高める 

CACを改善する善法の一つとして、新規顧客獲得数を増やすことが挙げられる。そのためには、CVR(コンバージョン率)を上げて見込み顧客を増やす必要がある。具体的には、ターゲットの見直しやWebサイトの導線の改善、潜在顧客へのアプローチが可能なチャネルの開拓などが挙げられる。


広告を最適化する

CACを下げるには、マーケティングコストを抑えることが重要となる。その方法の一つとして、広告の見直しが有効だ。チャネルごとのCACを算出して費用対効果の高い媒体を絞り込んだり、費用を圧迫している広告の出稿を取りやめてオウンドメディアの活用にシフトしたりするなど、広告の最適化を図ると効果的である。


工数を削減する 

マーケティングコストを抑える方法として、ツールの導入によって業務効率化を図る方法も考えられる。CRMやMA、SFAなどのツールを用いることで、顧客情報の管理・分析の効率化・自動化が可能に。それによって業務工数を削減し、営業のリソースを確保することで新規顧客の獲得数増加も期待できる。


CPAとの違い


CACと似ている指標にCPAがある。CPAとは「Cost Per Acquisition」または「Cost Per Action」の略であり、Web広告における「顧客獲得単価」、「成果単価」などを意味する。CACも「顧客獲得単価」を意味するものであり混同されやすいが、それぞれ使われる場面が異なる。
CPAは主にWeb広告の費用対効果を測るものであり、CV1件あたりの広告コストを表す。それに対し、CACは施策やチャネル単位で用いられ、新規顧客を1件獲得するのに費やしたすべてのコストを表す。

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