リテンションとは?意味やメリット、リテンションマーケティングの手法
- Writer:
- 山崎雄司
「リテンション(retention)」は、日本語で「保持」や「維持」といった意味を持ち、マーケティングの分野で使われる場合は「既存顧客維持」を意味する。
リテンションとは
マーケティングにおけるリテンションとは、既存の顧客との関係を維持していくための活動全般を指す。なお、人事の分野では、リテンションは「人材の確保」という意味で用いられる。
リテンションとアクイジション
リテンションと対応する形で使われる用語に「アクイジション(acquisition)」がある。アクイジションは「新規顧客獲得」のこと。リテンションは、既存顧客との関係を維持していくことでLTV(Life Time Value/顧客生涯価値)を最大化することを目的とするのに対し、アクイジションは、広告やキャンペーンを通じて新規の顧客を獲得する段階までを目的とする。
リテンションマーケティング
既存顧客との安定した関係を継続するためのマーケティング施策を、リテンションマーケティングという。「1:5の法則」 として知られるように、一般的に新規顧客の獲得には既存顧客を維持する5倍のコストがかかるといわれるため、効率的な売り上げ向上を図るためにリテンションマーケティングに力を入れる企業が増えている。
リテンションマーケティングは、既存顧客に対してのマーケティング手法であるため、ターゲットは、一回以上自社の商品やサービスの購入に至ったことのある顧客となる。以下にリテンションマーケティングの施策の例を挙げる。
メールマーケティング
メールを利用したマーケティングで、顧客のセグメント(分類)によってさまざまなアプローチ方法がある。顧客全員に送るメールマガジンのほか、ある特定のアクションをした顧客に、事前に設定しておいたスケジュールに沿って自動的に配信されるステップメール を利用したり、受信者のセグメントに応じて配信先を絞るターゲティングメール を活用したりして、リテンションを図る。
プッシュ通知
自社のアプリを持っている場合は、特に休眠顧客に有効な手法の一つとしてプッシュ通知がある。ユーザーはスマートフォンに届いたプッシュ通知をタップするだけでアプリを起動できるため、メールよりも開封率が高い傾向がある。ユーザーのスマートフォンにダウンロードされた多数のアプリのなかで、存在感を高めるのにも有効だ。
リテンション広告
休眠顧客を呼び起こしたり、既存顧客のさらなる購入を図ったりするために配信する広告をリテンション広告という。たとえばWebサイトの下部や側面に表示される広告や、動画の合間に流れる広告などが該当する。プッシュ通知をオフにしている顧客にも有効。
SNS
SNSを活用し、企業についての情報や新商品情報、お得なキャンペーンなどを紹介することで、ファンを増やしたり、顧客満足度を高めたりする。DMやコメントを通じて、フォロワーとの活発なコミュニケーションが図れ、リテンションにつなげることができる。
カスタマーサポート
顧客からの問い合わせ窓口となるカスタマーサポートは、購入後のアフターフォローや、さらなる購入の促進に欠かせない。顧客の疑問を解決することで、顧客満足度の向上も期待できる。また、収集した声を社内のさまざまな部門に共有することで、より良い商品を開発するヒントにもなる。
リテンションマーケティングのメリット
LTVの向上
リテンションマーケティングの大きなメリットの一つは、LTVの向上だ。リテンションを図ることで顧客のリピート率が上がり、LTVが上昇する。これにより、企業にとっては売り上げの基盤を作ることができ、事業の安定を図ることが可能。自社のさらなる拡大につなげることができる。
ロイヤリティの高い顧客の育成
既存顧客とのコミュニケーションを丁寧に継続することで、より上位の商品を販売するアップセルや、追加で他の商品を販売するクロスセルの機会が増え、結果的に顧客単価の向上につなげられる可能性がある。また、顧客限定の優待やキャンペーンなどの特別な体験を提供することで、顧客ロイヤリティを高めることも。その結果、企業に対する良いクチコミを広めてくれたり、知人に自社商品やサービスを紹介してくれたりするロイヤルカスタマーを育てることができる。
フィードバックの活用
顧客との関係を維持することで、フィードバックを得やすいのもリテンションマーケティングの大きなメリット。商品の開発に活かすだけでなく、利用者の声をWebページに掲載したり、クチコミを集めたりすることで、新たな顧客を呼び込む可能性も。また、成功事例は新規の営業時にも活かすことができる。
休眠顧客の掘り起こし
一度購入したきり、もしくは、以前何度も購入していたが今は購入していないという休眠顧客に、再び購入する機会を生み出すことができる。購入履歴などを参考にしながら、次に必要になりそうな商品を提案したり、特別クーポンを発行したりと、さまざまなアプローチにより休眠顧客を呼び戻すことで、自社の売り上げ向上につなげることができる。
リテンションマーケティングのポイント
顧客をセグメントする
リテンションマーケティングでは、まず顧客をセグメントし、それぞれに対して最適なコミュニケーションを図ることが大切になる。このセグメントに際して用いられる手法の代表的なものが、RFM分析だ。RFM分析は、Recency(直近購買日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(累計購入金額)の頭文字であり、これらの軸で顧客を分類する。たとえば顧客が休眠顧客なのか優良顧客なのかによってコンタクトの取り方が変わるように、それぞれのセグメントに応じたコミュニケーションをしていくための指標となる。
ツールの活用
周知のとおり、デジタルマーケティングにおいては、顧客の属性や行動履歴に合わせたアプローチを行うone to oneマーケティングの必要性がますます高まっている。顧客一人ひとりに合わせたリテンションマーケティングを行うためには、部門を超えた顧客情報の管理、共有が必要不可欠だ。そのためにCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールも積極的に活用していきたい。
PDCAを回す
リテンション施策を実施して満足するのではなく、その結果を効果測定することが大切だ。データから自社の既存顧客の行動パターンや期待を理解していくことで、次の施策に活かすことができるだろう。PDCAを回しながら、顧客との関係をより深めていくことで、結果として恒常的な売り上げ増加につなげていくことができる。