顧客満足度を向上させ売上増を目指すCRM(顧客関係管理)は、特にデジタルマーケティングを中心に、今やさまざまな業界で使われている経営戦略だ。なかでもアパレル業界は、CRMの活用が効果的な業界といわれている。今回は、CRMの活用事例を紹介しながら、アパレル業界で有効なCRM活用方法を考えていきたい。
目次
1.CRMとは
2.「ウォンツ」商材を取り扱うアパレル業界
3.アパレル業界の現状
4.アパレル業界のマーケティングでCRMを活用するメリット
5.アパレル業界で効果的なCRM施策
6.アパレル業界のCRMツールの選び方
7.アパレル業界におすすめのCRMツール
8.CRMの活用事例
9.まとめ
10.カスタマーリングスのサービスを紹介
CRMとは
CRMとは、収集した顧客情報を分析し、効果的な顧客へのアプローチを実施することで、自社の商品やサービスの競争力を高める経営手法のことである。Customer Relationship Managementの略であり、日本語では「顧客管理」や「顧客関係管理」などと呼ばれる。
なお、顧客情報を管理するツール(システム)自体も、CRMという。
「ウォンツ」商材を取り扱うアパレル業界
なぜアパレル業界におけるCRMの活用が効果的かを考える上で重要な前提である、一般的な消費者の購買動機は、「ニーズ」と「ウォンツ」の2つに大別できるという考え方だ。
ニーズ商材
ニーズ商材とは、いわゆる生活必需品のような、「必要」に迫られて買うものである。例えば、食品や日用品などが挙げられるだろう。これらの商品は、製品やサービスの品質・価格が比較されやすい傾向があり、競合商品との差別化が図りづらい。ただ、消費者にとっては必需品であるため、特にCRMに力を入れなくても、露出の面を増やすことで購入してもらえる可能性が高まるものだ。
ウォンツ商材
ウォンツ商材とは、基本的にはなくても困らないが「欲しい」という思いで買うものである。例えば、アクセサリーやバッグのような、一般的に「ブランド」と呼ばれるものが挙げられるだろう。これらの商品は消費者の「買いたい」「欲しい」という購買意欲を刺激し、買いたくなる理由を考えなければ売り上げにつながらない場合が多い。一方で、消費者の囲い込みに成功すれば長期にわたって購買してもらえる優良顧客になり得るため、顧客満足度を向上させ売上増を目指すCRMの活用が効果的である。
アパレル業界の現状
消費者行動のオンライン化
昨今のインターネットやスマートフォンの普及に伴い、多くの消費者はあらゆるものをオンラインで購入するようになっている。商品の性質上、実物を見て検討してから購入したいと考える消費者が多いと思われたアパレル業界も、例にもれずオンラインでの購入が増えている。多くのメーカーは、こうした消費者行動の変化に対応するためにEC化を進めており、ブランドによってはオンラインでの売上が実店舗での売上を上回ったり、実店舗をクローズして販売をECに集約したりするケースもみられる。
フリマアプリの浸透
個人がスマートフォン一つで手軽に出品や購入ができるフリマアプリ。エコの考え方や消費者の低価格指向により、利用する消費者が増加傾向にある。これにより、新しい商品を購入する消費者が減少し、アパレル業界の売上にも影響を及ぼしている。
国内マーケットの縮小
少子化や、不況による消費者の買い控えなどにより、アパレル業界に限らず、国内の多くのマーケットが縮小の傾向にある。
このような現状のなかで売上を伸ばしていくためには、限られた顧客に対し効果的にアプローチしていくことが必要だ。不要なコストを削減しながら、顧客情報を分析し、一人ひとりに合ったアプローチを実現するCRMは、アパレル業界におけるマーケティングでも大きな役割を果たすといえるだろう。
アパレル業界のマーケティングでCRMを活用するメリット
アパレル業界で扱う商材は「ウォンツ」に該当するケースが多く、販売する側はいかに顧客の購買意欲をかき立てるかについて知恵を絞らなければならない。そこで役立つのが、顧客情報の統合や分析を可能にするCRMだ。アパレル業界におけるマーケティングでCRMを活用するメリットを見ていこう。
1.顧客のニーズを把握できる
2.顧客が欲しいと思うタイミングがわかる
3.オンライン・オフラインの垣根を解消できる
顧客のニーズに合わせたマーケティングの実施は、ビジネスにおいて非常に重要なポイントとなる。次は、アパレル業界での顧客管理について順を追って見ていこう。
顧客を理解できる
CRMにおいて一番大事なのが、顧客を理解することである。特にアパレル業界などで扱うウォンツ商材においては、なぜ顧客がその商品を求めるのかを理解しなくてはならない。商材が高品質であっても、売れ筋商品であっても、リーズナブルであっても、その商品やサービスが顧客の好みと合わなければ購入してもらえないからだ。CRMを活用することで顧客一人ひとりの多角的な分析が可能になり、趣味嗜好を把握することに役立つ。
最適なタイミングで顧客にアプローチできる
顧客理解と同じくらい重要なのが、顧客が「欲しい」と感じるタイミングをつかむことである。適切なタイミングでアプローチをすることで、購入につながる可能性が高まる。特にトレンドが大きく影響するアパレル業界では、調査や分析をしっかりと行ったうえで、消費者の心理を予測していくことも重要だ。CRMを活用することで、顧客の好みを把握し、適切なタイミングで提案することが可能になる。
広告コストを削減できる
CRMを活用し、顧客の趣味嗜好を把握することで、ターゲティングを効率的に行えるようになる。CRMによりどの広告チャネルやメディアを使ってアプローチするのが最適かを把握することで、効果的な広告戦略を実施できるようになる。ターゲットを絞って限定的なマーケティングを行うことは、広告費用の削減につながるため、収益性を高めるのに役立つ。
オンライン・オフライン双方の対応を可能にする
前述の通り、一昔前に比べると、コロナ禍を経てよりオンラインショッピングが一般的になっている。とはいえ、特にアパレル商材においては「商品を一目見ておきたい」「一度試着したい」「着心地を確かめたい」と考える消費者も少なくないだろう。こうしたことから、どんなにオンライン化が進んでも、実店舗の存在意義はあると考えられる。
たとえば、ネットサーフィンをしていた際に気になる服を見つけ、「今度店頭で試着してみよう」と考えた人がいたとする。実店舗で試着し、その服が気に入ったものの、その時には何らかの理由で購入に至らなかった。しかしその後、購入するタイミングが訪れ、最終的にオンラインで購入した――こういった、オンラインとオフラインを行き来するような購買行動もよくあることである。
つまり、消費者の生活シーンにおいては、さまざまなところに購買ポイントがあるため、欲しいと思った瞬間に購入できる仕組みを整えておくことが理想となる。CRMを活用することで、オンライン・オフラインを問わず、彼らがどのような流れで購入に至ったかを把握することができるのも、大きなメリットである。
社内の情報共有をスムーズにする
CRMを活用することによって、社内に蓄積しているデータを一元管理することができる。それにより、顧客情報をチームや部門を越えて把握することができ、顧客の一人ひとりの状況に合わせたアプローチが可能になる。
アパレル業界で効果的なCRM施策
メール配信
メール会員に送信するメールマガジンや、あらかじめ設定しておいたメールを自動で送るステップメール、あるアクションをきっかけに設定済のメールを配信するシナリオ配信など、メールを利用して顧客との接点を持ちながら購入を促す施策。
たとえば、カートに商品を入れたまま何らかの理由で購入に至っていない「カゴ落ち」状態の顧客にリマインドメールを送ったり、顧客の属性や購買・行動履歴に合わせたおすすめ商品を通知するレコメンドメールを送ったりすることで、購入につながる可能性が高まる。顧客の誕生日に合わせて、お祝いのメッセージとともにクーポンコードを配信するといった施策も効果的だ。
LINE配信
メール配信とともに、LINEを使ったCRM施策を取り入れる企業も増えている。LINEの友だち追加をした際の基本データや、LINE特有の対話型のメッセージを通じて収集した情報を蓄積することで、より具体的な顧客データを入手する。そのデータをCRMと連携させることで、年齢や性別、趣味嗜好や開封率といった条件に合わせたセグメント配信が可能になる。
アプリ活用
自社でアプリを運用している場合は、アプリを活用した施策も有効だ。CRMツールとアプリを連携させたプッシュ通知やメッセージのセグメント配信など、顧客データを活用したマーケティングを行う。メール配信やLINE配信と同様に、顧客セグメントに合わせてパーソナライズされたメッセージ配信がポイント。
Web接客
ECサイトを訪れた顧客に、ポップアップでセールのお知らせやポイントアップバナーなどを表示する。CRMを連携して顧客データを基に表示する内容を変えることで、売上や顧客満足度の向上につなげることができる。
SNSの活用
アパレル業界はSNSを利用したマーケティングとの相性がよく、CRM施策と組み合わせることで効果をより高めることができる。たとえば、InstagramやXなどの公式SNSアカウントを活用したクーポンの配信や、アプリ利用者向けの限定キャンペーンなど。CRMと連携させることでOne to Oneマーケティングの実現にもつながる。新商品やセールなど即時性が求められる施策にも適する。
アパレル業界のCRMツールの選び方
CRMはさまざまな機能を持つものが多いが、アパレル業界ではどのようなCRMツールが適しているのだろうか。ここでは、CRMツールを選ぶ際のポイントについて見ていこう。
自社の受注システムと連携が可能か
CRMを選ぶ際は、すでに自社で採用しているカートシステムや受注システムとの連携ができるかどうかを確認したい。実店舗のデータについては、POSシステムとの連携が可能なCRMを選ぶこと。
業務効率が上がるか
せっかくCRMツールを導入するなら、業務の効率化に直結するかどうかを見極めたい。上述のような自社システムとの自動連携機能があれば、データを取り込む作業を省くことができる。また、自社に必要な顧客分析機能を備えるツールであれば、それまで手作業で行っていた分析作業の工数を削ることもできるだろう。データで顧客の動向を把握することは、未来の売上予測にもつながるため、在庫の確保やキャンペーンの必要性などの判断にも役立つ。
サポートが充実しているか
新たなCRMツールを導入する際には、トラブルが発生することが多い。特に、スタッフがツールの使い方に慣れるまでに時間がかかり、従来のワークフローにも変化をきたすため、現場で混乱が起こる可能性が考えられる。そのため、サポートが充実しているか、ベンダーからの迅速な対応を得られるかどうかを事前に確認することはとても重要だ。
セキュリティ対策は万全か
アパレル業界に限ったことではないが、膨大な顧客情報が蓄積されているCRMツールは、セキュリティ対策に細心の注意を払う必要がある。システム構成が適正であるか、また、ベンダーが不正アクセス等の不測の事態に対してどのような策を講じているか、十分に確認したうえで選定しよう。
アパレル業界におすすめのCRMツール
カスタマーリングス
料金プラン
月額費用:問い合わせ
初期費用:問い合わせ
特長・強み
株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供する「カスタマーリングス」は、CRMとMAツールから進化した、顧客実感型マーケティングプラットフォーム。あらゆる顧客データや行動データを、ノンカスタマイズで統合し、ノンプログラミングで自由に抽出できる。ECや店舗顧客のデータ統合・管理から、メールやLINEなどのアクション、分析まで「誰でも」「すぐに」活用できるのが特長。カゴ落ち防止やセグメント配信、ステップ配信、在庫トリガー(お気に入り商品の在庫入荷時や残量のお知らせ)、レコメンドなど、リピート顧客の促進に効果的なアクションを、複数チャネルを組み合わせながら実施可能。導入からスキルアップ、オンラインサポートも充実している。
KARTE
料金プラン
月額費用:問い合わせ
初期費用:問い合わせ
特長・強み
株式会社プレイドが提供する「KARTE」は、顧客データを軸にWebサイトやアプリ、カスタマーサポートを通じて一人ひとりに合わせた顧客体験を提供するCXプラットフォーム。アパレルに特化した効果的な施策例があらかじめセットされており、デザイナーやエンジニアを通さなくてもWebサイトへの公開が可能。また、アパレル業界専門のカスタマーサクセス担当を有するため、安心して導入できる。
Synergy!
料金プラン
月額費用:15,000円〜
初期費用:118,000円~
特長・強み
シナジーマーケティング株式会社が提供する「Synergy!」は、追加や変更が自由に設計できる柔軟性の高い顧客データベースを中心に、メール配信やLINEアンケート配信、Webコンテンツの出し分け、広告配信、問い合わせ管理などの機能を、用途に応じて自由に組み合わせて利用できるツールである。氏名や性別などの基本情報に加え、顧客の好みのスタイルや体型など、アパレル業界ならではの管理項目をカスタマイズ可能。また、メール配信の成功パターンの中から「カゴ落ちメール」や「カタログ開封促進メール」「バースデーメール」といった必要な機能も厳選して利用できる。堅牢なセキュリティ機能や、導入後のきめ細かいサポートなども充実。
CRMの活用事例
ここで、実際にアパレル業界に多く見られるCRMの活用事例を見ていこう。
1.株式会社サザビーリーグ エストネーションカンパニー
アパレル商材やハイブランドジュエリーなどを扱う「株式会社サザビーリーグ エストネーションカンパニー」では、店舗での施策を中心にCRM戦略を練っているのが特徴だ。店舗スタッフにも顧客情報を共有したり、店舗の顧客情報とECの顧客IDデータを統合したりすることで、顧客一人ひとりに対し、より統一感のある接客やアフターフォローを行っているという。
イベントプロモーションを実施する際には、顧客接点の最適化を優先。顧客セグメントに重点を置き、メールやSNSなどの配信チャネルや店舗からの直接アプローチなど、顧客に合わせた告知を行うことで、レスポンスや商品の購入率に直接的な反響があったという。
また、商業施設におけるテナント出店時には、レスポンス率の高い顧客の多くが自社メンバーズカードだけでなく、出店先テナントのハウスカードも持っていることに注目。商業施設に関する情報を知るべく、POSレジを改修し、会計時に顧客の提示したクレジットカードやハウスカードの種類を登録できるようにしたという。その情報をCRMの顧客情報と連携させ、そこからセグメントをかけてメルマガ配信等のアクションにつなげたそうだ。こうしたセグメントメールの配信は、今後、アプリを連携させたプッシュ通知での配信方法も検討しているという。
2.ミズノ株式会社
顧客と1対1で接点を持てるメールマーケティングを大切にしている総合スポーツ用品メーカーの「ミズノ株式会社」。
「商品を購入する意思があるのに、購入していない人」にリマインドメールを送ることを思いつき、CRMツール導入後はオンラインショップにおけるカゴ落ち(利用者が一度商品をカートに入れたものの、購入に至らないこと)ユーザーに対し、「カートにこの商品が残っています」と画像付きでリマインドを実施。結果、売上アップにつながったという。
3.株式会社マードゥレクス
大手化粧品通販企業の「株式会社マードゥレクス」では、CRMツール導入の際に戦略商品を4つ決め、それぞれ購入した顧客がまた使いたくなるようなアプローチをメールで行っているとのこと。
特にベースメイク商品は、定期購入されやすいスキンケア商品と違い、1度購入したら終わりという場合が多いため、なくなりそうなタイミングを見計らってリピート購入を促進している。また、使用中の期間でも、他の関連商品を紹介するといったクロスセルを行っているという。
こうした活用例はアパレル業界にも応用でき、アイテム単位でのレコメンドによるリピート促進や、購入ブランドから他ブランドへのブランドクロスなどが考えられるだろう。
また同社では2016年より、メール以外の顧客とのコミュニケーションチャネルとして『LINE@』を採用。『LINE@』とは、店舗や施設からLINE上のトークでクーポンやセール情報などを届けることができる集客サービスだ。最近では『LINEビジネスコレクト』と連携したCRMツールや、LINEアカウントを使ってWebサイトやサービスにログインできる『LINEログイン』などの戦略サービスも登場。顧客IDとLINE IDを紐付けたネットワークプロモーションは、ますます広まっていきそうだ。
まとめ
アパレル業界においても顧客ひとりひとりとの関係に有効な効果を発揮するCRM戦略。実際の活用例を知ることで、改めてCRMの重要性を知ることができたのではないだろうか。この記事が、あなたの会社に最適なCRMとその活用方法を考えるきっかけとなれば幸いである。
カスタマーリングスのサービスを紹介
アパレル業界では、ECサイトと実店舗双方の顧客データを統合し、どちらを利用しても統一感のあるOne to Oneの顧客体験を提供することが求められます。そのためには、データの一元管理と共有が大切です。
データの収集や管理、活用に関する業務には多くの手間がかかるため、事業の発展には、業務効率を向上し、効果の最大化を強力に支援するマーケティングプラットフォームの活用が欠かせません。
マーケティングプラットフォームにはさまざまな製品がありますが、アパレル業界で顧客理解を深めるなら、「ITreview Best Software in Japan 2022(※)」に BtoC向けマーケティングオートメーションとして唯一選出され、アパレル業界の導入事例も豊富な「カスタマーリングス」をおすすめします。
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