顧客管理とは?顧客情報を管理することの重要性とその活用法


Writer:
山崎雄司
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「顧客管理」は、ビジネス成功のカギといっても過言ではないほど、デジタルマーケティング分野にとどまらずすべての分野において注目されている。本記事では、マーケティングやサービスの向上、さらに顧客満足度アップにつなげるための「顧客管理」の基礎からその活用法までを解説していく。

顧客管理とは


顧客管理とは、顧客の基本的な属性情報(氏名や年齢、住所など)だけではなく、購買履歴や取引履歴(サポート状況、顧客接点におけるコミュニケーション情報)なども顧客情報として扱い、一元管理することである。属性情報に加え、行動パターンやマーケティング活動への反応といった顧客との「関係」を管理し分析することで、適切なターゲット選定、的確なアプローチ、品質の改善、ニーズに合った商品の案内などの施策が可能となる。なお、顧客の状況には新規・既存・見込みといったさまざまなフェーズがあるため、行うべきアクションはそれぞれ異なる。
また、顧客データを管理するだけでなく、顧客との良好な関係を維持し、商品やサービスを継続的に利用してもらうためのマネジメント手法も「顧客管理」に含まれる。
このように、顧客のあらゆる情報を一元管理する取り組みやシステムはCRM(Customer Relationship Management)と呼ばれる。


なぜ顧客管理が注目されるようになったか


顧客管理が注目されている理由として、インターネットやSNSの発達により、消費者自身が情報を収集・比較できるようになったことが挙げられる。かつてのようなプッシュ型の大型広告や一方的なDMによるアプローチは嫌われる傾向が強くなり、顧客中心のマーケティングが求められるように。BtoCにおいても、プッシュ型の電話営業や飛び込み営業は担当者に取り次いでもらえないことが増え、現在は過去の商談や名刺の情報を蓄積して顧客データ管理を行っている。
また、新規顧客の獲得には既存顧客の5倍のコストがかかる(1:5の法則)といわれており、価値観やニーズの変化に加えて商品やサービスも日々増加するなか、新規顧客の獲得はより難しい状況にあるといえるだろう。こうした状況下で、より効率的に成果を上げられるマーケティングを行うには、既存顧客の満足度を上げて優良顧客へと育成し、LTV(Life Time Value/顧客生涯価値)を向上させる必要がある。「顧客管理」を活用すれば、顧客一人ひとりに合わせた施策を打つことが可能だ。
「顧客管理」は、このような既存顧客との関係維持はもちろん、失注顧客の掘り起こしなど、新たな顧客創出につながる可能性も秘めており、コストやマンパワーをかけずに売り上げを伸ばすための手段として、改めて注目されている。


顧客管理で実現できること


1.顧客との信頼関係を構築できる


昨今のマーケティングで最も重要なのは、自社に対する顧客の信頼度を高めることだ。顧客自身であらゆる情報を簡単に手に入れることができる今、すべての商品やサービスが常に比較・検討されている。そのなかで自社を選んでもらうためには、顧客との信頼関係を築くことが欠かせない。裏を返せば、信頼できると感じてもらえれば顧客は離れないということである。信頼度の向上は、リピート率や関係性の構築に直結する。
顧客との信頼関係を築くには深い顧客理解が重要であり、それを実現できるのが「顧客管理」なのである。基本情報から一歩踏み込んだ情報、たとえばBtoCであれば購買及び購買行動の履歴など、BtoBであれば企業理念や過去の実績など、顧客のあらゆる情報を把握することは、顧客理解のベースとなる。

2.顧客のニーズを把握できる


顧客が商品やサービスを探しているのは何かを求めているからであり、必要ないものは購入しない。つまり、顧客のニーズを把握することが重要となる。「顧客管理」では、顧客一人ひとりの個性や特性、反応などを記録することで、顧客の動きを多方面から立体的に把握できるため、顧客ニーズを的確にとらえることができる。蓄積された顧客データを分析することで、顧客が今何を必要としているのかを的確に抽出し、最適な商品やサービスの提供や、新商品の開発などに活用することができる。さらに、購入履歴などから購入傾向を分析することで、顧客自身が自覚していない「潜在ニーズ」を抽出することも可能となる。

3.顧客満足度(CS)の向上につながる


顧客管理では、集約した顧客情報を用いて分析を行うことで、顧客ニーズに合わせた適切なマーケティングや良質な顧客体験の提供が可能となり、顧客満足度(Customer Satisfaction/CS)を向上させることができる。たとえば電話やメールなど顔の見えない問い合わせでも、顧客データ管理をもとに、担当者が顧客ニーズに合ったきめ細やかな案内をすることができれば、顧客満足度は上がりリピートにもつながりやすい。高品質なサービス提供は、顧客との良好な関係を構築するうえで欠かせないものといえる。


マーケティングにおける顧客管理の活用法


1.セグメントごとに適切なアプローチを行う


基本情報だけでなく、購買履歴や購入経路などのさまざまな顧客関係管理データをもとにセグメントを行い、セグメントごとにニーズに合った最適なアプローチを実施することが重要である。たとえば、店舗で新規購入した顧客には次回から利用できるクーポンの発行、ネットでのリピート客には特別イベントの案内メールの送付などといったように、サービス内容の最適化だけでなく顧客が受け取りやすい手段も検討しよう。イベント参加のみといった見込み客には、しつこくならないようオウンドメディアも活用したお役立ち情報の提供も効果的だろう。なお、顧客のニーズを把握するには、Webサイトやメールでのお知らせ、アンケート結果などの行動履歴が有効である。

2.顧客データを元に有益な情報を届ける


情報の氾濫や価値観の多様化によって、従来のような画一的なマーケティングは効果を得にくいだけでなく、顧客にとって不要な情報が詰まったメールや広告は嫌われる傾向にある。そこで、顧客管理を活用し、顧客にとって必要な情報をリアルタイムにピンポイントで提供することで、購買意欲の向上につながる。顧客にアプローチするにあたって最も大切なのは、顧客にとって有益な情報を適切なタイミングで提供することだ。顧客データから、過去の顧客接点を分析し、ニーズや購買段階に応じて有益な情報を提供することが重要である。

3.行動履歴を効果的な営業に役立てる


住所や氏名、性別などといった基本情報のほか、アクセス履歴やアンケートへの反応、キャンペーンへの参加率などといった行動履歴を分析することで、顧客の興味・関心の傾向やニーズがみえてくる。それを踏まえて営業活動を行えば、効率的な売り上げアップが期待できる。また、リピート率の高い顧客との取引間隔を把握し、初回取引後の顧客離れを防ぐためのアクションを起こすことも可能だ。顧客データをもとに、資料の収集や打合せ内容の検討、提案商品の見直しなどを綿密に行ったうえでの営業活動は、クロージング率の高い提案や成約率の向上に大きく貢献するだろう。

4.顧客カルテの電子化による業務効率化


美容室やサロンなどの実店舗では、顧客の来店や施術の履歴などをまとめた「顧客カルテ」で顧客情報管理を実施している。その管理方法については、従来の紙媒体から、アプリなどを用いた電子カルテに移行しつつある。スマートフォンやタブレットを用いて顧客データを系列店舗やスタッフ同士で共有・管理するものが多く、必要な情報を手早く検索できるため業務効率化にも役立っている。来店・施術履歴や顧客の要望などの情報が一目で確認できるほか、POSレジとの連携機能をもつものもある。また、予約サイトとの連携は、顧客にとっては空き状況の確認や予約がしやすく、店舗側にとってもダブルブッキングの防止ができるなど、メリットも多い。


まとめ:「顧客管理」で顧客との信頼関係を築こう


顧客管理は、デジタルマーケティングだけでなく実店舗での導入も増え、今やすべてのビジネスにおいて欠かせないものとなっている。顧客関係及び顧客関係の管理は、事業の規模や分野を問わず、企業と顧客をつなぐ重要な要素であり、蓄積された情報そのものが財産といっていいだろう。顧客との関係を的確に把握し、深い顧客理解と同時にニーズをくみ取り、中長期的に強いつながりを維持していくことが、顧客と企業双方にとって大きなメリットをもたらすことになる。顧客管理ツールを最大限に活用しビジネスを成功させるためにも、まずは顧客との良好な関係の構築に必要な考え方をしっかりと理解しておくことが重要である。

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