KSFとは?設定目的やKPI、KGIとの違い、見つけ方、分析方法、具体例


Writer:
山崎雄司
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KSFとはKey Success Factorの略称で「重要成功要因」と訳され、事業を成功させるために必要な要因のことを指す。

KSFとは


KSFはKGI(重要目標達成指標)を達成するために必要となる要因のこと。顧客や市場、競合他社の動向などの「外部要因」と、自社の強みや資金力などの「内部要因」がKSFとされ、マーケティング戦略成功のために明確化された重要な要素である。同義語にCSF(Critical Success Factor/重要成功要因) 、 KFS(Key Factor for Success)がある。


KSFの目的


KSFを設定する最大の目的は、急速に多様化する消費者ニーズに対応できるマーケティング戦略の確立である。モノがあふれる現代において競合他社との差別化は必要不可欠であり、きめ細やかなマーケティングが事業の成功につながる。KSFは事業の成功率を向上するうえで重要な概念であり、数年後を見据えた事業計画書の立案や、新規事業参入を進める際の鍵となる。
また、目標を細分化することで、事業のPDCAを回しやすくするのも一つの目的でありメリットだ。

KSFとKGI、KPIの関係


KGI

KGIはKey Goal Indicatorの略で、「重要目標達成指標」と訳される。売上高、販売数、利益率など、ビジネスで目指す最終的な目標を客観的かつ明確に数値化したものである。KGI達成のために必要となる具体的な要因がKSFであり、一つのKGIに対して複数のKSFを設定することが多い。


KPI

KPIはKey Performance Indicatorの略で、「重要業績評価指標」と訳される。施策のゴールであるKGI達成のための中間的な指標を指す。KSFは定性的な内容が多いが、KPIはKSFをより具体的に数値化した目標であるといえる。KGIは設定時から固定すべき指標だが、KSFとKPIは定期的な検証と見直しを行い、柔軟に運用する必要がある。
つまり、KGI(最終目標)を達成するために必要な要因となるKSFを、さまざまなフレームワークを使って分析・抽出し、それらをもとに具体的な数値目標としてKPIを設定する。


KSFの見つけ方


3C分析

KSFを設定するために用いられるフレームワークの一つに3C分析がある。3CはCustomer(顧客・市場)、Company(自社)、Competitor(競合)の頭文字「C」からとられている。そのうち、CustomerとCompetitorは外部要因で、Companyは内部要因である。Customer(顧客・市場)では、顧客データを分析し、さらにそこから導き出される市場データを分析することで、顧客のニーズや顧客の消費・購買行動、市場規模、市場の成長性などを把握できる。


SWOT分析

SWOT分析とは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素から環境分析を行い、経営戦略を立てること。自社の事業の状況を内部環境(自社が持つ資産やブランド力、価格、品質など)と、外部環境(自社を取り巻く市場や競合、法律など)に分け、さらに内部環境のプラス要因である「強み」とマイナス要因の「弱み」、外部環境のプラス要因である「機会」とマイナス要因の「脅威」の4項目からクロス分析を行う。


PEST分析

PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境を、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から分類し、自社にとって何が「機会」や「脅威」となるのかを分析する。PEST分析では、外部環境を効率的に予測でき、自社や市場に及ぶ可能性のある中長期的な影響をあらかじめ把握することが可能なため、さまざまな状況に備えて今後の戦略を練ることができる。


ファイブフォース分析(5F分析) 

ファイブフォース分析とは、業界内において自社の脅威(競争要因)となりうる以下の5つの要素を分析するフレームワーク。

● 業界内での競合:既存競合他社のブランド力、知名度、資金力、技術力など
● 新規参入業者:業界への新規参入者のブランド力、技術力など
● 代替品:業界外における代替品の有無、代替品の品質、乗り換える際のコストなど
● 売り手の交渉力:市場規模、売り手の数の確認など(サプライヤーとの力関係)
● 買い手の交渉力:価格設定は適切かなど(顧客との力関係)  

「新規参入業者」「代替品」が外部要因、「業界内での競合」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」が内部要因となる。ファイブフォース分析によって、さまざまな視点から自社の業界内における現状把握や、「機会」及び「脅威」の洗い出しを行い、他社と差別化できるKSFを抽出することができる。


バリューチェーン分析とVRIO分析


バリューチェーンとは、コア業務である「製品の製造や販売」と、それらの支援活動である「開発や労務管理」など、さまざまな活動が価値を持ち連鎖していくとする考え方を指し、その連鎖によって、最終的にどれほどの付加価値を生み出せているかを明らかにする内部要因分析のフレームワーク。
自社の現状が把握できたら、VRIO分析 を行う。VRIOは以下の4つの頭文字を取ったもので、経営資源に焦点を当てた分析手法だ。自社が保有する経営資源の強みと弱みを把握できるため、適切なKSF設定の一助となる。

● Value(経済的な価値):その経営資源は「機会」や「脅威」に対応可能か
● Rareness(希少性):業界内における独自の強みはあるか
● Imitability(模倣可能性):競合他社に模倣される可能性はあるか
● Organization(組織):組織全体で経営資源を最大限活かせるような仕組みがあるか 


KSFの設定事例


紙おむつメーカーの場合 ―「低価格」

紙おむつの購買層の多くは価格に敏感な若い主婦であること、また、消耗品であり日々必要なものであることに目を付けた某紙おむつメーカーは、KSFを低価格での提供に設定。業界シェアの拡大に成功した。

携帯電話会社の場合 ―「すばやく消費者を取り込む」

携帯電話が普及し始めたころ、本体が0円で販売されていた。これはメーカーが、この事業が「一度契約したら顧客は他社に短期間で乗り換えない」「本体機器の代金は月々発生する通信料で賄える」という特性に目を付け、各社が消費者を早く取り込むことをKSFとして設定したためである。結果、事業は加速し、携帯電話業界は成長期を迎えた。

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