ROIとは?目的とメリット、計算方法、数値を上げる対策、留意点


Writer:
山崎雄司
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ROIは、Return On Investmentの略称であり、投資収益率または投資利益率と訳される。「コストパフォーマンス」と同義だが、ビジネスにおいては一般的に「ROI」が使われる。

ROIとは? 


ROIとは、投資に見合った利益を生み出しているかどうかを測る指標であり、導入予定のツールの比較・検討や、施策実施後の効果検証の際に用いられる。ROIが高いほど収益性が高く、価値のある投資といえる。

マーケティングにおけるROIの目的 


マーケティングツールの多様化やワークフローの複雑化によって、どの施策がどのような効果をもたらしているかを評価することが難しくなっている今日のビジネス環境下において、費用対効果を明確にする重要な指標として注目されているROI。マーケターは、算出したROIを基に、どこまでコストを抑えて効率的かつ効果的なマーケティングを行えるかを検討し、次のマーケティング施策に活かしていく。つまり、コスト削減と、費用対効果の向上がROIの目的である。

ROIを活用するメリット


ROIを活用するメリットを4つ挙げる。

事業効果が測定できる 

効率的に利益を生み出せているかを、客観的に評価できる。数値で定量的に説明できるため、企画の立案や取引先などへの説明の際に、相手が求める情報について、説得力をもたせて提供できる。

競合他社との比較ができる 

ROIの計算式は企業規模やビジネスモデルを問わず同じであるため、競合他社との比較が可能。規模の異なる事業であっても、ROIを把握し比較することで、どの事業にどの程度投資すべきか、つまり、どの事業が効率よく利益を上げられるかの重要な判断材料となる。

施策ごとに有効性が評価できる 

社内で複数の事業や施策が進行している場合なども、施策ごとのROIを把握し比較することで、各施策の効果を客観的に評価できる。部や課など、細分化された単位での施策の収益性が明確になるため、より投資すべき施策について比較・判断することが容易になる。

利益に紐づく純粋な投資効果がわかる 

ROIで確認できるのは「売上」ではなく「利益」。算出時に原価や販売管理費用を差し引いた数値であるため、事業における純粋な投資効果を確認できる。

ROIの計算方法 


ROIは、以下の計算式で算出できる。

ROI(%)=利益金額÷投資額×100

マーケティングにおけるROIの「利益金額」は、売上から売上原価を引いた「粗利」から、さらに販売に必要なコスト(販売管理費など)及びマーケティング費用(広告など)をすべて差し引いたものを指す。また、投資額はマーケティング費用のことを指す。
以下に具体的な計算例を挙げる。

例1)
原価300円の商品を定価1,000円で販売。マーケティング費用は50万円。販売管理費は20万円。その商品を2,000個販売した。

この場合、計算式は以下のようになる。

ROI=〈200万円(売上)-60万円(売上原価)-20万円(販売管理費)-50万円(マーケティング費用)〉÷50万円(マーケティング費用)×100=140(%)

例2)
例1と同様、原価300円の商品を定価1,000円で販売。販売管理費20万円。その商品を2,000個販売した。ただし、マーケティング費用は例1より多い75万円をかけた場合。

ROI=〈200万円(売上)-60万円(売上原価)-20万円(販売管理費)-75万円(マーケティング費用)〉÷75万円(マーケティング費用)×100=60(%)

これらを比較すると、例1はROIが100%を上回っており、効果が出ていると判断できる。一方、例2は100%を下回っており、投資額に見合った効果が十分に得られていないことがわかる。

ROIを高めるための対策


ROIの改善には、利益を増やすことと、投資額を抑えることの2点が鍵となる。この2つの視点から、対策を3点挙げる。

売上アップに注力する 

基本的には売上をアップさせると利益も増加するため、新規顧客の開拓や、既存顧客へのアップセルやクロスセルのような、売上向上につながる施策を実施する。 リスティング広告を使用している場合は、キーワードやターゲットの見直しをすることでアクセシビリティを確保し、さらにユーザビリティに注力するなど、顧客満足度を高める施策も有効である。

コスト削減を実行する 

利益につながらないコストをカットすることもROI改善につながる。業務フローや人件費、輸送費等を見直すほか、可能な限り原価を下げることも有効だ。

ターゲティングを最適化する 

ターゲティングを最適化することで、過去に自社製品を検索したことがあるなど、興味を持ってくれている人や、購買意欲の高い人に絞った高精度なマーケティングが可能となる。また、ターゲティング広告を利用すると、無駄な出稿を抑えることができ、広告コストの削減につながることも。 

「ROI」と「ROAS」の違い


ROASは「Return On Advertising Spend」の略称で、広告費用回収率などと訳される。広告費に対して広告経由でどのぐらい売上に貢献したかを測る指標。計算式は以下である。

ROAS(%)=広告経由での売上÷広告費×100

ROIとROASは、どちらも広告の費用対効果を測る指標であるが、ROIは「利益額」を基準としており、ROASは「売上額」を基準としている点が異なる 。

知っておきたい関連用語


ROIに関連するマーケティング用語を3つ解説する。

CPA 

CPAとは、「Cost Per Action」または「Cost Per Acquisition」の略称。Web広告の費用対効果を測るために用いられる指標で、利益につながる成果を1件獲得(コンバージョン)するためにかかる費用のこと。

CPA=広告費÷コンバージョン数 

CVR 

「Conversion Rate 」の略称。Webサイトへ訪問したユーザーのうち、コンバージョン(商品購入や問い合わせ、資料請求など)に至った成果の割合。

CVR(%)=コンバージョン数÷セッション数(サイトへの訪問数)×100

LTV 

LTVとは、「Life Time Value」の略称で「顧客生涯価値」と訳される。顧客とその企業との取引のある期間(=顧客ライフサイクル)に、顧客からどれだけの利益が得られるかを測る指標。主に既存顧客の維持や拡大を図る際に重視される。算出方法はさまざまであるが、基本的な計算式は以下である。

LTV=購入単価×購入回数

ROIを活用する際の留意点


ROI活用におけるデメリットを3つ挙げる。

長期的な視点での利益の評価には適さない 

ROIは投資額に対する利益率であるため、すぐに結果が出ない施策に関しての評価が低くなりやすい。ROIを用いる際には、その施策がどの程度の期間を要するものなのかを明確にすることが必要となる。 

数値化できないものの評価が難しい 

ROIは利益率を測る定量的な指標であるため、企業の認知度や信頼性の向上などを目的とした施策のような、数値化できない利益については評価が難しい。

定期的・継続的に分析を行う 

マーケティング施策の効果は、すぐに現れるわけではないことが多い。先述の通り、ROIは長期に利益を上げようとする施策の評価には適さないため、ROIでの効果測定を定期的に実施し、1年以上の長期的スパンで継続することが重要となる。

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