ブランディングとは?目的と種類・差別化戦略・成功のポイントなど


Writer:
山崎雄司
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ブランディングとは、自社の価値を生み出し、それに対する愛着や信頼を獲得して他社との差別化を図る、マーケティング活動全般を指す。

ブランディングとは? 


ブランディングでは、自社商品やサービスを消費者や取引先などの社会全体に「特別な存在」と認識してもらい、他社との差別化を図っていく。そのために、市場における独自の強みやポジションを明確にすることから始め、社会の認知を高めながら、自社ブランドに理解と愛着を持った顧客との信頼関係を構築していくことが重要になる。

ブランディングの種類


ブランディングの方法は、何をブランドとして認知させるのか、また、どんな相手をターゲットにするのかによって種類が異なる。

インナーブランディング 

自社のブランド価値を社内で認識してもらうための活動。例えば従業員が顧客に自社商品を提案する際、仕事だからという認識で商談に臨むのと、本心から素晴らしい商品だと思って臨むのとでは、明らかに顧客への伝わり方に差が出るだろう。社内に向けた戦略だが、結果的に消費者の心をとらえ、ブランディングの本来の目的を達成する手助けとなる。

アウターブランディング 

自社のブランド価値を社外で認識してもらうための活動。消費者だけではなく取引先なども含めた自社以外の関係者全般が対象となる。例えば、アウターブランディングに注力しているA社と、そうではないB社が同じ商品を販売しているとする。A社のアウターブランディングが成功していれば、実際の製品自体には差がなくても多くの消費者や取引先がA社の製品を信頼し、選ぶだろう。社外から見た自社へのイメージや信頼度を測る指標となる。

商品ブランディング 

自社の商品やサービスそのものに価値を感じ、愛着を持ってもらうための活動。「〇〇といえばこの会社」といったように、商品そのものに対してオリジナルのブランド力を持たせていくため、技術力やデザイン、広告や店頭での独自の存在感づくりなども重要な戦略になる。商品ブランディングではその商品が持つブランド力の大きさが売り上げに直結するため、商品を顧客に認識してもらうためのデザインや技術力、広告力などが問われる。

サービスブランディング 

自社商品やサービスの利用体験を通じて、顧客に満足感や感動といった目には見えないものに価値を感じてもらい、その体験をブランド化すること。例えば、ホテルや飲食店など、顧客との接点が一番多い従業員の対応の仕方によって商品の売り上げに差が出るように、その商品やサービスでしか味わえない顧客体験を追求する。人材の質に加え、空間演出や業務プロセスの改善なども検討する。

ブランディングの目的


顧客ロイヤルティの向上 

ブランディングの成功によって得られた顧客は、自社の製品ブランドをよく理解し愛着をもっているはずだ。そのため、必然的にリピート率が高くなり、顧客単価の向上、LTVの向上にも繋がる。また、ロイヤルティが高い顧客は周囲に勧めたり、SNSなどで自発的に発信・拡散してくれたりする可能性も。自社のファンを育てることは、長期的な売り上げへの貢献となる。

利益率を上げる 

ブランディングによって自社商品やサービスに対する認知度が高まることで、たとえば最小限の広告宣伝費で自社商品が「選ばれやすい」状況を作ることができるため、利益率の向上につながる。

価格競争からの脱却

市場に商品やサービスが溢れる現在では、消費者の選択基準も価格だけではなくなってきている。ブランドという独自の価値を生み、ブランディングによってその価値に愛着と信頼をもった顧客を獲得できている企業は、類似品が登場したとしても価格競争に巻き込まれることなく選ばれ続けるだろう。

社会的信頼度を向上 

自社の理念や統一感のあるメッセージとして発信することで、顧客はもちろん取引先や社員に対しても安心感や信頼度を高めることができる。社会的な信用度は株価などの安定にも繋がるだろう。社会に対する発信力が強まることで、商品やサービスに対する注目度も集めやすくなるなど、好循環に繋げられる可能性もある。

ブランディングの手法


ブランディングを行う手法について、いくつか例を紹介する。

動画配信 

圧倒的な表現力をもって企業理念や姿勢、商品価値などを映像として伝えることで、消費者の意識に浸透しやすくなる。インターネットを用いた場合はテレビCMなどよりも幅広い対象にメッセージを届けられるため、より効率的なブランディングが期待できる。企画内容や撮影の規模、編集時間などによって費用が大きく変わる場合がある。

オウンドメディア 

自社が運営するHPやTwitterなどのSNSなどを用いて独自のコンテンツを配信する。リソースさえあれば継続的に情報発信ができ、拡散力も期待できる。広告費の削減にも。

ブランドブック 

従業員に自社ブランドの価値や理念などを伝えるために制作する社内向けのブック。インナーブランディングにはとても有効で、ブランドロゴやブランドカラー、フォントなどのデザインガイドラインが含まれるものも多い。採用活動のためのツールとして取り入れることも可能。

ブランディングのポイント


ブランディングを行うにあたっての基本的な方法とポイントについて解説する。

ターゲットと商品価値を明確にする 

「誰に」「何を伝えるのか」を明確にすることがブランディング展開で最も重要な要素である。自社ブランドは何か、その商品価値はどんなものなのかを明確にし、伝えるべきメッセージを組み立てること。そして誰に伝えるのか、ターゲットを明確化したうえで最も伝わりやすい表現と手法を選択する。

業界における立ち位置を分析する 

効果的なブランディングを行うには、自社ブランドを取り巻く環境の分析が欠かせない。競合他社の状況、市場を踏まえ、自社の立ち位置を確認する。3C分析SWOT分析、STP分析といったフレームワークを活用し、自社の強みを活かしたブランディングの検討が重要である。

PRを実施 

ブランドのロゴやキャッチコピー、イメージカラーを決定したら、ターゲットに届きやすいメディアを選び、より広く認知を拡大する。

コラボレーションの機会を考え、実行する 

他社との差別化を図りつつ、お互いの良さを引き立てられるようなコラボレーションも認知の拡大に有効。自社のみのPRでは届かなかった層へのアプローチを実現し、潜在顧客を増やすことができる。

ブランディングとマーケティングの違い 


ブランディングとは、自社の価値を生み出し、高める活動全般を指す。対してマーケティングは、その価値を、宣伝活動などを通してわかりやすく伝え、商品やサービスそのもの自体の市場を作ることである。つまり、ブランディングという基礎があることで、マーケティングが成り立つというイメージだ。

ブランディングをしないとどうなるか

 
ブランディングをすることで、企業は商品やサービスの価値の差別化を図り、顧客や取引先に安心感を与えながら信頼関係を築いていく。こうしたブランディングをしないことでまず陥りかねないのが、「価格競争」だろう。たとえばほぼ同じような商品がいくつも並んでいた場合、どれが選んでもらえる商品になり得るか。知名度が同等のメーカーの製品が売っていたら、購入のきっかけは価格の安さになるだろう。また、選ぶほどの価値があるのか不明確の商品やブランドは、集客は難しく、リピート客ももちろん見込めずに、利益は低下していくだろう。モノの溢れる現代において、「選ばれる」ブランド力を持つこと、そしてそれを広く認知させていくことが企業の成長と存続には欠かせない。

ブランディングの成功事例 


大手リゾートホテルの場合 

歴史を持つ総合リゾートホテルが、一度は廃業寸前にまで追い込まれたものの、見事にブランディングに成功。今や確固たる地位を築き上げている。成功の大きな要因となったのが、複数のサブブランドの設立。あるサブブランドは圧倒的非日常感を徹底的に追及したラグジュアリーホテル、あるサブブランドは家族旅行向けの豊富なアクティビティが特徴というように、それぞれのコンセプトを明確化し、ブランド戦略を実施した。顧客にとって、ニーズに沿った宿を選びやすくし、サブブランドを越えたリピート率も向上。また、社員全員が複数の業務を担えるよう教育し、他のホテルでは味わえない柔軟かつ親身なおもてなしを実現することで、他社との差別化や顧客満足度の向上につながっている。

国産タオルメーカーの場合 

良質なタオルとして高い認知度を誇る国産メーカーでは、ロゴマークやこだわりの品質規定、見本市などへの出店など、幅広いPR活動でブランドへの理解と信頼を得てきた。加えて世界初の試みとしてタオルのスペシャリストを認定する資格試験を設定し、人材の育成に注力。HPではブランドのこだわりやロゴに秘めた企業理念を動画と文章でわかりやすく紹介することで、さまざまな層に理解されやすいブランディングを展開している。

老舗革製品専門店の場合

ある老舗革製品専門ブランドでは、商品紹介にとどまらず愛用者の声や商品ができるまでのストーリー、職人が込めた思いなどをHPに掲載。あらゆる角度から自社製品の良さや、他にない価値を届けるコンテンツを展開している。SNSも積極的に活用し、自社の製品のこだわりと愛着を前面に押し出すブランディングで、共感する顧客心理を掴んでいる。

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