今さら聞けない「CDP(Customer Data Platform)」 - デジタル時代を生き抜く基礎知識


Writer:
山崎雄司
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顧客接点のオンライン化が進む中で、特定の顧客個人に紐づけたデータを蓄積し、マーケティングに活用することが重要視されつつある。これに伴い、詳細な顧客データを管理するプラットフォームである「CDP(Customer Data Platform)」のニーズが高まってきている。そこで今回は、CDPの説明や、導入時の注意点や導入方法、またDMPとの違いについて掘り下げていく。

CDP(Customer Data Platform)とは


CDPとは、カスタマー・データ・プラットフォーム(Customer Data Platform)の略称で、顧客データを収集・分析・統合するプラットフォームのことを指す。顧客の詳細なデータを収集し、顧客単位で統合し分析することで、適切な顧客に、適切なタイミングで、適切なエンゲージメントの提供が可能に。そのため、マーケティングから販売、アフターサービスに至るまでのあらゆる顧客接点において、顧客一人ひとりに合わせて対応することができる。


CDP(Customer Data Platform)が必要になってきた背景


CDPが必要とされ始めた背景には、顧客行動のオンラインシフトに伴い、顧客の行動履歴などのデータを非常に多く蓄積することが可能になった一方で、顧客ニーズを把握するための手掛かりとなるそれらの情報があらゆるところに分散して蓄積されてしまうことが挙げられる。
PCやスマートフォン、タブレットなど複数の端末を所持することが一般的になり、それぞれの端末で複数のブラウザを使用する顧客も増えている。そして、ECサイトでの購買が浸透し、企業と顧客のタッチポイントは多様化の一途を辿っている。最近では、商品やサービスに関する情報をTwitterやInstagramなどのSNSから入手するケースも珍しくない。そのため、顧客1人の購買行動であっても、Webやアプリ、複数のブラウザ、SNSからの流入などログが分散し、複雑化しているのだ。
そこで、企業はさまざまなタッチポイントから得た情報を分析することで、顧客ニーズをくみ取る必要が出てきた。こうしたことから、分散する顧客個人のデータを統合し、顧客行動を正確に分析できるCDPが必要とされているのだ。


CDP(Customer Data Platform)で何ができるのか


次に、CDPで具体的にどのようなことができるのか、詳しく見ていく。

CDPでできること


1.データの収集

オンライン上での行動履歴や、入力された顧客の属性(年齢や性別、居住地など)の収集がまずは大前提となる。行動履歴から推測される嗜好性なども収集可能な場合が多い。また、実店舗で集めたオフラインの情報も併せて収集可能だ。

2.データの統合

収集されたデータは、ソースや保存場所も様々な状態となっていることが一般的だ。それらのデータを1つに統合し、顧客一人ひとりのIDを作成する。顧客IDに複数のデータ元から連携された氏名等の属性情報や嗜好・行動履歴を統合することで、より詳細な顧客個人のデータが作成できる。

3.データの分析

収集・統合された顧客個人の詳細なデータの分析も可能だ。同一の行動を取った顧客をグルーピングする、と言う観点よりも、顧客一人ひとりを対象とした詳細な分析が可能なため、顧客ニーズをリアルタイムで把握でき、より効果的なアプローチにつながる。顧客へのメールや広告施策のターゲット分析、SNSマーケティングに利用できるほか、オフラインでの販促活動にも活用できる。

どのような課題を持った企業が導入するべき?

このように、顧客別の詳細なデータを収集し、統合、分析できるCDPは、BtoB企業、BtoC企業問わず多くのマーケティングシーンに取り入れられている。たとえば、マーケティング部門が収集する自社サイトの閲覧履歴などを加えて、顧客ごとの情報を一元管理することで、効率的なマーケティングや営業活動につながる。さらに、メーカー等で本社と販売店が別のデータを所有しているような場合でも、本社が所有するデータと、販売店が持つそれとを統合することで、顧客一人ひとりに対応した効果的なアフターフォローができるだろう。
顧客が法人、個人にかかわらず、顧客のニーズに合わせたマーケティングを行いたい、また、社内のデータ分散に課題があるといった企業は、CDPの導入をぜひ検討したい。


CDP(Customer Data Platform)導入ステップ


ここでは、実際にCDPを導入する際の基本的な流れを整理しておこう。

CDP導入検討時のポイント


1.必要な機能が揃っているか

CDPツールを導入する際は、最初に自社の課題を抽出し、ツール導入の目的を明確にすることが大切だ。目的を達成するためのステップを定め、そのための機能が備わっているかを確認しておきたい。拡張性の高さもポイントとなる。

2.コストが適切であるか

多機能で高額なツールを選択しても、不要な機能があったり、使いこなせなかったりと、コストに見合った効果を引き出せないことも。また、導入後は短期間で結果がでるものではないので、ツール自体のコストだけでなく、長期的な目線で費用対効果を検討する必要がある。

3.他ツールと連携しやすいか

CDPは社内の多くのデータを収集・統合するため、多くのシステムとの連携が必須である。自社のシステムや、他に導入を検討しているツールがある場合は、それらと連携しやすいツールを選びたい。なお、施策や分析の内容によっては、あらかじめ提供されている連携方法では実現できない場合があるため、注意が必要だ。こうしたシステムの連携手順も導入を検討する際の大きな判断材料となる。

参考:CDPのメリットと失敗を回避するツール選定のポイント | DX BLOG

CDP導入の基本的な流れ


1.現状の課題を整理する

まず、現状の自社のマーケティング課題を抽出し、整理する。それに基づき、必要な機能や連携したいシステムを確認するなど、総合的な計画を立てる。

2.データの仕様決定と、データ連携方法の要件を整理

自社が蓄積しているデータの内容および活用用途に問題がないかなどを確認し、データの仕様や各データマスタの構築方法を決定する。
この段階で、データの連携先となるMAツールや広告配信用の各種ツールなどでどのようにデータを活用するのかの青写真を描き、要件を整理しておく。

3.システムの設計・構築とデータの準備

2.の要件に従い、システムの設計と構築を行う。具体的には、データのアウトプット先に、どのようなデータ形式、タイミング、手法で連携するかを設計する。その後、データクレンジングや正規化を行って施策に利用できる形に整え、1つのIDに統合するための準備をする。

4.顧客データの分析、施策プランの立案

1つのIDに統合した顧客データを、外部ツールや他システムに実際に連携させ、システムの構築を完了させる。その後は、テストとして実際に顧客データを用いた分析を行い、分析結果やそこから得られた顧客インサイトに応じたマーケティング施策の立案を行う。

5.運用開始

連携ツール(MA等)を活用して、施策を実行。定期的に効果を測定し、必要に応じて改善を図るといった「PDCAサイクル」を回し続ける方法も検討する。

参考:CDPを活用して顧客情報を統合・管理し、マーケティングに活用していくための基本ステップ

DMP(特にプライベートDMP)との違い


CDPのほかにも、顧客情報を収集し分析するツールとして、DMP(Data Management Platform)がある。実際にCDPと似たような機能を提供しているものも多いが、収集できるデータの内容やツールの思想、目的に相違がある。
DMPにはパブリックDMPとプライベートDMPの2種類があり、それぞれ扱うデータが異なる。パブリックDMPは自社以外の第三者が所有する“サードパーティーデータ”を一元管理するツールだ。プライベートDMPは、自社サイトにある顧客情報や購買履歴といった個人のオンラインデータのほか、実店舗で集めたオフラインのデータなどの“ファーストパーティーデータ”を一元管理するツールである。
プライベートDMPとCDPは、“ファーストパーティーデータ”を扱うという点で類似しているが、分析できる単位が異なる。プライベートDMPは属性単位での分析が基本であり、Web広告のターゲティング精度の改善や、広告の最適化を目的に活用される。
一方、CDPは「実在する個人」に紐づけて情報収集をするため、個人単位での分析を得意としており、メールマーケティングのようなOne to Oneコミュニケーションの精度向上に活用される。

参考:プライベートDMPを活用してCRMを加速せよ

CDP(Customer Data Platform)導入時の注意点


CDPには、個人を特定できる情報が多く収集・蓄積されるため、データをそのまま格納してしまうと、万が一漏洩してしまった場合、内容がダイレクトに外部に流出するといった大きなリスクを伴う。そのため、氏名やメールアドレス、電話番号などの個人情報は基本的に暗号化を行う。加えて、データそのものにアクセスできる接続元やユーザーの制限、不正タグを制御・検知・監視するツールの導入などの対策をしておくと安心だ。通信の暗号化(SSL)などの設定も適切に行う。
また、個人情報を扱う場合は、プライバシーポリシーや規約を設ける必要がある。2022年4月から改正個人情報保護法が施行されたことを踏まえ、自社のプライバシーポリシーや規約について、現状で問題がないか法務担当とも確認しておきたい。

また、同意管理(コンセント・マネジメント)についても注意が必要だ。個人情報に関するユーザーからの同意情報は、オンライン・オフライン問わずあらゆるチャネルから収集される。そのデータを、ユーザーごとに、適切に管理する必要がある。現時点では、CDP構築時の対応は必須ではないものの、今後対応を迫られる可能性が高いため、自社のプライバシーデータの管理システムを見直しておくと安心だ。

参考:CDPツール比較 - One to Oneマーケティングのデータ基盤となる主要サービスを徹底比較

CDPの導入で効果的なOne to Oneマーケティングを


顧客個人の詳細なデータを統合し管理できるCDP。コロナ禍を経てオンラインシフトが進み、顧客行動が多様化する中で、顧客ニーズをくみ取り、各々に合わせたマーケティング施策を実施できるCDPツールの需要はますます高まっていくだろう。
個人情報を扱うツールのため、プライバシー保護や情報漏えいに十分注意しつつ、効果的なOne to Oneマーケティングの実現へ向けて、CDPの導入を検討してみてはいかがだろうか。

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