チャーンレートとは?意味や計算方法、数値の目安、改善方法


Writer:
山崎雄司
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チャーンレート(Churn Rate)とは、「解約率」のこと。一定期間内に解約、あるいは商品やサービスの利用をやめた顧客の割合を示す指標である。

チャーンレートとは


チャーンレートとは、ある一定期間内において、顧客がどれくらい離れてしまったかを示す指標である。一般的には月次や四半期ごとに計算される。特にSaaS企業やサブスクリプションモデル型のビジネスにとっては、業績や継続的な収益性に大きく影響するため、重要な経営指標として捉えられている。チャーンレートは顧客規模や業種、商品・サービスの内容、ビジネスモデルなどによって異なるため、目安となる適正値や平均値を具体的に挙げることは難しいが、自社サービスのチャーンレートのベンチマークを把握しておくことは大切である。

チャーンレートの種類と算出方法


カスタマーチャーンレート

カスタマ―チャーンレートは、「顧客数」をもとにした解約率のこと。以下の計算式で求められる。

カスタマーチャーンレート(%)=一定期間で解約した顧客数÷期間前の全顧客数×100

たとえば、あるサービスを使っていた顧客が100名で、設定した期間内に5名が退会した場合、カスタマーチャーンレートは5%となる。
なお、カスタマーチャーンレートはすでに解約した顧客だけでなく、有料会員から無料会員へ切り替えた顧客数も計算に含める。

アカウントチャーンレート

アカウントチャーンレートは、サービスの「登録数(アカウント数)」をもとに算出した解約数のこと。以下の計算式で求められる。

アカウントチャーンレート(%)=一定期間で解約した登録数÷期間前の全登録数×100

アカウントは企業や家族単位で共有することもあるため、「利用数=アカウント数」とは限らない。そのためユーザー単位で分析するカスタマーチャーンレートとは異なるチャーンレートとして捉える必要がある。

レベニューチャーンレート

レベニューチャーンレートは、収益(レベニュー)をもとに算出した解約率のことで、複数の価格帯のプランがある場合に活用する。基本となる計算式は以下の通り。

レベニューチャーンレート(%)=サービス単価×一定期間で解約した顧客数÷一定期間の総収益)×100

カスタマーチャーンレートと同様に、解約による損失だけでなく、有料会員が無料会員へ切り替えた場合の損失も含めて計算する。

また、レベニューチャーンレートは、以下の2つに分類される。

・グロスレベニューチャーンレート
グロスレベニューチャーンレートは、一定期間内に発生した解約およびダウングレードによる損失金額をもとに算出する。MRR(Monthly Recurring Revenue/月間経常利益)をもとに表される指標であることから、「グロスMRRチャーンレート」とも呼ばれる。既存顧客からの収益が対象であり、同期間内に新規顧客から得られた収益は合算しない。
以下の計算式で求められる。

グロスレベニューチャーンレート(%) = 期間内の損失MRR ÷ 期間前のMRR × 100


・ネットレベニューチャーンレート
ネットレベニューチャーンレートは、既存顧客による解約およびダウングレードによる損失だけでなく、アップセルやクロスセルによって得た収益増加分も含めて算出するもので、収益全体の把握や予測に役立つ。以下の計算式で求められる。

ネットレベニューチャーンレート = (期間内の損失MMR – アップセル・クロスセルにより増加したMMR) ÷ 期間前のMMR×100

なお、ネットレベニューチャーンレートだけがマイナスとなる状態を「ネガティブチャーン」という。利益が損失を上回っていることを示し、ネットレベニューチャーンレートにおいて理想的な状態といえる。

チャーンレートを改善する方法


顧客満足度の向上

顧客がサービス内容や価格に満足しているかどうかは、チャーンレートに大きく影響する。定期的にユーザーアンケートを実施するなどして、顧客の不満や要望を把握し、改善点の分析を行うことでサービスの品質と顧客満足度の向上につなげる。なお、価格と機能の不一致でチャーンレートが上がっている場合は、競合他社の料金体系と比較したり、ランニングコストを見直したりして、適切なプランを再考する。

顧客ロイヤルティの向上

顧客が企業や商品、サービスに愛着を持ち、長期的に利用してもらうことで、チャーンレートの低下につなげることができる。顧客に対して特典や割引などを設けたり、コミュニティや情報提供といったアフターフォローを念入りに行ったりすることで顧客ロイヤリティを向上させ、LTVの向上につなげる。

カスタマーサクセスの導入

チャーンレート改善のためには、顧客の目的である課題の解決や、顧客の利益増大といった「カスタマ―サクセス」の導入が有効である。顧客からのフィードバックを積極的に取り入れて改善を図るだけでなく、自社から積極的に顧客へ働きかけ、顧客(BtoBの場合は企業)の成長を促進するサービスを提供していくことが大切。適切なタイミングでのサポートで、長期的に利用してもらうことがねらい。

優良顧客からの収益確保

収益全体を捉えた場合、解約およびダウングレード等による損失をカバーするには、「優良顧客」からの収益確保を強化する必要がある。継続的に売上に貢献している「優良顧客」を把握し、サポートを強化することで、アップセルやクロスセルの実現につなげたい。優良顧客から得た増加分の収益によって、他の顧客が離れてしまったことによる損失を埋め合わせることができる。


顧客獲得施策の改善

チャーンレートが高くなる原因の一つとして、自社の商品・サービスの内容がユーザーのニーズに合っていないことが挙げられる。フィードバックや顧客満足度アンケート、利用状況を把握できるツールなどを活用して変化するニーズを察知し、定期的に顧客のターゲティングや施策の見直しを行うことで、チャーンレートを下げ、優良顧客を維持することができる。

離脱しそうな顧客の把握

顧客の行動パターンやニーズを分析して離脱しそうな顧客を抽出し、適切な対応をとることでチャーンレートが上がるのを阻止する。たとえばメルマガの開封率が低い、サービスの利用頻度が低い、あるいはまったく利用していない、支払いが遅れているなど、解約前のパターンを分析することで原因を特定し、改善する。また、顧客の属性や利用状況に応じたフォローアップを図り、顧客の維持につなげる。

KPIを設定しPDCAを回す

チャーンレート改善施策を行う際は、メリット・デメリットも含めて施策の内容をよく検討した上で、「一定期間の解約数」「契約更新数」など具体的なKPIを設定し、PDCAサイクルを回す。


チャーンレートの目安


アメリカで行われた調査によると、19ヶ月にわたる1,500以上のサイトのサンプルデータを分析したところ、全体の平均値は約5.6%であったという。さらに、BtoBでは4~5%、BtoCでは6~7%であった。

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