デジタルマーケティングの最新トレンドを市場規模データから読み解く


Writer:
山崎雄司
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今や市場には多くのデジタルマーケティング ツール(デジマツール) が出回り、各企業のデジタルマーケティング施策を支えている。それに伴い、デジタルマーケティングツールに関わる多様な調査データも、多くの調査機関から公開されている。今回は、デジタルマーケティングツールの市場の最新トレンドについて、さまざまなデータから読み解いていきたい。

目次


1. 国内デジタルマーケティング市場におけるソフトウェアの状況
2. 国内のデジタルマーケティング市場規模
3. 国内のDMP/MAの市場規模
4. 国内のCRMの市場規模
5. 国内のデジタルマーケティングツールの内訳
6. 海外のデジタルマーケティング市場規模
7. 海外のMAの市場規模
8. デジタルマーケティングに強い企業
9. 継続的な拡大が見込まれるデジタルマーケティング市場規模の今後

国内デジタルマーケティング市場におけるソフトウェアの状況


まずは、株式会社富士キメラ総研が行った、ソフトウェアの国内市場の調査を見てみよう。ソフトウェアの国内市場は右肩上がりで、2020年度は約1.5兆円と見込まれていた市場が、2023年までには約2兆円まで拡大すると予測されている。パッケージ/SaaS別で見るとSaaS(=Software as a Service、サース)の方が伸びており、今後もSaaS優勢の市場拡大が予測される。またカテゴリー別で見ると、デジタルマーケティング領域はコラボレーション領域と並び前年度比110%台と好調で、今後も継続的な増加傾向が予測されているようだ。

次に、株式会社野村総合研究所が行った、2024年までのICT・メディア市場に関する動向分析と市場規模の予測を見てみよう。下図はプラットフォームサービスの市場規模予測のグラフである。



2021年度は約2.8兆円であり、2027年度には約6兆円へと成長するとされているが、その中でもデジマツールの主戦場とも言えるクラウドサービス市場の今後の発展が見込まれていることがわかる。ソフトウェア提供形態についても前項同様、今後はクラウドを介したSaaSが普及していくと考えられる。

国内のデジタルマーケティング市場規模


次に、IDC Japanが行った国内デジタルマーケティング関連サービス市場予測を見ていこう。2020年の国内デジタルマーケティング 市場は約4305億円、前年比2.6%増であり、2025年の市場規模は6102億円、2020年~2025年の年間平均成長率は約7%と予測されている。ITサービス、ビジネスサービスともに右肩上がりの成長が見込まれており、金融面では顧客接点の変革や非対面チャネルの活用、流通では実店舗とECサイトの連携やデータ統合、製造ではMAツールとSFAシステムの連携に取り組む企業が特に増加しているという。また、同社は「サービス事業者は、顧客接点を起点とした変革を進める手段としてデジタルマーケティングを用い、企業のデジタルトランスフォーメーションを横断的に支援すべきである」とも述べている。

国内のDMP/MAの市場規模


株式会社矢野経済研究所によるDMP/MA市場規模推移・予測を元にした記事を見てみよう。デジタルマーケティング においてはDMPもMAも顧客をセグメントした上で施策を行うものであるが、全体的にMA市場の方がDMP市場よりも大きいことが分かる。2019年時点でMAの市場規模は402億円、DMPの市場規模は97億円であり、MAがDMPの約4倍の市場規模となっている。今後も全体的な拡大傾向が続くと予測され、2025年にはMA市場が737億円、DMP市場が235億円とかなりの市場規模となることが推測される。

次に 、DMP市場について詳しく見ていこう。これは株式会社アイ・ティ・アールが行った、国内のDMP市場におけるパブリック、プライベート別の市場規模推移および予測である。パブリックDMPとプライベートDMPを比較すると、市場規模としてはプライベートDMPのほうが大きい。2018年時点でのパブリックDMPの市場規模は29億円、プライベートDMPの市場規模は56億円であり、パブリックDMPがプライベートDMPの約2倍の市場規模となっている。2023年度においてもその割比率はほぼ変わらず、パブリックDMP市場が85億円、プライベートDMP市場が145億円となる見込みである。

しかし、これは個人のプライバシーが意識される以前の話であり、パブリックDMPがCookie規制の影響を受けることは想像に難くない。今後はプライバシーを尊重しつつ顧客体験の向上やアプローチを最適化できるプライベートDMPの需要が、ますます高まっていくものと思われる。

国内のCRMの市場規模


次に、IDC Japanによる市場規模予測を元にした記事からCRMの市場規模や動向を見ていく。国内のCRM市場規模は、2020年時点で約1872億円、2025年には約2449億円になると予測されている。同社は2020年5月時点で約1786億円との予測をしていたが、コロナ禍の影響でデジタルシフトが進み、その予測を上回る結果となった。依然としてテレワークや非対面でのコミュニケーションが推奨され、デジタルチャネルへの移行も進んでいるため、今後もCRM市場は拡大傾向が続くと推測される。

国内のデジタルマーケティングツールの内訳


次に、デジタルマーケティングツールの内訳について詳しく見ていこう。DMPツールとMAツールについては株式会社DataSignによるWebサービス調査レポート(2021年11月公開)からそれぞれのシェア率を、CRMツールについてはガートナーの調査を元にした記事から売上高ベースのベンダーランキングを見ていく。

DMPツールの中では、「Intimate Merger」が最も高いシェア率で、全体の約2割を占めている。「Intimate Merger」は、国内のパブリックDMP市場で2017年度から4年連続でシェア1位を誇るツールだ。シェア率2位の「トレジャーデータ」はクラウド型のプライベートDMPツールで、2019年度より3位から2位に上昇している。シェア率3位の「Adobe Audience Manager」も、ここ数年で順位が上昇しているデータ管理プラットフォームだ。

MAツールでは、「Pardot(現:Account Engagement)」のシェア率が最も高い。数多くあるMAツールの中で「Pardot」が選ばれる理由として、CRMとの連携がしやすい点が挙げられる。「Pardot」を提供している株式会社セールスフォース・ドットコムはCRMツールもリリースしており、こちらも世界でトップシェアを誇っている。加えて「Pardot」は、自社のCRMツールとの連携に強く、ほかのMAツールには無いメリットを持っていることが強みである。

CRMツールでは「Salesforce」が売上高ベースで1位、成長率は約23%であった。「Salesforce」が選ばれる理由としては、世界的に利用されており拡張性が高い点が挙げられる。2位の「Adobe」の売上高は「Salesforce」の約1/2、成長率は約15%であり1位には及ばないものの、こちらも世界的なベンダーで拡張性の高さが利点だろう。3位の「IBM」の売上高は「Salesforce」の約1/3、成長率は約11%となっているが、「Salesforce」のビジネスパートナーであり定着化サービスを展開しているという特徴がある。

海外のデジタルマーケティング市場規模


米国の市場調査会社Report Oceanの調査を元にした記事を見てみよう。デジタルマーケティングソフトウェアの世界市場規模は、2020年に約44億3,000万ドル、2027年までに1,593億4,000万ドルになると推測され、2020年から2027年の成長率は18%以上とされている。

セキュリティ対策・プライバシー保護に関する課題や、専門知識を持つ人材の不足といった課題もあるが、デジタルマーケティングソフトウェアや技術の進歩により、市場規模はより成長していくと考えられる。これにより、国内だけでなく、世界的にデジタルマーケティング市場の拡大が見込まれていることがわかる。

海外のMAの市場規模


最後に、世界におけるMAツールの市場規模について見ていきたい。インドの調査会社Mordor IntelligenceMA市場のトレンド予測レポートによると、MAツールの市場は、2018年から2027年までの間に年間平均成長率が約18%になると予測されている。下図は、同社が公開した、MAツール市場の成長見込み予測を地域別に色分けしたものである。



これを見ると、アメリカ大陸では成長率が低い(Low)となっているが、これはすでに多くの企業がMAツールを導入済みのためだと考えられる。一方、アジア圏やオーストラリアでは成長率が高い(High)となっており、今後多くの企業にMAツールが導入されることが見込まれる。

また、アメリカのDatanyze社調査によると、世界のMAツールのシェア率ランキングは以下の通りとなっている。

1位:HubSpot
2位:Active Campaign
3位:Adobe Experience Cloud
4位:Oracle Marketing Cloud
5位:Salesforce Pardot
6位:Welcome
7位:RD Station
8位:Marketo

上位3つのツールで全体シェア率の50%以上を占めており、ソフトウェア会社の中でも競争が激しくなっていることがわかる。

デジタルマーケティングに強い企業


デジタルマーケティングの代表的な企業


デジタルマーケティング企業は多数存在し、それぞれが強みを持っている。例えば、幅広い支援を特徴とする電通デジタル、インターネット広告に強いオプト、SEO対策に強いウィルゲートなどだ。


デジタルマーケティングの成功事例


同様に、デジタルマーケティングに成功した事例も多数存在する。例えば、Instagram施策で売上が2倍になったパナソニック、Webサイトへの流入数が2倍になったライオンなどだ。


継続的な拡大が見込まれるデジタルマーケティング市場規模の今後


データを見てみると、コロナ禍の後押しもあって日本でもデジタルマーケティングツールの普及が進んでおり、今後もデジタルマーケティングツール市場は継続的に拡大していくことが予想される。プライバシー問題への対策を踏まえ、新たなツールやサービスが登場する可能性も十分にある。このようなトレンドデータを知ることで、今後の各企業におけるツール導入の参考となるのではないだろうか。

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