チャットボットとは?意味、普及した背景、5つの型、メリット、事例
- Writer:
- 山崎雄司
チャットボット(chatbot)とは、「チャット(会話)」と「ボット(ロボット)」を組み合わせた言葉で、システムで自動的にユーザーと会話をする「自動会話プログラム」のことである。
チャットボットとは
チャットボットは、1960年代に誕生した英語の対話システム「ELIZA(イライザ)」が始まりといわれている。当時の自動会話プログラムは、あらかじめ言語パターンや返答用テンプレートが定義されており、定型的な受け答えしかできなかったという。
しかし、AI(人工知能)の発展やビッグデータの活用によって、チャットボットの性能は飛躍的に向上。2011年に発売されたiPhone4sに搭載されていた「Siri(シリ)」をきっかけに一般にチャットボットが普及し始め、2016年には「チャットボット元年」と呼ばれるほどの世界的なブームに。2017年にはGoogleの「Googleアシスタント」、Amazonの「Alexa」などのチャットボットを搭載したスマートスピーカーの国内販売がスタートした。この頃から、日本でもチャットボットのビジネス活用を検討する企業が急増。しかし、人間の言葉を理解しながら会話をするという高度なAIにはまだ課題も多く、各社の開発競争が続いている。
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チャットボット普及の背景
生産年齢人口の減少
日本では、少子高齢化の進行により、生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少。労働者の減少により人員の確保も難しくなり、採用コストの増加が予想される。こうした背景から、問い合わせ対応人員の代替としてチャットボット導入を検討し始める企業が増えている。
働き方改革
2016年に政府主導で始まった働き方改革では、労働生産性の向上も重要な課題に。ITを活用した業務効率化が求められる中、チャットボットの導入は特に業務の省人化に役立つツールとして注目されている。たとえば、24時間対応が可能となるため、夜間対応や長時間労働の改善が期待できる。また、よくある質問や単純な問い合わせ内容に対する回答をチャットボットで対応することで、スタッフの負担軽減につながる。
チャットボット対応APIの提供
2016年、LINEやFacebook Messengerといった各大手チャットサービスが、チャットボット対応API(Application Programming Interface)を公開。それにより、企業がチャットボットを開発する際の技術的なハードルが下がったため、多くの企業が開発に着手。同時にユーザーも増加したため、飛躍的に普及した。
新型コロナウイルス対策による非接触コミュニケーションの推奨
新型コロナウイルスの感染拡大により、人々の対面での接触機会が著しく制限された。これを機にさまざまな企業が非接触でのコミュニケーションの方法を探り、その一つとしてチャットボットの需要が高まった。
チャットボットの種類
チャットボットは、人工知能(AI)を搭載しているかどうかで2種類に大別される。それぞれメリットとデメリットを見ていく。
シナリオ型(ルールベース型)
シナリオ型チャットボットは、ユーザーに対して複数の選択肢を提示し、選ばれた選択肢に沿ったアクションや、さらなる選択肢を提供する。それを繰り返すことでユーザーの質問を絞り込み、回答へと誘導していくツリー構造になっている。シナリオ通りに会話が展開するため、「よくある質問」への回答や、アンケートの回答など、定型化された会話に利用される。
・メリット
難しい作業や専門的な知識がなくても簡単に導入でき、AI型よりも低コストでの導入・運用が可能。さらに、選択式のため、テキスト入力が苦手なユーザーでも利用しやすい。
・デメリット
シナリオにない質問には回答ができないことや、複雑な質問への対応が難しいことが挙げられる。その場合は速やかにオペレーターへつなぐなどの体勢を整えておく必要がある。
AI型(機械学習型・人工知能型)
機械学習が搭載されたチャットボット。事前にAIに学習させたデータに加え、使用履歴に基づいて収集したデータを学習することで、会話や回答の精度を高めていく。
・メリット
少々複雑な質問にもある程度柔軟に回答が可能。それまでオペレーターが行っていたユーザーからの問い合わせ対応もチャットボットで行えるため、人件費の節約にもつながる。ユーザーが利用すればするほどAIが学習しデータ量が増え、会話の精度を上げられる。
・デメリット
自然な会話ができるようになるには学習期間が必要。また、高度な機能が搭載されているため、導入にはコストがかかる。専門知識が必要になる質問や難しいクレーム対応については課題が残る。
チャットボットの仕組み別・5つの型
チャットボットは、会話の仕組みによってさらに5つの型に分けられる。それぞれの特徴を見ていく。
・選択肢型
シナリオ型チャットボットの典型例。チャットボットが選択肢を提示するため、ユーザーは質問文を入力する手間が省ける。操作も複雑ではなく、ユーザーは選択肢を選ぶだけで求めている回答にたどり着くことができる。
・ログ型
蓄積された会話のデータを利用し、ユーザーからの質問に適切な回答を提示する。ユーザーの利用状況に比例してデータが増え、会話の精度も上がり、自然な会話が実現する。質問が定型化されていない場合に有効。
・辞書(ハッシュ)型
あらかじめキーワードや回答のテンプレートを登録しておき、ユーザーが入力した質問の中にキーワードが含まれていると会話ができる。
・選択肢&辞書型
選択肢型と辞書型の機能の両方を兼ね備えたチャットボット。質問内容によってそれぞれを使い分け双方のメリットもデメリットも補い合うことができる。主にシナリオ型で使用される。
・Eliza型
前述の対話システム「ELIZA(イライザ)」から名付けられた型。「Yes」や「No」で相槌を打ったり、ユーザーの発言をまとめたり、聞き返したりするなど、主に聞き役として会話を行う。主に医療分野で、セラピストのような形で診断シミュレーションを行う際に利用されている。基本的に、特定のキーワードに従ってテンプレートに沿った会話パターンを展開する。
チャットボット導入のメリット・デメリット
メリット
・機会損失・離脱の防止→売上UP
チャットボットは、ユーザーにとってはいつでも気軽に質問できて、すばやく返答がもらえるツールである。ユーザーからの問い合わせにその場で対応できれば、離脱や購買意欲の低下を防ぐことができる。また、機会損失を防ぐだけでなく、その場での購入や追加注文の獲得も期待できる。
・24時間対応・顧客接点の増加→顧客満足度向上
チャットボットは24時間いつでも対応可能なため、ユーザーは時間を選ばずに問い合わせることができる。電話を何度もかけ直したり、メールの返事を待ったりすることなく、スムーズに回答が得られることで、ユーザーの満足度向上につながる。また、ECサイトの「よくある質問」や、Web接客ツールとしてチャットボットを活用するなど、顧客との接点を増やして利便性を高めることも、顧客満足度に影響する。
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・教育時間の短縮と人件費の削減→業務効率化
たとえば企業内のマニュアルをすべてデータ化してチャットボットに設定し、業務に関する従業員からの頻出質問への回答を自動化しておけば、社内教育にかける時間が短縮できる。それによって、より生産性の高いコア業務に人材を配置できるようになるため、結果として人件費削減と業務効率化が実現できる。
デメリット
・初期コストがかかる
チャットボットの導入に際し、プログラム使用料やデータ、シナリオ等の初期費用が発生する。運用の際も維持費もかかるため、費用対効果をよく検討する必要がある。
・自然な会話が成立するまで時間を要する
シナリオ型のチャットボットでは、登録されていない言葉やあいまいな表現には対応できない。また、キーワードに対して適切な回答パターンを用意するのにも時間を要する。
AI型のチャットボットでは、シナリオ型よりも会話が複雑になるため、精度の高い自然な会話を実現するには、AIに学習させるための膨大な時間(データ)が必要となる。
チャットボットの導入に向くビジネス
顧客サポート
Botの場合、ECサイトやクラウドサービスなどの管理画面などに導入することで、操作について不明点があった場合などに、チャットボットを通してすぐに問い合わせができる。
BtoCでは、アパレルやコスメ業界などで効果を発揮する。顧客からの在庫に関する質問や商品の提案などが可能。
企業内の問い合わせ対応
社内向けに、総務部などでチャットボットを活用するケースも。各種休暇取得の申請方法や経費申請の方法など、社員による固定化された質問に対して、スムーズな回答が可能。
チャットボット導入事例
インターネット通販サイトの場合
カスタマーサポートの効率化・省人化を図るために、専用のキャラクター名を付けたAI型チャットボットを導入。ユーザーからのテキストベースの問い合わせに24時間リアルタイムで対応することで、顧客満足度が向上している。チャットボットは全問い合わせの3分の1を対応し、省人化効果は6.5人分になったという。
生命保険会社の場合
LINEやFacebook Messengerを使ったチャットボットによる保険の見積りや診断機能を提供。来店することが難しい子育て世代や、働き盛りで忙しい世代にも好評を博している。また、対人だと聞きづらいこともチャットボットであれば相談しやすいといった、チャットボットならではのメリットも。
自治体の例
外国人が多く居住する自治体では、多言語対応のAIチャットボットサービスを実施。「防災」「ごみ」「教育・子育て」「国際・文化」「医療・病院」「各種手続き」「観光」「町会」といったカテゴリに対応し、安心して暮らせる地域づくりに取り組んでいる。