ARPUとは?意味や活用の背景、ARPPU、ARPAとの違い、ARPUを向上させる方法


Writer:
山崎雄司
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ARPU(アープ)とは、Average Revenue Per Userの頭文字を取ったマーケティング用語で、ユーザー1人あたりの平均的売上や収益を示す指標のこと。

ARPUとは

 
ARPUは、月額課金モデルのビジネスで使われてきたKPIの一つである。以前は主に携帯電話のような通信事業で使用されることが多かったが、最近ではスマートフォン向けのゲーム事業や、顧客単価を正確に把握する必要のあるSaaSビジネスなど、さまざまな月額インターネットサービスを評価する指標として普及しつつある。
ARPUはユーザー1人あたりの平均的売上であるため、売上金額をユーザー数で割ることで算出する。計算式は以下の通り。
 
ARPU=売り上げ÷アクティブユーザー数
 
なお、通信事業においては、課金内容ごとにAPRUを細分化して評価する場合が多い。たとえば「データARPU」「音声APRU」「付加価値ARPU」などが挙げられる。
 
 

ARPUが取り入れられる背景

月額課金モデルのビジネスで売り上げを拡大していくためには、新規加入者を増やす施策か、ユーザー1人あたりの平均的売上(=ARPU)を向上させる施策が有効である。なかでも、スマートフォンゲームなどのアプリ事業やSaaSビジネスにおいては、認知度が高まり普及率が一定のレベルを超えるとユーザー数が頭打ちになりやすいため、ユーザー数の伸びではなく、ユーザー1人あたりの売上であるARPUを伸ばすことがポイントとなる。
 
 

ARPUとARPPU、ARPAの違い

 

ARPPU

ARPPUとはAverage Revenue Per “Paid” Userの略で、“課金している”ユーザー1人あたりの平均的売上(課金額)を示す指標である。ソーシャルゲームのような非課金ユーザーと課金ユーザーが混在するビジネスモデルにおいて、それらを区別し課金ユーザーのみのARPUを算出したもの。このARPPUに着目することで、サービスの収益構造や、価格関連の施策に対するユーザーの反応を把握できる。計算式は以下の通り。
 
ARPPU=売り上げ÷課金ユーザー(有料顧客)数
 

ARPA

ARPA(アーパ)とは、Average Revenue Per “Accountの略で、携帯キャリアのKDDIが使用している指標である。ARPUとの違いは、1ユーザーあたりではなく、複数のユーザーアカウントを持っている場合でも1つのアカウントに統合し、平均売上金額を算出する点だ。近年はタブレットやスマホなど、複数の端末を一人で所持する人が多いため、ARPAでは1アカウントあたりの売り上げを算出した方が収益の適切な評価につながるとしている。計算式は以下の通り。
 
ARPA=売り上げ÷アカウント数
 
 

ビジネスモデル別のARPU計算方法

 

ユーザー課金モデル

サブスクリプションビジネスのような、ユーザーの課金によって収益を得るビジネスモデルでは、課金しているユーザー1人あたりの平均的売上(ARPPU)に課金ユーザー率(PUR/Paid User Rate)を掛けて算出する。
 
ARPU=ARPPU×PUR
 

広告表示モデル

無料アプリなど、アプリ内に広告を表示することで収益を得ているビジネスモデルでは、ユーザー1人あたりのエンゲージメント(広告表示機会の数。PVや滞在時間、起動頻度などから構成される指標)に、インプレッション単価(CPM)を掛けて算出する。
 
ARPU=エンゲージメント×(CPM÷1,000)

なお、CPMは1,000回の表示を1単位としているため、1,000で割ることで広告1回表示あたりの単価となる。


ARPUを向上させるには

 

顧客ロイヤリティを高める

ARPUを向上させるには、顧客ロイヤリティを高めてアップセルしていくことがポイントとなる。顧客ロイヤリティを高めることで、リピーターの増加や顧客単価の向上といったメリットが期待できる。
顧客ロイヤリティを測る指標としては、NPS®が挙げられる。NPS®とは「Net Promoter Score®」の略で、顧客が企業やブランドに対して抱いている愛着の度合いを数値化したもの。具体的には、顧客に対して「この商品・サービスを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいあるか?」という内容のアンケートを実施し、顧客に0~10点のスコアを付けてもらう。0~6点を“批判者”、7~8点を“中立者”、9~10点を“推奨者”に分類し、次の計算式を用いて算出する。
 
推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=NPS®
 
NPS®を活用して顧客ロイヤリティを可視化し、現状を把握したうえで、数値を高める施策を実施していくことが重要である。


アップセルやクロスセルの実践

アップセルとは、既存顧客に今よりも高価なプランへの移行や、オプションの追加購入を促すことで客単価を向上させ、顧客数を増やすことなく収益を伸ばす手法だ。クロスセルは、顧客が現在利用中、または利用を検討している商品・サービスと組み合わせることで、より効果的に使えるものを同時に購入してもらう「セット販売」を指す。
こうしたアップセルやクロスセルは、ロイヤリティが高まっている顧客に対して行うことが効果的である。ロイヤリティが低い顧客に対してアップセルやクロスセルを提案してもあまり効果がなく、強引な印象を与えてしまうこともあるため、実施するタイミングには注意が必要だ。また、アップセルやクロスセルの実施に当たっては、自社の都合ではなく、よりよい顧客体験の提供するためであることを忘れないようにしたい。
 

非課金ユーザーと課金ユーザーの差別化

ARPUの向上には課金ユーザーの数を増やすことも有効であり、そのためには有料プランの提供内容をユーザーにとって魅力的なものにする必要がある。たとえば、有料プランへの加入で広告を非表示にしたり、有料プラン限定のコンテンツを配信したりするなど、基本的な機能は無料で提供しつつ、より魅力的な有料プランへ誘導する「フリーミアムモデル」の導入も効果的だ。ただし、フリーミアムモデルは、非課金ユーザーの獲得から課金ユーザーへの移行までに時間を要するため、長期的な視点での運用が前提となる。また、有料プランの価格や無料サービスにおける機能制限を設定する際は、ユーザーニーズとのバランスが重要となるため、顧客視点を十分に考慮することが大切である。

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