ブランドアイデンティティとは?意味や要素、作り方、ブランドアイデンティティプリズム


Writer:
山崎雄司
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ブランドアイデンティティとは、企業や商品・サービスが持つ独自性や特徴、価値観、ビジョンなどを表現するための視覚的な概念のこと。ユーザーにどのようなブランドであるかを印象付けるもの。

ブランドアイデンティティとは


ブランドアイデンティティとは、「自社やブランドを、消費者にどうイメージしてほしいか」を明確化すること。ブランドがどのような存在であるか、どのような価値やメッセージを伝えたいのかを具現化する。

ブランドアイデンティティの構成要素


フィロソフィー

フィロソフィーは、ブランドアイデンティティの基礎となるブランド哲学のことで、「ストーリー」「ミッション」「価値観」「ビジョン」などから構成されている。
「ミッション」はユーザーに対してブランドの存在意義や、果たすべき使命を表すもので、「ビジョン」はミッションを実現するために目指すべき「方向性」や、中長期的将来にあるべき姿を具体的に示したもの。また「価値観」は、ブランド全体における行動指針であり、全社員の行動の判断基準となるものである。

ベネフィット

金銭的なものだけでなく、顧客が商品を通して得られる、または体験できるメリットや恩恵など、良い効果のこと。
ブランドのベネフィットには以下の4つがある。
・機能的ベネフィット:商品やサービスを利用することでユーザーが得られる、そのものが持つ機能的な性能や便利さといったメリットのこと。
・情緒的ベネフィット:商品やサービスを購入する際や利用を通してユーザーが感じ取る、ポジティブな感情を与えることができるメリットのこと。
・自己表現ベネフィット:商品やサービスを利用することでユーザーがどのような自分を目指せるか(自信がつく、なりたい自分になれる、自分らしくなれるなど)といった自己表現や自己実現のかたちのこと。
・社会的ベネフィット:商品やサービスを利用することで、自分を社会的に「この部類である「このタイプ、または仲間である」と思わせるような、他者との関係性や、より理想的な存在として認知されるためのもの。

属性

主に商品が持っている特性でありながら、より客観的・定量的に示すことができる事実のこと。その事実の妥当性を裏付ける根拠・証拠となること。
たとえば、「環境にやさしい」というブランドアイデンティティがあっても、なぜそうなのか根拠がないとユーザーは伝わりにくい。商品が「生分解性プラスチックを使用している」という「属性」が示されることで、ユーザーはブランドアイデンティティに共感し、安心感や納得感を得ることができる。

パーソナリティ

ブランドの持つ特徴を人間の人格に例えたもの。つまり人間的特徴を持たせ、ランドがどのような人格を持っているか定めたもの。パーソナリティを持たせることで、ブランドをユーザーの記憶に残りやすくし、連想や評価をコントロールできる。また、感情移入の強さにも影響し、売り上げにも寄与する可能性がある。

ブランドアイデンティティの重要性


ブランドアイデンティティは、ブランドの目指すべき将来像として大きな柱となるものである。企業が方針の転換をする場合などにも立ち返ることができる指針となり、ユーザーや社会の視点を意識したアイデンティティを構築し続ける助けになる。ブランドアイデンティティを守りながらトライアンドエラーを繰り返すことで、より多くのユーザーからの感情移入が促され、共感を生むブランド構築を可能にするだろう。
また、ブランドアイデンティティは社内にも効果をもたらす。ブランドアイデンティティを通して、自社が提供しているサービスや商品について、社員がより正確に理解できるようになる。さらに、社会に浸透したブランドイメージを構築することができれば、社員は「自分もこのブランドを作る一員である」「社会や人々のビジョンを実現している」という使命感に誇りを感じて働くことができるだろう。

ブランドアイデンティティの表現方法


ブランドネーム:ブランド名。ネームのイメージによって商品の特徴をユーザーに伝えることで、購買意欲を掻き立てられる。
 
ロゴ:ブランドを代表するシンボルやデザインのことで、他社と差別化をしてブランドの独自性や優位性を表現する。
 
ブランドカラー/カラーパレット:ブランドが使用する主要な色や補助色のことで、ブランドのイメージを表現するのにふさわしいカラーを採用する。色だけではなくパターン(柄)でブランドアイデンティティを表現する場合も。
 
タイポグラフィ:使用するフォントや文字のスタイル。ブランドに合った適切な文字やデザインを選ぶ。
 
イメージや写真:ブランドのイメージを伝えるために、印象的であり、違和感のない写真やイラストを採用する。
 
トーン&マナー:ブランドがコミュニケーションを行う際の言葉や表現のスタイル。ブランドの世界観をわかりやすく伝えることができる。
 
パッケージデザイン:製品のパッケージデザインやその他のデザイン要素。ブランドの個性をユーザーに伝えるためのツールとしても考えられる。

ブランドアイデンティティの分析方法


ブランドアイデンティティを構築するために、まずは自社を理解するためにSWOT分析やアンケート調査などで自社分析を行う場合が多い。競合他社と比較しながら、自社ブランドのアイデンティティが十分確率できているかを評価する。
他社との比較にも、SWOT分析やアンケート調査などが効果的である。SWOT分析では、自社の事業の状況を内部環境と外部環境に分け、競合他社のブランドアイデンティティの強み、弱み、機会、脅威を分析し、競合他社と自社との比較を行う。アンケート調査では、ユーザーに対して、自社と競合他社のブランドアイデンティティに関するアンケート調査を実施し、ブランド認知度やブランドイメージに対する評価を比較することが可能だ。


ブランドアイデンティティの作り方


ブランドアイデンティティプリズム

フランスのHEC経営大学院の教授であるジャン・ノエル・カプフェレ氏が提唱した、自社のブランドアイデンティティの定義に必要な要素をプリズム(六面体)の形で整理していくフレームワークのこと。以下の6項目の要素を定義することで、ブランドアイデンティティを整理することができる。
 
・Physique:自社のブランドの商品やサービスの物理的、機能的に識別される特徴。他社に比べてどの点が優れているか。ブランドのロゴやデザインなども含まれる。
・Personality:ブランドを人に例えた際の性格、雰囲気など独自のイメージ。ブランド・パーソナリティ。
・Relationship:ブランドが象徴する顧客とブランド、または人々の関係性。ユーザーにとって、その商品やサービスがどんな役割を果たしてくれるか。
・Culture:ブランドの文化。ブランドの行動規範となる価値観やビジョンのこと。
・Reflection:ブランドのターゲットになる典型的な人物の層。最も多いターゲットの層。ペルソナ。
・Self-Image:ターゲットユーザーがイメージする理想の自分。セルフ・イメージ。ユーザーが感じられる嬉しさの度合い。

ブランドイメージとの違い


ブランドアイデンティティは、企業側がユーザーにどう見られたいかという意識をもって構築するイメージを指す一方で、ブランドイメージは、ユーザー側が自ら取得した情報や経験に基づいて、ブランドや企業に対して抱くイメージを指す。
ブランドアイデンティティとブランドイメージを一致させていく活動が、ブランディング、マーケティングの一つの目標となる。

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