マーケットシェアとは?意味や種類、計算方法、メリット、クープマン目標値


Writer:
山崎雄司
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マーケットシェア(market share)とは、企業が提供する商品やサービスが対象市場においてどれだけの割合を占めているかを示す比率のことを指す。

マーケットシェアとは


マーケットシェアとは、期間やエリア、商品カテゴリといった特定の市場において、対象となる商品やサービスが占めている割合を算出したもののこと。「市場占有率」「市場シェア」「マーケットシェア理論」ともいわれる。このマーケットシェアを基に販売数量などの目標値を設定したり、新規事業への参入の是非を判断したりするため、企業のマーケティング戦略において重要な指標の一つである。
算出の際は、何を指標とするのかによってマーケットシェアの数値が変わるため注意が必要だ。たとえば、一般的には売上金額を使用するが、同じ商品でも売上金額ではなく販売個数を指標として算出するとマーケットシェアが変わる場合がある。また、季節やブーム、競合他社の方針転換などの外部環境からも影響を受ける場合も。
企業間競争はマーケットシェアの奪い合いともいえるため、マーケットシェアの変動は市場のトレンドや企業の競争力を示す指標としても活用される。なお、高いシェアを持つ企業はその市場で主導権を握っている場合も多く、競合他社への影響力も強い傾向がある。

マーケットシェアの種類と計算方法


絶対的市場シェア率

絶対的市場シェア率とは、市場の売上に対して自社の商品・サービスが占める割合のこと。たとえば自社商品「緑茶A」のマーケットシェアを調べる場合、飲料品全体を市場に設定するか、お茶というカテゴリに絞るか、またはターゲット層の年齢や地域などに限定した市場に設定するかでシェア率は異なる。このように、自社の調査目的に合わせて活用できるのが大きな特徴である。
絶対的市場シェア率は、「全体市場シェア率」と「対象市場シェア率」に分けられる場合もある。「全体市場シェア率」は、自社の商品・サービスが市場全体に占める割合を算出する。売上金額を指標とするか販売個数を指標とするかでは算出シェア率が異なるため、市場を見定めたうえで適切な指標を設定することが大切だ。一方「対象市場シェア率」は、年齢や地域といった特定の条件で限定した市場のことを指す。算出対象の商品・サービスの特徴に合わせて条件を設定することが重要である。

【計算方法】

絶対的市場シェア率 = 自社の商品・サービスの売上 ÷ 市場全体の売上

相対的市場シェア率

相対的市場シェア率とは、自社の商品・サービスの占有率が競合他社の占有率の何%を占めているかを測るもの。市場内における自社の影響力や、商品・サービスの差別化分析に役立つ。なお、この相対的市場シェア率は、シェア1位の企業の比較に用いられることが多い。

【計算方法】

相対的市場シェア率 = 自社の商品・サービスの絶対的市場シェア率 ÷ 競合他社の商品・サービスの絶対的市場シェア率

マーケットシェアを把握するメリット


自社の立ち位置や競争力が評価できる

マーケットシェアを把握することで、自社のターゲット市場における影響力が数値として可視化され、客観的に自社の立ち位置や競争力を評価することができる。それによって今後自社が進めていくべき戦略も明らかになるうえ、目標値との乖離があれば「相対的市場シェア率」の把握から自社に不足している要素を洗い出し、改善に取り組むことも可能である。

戦略を立てやすくなる

マーケットシェアの大小によって、取るべき戦略は大きく変わる。自社のターゲット市場のマーケットシェアを算出し、自社の商品・サービスが受け入れられる層を明確にしておくと、ターゲットそれぞれに効果的なアプローチやコンセプトといった戦略を具体的に策定しやすくなる。また、マーケットシェアを基に自社の強みや弱みを分析し、今後参入したい市場の検討や商品開発といった戦略に役立てることができるだろう。

成長の機会の発見

マーケットシェアを分析することで、その市場の今後の成長率や隠れたポテンシャルを見つけることができる。たとえば市場全体ではシェアが低いように見えても、対象を絞って算出したら高いシェアを獲得しているという場合がある。競合他社よりも高い成長率を示している企業であれば、新規需要を掴んで市場の拡大に成功している可能性も。マーケットシェアの変化を敏感にとらえ、トレンドを追跡して成長機会を逃さないようにしたい。

新規市場への参入を検討するときに活用できる

マーケットシェアを把握することで、その市場に参入の余地があるかどうかの判断に役立てることができる。たとえば、圧倒的シェアを持つ他社が独占状態にある市場の場合、参入しても価格競争に追い込まれ不利になるリスクが高い。逆に複数企業がシェアを取り合っている市場であれば、新規参入の余地は十分あると判断できる。

取引交渉の強化

マーケットシェアの把握は、取引交渉の強化材料となる場合がある。高いマーケットシェアを持つ企業は市場への影響力も大きく、他社との交渉時でも有利な立場にあることが多い。特に高価な商品の場合、マーケットシェアを企業の信頼の根拠とする傾向が強い。自社のマーケットシェアを提示することで客観的な信用を得やすくなるため、価格や条件の交渉において有利にはたらく可能性がある。

クープマンの目標値


クープマンの目標値とは、市場における自社商品やサービスの立ち位置と優劣を見極めるための理論のこと。アメリカの数学者B.O.クープマン氏が、軍事戦略である「ランチェスターの法則」を基に導き出した。このクープマンの理論を経営学に応用し、日本のマーケティングコンサルタントの田岡信夫氏と社会統計学者の斧田太公望氏によって具体的な目標値が設定。その目標値は、以下の6つである。

独占的市場シェア:73.9%

上限目標値といわれる数値で、シェア率が73.9%を越えている状態。独占的寡占型ともいわれ、2番手に位置する企業とあわせて上限目標値を超える場合は二大寡占市場といわれる。ここに位置する企業は圧倒的優位の状態で、業界をコントロールできる立ち位置にあり、短期間でシェアを覆すのはほぼ不可能といわれる。同業にシェアを脅かされる危険は少ないものの、独占禁止法により規制がかかる恐れがあるので注意が必要である。

相対的安定市場シェア(安定的トップシェア):41.7%

安定目標値といわれる数値で、シェア率が41.7%を越えている状態。シェア率40%は多くの企業が安定的トップシェア目標として目指す数値であり、安定感のある事業展開が可能となる。3社以上が参入している市場の場合は、41.7%を越えると「圧倒的」といわれる状態になり、市場に与える影響力も他の企業より大きくなる。

市場影響シェア:26.1%

下限目標値といわれる数値で、シェア率が26.1%を越えている状態。26.1%を超えている企業は、他社に対して十分な影響力があり競争状態からは一つ抜け出ているとされる。市場を安定的に独占できる最低限のシェアであるものの、この数値以下で業界トップの場合は、その地位は不安定で逆転の可能性もある。

並列的競争シェア:19.3%

上位目標値といわれる数値で、シェア率が19.3%を越えている状態。シェア1位の企業がこの数値の場合、複数企業が拮抗していて安定したトップ企業はいないとみなされる。そのため、まずはこの数値を越えていくことが競争状態から抜け出すための目標値となる。

市場認知シェア:10.9%

影響目標値といわれる数値で、シェア率が10.9%を越えている状態。市場への影響力はあまり大きくないが、顧客や競合他社から認識されているという目安になる。逆にこれを下回っている場合はほとんど認知されていないといえる。このあたりから競争が始まるため、業界内のシェアがそれぞれ10%台で拮抗している状況であれば、ここからトップを狙うことも可能である。

市場存在シェア:6.8%

存在目標値といわれる数値で、シェア率が6.8%を越えている状態。市場に新規参入する場合は最初に目指すべき目標の数値である。市場内での影響力はほとんどなく、存在が許される目安ともいえる。これを下回った場合には倒産リスクがあるため、市場からの撤退を検討することに。市場で生き残るためには最低限確保すべきシェア率といえる。

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