BtoB ECサイトを柱に成長を続ける株式会社TATのCRM戦略、および顧客理解への取り組みとは
- Writer:
- 山崎雄司
ネイル用品の専門商社として3万点ものアイテムを揃え、ネイル商材の卸と材料の開発を行う株式会社TAT。同社はBtoBの専門商社として、プロネイリスト向けのECサイトを中心にビジネスを展開し、約3割の市場シェアを誇る。今回は、同社のCRM戦略および、顧客理解や顧客体験価値(CX)向上に向けた取り組みについて、経営企画部の田口氏、兵頭氏にお話を伺った。
ネイルサロンにとって必要不可欠な企業に
兵庫に本社を構える同社は、1998年の創業以来、ネイリストやネイルサロン、スクール、専門学校に向けて、BtoBビジネスを展開してきた。創業と時を同じくして国内のネイリスト検定受検者が増え始めたことも追い風となり、業績は右肩上がりに成長。現在の販売チャネルはECサイト「Nail Shop TAT」が中心で、年間アクティブユーザー数は8万人にのぼる。2019年はECが全体の55%、2020年は65%の売上を担い、そこに8店舗の直営店と代理店が加わって約3割の市場シェアを誇る。
TATでは、卸として商品を提供するだけでなく、サロンを続けていくために必要な経営の知識や接客マナーを教えるビジネスも展開している。ネイリストとひと言で言っても、スクール生や多店舗展開するネイルサロン、自宅サロンなど、多くのセグメントがある。その中で、セグメントに合った情報やノウハウを提供し、サポートしているという。
BtoCの世界では、顧客体験や体験価値といったワードが近年トレンドになっており、商品を提供するだけではないプラスαの価値を高める企業が増えているが、BtoBビジネスを展開するTATにとってもそれは同様で、継続的に同社と付き合ってもらえる価値を磨こうとしている最中だという。経営企画部の田口氏は「会社としてはまだまだ商品を販売しているという要素が強いが、これから少しずつ幅を広げていって、トータルで弊社がネイルサロンにとって必要不可欠な存在になれれば」と話す。
2020年は新型コロナウイルスの影響でネイルサロンが休業となり、4~5月の売上は前年比75%と大幅減。しかし6月以降は順調に売上が回復し、通年で見ると前年と変わらない状態まで戻ってきたという。さらにコロナを機に、店舗利用のみだったユーザーがECも利用するようになり、利用単価はアップ。オンライン商談やオンラインセミナーなどのオンライン化も進んだ。
導入前はデータの抽出加工に工数がかかっていた
TATがカスタマーリングスを導入したのは2017年だが、導入前はアンケートや定量データを自分たちで抽出・加工していたため、かなりの手間がかかっていたという。
「当時は基幹システムからその都度出力し、Excelやアクセスを使いながらレポートを作っていました。データを出力する際、加工し終わった状態で出るのではなく、羅列された生データが出てくるような状態でしか抽出できず、そこからグラフなどを作成していくためどうしても工数がかかってしまう。データは月次で出力していたため、集計結果から気づきを得るタイミングも少なく、タイムラグも課題としてはありました」(田口氏)
また、メールの定期配信などもできておらず、配信するのはセールなどのキャンペーン案内が中心。セグメントごとの配信もできていなかったため、一斉配信がメインになっていたという。これについて田口氏は「セグメントごとの配信に切り替えた方が良いという意識は漠然とありましたが、一斉配信しかできていなかったため仮説も立てられていなかった」と話す。当時はメール配信に特化したシステムを活用していたが、効果測定も不十分だったという。
顧客ごとの平均購入周期を把握できたのは大きな収穫
カスタマーリングスを導入したことで最も大きかったことは、顧客ごとの平均購入周期やメーカーごとの継続率を把握できるようになったことだという。
「弊社は卸なのでメーカーともやり取りしていますが、以前はデータに裏付けされた課題点が見えない中で議論をせざるを得ませんでした。それが導入後は一転して、具体的な改善策について話せるようになった。そこは大きかったですね。以前は平均購入周期やRFMを出そうにも、手動で計算して点数化していたのでとにかく時間がかかっていました。商品ごと、メーカーごとの集計はできていましたが、顧客軸で見ることは難しかったですね」
導入前は顧客ごとの購入周期が抽出できなかったこともあり、メルマガは半年に一度のペースで送っていた。しかしそのペースは平均的なタイミングであり、顧客単位では妥当ではなかったと田口氏は話す。
「最終購入日からある程度経つと離脱しやすい時期が来るので、最終購入日から90日経ったお客様にはDMを送ったりはしていました。ですがお客様によっては平均購入周期が異なる場合もありますよね。そうやって平均購入周期に合わせた離脱ポイントを出せていなかったので、それが出せるようになったのは非常に便利になりました」
これまでは全顧客の平均周期(2ヶ月)を抽出し、平均周期を超えた顧客に一斉にアプローチして離脱防止に努めていた。しかし導入後は、一人一人の周期を把握し、顧客ごとの離脱タイミングに対していち早くアクションを起こすようにしたという。同社のアクティブユーザーは8万人だが、そのうち半年間購入していない顧客を離脱と定義しており、カスタマーリングスを使うことでこの離脱率が10%改善された。
また、購入率の高い顧客は配信の対象から除外されていたため、結果的により優良度の高い層に対してメッセージを送ることができていなかったという。
現在は、平均購入周期を超えた顧客に対して迅速にアプローチ。1ヶ月が基本的な周期であれば、40日経った時点でメールを送るなど、それぞれの顧客の周期に合わせたアプローチを行う。また、メーカーごとに2回目の購入を促すステップメール配信ができるようになったため、初回購入者にはメーカーの良い点やなぜそのメーカーの商品を購入したのかという質問を個別に送っている。それによって、顧客の声がより届くようになったという。
「弊社が扱う商材はジェルネイルがメインですが、当然メーカーごとにそれぞれの強みがあります。その強みが果たしてお客様の購買理由になっているのか。そこを把握するようにしました。安全性を謳っているメーカーであれば、購入理由に安全性と書かれていたらその売りはきちんと届いていることになる。その逆に対しては、もっとこちらから誠実にお伝えする施策を取れるわけです」
顧客の期待を知った上でその期待に応えていくことで、より商品の魅力が見えるようになるとよく言うが、TATの場合はその取り組みをしっかり行えているというわけだ。
3万人という顧客の分母は大きな武器になる
定量的な集計の先に、顧客1人1人の存在を実感するという顧客実感については、「NPS®のアンケートデータから顧客が何を求めているのかを優先付け、推奨度の相関性が高い項目を重点的に改善できるようになった」と田口氏。NPSやアンケートを取る前に思い描いていたことと、実際にアンケートで得た情報にギャップを感じたという。例えばTATは梱包状況について褒められることが多いそうだが、NPSのアンケートでの評価は相関性が低かったため、梱包については優先順位を見直しても良いかもしれないという結論に至った。
また、同社ではSNSでの情報発信との相関性が非常に強いという結果が出たため、各SNSやアプリの会員数増加、配信内容の見直しを重点的に行ったという。各セグメントごとに求められる情報は違うため、アプリやLINE連携を生かし、アプローチの最適化を目指すようにした。その結果、各SNSの登録者は平均5%増加、NPSによる推奨度の数値は0.9Pt増加したという。これについて田口氏は「このようなエンゲーメントを上げる施策は引き続き行っていけたら」と話す。
カスタマーリングス導入後はLINEに関する取り組みも積極的に行っており、ステップLINE配信、キャンペーンLINE配信、LINEID連携を実施。以前は顧客を指定した配信方法はメルマガしかなく、登録率は30%で開封率は20~30%ほど、セッション率も低く、費用対効果は決して良いものではなかったという。また、LINEの一斉送信はできたが、5万名ほどの登録者がいるため、一斉送信すると配信コストがかさみ、顧客に沿ったアプローチができないというのが悩みだった。それが今では一切なくなったため、基本的にメルマガでやる内容はLINEでもやるようにしているそうだ。
「当初LINE連携は2,000名ほどからスタートし、配信媒体としては弱かったのですが、LINE連携を始めたタイミングで連携者限定セールを行い、そこで一気に5,000名ぐらいまで伸びました。それでもまだまだ弱いということで、LINE連携者には500円オフなどの特典をつけるようにしたところ、2年で3万名に達しました。メルマガ配信時よりも、セッション数やコンバージョン率は1.5~2倍ほどになっています。また、一斉配信を極力減らし、LINE連携者への最適アプローチに切り替えることで、配信のコスト面も約1/3に削減できたのです。今後EC化はさらに加速し、オンライン上でのコミュニケーションが必須になる中、ましてやこのコロナ禍で3万人という顧客の分母は弊社にとって大きな武器になるのではないでしょうか」
メールに比べてCVRは桁違いで、施策も多岐にわたっているため、メルマガと同じぐらいの内容ができており、同社の施策は非常に進んでいると言えるだろう。
カスタマーリングス導入による効果は、数字だけでなく、業務や分析面でも見られたと田口氏は話す。
「分析にかかる時間が減ったこと、そして効率的にアプローチをかけられるようになったこと。この2つは大きいですね。これまではその都度データを出していましたが、今は最初に設定してしまえばワンクリックで出せるということで、かなり時間が短縮できていると感じます。定期的にアプローチするものに関しては、一度設定してしまえば自動で動いてくれるので、そこまで大人数でなくても多岐にわたる施策ができる。ここは大きいですね」
現在、分析結果は経営企画部と販売部門の会議で共有されているそうだが、今後は「メーカーへのフィードバックについても、カスタマーリングスを使って収益結果を出せられれば」と田口氏は結んだ。
BtoB ECサイトのLTV向上にも「カスタマーリングス」
CRM/MAツール「カスタマーリングス」は、ECサイトやを中心に600社以上の導入実績を持つ、業界シェアNo.2のマーケティングプラットフォームです。様々なシステムに分散しているデータを統合・分析・抽出し、メールやLINE配信などの施策までノーコードで実施できます。ユーザーとのデジタル接点の強化や顧客分析/レポート作成の工数削減、ECサイトのLTV向上にお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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