資格のキャリカレが取り組む「認知度・受講率の向上、継続して学び続けてもらえる仕掛けづくり」とは
- Writer:
- 山崎雄司
2008年の設立以来、お客様の「なりたい」に直結するさまざまな通信教育サービスを展開している株式会社キャリアカレッジジャパン。同社が運営する資格のキャリカレでは、簿記からヨガまで150もの講座をラインナップし、中でも20~40代の女性が多く受講しているという。また、通信講座の提供にとどまらず、学びを通じて人生の可能性を応援すべく、資格取得後の就職・転職活動の手伝い、資格を生かしたイベント活動の支援なども行っている同社。経営企画部の上岡氏に同社のCRM戦略について話を伺った。
継続して学んでいただけるサイクルを作りたい
経営企画部では、事業計画の立案~達成、マーケティング活動全般を担当しており、キャリカレの認知拡大や受講の後押し、資格取得後の満足度の向上をミッションに掲げている。上岡氏は「認知度の向上、受講率の向上、継続して学び続けてもらえる仕掛けづくりの3つが当面の課題であり目標」と話す。
認知度の向上においては、キャリカレを知らない方に向けて、より質の高いリーチを獲得していくことが求められているが、「より多くの人に知っていただくというよりは、ターゲットユーザーを絞り、そのターゲットにどのようなイメージを持っていただき、そのためにはどういったメッセージを届けるのかという部分を課題と目標としています」と上岡氏。
また、キャリカレでは電話での受講申し込みを受け付けていないため、ホームページを訪問したユーザーによるメール申し込みがメインとなっている。そのため、受講率の向上には、学ぶきっかけや学んだあとのゴールをリアルにイメージできるコンテンツ作りがホームページ上に必要になってくる。
さらに1つの講座が終わっても、スキルの補充をするために別の講座を受講してもらうという流れが最も綺麗なサイクルだと考えているという。
「キャリカレではリピート受講という形がメインにはなりますが、それだけでなく、イベント実施の支援をはじめとした資格を生かした活動の支援を行いながら、次に必要な学びに気付いていただき、継続して学んでいただけるサイクルを作っていくことが大切だと思っています。そのため、ミッションの3つ目に継続して学び続けてもらえる仕掛けづくりを掲げました」(上岡氏)
導入の決め手は施策と分析が直結していたこと
カスタマーリングス導入前、同社では基幹システムから月次でデータを抽出し、定量データの分析を行っていた。その分析方法では、まず資料請求者と受講者を紐付ける作業が必要だったため、やむなく月に1回のデータ抽出となり、とにかく分析に時間がかかっていたという。その上、システムスタッフの手も介する必要があり、課題に気づくタイミングも遅れてその時々にマッチした柔軟な分析を行うことができていなかった。
また、資料請求者に対するメール配信は行っていたが、こちらもリスト作成やお客様の学習状況や受講講座をもとにした配信内容の作成に手間がかかり、改善作業が進んでいなかったという。
導入前は複数のツールを比較したそうだが、カスタマーリングス導入の決め手となったのは、施策と分析が直結していることだったと経営企画部の上岡氏は話す。
「ツールが分かれていると、分析をしてから施策に落とし込むまでに大きな壁がありました。ですがカスタマーリングスは、一気通貫で運用することができる。分析を軸にした施策が明確で、いかに早く分析を回して施策に落とし込んでいくかという課題感が解決できるところが非常に魅力的で、導入を決めました。また、データのリアルタイム性も決め手の1つになっています。これまで月次でしか見られなかった視点を、デイリーで見られるようになるのは大きいと感じました」(上岡氏)
人軸での分析は非常に助かっている
導入後は、まずメールマーケティングの見直しを行ったという。
「これまでできていなかったセグメントの切り方や配信タイミング、配信回数などを見直し、試行錯誤しながら最適解を見つけていっている最中ですが、あまり細かく運用しすぎても効果として見えづらくなってしまうということが分かるようになってきました。また、資料請求から受講につながるのは2割程度ですが、そもそも資料請求者のメールの開封率は10~18%前後となっており、約8割の方にはメッセージを届けることすらできていないことに課題を感じていました。そのため、LINE配信も開始し、より最適なタイミングでメッセージを届けられるように日々運用しています」(上岡氏)
LINEにおけるメッセージ配信
LINEは当初の計画を上回るペースで友だち数が増加し、LINE限定のキャンペーンなどを実施することで受講者数も獲得できていると上岡氏は話す。
カスタマーリングスの導入によって得た分析データは、日々の状況確認はもちろん、事業計画の立案にも活用しているという。特に「人軸でどういった動きをしているのかが見えるのはとても助かっています」と上岡氏。「講座軸での分析は導入以前から割とスムーズに行えていましたが、人を軸にした分析、例えばその方が初めて受講した日や何回受講したかといった分析は非常に困難でした。今期新規で申し込まれた方が何人で、リピートで申し込まれた方が何人なのか、また、それらの方々がどのような周期で申し込まれているのかといった分析をすぐにできることには感動すら覚えます」と続ける。そんな中、分析結果からは新規の受講に依存してしまっているという課題が見えてきたという。
「継続して学び続けていただくためにはどのようなアプローチが必要なのかということを引き続き検討し、仕組み化するまで持っていきたいと考えています」(上岡氏)
カスタマーリングス導入後の講座修了率が120%にUP
通常の通販とは異なり、キャリカレのような通信教育の場合は教材発送のタイミングから学習支援がスタートする。そのため、初期段階からしっかり顧客に寄り添ってコミュニケーションを取っていく必要があり、メールでのフォローが非常に重要になってくるが、カスタマーリングスはそのフォローに活用することができているという。教材発送から一定のタイミングで学習進捗のお伺いを立てたり、添削課題の提出期限を案内するほか、リピート受講していただくために修了者に絞って特別価格での案内も配信しているが、これを自動的にできるようになったのは非常に大きいと上岡氏は言う。
「これまでは手作業でステップメール(フォローメール)を行っていましたが、当時からは考えられないほど工数が削減できています。また、やりたくてもできなかったセグメント配信も可能になりました。以前はメール送信のたびにシステムチームへデータの抽出を依頼していましたが、その業務が大きく削減され、本来の業務に集中できるようになったと感謝されています。また、日々の講座ごとの申込数確認もボタン1つでできるようになり、劇的に早くなりましたね。分析については、データ加工機能(※計算属性)が非常に活躍しています。何回申し込まれているのか、初回の講座は何だったのかといったことを見られるようになったおかげで、例えば、最初に無料モニターで受講された方がその後どのぐらい別の講座を受講してくれているのか、といったこともすぐに分析できるようになりました。他にも、気になったことをすぐに分析できることで、想定外の発見もされやすくなっています」(上岡氏)
※カスタマーリングス上で保持しているデータをもとに自動計算し、新たな値を作成できる機能。SQL等のプログラミングが不要で、マーケティング現場で必要なデータをノーコードで作ることができる。
できることが見えてくるとそこでまた新たな発想も生まれるため、次の施策を考えやすくなった点も効果の1つだと上岡氏は話す。また、キャリカレでは「学びを通じて人生の可能性を応援していく」をテーマに掲げているため、受講生の成果指標は講座の修了率で見ているそうだが、カスタマーリングス導入前後で比較すると120%に向上したという。このように、カスタマーリングスを活用することで、課題として感じていた点は大幅に改善されたと上岡氏は話す。
カスタマーリングスをすべてのデータの集約場所に
講座という1つのサービスを軸に、体験価値を意識した取り組みを行っている同社。講座の修了率を重要なKPIにしたり、資格を取得した方に対する周辺のサービスを拡充するなど、あらゆる面で受講者を応援していこうという気概が伝わってくる。カスタマーリングス導入後は、データから顧客の動向を読み取り、1人1人の意思を実感することで次々と施策を生み出してきた。例えば、受講生における新規や再受講の割合を分析したり、初回の申し込み方法(どの講座を受講してるのか、2講座同時に申し込んでいるのか等)による再受講までの期間を計測するなどして計画の立案に役立てているという。それによって親和性の高い講座をセットにしたプロモーションも行うようになり、結果的に複数の講座を組み合わせて受講する方が増加した。さらに現在は、社内で部署横断プロジェクトも行っていると上岡氏は話す。
「お客様からのご質問や講習の確認といった学習サポートを行うチームと連携して、LTVを高めていこうというプロジェクトにも取り組んでいます。カスタマーリングスの数字を見ながら話ができるのは非常に助かっていますし、そもそも分析データがなかったら部署横断プロジェクトなんて実現できませんでした」(上岡氏)
また、RFM分析もスピーディーに行えるようになったおかげで「LTV向上施策に生かせている」と上岡氏。コロナ禍による資格業界全体の活性化も影響し、2021年3月決算期はなんと前期比176%の売上高を達成することができたそうだ。
カスタマーリングスのサポートについては、「抱えている課題について、オンライン勉強会で具体的に教えていただけることはもちろん、日々の相談や質問にも翌日には回答いただけるので大変助かっています。特に、社内で設定した内容が合っているかどうか不安な時に、裏側でその設定を見ていただき、チェック機構として動いてくださることも本当に安心です。スピード感やコミュニケーションにおいて、ストレスをほぼ感じません」と上岡氏。
今後の活用について尋ねると、「カスタマーリングスをすべてのデータの集約場所にしていきたい」という答えが返ってきた。同社では、現在Webアクセスログ分析はGoogle Analytics、広告成果分析はアドエビス、Web接客はFlipdesk、顧客サポートはZendeskを使用しているが、それぞれが独立して動いているため、他のツールへの活用ができていない状態だという。「それらをすべてカスタマーリングスに集約させることができれば、あらゆるデータを活用して施策につなげるというカスタマーリングスの強みをさらに生かせる。カスタマーリングスにかける期待は非常に大きいですね」と上岡氏は結んだ。