デジタルマーケティングは顧客体験、そしてカスタマージャーニーを重視したトレンドへ


Writer:
山崎雄司
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消費傾向がモノからコトへ移り行く現代。マーケティングのトレンドも、単にモノを売ることよりも、顧客体験(コト)を重視するものに移行している。こうした背景からデジタルマーケティングにおいて注目されているキーワードの一つに、カスタマージャーニーが挙げられる。 今回はデジタルマーケティングの定義を踏まえ、顧客体験を重視したマーケティングの手法について考えていきたい。

デジタルマーケティングを定義する3つの観点


デジタルマーケティングを定義するにあたり、大きく3つの観点が挙げられる。1つ目がデータ活用、2つ目がタッチポイント、そして3つ目がカスタマージャーニーだ。

デジタルマーケティングにおける3つの観点の違いを、各企業の説明を参考にしながら比較してみよう。



 

データ活用を重視


「(デジタルマーケティングとは)マス、リアル、ネットの3領域をすべてデジタルデータで統合し、ユーザー導線を効果的に作っていくこと」
―株式会社デジタルインテリジェンス

「インターネット上のみならず、さまざまなチャネルで得られるデータを活用して、広告出稿やWebサイト、実際の店舗運営など、あらゆるマーケティング活動を支援する」
―ソフトバンク株式会社


データの活用が重要視されるようになった背景には、インターネットやSNSの普及によりオンラインのチャネルが増え、得られる顧客データが爆発的に増えたことがある。リアルからオンラインまでさまざまなチャネルを駆使して得たデータを、デジタルデータとして一つに統合することで、ユーザーの導線を包括的に描けるようになるという視点だ。

タッチポイントを重視


「Webマーケティングを包括する概念であり、様々なデジタル概念を包括的にとらえる」
―Digital Marketing Journal

「既存顧客や滞在顧客とつながる手段として検索エンジンやSNS、Eメール、ウェブサイトなどのデジタルチャネルを活用」
HubSpot


米国マーケティング会社VisionEdge Marketingの取締役Laura Patterson氏の定義によると、タッチポイントとは、「顧客が製品、ブランドやビジネス、サービスについての感じ方を変える可能性のある、あらゆるインタラクション」のこと。タッチポイントによっては、企業が直接コントロールできないインタラクションもあるだろう。デジタルマーケティングにおいてこのタッチポイントを重視する理由は、顧客とどのようなインタラクションが発生するのかを理解し、そのインタラクションを改善していくことがマーケティングの成功に結び付くという考えからだ。データを活用する前に、改善すべき顧客との接点(タッチポイント)を理解していないことには、効果的な戦略は立てられない。また、そもそも顧客とのタッチポイントを十分用意できていないことも多いため、デジタルマーケティングの活用には、積極的に顧客の望むタッチポイントを用意することも大切になってくる。

カスタマージャーニーを重視


「顧客行動の連続性をサポートし、そのためにデータを使って統合的にマーケティング」
ネットイヤーグループ株式会社

「顧客にリーチし、顧客をリードし、顧客に購入を促し、顧客を保持するために、デジタルテクノロジーを用いた、測定可能でインタラクティブなマーケティング手法」
―株式会社野村総合研究所


カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、情報収集を行って、購入、その後に評価するという、顧客の行動や思考を時系列で表す一連の行動のこと。このカスタマージャーニーを理解することで、顧客視点でのマーケティング施策構築に役立つといわれている。

先述の通り、デジタルマーケティングにおいて顧客とのインタラクションを理解することは極めて重要である。一方、顧客のショッピングジャーニーは連続性を持っているものであるため、タッチポイント一点だけのインタラクションで顧客をすべて理解するということは不可能だという考え方もある。繰り返しになるが、顧客体験を向上させるうえで重要になるのは、顧客理解と顧客視線での発想。最近では、顧客の各チャネルを横断するような購買行動から、オムニチャネルやOtoOなどに注目したマーケティング戦略が台頭しており、企業もまた、顧客にそのような行動を促している状況である。カスタマージャーニーの観点は、こうした顧客行動を把握するために効果的であり、顧客体験を向上させる有効なマーケティング手法といえよう。

時代は顧客体験を重視したマーケティングに


時代に合わせて変化し、その目的によってもいくつもの手法が確立されてきたマーケティング戦略。昨今マーケティングの主流となったデジタルマーケティングにおいても同様に、顧客や目的に合わせていくつもの手法が存在している状況だ。

デジタル技術の進歩によって、膨大な顧客データが取得できるようになった一方、顧客行動のパターンもますます多彩になっている現代。デジタルマーケティングはさらに顧客の生活に溶け込み、顧客一人ひとりの暮らしと切り離せない時代へと突入することだろう。

この複雑化した顧客行動を把握し、効果的な施策を打ち出すためには、顧客行動を可視化できるカスタマージャーニーの手法がマーケティングに欠かせないものとなっていくだろう。

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