デジタルマーケティング全盛の今、改めて考える顧客セグメントの可能性と重要性


Writer:
山崎雄司
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顧客セグメントというキーワードは、デジタルマーケティング界隈ではよく耳にする。そして、何らかの形で企業における顧客セグメント業務に携わった経験のある人も増えてきたのではないだろうか。しかし、顧客セグメントを行おうとする際に、一筋縄ではいかないケースに多く直面する例も報告されている。例えば、セグメント作成のためのデータが十分に揃っていなかったり、セグメントを効率的に行うためのツールが導入されていなかったり、環境的にセグメントを行えないケースもある。また、セグメント作成の方法には様々な切り口があり、どこに正解があるのか分かりにくく、複雑で難解に感じることもあるだろう。そのため、この顧客セグメントを有効に活用して、成果を出していくことは、実は思ったよりもハードルが高いものなのだ。 今回は、顧客セグメントについて改めて考え、セグメントの切り方や活用方法について、整理していく。

顧客セグメントの可能性はデジタル化によって拡大へ


そもそも、デジタルマーケティングにおける顧客セグメントの主な目的は、顧客の分析や、メール配信等のマーケティング施策のために効果的な顧客グループを作成することにある。デジタル化により、多種多様な顧客データを得られるようになった今、さまざまな切り口からセグメントを作成することが可能になっている。さまざまな切り口でセグメントされた顧客に対して分析することによって、顧客をより多角的に捉えられるようになっただけでなく、メール配信以外にも、LINEやアプリ、実店舗といったあらゆる顧客接点におけるマーケティング施策が可能になる。One to Oneマーケティング施策において、その奥行きや幅もますます広がってきているのである。

顧客セグメントに利用されるデータ


顧客セグメントを作成するにあたって、第一のステップは、保有しているデータがどのようなものであるかを把握することである。セグメントの元になるデータは、「顧客属性データ」と「トランザクションデータ」の2種類に一般的に大別される。「顧客属性データ」とは顧客の年齢や住所などの一般的な顧客情報に関するものだ。「トランザクションデータ」とはオンライン上での受発注などの顧客と企業との取引データや、サイト上での閲覧情報や、実店舗での来店情報、さらにはサポートセンターへの問い合わせ等、日々刻々積み重なっていくデータだ。

多くのケースでは、セグメントを行う前に「顧客属性データ」と「トランザクションデータ」から計算を行うことで、施策を行いやすくする。例えば、生年月日から年齢を計算することもあれば、購入履歴から過去1年間に何回購入してくれたかをカウントすることもある。

何のために顧客セグメントを作成するのか


顧客セグメントを行う目的は大きく分けて3つある。


マーケティング施策


顧客セグメントの最も大きな目的は、マーケティング施策を打つことにある。顧客の購入履歴や購入頻度などのデータから、再度購入を促す施策を展開していくものだ。

例えば、“購入回数が2回で、商品の発送から〇日経過している。□商品についてはまだ購入に至っていない”といったデータから、リピート購入の販促や、商品のレコメンドやクーポンの発行などを行い、再訪問のきっかけを生み出すことなどが考えられる。

顧客分析


マーケティング施策を打つためだけではなく、デジタルマーケティングで収集されるデータは企業活動における宝の山だ。そのため、顧客自体をより知るために、属性や特徴などをもとに顧客を細分化し、分析を行うためにも顧客セグメントは活用される。

例えば、「優良顧客」で「男性」といったフィルタでセグメントを作成すれば、男性顧客の心に響くような、より適切なアプローチを見つけることが出来るかもしれない。また、その内容から商品企画へのフィードバックも生まれる可能性もある。

外部連携用対象者の絞り込み


最近増えてきているのが、この外部連携サービスへのデータ流し込みのための顧客セグメントだ。デジタルマーケティングでは、多くの外部サービスとの連携が必要なため、行いたい施策を実行するための外部サービスと連携する必要がある。その際に、その施策を実行する対象となる顧客セグメントが必要になってくるのだ。

例えば、“直近1年間に購入歴があるが、A商品は未購入、さらにメールも未開封”といった顧客を「外部連携用対象者」のセグメントに分類。これにより、SNSやスマホアプリ、メルマガといった、さまざまな外部システムの特徴を活かしたアプローチを検討することができる。

顧客セグメントツールでできること


このようにデジタルマーケティングでは、顧客セグメントの幅が広がりを見せていることもあり、昨今では、さまざまな顧客セグメントを行うためのツールが提供されている。一般的な顧客セグメントツールではどのようなことが出来るのかを見ていこう。

ツリー構造による顧客セグメント


顧客セグメントはツリー構造で体系的に管理すると分かりやすいケースが非常に多い。例えば、購入時期や年齢といった条件から、ターゲットとなる顧客の属性を抽出し、セグメント化する際に、ツリー構造で表現されると、ターゲット顧客を分かりやすく可視化・管理することができる。また、社内などでの顧客セグメントの考え方などの共有の際にも役立つ。

販促シナリオの設計


顧客セグメントは単発でマーケティング施策に活用するケースだけではない。マーケティング施策は、シナリオ的に、連続性を持って進んでいくことが一般的だ。例えば、キャンペーンメールの開封・未開封状況を判断し、その後の顧客の行動結果などに応じて顧客セグメントを切る必要もあるだろう。そのため、連続的な販促シナリオを設計しながら、顧客セグメントをそれぞれのシナリオの条件として活用していくことが重要になってくる。

分析機能との連携


作成した顧客セグメントの有用性などを確認しながらマーケティング施策は考えていくもの。その際に、作成した顧客セグメントの顧客から本当に想定される成果を得ることが出来るのか、などの分析をする必要が生じる。そのため、作成した任意の顧客セグメントに対して、さまざまな分析機能をシームレスに実行することも重要だ。また、逆に分析結果をセグメントの条件に反映させることも出来るツールもある。

対象顧客リストの抽出


作成した顧客セグメントは、ツールの中だけで閉じていては、なかなか社内での情報共有等に支障をきたすことも多い。そのため、作成した顧客ターゲットの顧客リストをCSVやテキストファイル等で出力することが出来ると非常に助かるケースも多い。また、情報管理には気を付けたいが、メール機能と連携することで、定期的に担当者へリストを送信することも可能なツールもある。

A/Bテストによる最適化


顧客セグメントを行った上で、マーケティング施策を実施する際に、そのセグメントが本当に成果が出ていたのかを判断するために、他の顧客セグメントとのA/Bテストを実施するケースもある。ツールによっては、このようなA/Bテストが搭載されており、マーケティングシナリオの評価も可能になっている。さらに、顧客からの反応の良い結果を優先的に採用する「自動最適化機能」が搭載されているものもある。

顧客セグメントを行い成果を出すために


顧客セグメントは、デジタルマーケティングが全盛となった今、その可能性も高まっている一方で、難易度も上がってきている。しかし、多くの企業で顧客セグメントを活用したOne to Oneマーケティングが行われていることもあり、どの企業でもさまざまな切り口から顧客の特徴を捉え、有効な施策を行っていく必要があるだろう。顧客属性データとトランザクションデータから顧客を捉え直し、より細かく顧客のセグメント化を行うこと、さらにそれを活用し、顧客一人一人のニーズに合わせて戦略を最適化していくことが、今後ますます重要になってくるだろう。

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