今さら聞けない「UGC(User Generated Content)」とマーケティング活用法―デジタル時代を生き抜く基礎知識


Writer:
山崎雄司
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近年のデジタルマーケティングの中で、消費者によって作成されるUGCの存在感が更に増してきている。今回は、UGCがマーケティングで活用されている背景から、特徴やメリット、注意点といった基本事項を整理していく。さらに、UGCをマーケティングで活用した具体的な成功事例やUGCに適した商材、適さない商材なども詳しく解説していく。

UGC(User Generated Content・ユーザー作成コンテンツ)とは


UGCとは「User Generated Content」の略で、一般的には「ユーザー作成コンテンツ」と訳される。消費者が主にオンライン上で発信するコンテンツの総称で、具体的にはSNSの投稿や写真、動画、ブログなどのデータを指している。
UGCと混同しやすいものに“CGM(Consumer Generated Media/消費者生成メディア)”があるが、こちらは、ユーザーの投稿やコメントによって構成されるWebメディア自体のことを指す。具体的には、掲示板や口コミサイト、ナレッジコミュニティサイト、クックパッドのような投稿型のレシピサイトなどが挙げられる。
これら2つの大きな違いは、UGCが消費者によって作られた「コンテンツ」を指すのに対し、CGMはコンテンツによって生まれる「メディア」を指すという点にある。

UGC(User Generated Content)マーケティングとは


このUGCをマーケティングに活かす手法がUGCマーケティングであり、昨今のデジタルマーケティングにおいてUGCが有用であることから施策として定着した。一般消費者によって作られたコンテンツを活用するため手間は少々かかるものの広告予算を抑えることが可能で、消費者にやらせ感を与えることなく信頼度の高いマーケティングを実施でき、新たな顧客接点からOne to Oneマーケティングにつなげやすいことなどが特徴だ。
具体的には、消費者がSNSに投稿したコンテンツを活用するハッシュタグキャンペーンやアンケート機能を活用したクイズ、ユーザー参加型のコンテストなどが挙げられる。UGCマーケティングはコンテンツの内容そのものを企業がコントロールすることはできないが、ユーザーとコミュニケーションを取る中で肯定的なコンテンツを作成してもらいやすくすることは可能だ。また、Cookie規制を意識したマーケティング施策としても、UGCは有用といえるだろう。
 
 

UGC(User Generated Content)がなぜマーケティングで注目されているのか


UGC自体はブログ創成期を含めると10年以上前から存在しているが、UGCがデジタルマーケティングにおいて有効であると、ここ最近改めて注目を集めている。なぜ、そのように重要視されるようになってきたのか、その理由や背景を見ていこう。
 

1.SNS普及による影響力の拡大

まずは、SNSの普及の影響が大きいだろう。アメリカのOlapic社の調査によると、商品購入前にSNS上でUGCをチェックしていると回答した人は63%であったという。このように、多くの消費者が、購買行動を起こす前に、InstagramなどのSNSを通して商品やサービスに関するUGCを参考にしており、購買前の意思決定に大きな影響を与えている。
 

2.購入プロセスの変化(消費行動の変化)

SNS時代において、消費行動も大きく変化している。昨今の消費者の購買行動のプロセスについて、ホットリンク社は「ULSSAS(ウルサス)」を提唱。その意味は下記の通りである。
 
U(UGC/ユーザー作成コンテンツ)
L(Like/いいね)
S(Search1/SNS検索)
S(Search2/GoogleやYahoo!の検索)
A(Action/購買行動)
S(Spread/拡散)
 
UGCをきっかけに、情報が拡散されるまでのプロセスは循環している。このサイクルが一度回り始めると、多大な広告費を投下し続けなくても自動的に回り続ける。
つまり、購買行動の入り口にUGCを活用することで、費用対効果の優れたマーケティングにつながると考えられる。
 

3.デジタルマーケティングでの競合の増加に伴う表示獲得競争

デジタルマーケティングの重要性が増し、多くの企業がオンライン上での施策を行っている。その結果、ユーザーがオンライン上で何かを探そうとしたときに表示されるコンテンツへの競争、すなわち表示(インプレッション)の獲得競争が激化してきている。
その理由として、オンライン上のコンテンツが氾濫しており、SEO(Search Engine Optimization/検索エンジン最適化)の難易度がどんどん上がっていることが挙げられる。更に、アルゴリズムアップデートなどの影響によって検索順位が大幅に下がることもあるため、顧客が頻繁に検索するキーワード、いわゆるビッグキーワードを中心に、インプレッションの獲得競争は熾烈を極めている。
そこで、拡散性の高いUGCによる認知の拡大が、インプレッションの獲得に効果的な方法として注目されている。 

4.インターネット上の広告に嫌悪感を持つ消費者が増えつつある

インターネットを利用していると多くのWeb広告を目にするが、それに対して嫌悪感を抱くユーザーが増えている。プッシュ型広告のような不特定多数のユーザーを対象とした広告は、無関心層に対して押し付け感を与えてしまうこともあるからだ。
その点で、利用者発信であるUGCは、広告としての色合いはほとんど無いものとなっているため、リアリティがあり信頼できるコンテンツとして受け入れられやすい。

5.広告費の高騰

テレビ、新聞、雑誌、ラジオといったマスコミ媒体への広告費が下がる一方、インターネットの広告費は増加している。新型コロナの影響によるインターネット利用の増加や、企業のデジタルシフトの影響も、Web広告の制作需要が増す要因となっているようだ。その結果、Web広告に企業が集中し広告単価が高騰してしまい、以前のような費用対効果が見込めなくなりつつある。
こうした影響で、コストを抑えて多くのインプレッションを獲得できるUGCが注目されている。

UGCの特徴とマーケティングで活用するメリット


消費者発信コンテンツであるUGCは、企業主体のプロモーションと異なり、一般ユーザーの本音が見える投稿であるため、客観性が高く信頼できるものとして評価されやすいのが特徴だ。
これらを踏まえ、企業がUGCを導入する主なメリットは以下の3点だろう。
 

1.商品やサービスに親近感や信頼感を持ってもらえる

一番のメリットは、消費者目線のリアルな使用イメージを伝えられるという点だろう。その結果、商品やサービスを身近に感じてもらうことができ、購入を後押しすることができる。

2.企業側のクリエイティブ制作時間およびコストを抑えることが可能

UGCを広告バナーなどに活用することで、クリエイティブにかかる工数を削減できる。さらに、消費者目線ならではのPRポイントが詰まったコンテンツであるため、より効果的なクリエイティブの制作が期待できる。

3.商品開発やマーケティング施策改善のヒントを得られる

UGCは、商品やサービスに対するユーザーの率直な意見や、実際にどのような使い方をしているのかを知ることができる貴重なコンテンツだ。企業担当者からしても、目から鱗の活用方法や商品の魅力などを目にすることも多く、商品開発やマーケティング施策改善のヒントを得やすくなる。

UGCをマーケティングで活用する際の注意点


一方で、企業がUGCを活用する際には、気を付けなければならない注意点もある。

1.著作権侵害

UGCを活用する際には、事前に投稿ユーザーに許諾を得ることが原則だ。投稿者に無断で使用することは著作権侵害につながる。また、ユーザーの投稿自体が肖像権を侵害していたり、他人の著作物を無断で流用したりしているケースもあるため、投稿内容にも注意が必要である。

2.ステルスマーケティング

宣伝や広告であることを明示せずに商品の宣伝を行ったり、良い口コミを発信したりすることはステルスマーケティング(ステマ)に該当する。インフルエンサーやモニターにUGC投稿を依頼する際は、必ず投稿上で企業とインフルエンサーの関係性を明示しなければならない。

3.薬機法の広告表現の規制

薬機法は、医薬品や医薬部外品、化粧品といった商品の効果・効能に関する広告表現を規制する法律である。薬機法対象外である健康食品やその他の商品においても、「〇〇が治った」「〇〇が改善した」といった効果・効能をうたう表現は、虚偽や誇大広告にあたる可能性があるため注意が必要だ。

UGCを活用した代表的な手法とマーケティング事例


では、UGCを活用した具体的な事例を見ていこう。

株式会社I-ne:費用や人的リソースをかけずに素材を多数調達


シャンプーブランド「BOTANIST」シリーズを手掛ける株式会社I-neでは、さまざまな商品およびキャンペーンのLP(Landing Page/広告のリンク先に指定する自社サイト内ページ)にInstagram上のUGCを活用。写真だけでなくユーザー名やコメントも表示した。すると、具体的な施策を開始してから1ヶ月でLPのCVR(Conversion Rate/顧客転換率)が1.73倍に向上。クリエイティブ制作の素材調達コストの低減にもつながった。
参考:「次なる一手はInstagram UGCの活用」:快進撃の続くBOTANISTが挑む、新たなマーケティング戦略とは ~企業担当者に聞くクリエイティブテック最前線~ (aainc.co.jp)
 

アモーレパシフィックジャパン株式会社:「クチコミ」という観点からECでの売上を向上させるために、画像や動画のUGCを活用


メイクアップブランド「エチュード」を展開するアモーレパシフィックジャパン株式会社では、オンラインショップにUGC商品を活用。商品購入ページ上に該当商品のUGCを掲載し、画像つきレビューコンテンツとして機能させている。
参考:メイクアップブランドのエチュード、オンラインショップにUGCを活用した画像つきレビューコンテンツを実装 (aainc.co.jp)

GoPro:製品を使っているユーザーが撮影した映像(UGC)を自社サイトに掲載


小型軽量デジタルビデオカメラで人気のGoProでは、ユーザーが実際にGoProで撮影した動画を自社のYouTubeチャンネルに掲載。ユーザーに対し、優れた作品を撮ればGoProのサイトに掲載されるかもしれないという期待を抱かせ、多くのユーザーの参加を促した。また動画そのものが商品の性能のPRになっており、既存顧客のナーチャリングだけでなく、動画を見た消費者の購買意欲の向上にもつながっている。
参考:【事例紹介】年間8,000件のレビュー獲得!UGCを使ったGoPro社の顧客戦略UGCとは?新時代マーケティングのカギを握るUGCを事例とともに徹底解説 (keywordmap.jp)
 

UGCを活用しやすい商材、活用しにくい商材


UGCを投稿する消費者は何を目的としているのか、と言う部分をしっかりと考えていくことができれば、UGCを活用しやすい商材かそうでない商材かを判断しやすくなるだろう。UGCは、消費者がオンライン上にコンテンツを投稿し、それが「いいね!」「すごいね!」と沢山評価されることによって、承認欲求を満たすという点が一番の動機になっている。そのため、商材によっては、UGC活用に適さないものもある。

活用しやすい商材

・人に勧めやすい商材:音楽、映画、本など
・自己表現の素材として投稿されやすい商材:アパレル、コスメなど、いわゆる「映え」系
・店舗などで気軽に手に取れる商材:お菓子、飲料
 

活用しにくい商材

・コンプレックス商材:育毛剤など
・消費者の思考があまり関与しない商材(低関与商材):ゴミ袋、乾電池、トイレットペーパーなど、日常で当たり前のように使用する消耗品
・高価で購入個数が極端に少ない商材:高級車など 

ただ、活用しにくい商材でも、コンテンツの切り口や、発想の転換によって、大きな成果を得ることができるケースもある。

UGCを活用してマーケティングROIを高めよう


コロナ禍を経て消費行動が大きく変化してきている中で、デジタル化はますます進み、UGCの価値は今後も高まっていくと考えられる。そして、SNS上等に投稿されるUGCを活用し、ブランド認知(アテンション)の獲得につなげる取り組みはどんどん進んでいくだろう。消費者が作成するコンテンツをどのように活用すればどのような効果が得られるのか等、しっかりと考えながらUGCを活用していくことで、今後も効率的なマーケティングを実現しやすくなる。
今こそUGCを最大限に活用し、マーケティングROIの向上を目指してみてはいかがだろうか。

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