BIツールで分析し、CRMツールでアクションを実行し、スマートなデジタルマーケティングを実現しよう


Writer:
山崎雄司
  • facebook
  • Twitter
  • LINE

デジタルマーケティングの普及に伴い、企業が活用できるデータ量は飛躍的に増加している。それと同時に、こうした膨大なデータを上手く活用できていないといった課題を持つ企業も多くなってきている。最近では、こうした背景の下、データ活用をサポートするBIツールが続々と登場している。しかしデータは分析しただけでは価値は生まれない、CRMツールなどと組み合わせて活用し、素早くアクションに結び付けてこそ価値が高くなる。そこで今回は、膨大なデータを分析し、迅速な意思決定をサポートする「BIツール」とそこからアクションに結び付けるCRMやMAツールとの連携方法について考えていく。

BIツールとは


従来のマーケティングに比べ、デジタルマーケティングでは取得できるデータ量が格段に増加している。「BI(Business Intelligence)ツール」は、そういった膨大なデータをリアルタイムで分析し、可視化してくれるものだ。

BIツールの基本機能としては、データの収集・可視化をダッシュボードで実現する「レポーティング(報告機能)」や、データをリアルタイムで多次元的に集計・分析する「OLAP分析(Online Analytical Processing:オンライン分析処理)」、データを統計的に処理しマーケティングに役立てられる「データマイニング(統計処理)」が代表的である。このほか、過去データをもとに予算などを決定する際、「プランニング機能」を用いてシミュレーションし分析することで、経営層の意思決定をサポートするという役割も持っている。



BIツールを活用することで得られるメリットとしては、これまで専門家が行っていた情報の収集や分析といった業務を、専門家でなくても活用することができるようになることがまず一つ。また、異なるデータソースを組み合わせて分析することもできるので、マーケティングの幅を広げることも期待できるだろう。

このように、多くの利点を持つBIツールは、経営層の意思決定サポートにとどまらず、最近では営業分析やマーケティング分析にも活用されるなど、その利用の幅は拡大している。

BIツールを導入するメリット


それでは、BIツールを導入することの主なメリットを見ていこう。

社内データの管理・分析が容易になる

BIツールは社内のデータを集約・蓄積できるため、管理や分析を容易に行える。複数のデータを用いた多角的な分析により、課題やその要因を正確に把握できるようになるのだ。レポーティング機能を活用し、業務を効率化できる点もメリットである。

経営判断や意思決定に役立つ

データや分析結果を可視化することで自社の状況を把握しやすく、企業の経営判断や意思決定に役立てることができる。ダッシュボードで経営層が自らデータを確認できるほか、スマートフォンやタブレットからのアクセスが可能なものもあるので、迅速な判断が行える点もメリットだ。

BIツールの選定方法


そのメリットから多くの企業で導入が進むBIツールだが、今では多くのサービスが提供されており、選定に悩むケースも少なくない。ここでは、BIツール選びで失敗しないためのポイントを見ていく。

導入の目的を明確化する

自社に合ったBIツールを選定するためには、まず導入の目的を明確にしておく必要がある。どのような機能を用いてどのような分析をしてどのように活用したいのか、現場と経営層の両方からしっかりとヒアリングを行おう。それらをもとに誰がどの分野を担当するか、どの程度のスキルが必要かを把握しておくことで、自社の現状に沿った継続的な運用が可能になる。場合によっては、BIツール導入支援のコンサルタントを検討するのも有効だろう。

既存データとの連携を確認する

データ活用をサポートするBIツールの導入にあたっては、既存データや基幹システムとの連携が重要なポイントとなる。自社で運用している既存データやシステムとの連携が可能か、誰が担当するかについてなど、必ず事前に確認しておこう。

予算との兼ね合いを考慮する

BIツールの導入形態には、Web上で利用できコストパフォーマンスに優れる「クラウド型」と、自社サーバ上に構築しカスタマイズが可能な「オンプレミス型」が存在する。導入形態のほか、データ管理機能などの有無によっても料金は大きく変わってくるので、導入目的や必要な機能を踏まえつつ慎重に選定しよう。

主なBIツール


さて、ひとくくりにBIツールといっても多くの種類があり、その特徴や使い勝手もさまざま。ここでは、代表的なBIツールをいくつか紹介していこう。

Yellowfin BI

Yellowfin Japan株式会社が提供する「Yellowfin BI」は、世界29,000社以上の導入実績を持つ多機能なBIツールだ。

自動化に優れており、異常値を検知した際に通知する閾値アラートのほか、要因の検出や分析まで自動で行えるYellowfinシグナルなどが特徴。すべてWebブラウザベースで完結するため導入がしやすいうえ、直感的な操作が可能となっている。豊富な連携コネクタやセキュリティ面の信頼性の高さもメリットのひとつ。2021年2月から、ガイドに従い文字入力することで分析が行える自然言語クエリ(NLQ)機能も備わった。

Actionista!

日本語入力システム「ATOK」などで知られる株式会社ジャストシステムが提供する「Actionista!」は、開発、販売、サポートまで全てメーカーが対応している国産BIツールだ。

料金体系がサーバーライセンスのみで全社員が利用できるため、大企業ほどコストパフォーマンスに優れることが特徴。Webブラウザ上で完結でき、「誰でも分析」がコンセプトの分かりやすい操作性を持つため、専門知識のない担当者でも容易にデータ分析が行える。純国産ツールということもあり馴染みやすく、日本企業に適したサポートが充実している点もメリットだ。

Oracle BI

企業の事業活動の基盤となるサービスを多数展開しているオラクル・コーポレーションが提供する「Oracle BI」は、膨大なデータの管理と多様な分析に適したBIツールである。

豊富な機能を持ちながらドラッグ&ドロップを用いた直感的な操作が可能で、初心者から専門家まで広く扱うことができる。必要なデータをまとめて表示できるダッシュボード機能のほか、Webベースの非定型分析・検索環境を提供するものなど多数のコンポーネントが揃っており、BIツールというよりは総合プラットフォームに近い。また、従来のオンプレミス型だけでなくクラウド型にも対応しており、中堅企業でも導入しやすいというメリットもある。

Qlik Sense

1993年スウェーデンに設立され、現在はアメリカに本部を置くソフトウェア会社Qlik社が提供する「Qlik Sense」は、世界38,000社以上の導入実績を持つBIツール。前身の「QlikView」をベースにより簡単な操作で分析できるよう改良されており、関数ベースでのデータ抽出・統合など、さまざまな切り口のデータから分析を行うことができる。

Qlik社独自の特許技術として「連想技術」というものがある。これは、複数のデータソースを取り込んだ際に、その全てのデータに含まれるレコード間の関連付けを自動的に作成・保持する技術だ。可視化したいさまざまなデータをQlik Senseが関連データとしてつないでくれるため、分析したいデータの取り出しが容易にできる。俯瞰して状況を把握することができるため、素早い仮説検証が可能。また、Qlik Senseの大きな特徴として「インメモリ」も挙げておきたい。高い圧縮率により、数億件以上のデータを取り込むことができるうえ、製品そのものがインメモリ化されるため、高速処理が可能となっている。

Tableau

2003年に設立され、アメリカに本社を置くTableau Software社が提供する「Tableau」は、世界86,000社以上の導入実績を持つBIツール。メーカーからメディア、金融、医療などさまざまな業種で活用されており、国内外の多くの企業から支持されている。

このBIツールはビジュアル表現に特化しており、多彩なビジュアル表現から意思決定をサポートする。複数のチャートを同時にみることもでき、ビジュアライズされたデータから瞬時にデータを把握することが可能だ。また、デフォルトのデザインも優れており、グラフに特化したBIツールである。

Domo

ドーモ株式会社が提供する「Domo」は、データ管理や連携に強みを持つクラウド型BIツールだ。

1,000以上もの連携コネクタを標準搭載しており、非常に多くのデータを一元管理できることが特徴。モバイルアプリが充実しており、営業部門向けや財務部門向け、小売業向けやマーケター向けなど多数存在するため、あらゆる業界や部門に対応できる。見やすくビジュアライズしたデータや分析結果などを社内外で共有しやすい点もメリットのひとつだ。

MotionBoard

帳票やデータ活用に関するサービスを多数展開しているウイングアーク1st株式会社が提供する「MotionBoard」は、データの可視化に優れたBIツールである。

グラフはもちろん、地図やカレンダー、管理図やガントチャートなど、業種に合わせた多彩なビジュアライズが可能というメリットを持つ。2,000社以上の導入実績を持ち、オンプレミス版とクラウド版の2種類から自社の予算に合ったものを選ぶことができる。また、国内の企業による自社開発サービスのためサポート体制が充実しており、問い合わせに対するレスポンスのよさも特徴だ。

LaKeel BI

株式会社ラキールが提供する「LaKeel BI」は、専門家でなくともシンプルな操作で手軽に分析できるオールインワン型の国産BIツールだ。

わかりやすさを重視しており、Excelのようなインターフェースで初心者でも扱いやすく、豊富な分析テンプレートですぐに始められるのが特徴。導入に関するサポートや業務レベルに合わせた研修が多数あり、社内にデータサイエンティストなどの人材がいない企業でも導入しやすい。料金体系がサーバーライセンス型のため、大人数であってもコストを抑えられる点もメリットだ。

BIツールとCRMやMAとの連携


市場競争の激化により、顧客と適切なタイミングで適切なコミュニケーションを取ることがますます重要となっている昨今。企業が市場競争に勝つためには、顧客が行動した結果によって得られたデータを素早く分析し、適切なアクションを行うことが必要だ。この一連の流れをいかにスピーディーに処理できるか、またその精度が、企業の成長を握っているのである。分析からアクションまでをスピーディーに行うために各ツールの役割を知っている必要がある。

まず、BIツールを用いることで営業の持つ営業支援システム(SFA)や、マーケティング部門、サポート部門の持つ顧客管理システムといった、社内で分散するデータを横断的に分析、可視化することができ、アクションに必要な知見をすばやく得ることができる。次に分析結果を活用したアクションを行わなければならないが、アクションを起こすために顧客の様々なデータが必要になってくる。そこで分析結果とCRMやMAを活用することで、ニーズのある顧客の選定や顧客ニーズ発生のタイミングを取得し、すばやくアクションにつなげることができる。

今やBIツールは経営層にとどまらず、各部門の担当者も取り扱いができるほどに技術的なハードルが下がっており、導入の敷居も低くなってきている。様々なツールが出てきている中で、複数のツールを用いる場合は各ツールの使用目的を把握しておく必要がある。あくまでBIツールはPDCAサイクルのCheckの部分を効率よくさせるだけであり、他の部分は他ツール(CRMやMAなど)で補う必要がある。そのため、きちんと役割分担を明確化して活用することが非常に重要になってくるのだ。

スマートなデジタルマーケティングの実現に向けて


顧客の増加や市場の変化にも激しさが増すこの時代こそ、ツールを上手に活用することで、スピードと情報量に翻弄されることなく時代に合った施策を打っていきたいもの。BIツールは膨大なデータの可視化を行うことで、専門家でなくても分析を可能にしてくれるほか、データの比較などにも大いに役立つため、今のデジタル時代に必要とされるツールといえるだろう。そして、CRMやMAツールなどとの連携は、顧客ニーズ発生のタイミングに合わせて素早くアクションを取るようになる、スマートなデジタルマーケティングに欠かせないものとなってくるだろう。

BIツールとCRM/MAツールのメリットを理解し、それらの役割分担をしっかり考えて導入を進めることで、さらに一歩進んだマーケティングが可能になっていくのではないだろうか。

メルマガ登録
  • facebook
  • Twitter
  • LINE