CRMによるデジタルマーケティングで、安定した売上・成長を達成するために考慮すべきポイント


Writer:
山崎雄司
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コスト負担や市場の成熟によって年々競争が激化し、不安定になっている新規顧客の獲得。顧客の情報を一元管理するCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)によるマーケティングは、顧客との関係を維持することで、売上の達成や企業の成長を目指すものである。本記事では、新規顧客獲得の不安定さから脱却し、安定的な成長が望めるようにするためのCRMによるデジタルマーケティングのポイントを整理していく。

既存顧客の維持


マーケティングは、「新規顧客の獲得」と「既存顧客の維持」の大きくふたつに分けられる。「既存顧客の維持」に関しては、既に顧客となっている企業・個人の囲い込みを目的としており、新規顧客の獲得と比較してコストを抑えることができる。
また、経営戦略の場面でよく使われる「5:25の法則」というものがある。これは、顧客離れを5%改善することで利益を25%改善できるという法則で、米国大手コンサル会社ベイン・アンド・カンパニーのフェローであるフレデリック・F・ライクヘルドが見出した。この数値は、既存顧客の維持にかかるコストが新規顧客開拓のコストに比べて1/5程度となること(1:5の法則)や、クチコミ紹介による効果、顧客満足度に応じて購入金額が増加する傾向などを考慮したものである。つまり、既存顧客のケアを行うことで、効率的に費用対効果を見込めると考えられる。


CRMによる既存顧客の囲い込み


既存顧客の囲い込みはサブスクリプションサービスを導入する方法もあるが、CRMを活用してクロスセルやアップセルを狙うマーケティング手法もある。
クロスセルとは、購入を検討している商品と一緒に別の商品やサービスを購入してもらうことである。(例:商品をカートに入れたときに表示される「こちらもおすすめ」などの関連商品の提案など。)
アップセルとは、購入を検討している商品や以前購入した商品やサービスよりもさらに高額な商品を購入してもらうことである。(例:購入を検討している商品に関して、販売員から「こちらの商品の方が高性能ですよ」などと値段や性能が高い商品をすすめるなど。)
こうした施策によって、顧客にサービスや商品を継続して購入してもらえれば、安定的に利益を上げることができる。特にクロスセルやアップセルは、顧客単価の増大につながるため、新規顧客の獲得よりも容易に成長を見込める。ただし、販売側にとってメリットは大きいが、顧客にとっては強引に感じやすい手法でもあるため、メリットをわかりやすく明示し、常に顧客視点を考慮することが重要だ。

CRM活用のためのパーパスと循環型マーケティング


パーパス(目的・存在意義)を伝え続けることで、企業や事業に対する共感を得ることがCRMにおいては重要である。これは既存顧客だけでなく、新規顧客にも有効だ。
また、CRMを活用するにあたっては、データを得ることばかりに捉われず、なぜデータを取得するのか、そしてそのデータをどう顧客に還元できるのかをしっかり考えたうえで、“顧客のデータを預かる”という認識をもって取り組むべきである。そして、CRMを通じて得られるデータを顧客に還元することで、循環型のマーケティングを進めていきたい。
循環型マーケティングとは、顧客の行動を「購買前」「購買の場」「購買後」に3分割し、「購買後」の情報共有が、次の「購買前」の行動(情報検索)に影響を与える、といった情報循環を前提にした意思決定プロセスを提案したものである。循環型マーケティングは、慶應義塾大学教授の清水聰先生が提唱する日本発のマーケティングとして注目されている。

既存顧客を維持するためのCRMのポイント


それでは、既存顧客を維持し、安定した売上・成長を達成するためのCRMによるデジタルマーケティングのポイントを5つ見ていこう。


コミュニケーション

顧客を維持するためには、顧客目線のコミュニケーションが重要である。店舗等での接客による直接のコミュニケーションはもちろん、インターネット広告やメール、SNSなどのさまざまなチャネルを活用した顧客とのコミュニケーションを通して、顧客が今どのような情報を知りたいのか、どのような課題を持っているのかをしっかり考えた上でコミュニケーションを取ることが重要だ。

タッチポイント

顧客とのタッチポイント(接点)を増やすことにより、顧客は企業をより認知し、そして親近感を抱いてくれる可能性もある。さらに、そのタッチポイントを有機的に連携し、様々なアクションを取ることで、顧客体験をより向上させることができ、顧客との距離を縮めることが出来る。

ダイレクトマーケティング

顧客の趣味嗜好は一人ひとり異なるため、ダイレクトマーケティング(顧客に直接的にコミュニケーションを図ること)によって、それぞれに適したアプローチをとる必要がある。顧客ごとにカスタマイズされたコミュニケーションによって満足度の高いおもてなしを可能にし、既存顧客を引き留めることにつながる。

ロイヤリティ

長期にわたって利用してくれている顧客に対し特別なサービスや還元を行うことで、顧客満足度の向上および既存顧客の囲い込みを行うことができる。ポイント制度などがよく例に挙がるこのマーケティング手法は、既存顧客の情報を把握していることが前提となるが、ブランドに愛着を持つロイヤルカスタマーを育てることが出来る。

従業員満足度

従業員の感情は、サービスを通して顧客に伝わるもの。サービスを提供する従業員の満足度は重要であり、それらを改善することで結果的に顧客へのサービス向上にもつながる。


ポイントをおさえた既存顧客維持で安定的な利益向上を


CRMを活用して既存顧客の囲い込みを行うことで、新規顧客を獲得するよりコストを抑えつつ安定した売上と成長が期待できる。データを得ることを最終目的にせず、顧客への還元を考慮した循環型マーケティングを進めたり、クロスセルやアップセルを狙ったりと、効率的かつ安定的な売上向上を狙うことも可能だ。本記事で挙げたポイントをおさえ、既存顧客の維持を目指してみてはいかがだろうか。

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