メールによるナーチャリング施策で見えてきた、効果的な見込み顧客営業支援と新たな情報ニーズ

株式会社フェースビューティ
営業本部マネージャー 和田 みゆき氏

1970年代に起こった化粧品公害に心を傷めた創業者が“誠実(フェース)”な化粧品づくりを決意したことをきっかけに、1985年に誕生し、2018年で創業30周年を迎えた「フェースグループ」。「合成界面活性剤から離別したゲル化粧品の開発」や「有用成分を角質層内に入れるナノカプセル化技術」、「活性酸素を生まない化粧品開発」、「肌のラメラ構造を整える美容法の確立」と化粧品業界において4度のスキンケア革命を起こし、世界各国で特許を取得。研究所・海外事業部・教育事業などエステティック関連事業をグローバルに展開。国境を超え、ひとりでも多くの女性にスキンケア効果を感じて笑顔と幸せになってほしいと、こだわりぬいた化粧品を提供し続けている。

その中のひとつである株式会社フェースビューティは、フェースグループにおける化粧品等の総発売元で、1988年に設立した株式会社フェースコスメティックの販売と教育を特化させるべく誕生した。化粧品の販売、全国のサロン・化粧品販売店のサポート、エステティシャン育成のための教育機関など多岐に渡る事業を展開する中、カスタマーリングスが導入されたきっかけと運用・実施の成果について営業本部の和田みゆきマネージャーが語ってくれた。

B to CのメールマーケティングをきっかけにB to Bのナーチャリング施策へ

カスタマーリングスを導入したきっかけは、サロン顧客へ向けたECサイト「フェースメンバーズクラブ」でのB to C施策として、メールマーケティングと顧客情報の分析をするためでした。それまで使っていたメーラーシステムは高コストの割に機能が少なかったので、さまざまなベンダーのツールと比較検討した結果、2015年10月にカスタマーリングスを導入。そこから2017年6月にB to B法人営業の取引サロンを増やすため、ナーチャリング施策としてカスタマーリングスの活用を開始しました。

活用企画の発端は、毎年開催されている美容業界最大の見本市「ビューティーワールドジャパン」で取得した美容関係者の情報、いわゆる見込み顧客をできる限り成約に繋げたいというもの。そのためには関係性を途絶えさせないための効率的な顧客育成が必要だと考えたのがスタートです。これまで当社では獲得した見込み顧客に対して追いかけ営業をし、成約になかなか結びつかない顧客は営業リストから除外。ターゲットをどんどん絞り込んで、今すぐ取引できそうな可能性のある顧客を追いかけるという営業スタイルでした。常に目の前の数字を追いかける営業職にとっては当然のことで、今はその気がないという多くの見込み顧客を追いかけ続けることに時間と労力は割けません。

しかし、せっかくご縁があった見込み顧客と「今すぐ成約に結びつかない」という理由だけでつながりが途絶えしまうのは会社にとってとても残念なことです。そこで人員や手間を抑えつつ、見込み顧客に対していかにも“営業”ではなく、ご縁の大切さ、あたたかみを感じていただきながら繋がり続けるフォロー方法はないだろうかと模索。その結果メールを活用したナーチャリング施策にたどり着き、カスタマーリングスが活用できるのではないかと考えました。さっそく担当コンサルタントの方に要望を伝えたところ逆にご提案いただき、色々な注文にも応えてもらいながらスタートを切ることができました。

施策運用の中で見えてきた2つの景色

運用としては、まず見込み顧客の名簿を整理しカスタマーリングスにインポート。最初は営業が見込みなしと判断する顧客に対してナーチャリングし、スコアリングで脈が見えたら再び営業へパスするという流れをとっていました。営業が追跡をやめた顧客に内勤だけでアプローチができ、その反応まで見ることができるという効率的な運用ではありますが、一方で営業にとってはまったく新しい試み。メール配信の結果分析やWebアクセスのログデータを確認できるのが内勤側だけなので、営業側に施策のイメージをつかんでもらうという目的もありました。「とりあえずやってみるので結果を見てみてください」という姿勢で時間をかけて施策を進め、苦労もありましたが営業側もだんだんとイメージを持てるようになってきました。

2018年5月開催のビューティーワールドジャパンにブース出展したあとは追いかけ営業と並行して、セグメントをかけたメールで緩急をつけてアプローチしています。その運用の変化から、カスタマーリングスの同じ機能とデータを用いても、見え方が違ってくるということに気づきました。また追いかけ営業中に連絡がつかず脈が薄いと判断された見込み顧客が、実はメールマガジンやWebサイトをよく見てくれているというケースがあることも見えてきました。カスタマーリングスを導入していなければ、営業サイドから見た景色だけで見込み顧客を判断し、実際のデータから見た景色に気づけなかったと思います。導入から運用までの約1年のあいだに、カスタマーリングスは同じ機能でも使い方や環境によってさまざまな活用を見出せる、汎用性が高いツールだということをあらためて実感しました。

カスタマーリングスを使って生まれた4つの成果

■ローコストで見込み顧客管理の作業効率をUP

もともと成約済みの得意先やECサイトの会員データは基幹システムと連携し、自動でカスタマーリングスに流し込めるようにしていました。しかし成約前の見込み顧客は基幹システムに入力することができないため、エクセル管理でした。そこでコンサルタントの方に相談したところ、手作業でも必要なときに簡単に取り込める方法を教えてもらい、見込み顧客リストのインポートをローコストで実現できました。必ずしもすべてにお金をかけて自動化する必要はありませんでした。

こうして無事にカスタマーリングスにメール配信結果やWebサイトへのアクセス履歴など見込み顧客の情報を蓄積。属性情報を追加して展示会への参加履歴など接触機会の空白を確認したり、データの一元管理ができるようになりました。これだけでもエクセル管理時代からすると飛躍的な進歩だと思います。

■カスタマーリングスの機能をフル活用し、メルマガ開封率を向上

ナーチャリング施策導入時、まずは月に1回のメルマガ配信から始めました。対象となる見込み顧客には大企業のほかに個人事業主の方もいて、特に女性のオーナー様が多かったので、単なる会社情報やセミナー・勉強会のお知らせ、お役立ち情報の提供だけにとどまらず、フェースという会社を知ってもらい「お役に立てる日を待っています」という想いを伝える、お手紙のようなメルマガづくりに取り組みました。そこで助けられたのが、最適時間帯配信やABテストといったカスタマーリングスの機能です。

開封率比較をしたり、メールのどの部分がどれくらいクリックされているのか確認したりして懸命に工夫し、メールマガジンの内容を少しずつ改善。そこに担当コンサルタントからの他社事例などのアドバイスや新しい施策の提案を交えて、それぞれの効果を上手く噛み合わせ何とか軌道に乗せました。現在も情報配信をし続けており、高い開封率をキープしています。

■スコアリングとセグメントで顧客の興味を把握した営業活動へ

スコアリングとセグメント機能のおかげで顧客の興味に沿った営業活動ができています。カスタマーリングスのスコアリング機能はメールだけでなくWebアクセス履歴なども分析可能。顧客の関心度合いがより見えるシステムになっています。開封数やメール内のURLクリック、Webアクセスログの複数の指標をスコア値として一元管理。スコア値や直近のスコア増分にもとづいてセグメントをかけ“今ホットな見込み顧客”をピックアップして営業担当へパスしています。

顧客が何に興味を持っていて、どのページを見ていたかという分析結果を営業活動に活かしてもらうことができるので、この2つの機能はすごくありがたいです。ただのメール配信システムではないカスタマーリングスのおかげで当社のナーチャリング施策がとても有効に働きました。まだ営業側で慣れていない部分もあり、当社の営業スタイルとどうマッチングさせていくかという課題はありますが、導入当初に比べるとずいぶん慣れて活用できるようになってきました。

■メルマガ分析からのナレッジでWebサイトを改善

毎月送っているメールマガジンから見込み顧客の反応やWebアクセスログを分析していると、顧客の興味を引いている、必要とされている情報がどんなものなのかっていうのが見えてきました。さらに、その求められている情報が自社のWebサイトやPRなどでちゃんと発信できていないことにも気づきました。調べてみると現在、その情報についてWeb上で発信している競合他社はほとんどおらず、今から取り組めば入り込める情報ニーズだと発見。そこで、ナーチャリング施策で気づいた見込み顧客の情報ニーズにあったWebサイトを新たに立ち上げました。これはカスタマーリングスを使ったナーチャリング施策がなければ当社が取りこぼしていたであろう大きな成果です。

メールによるナーチャリングから始まったカスタマーリングスの活用は、Webでの見込み顧客情報獲得を経て、Webでのコミュニケーションをとるところまで視野が広がりました。メルマガ分析とWebの相乗効果ともいえると思います。

見込みゼロから5件の成約へ。無から有を生む施策の価値

ナーチャリング施策としてメールを送っていった結果、見込み顧客からの成約が短期間で5件ありました。もし施策を導入していなかったとしたら、営業が見込みなしと判断して追いかけずにそのまま成約ゼロで終わっていたと思います。成約してくださった方の中には連絡をまったくとってくれない、訪問しても会ってくれない、営業からまったく脈がないと判断されていた顧客もいました。蓋を開けてみれば、ただ忙しくてタイミングが合わなかっただけで、メールを送ったとたんに「ありがとう!すごく興味があったからメールをもらえてちょうど良かった」と電話をくださる方もいて。“無から有が生まれる”という施策の価値を実感しました。この施策は社内の人間だけではなく、どこかできっかけを待っているお客様に喜んでもらえる施策でもありました。なかなか営業の追いかけだけではご縁が繋げなかったお客様でも、こうしてカスタマーリングスを活用した内勤者のサポートで繋がり続けられること。そこにやりがいを感じています。

営業個人の努力だけで多くの見込み顧客と繋がり続けるには限界があります。さらにすべての営業がその関係性に一定のレベルを保ったまま対応し続けることは困難。だからこそ、ツールを積極的に使い、営業担当者だけでは難しい営業活動の一部を支援していく。そうすることで、施策の価値が生まれると同時に会社としてお客様と繋がり続けていくことが大切だというCRMの本質に気づきました。

ここまで何とか進めることができたのは、担当コンサルタントの方をはじめ、プラスアルファ・コンサルティングさんのご協力あってのことだと思います。今後の展望としては、今まで蓄積してきたナレッジから来年の展示会後の施策をより効率的にしていくこと。メールの結果などをしっかりと見直して、より良い施策を実施できるようにしたいと考えています。そしてカスタマーリングスが持つ、あらゆる集計機能やレポート機能をもっと活用して定例レポート作成も効率化し、社内関係者に有益な情報共有をしていきたいです。